この災害は、産業廃棄物の処理会社において、廃棄物をフォークリフトでトラックに積み込む作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 安全管理の実施
 この会社の経営者は、経理的な面のみを行なっていたが、規模の小さな会社においてもフォークリフト、機械設備、解体装置等を使用する作業においては、作業者が危害を受けることが少なくないので、経営者は作業者の危害防止が自らの責任であることを自覚し、安全に関して知識を有する安全担当者の選任、安全に関して知識を有する者による作業指揮、或いはこれらの者の養成等を行なわなければならない。
2 安全ブロック等の使用
 フォークリフト、ショベルローダー等の荷役運搬機械については、フォーク、ショベル、アーム等の下に作業者を立ち入らせてはならないが、修理、点検等のためやむを得ず、立ち入るときには、安全支柱、安全ブロック等を使用させなければならない。
 なお、これらの機械の運転席から運転者が離れるときには、フォーク、ショベル等を最低の位置まで降下させておくのが原則である。
3 機械の点検整備の実施
 この会社においては、フォークリフトを購入してから7年も経過しているのに、労働安全衛生法で規定されている「特定自主検査」を一度も実施していない。
 「特定自主検査」は、一定の講習を修了した者によって実施されるもので、毎年の検査の実施と検査結果に基づく補修を的確に実施することにより、フォークリフトのハード面の安全が確保されるものである。
 また、フォークリフトについては、専門家による「特定自主検査」のほか、毎月1回の定期自主検査、その日の使用開始前の点検を行なう必要がある。
 特に、その日の使用開始前には、制動装置・操縦装置の機能、荷役装置・油圧装置の機能等をチェックする必要がある。
4 有資格者の確保
 最大荷重が1トン以上のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習を修了した者以外は行なってはならない。
 従って、これに該当するフォークリフトを運転させる必要がある場合には、あらかじめ講習を受講させるか有資格者の採用等を行なうことが必要である。
5 安全教育の徹底
 作業者には、フォークリフトの運転は、有資者以外の者は行えないことを十分に徹底させるとともに、運転以外の付随作業においても危害防止のために必要な知識、禁止事項について安全教育を実施することが必要である。
 なお、フォークリフトの修理等は、その構造、機能について熟知した者が実施するのが原則であり、それ以外の者が行なうことのないよう徹底することも重要である。