建設業における労働災害のうち、移動式クレーン、杭打ち機等の重機による災害は非常に多く、特に死亡災害については、墜落災害に次いで高い割合を占めている。これらの災害のうち、移動式クレーンによる災害は、吊り荷の落下等による災害とともに、この事例に掲げたような機体そのものの転倒による災害が毎年繰り返し発生している。機体の転倒の原因は、
イ ジブを倒しすぎたり、伸張しすぎたため過荷重となった
ロ 据え付け場所の地盤が軟弱であった
ハ アウトリガーを張り出していない方向にジブを転回して過荷重となった
ニ 吊り荷が強風などにより大きく振れたために過荷重となった
ホ 過負荷防止装置を切って作業を行ったため過荷重に気がつかなかった
 等があり、この災害事例ではイ及びロが原因となって発生したものである。
 この様な移動式クレーンの転倒による災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画の作成等
 移動式クレーンを使用して作業を行う場合には、作業場所の状況や吊り荷(形、大きさ、重量など)を確認し、機種の仕様、作業員の配置などについて十分検討を加え、あらかじめ作業計画(作業方法、転倒防止の方法、作業員の配置及び指揮の系統等)を作成し、この計画にもとずいて作業を行うことが大切である。
 なお、下請けなどを含め、複数の事業者が共同して作業を行う場合には、その作業全体を統括している注文者は、作業の内容、指示の系統、立入禁止区域等について、関係者と必要な連絡及び調整を行う必要がある。
2 安定度の確保
  (1) 設置
 移動式クレーンを設置する地盤は、水平堅固な地盤に機体が水平になるように配置し、アウトリガー(クローラークレーンでは走行フレームの拡張)を左右均等に最大に張り出す。もし、地盤が軟弱な場合には、鉄板を敷く等適切な補強を行うことが必要である。
(2) 運転操作
 移動式クレーンは、ジブを倒すと作業半径が大きくなり転倒モーメントが大きくなって安定が悪くなることはいうまでもない。特に、定格総荷重に近い荷を吊ってジブを倒す場合は、モーメントリミッターの表示数値、警報などに注意して運転する必要がある。
 また、荷を吊って自由降下の途中、急激にブレーキを掛けると衝撃荷重がジブに加わり、ジブの角度次第ではジブの破損、又は機体の転倒のおそれがある。吊り荷の巻き下げは自由降下をさけ、動力降下での慎重な運転が安全である。
 つぎに、移動式クレーンのジブの旋回速度を早くすると、吊り荷に遠心力が働いて吊り荷は外側に飛び出し、その分だけ作業半径が大きくなり、機体の安定が悪くなる。
 従って、旋回操作は慎重に行わなければならない。
3 安全装置の機能の保持等
 移動式クレーンには、巻きすぎ防止装置、過負荷防止装置、安全弁、フックからのワイヤロープの外れ止め装置など各種の安全装置、警報装置などが取り付けられている。
 運転手などは、作業の開始前にこれらの装置に異常がないことを等を確認するとともにその装置の定められた性能範囲内での運転方法を遵守することが必要である。
 なお、過負荷防止装置の自動停止機構を解除して、移動式クレーンの作業を行ってはならないことは当然である。
4 有資格者の配置、安全教育の徹底等
 移動式クレーンの運転手、玉掛け作業者等は必ず有資格者を配置するとともに、関係作業者、管理者に対する安全教育の徹底を図ることが重要である。