この災害は、ワイヤロープに呼び径6mmの吊りチェーンを3重巻きにしてつり上げ、同ワイヤロープのねじれをとりながらアンリーラーのドラムに巻き取っていたときに、吊りチェーンの留め金具が破断し、ワイヤロープが落下、アンリーラーのドラムにワイヤロープを巻き取る介添えの作業を行っていた労働者の頭部に激突し、被災者が死亡したものである。
 こうした災害を防止するためには、次のような対策を講ずる必要がある。
 まず、
(1) 吊りチェーンを使用し、移動式クレーンでワイヤを吊り上げるときには、吊り上げたワイヤの下に労働者を立ち入らせないこと
 が必要である。
 クレーン等安全規則第74条の2によれば、「ワイヤロープ等を用いて一カ所に玉掛けした荷が吊り上げられているときは、吊り上げられている荷の下に労働者を立ち入らせてはならない」とされており、本件の様に吊りチェーンを用いる場合や、繊維ロープ又は繊維ベルトを用いる場合も同様である。
 次に、
(2) 本件のようにワイヤを移動式クレーンで吊り上げるときは、適格な玉掛け用具を使用すること
 が必要である。
 吊りチェーンを三重巻きにしての吊り上げは、チェーンに横方向、あるいは捻れ方向の過負荷を与える可能性があるため、行うべきではない。
 さらに、作業目的や吊りチェーンの使用方法が異なる場合においても、
(3) 吊りチェーンを使用するときには、荷重に耐えられる呼び径の大きい、適格な吊りチェーンを使用すること
 が必要である。
 本件において使用されていた呼び径6mmの吊りチェーンは、破断試験荷重1.36トン、安全荷重0.27トンであった。吊り上げられる荷の重量を考慮し、荷重に耐えられる、適格な吊りチェーンの使用が必要である。
 間接的災害原因に対する対策として、
(4) 特定元方事業者が、関係請負人に対して、移動式クレーンでの作業に係る労働者の配置について指導を行うことが挙げられる。
 事業者は、作業場所の広さ、地形及び地質の状態、運搬しようとする荷の重量、使用する移動式クレーンの種類及び能力等を考慮して、作業の方法・移動式クレーンの転倒防止のための方法・移動式クレーンによる作業に関わる労働者の配置及び指揮の系統を定めなければらない。(クレーン等安全規則第66条の2)また、機械に係る運転、玉掛け又は運転についての合図の作業その他当該機械に係る作業を行うものとの間及び請負人相互間における作業の内容、作業に係る指示の系統及び立入禁止区域について、必要な連絡及び調整を行わなければならない。
 (労働衛生安全規則第662条の5)