この災害は、パネル式つり足場の解体作業中に発生したものであるが、やや特殊な状況のもとでの作業であり、一般的な防止対策に加え、異なった視点から同種災害の防止対策をたてる必要がある。
 まず、このパネル式つり足場の架設の手順について、一般的な方法を説明すると次のようになる。
[1] 資材の搬入
 高架橋の作業ゾーンに移動式クレーンを設置し、資材を点検用通路につりおろす。
 点検用通路へおろした資材を作業箇所に運ぶ。
[2] パネルの架設
  1) 単管の取付け
 つりチェーンをかけるための単管を主桁に取り付けるため、キャッチクランプを主桁の下フランジに取り付け、単管を取り付ける。
<安全対策>
 作業は点検用道路上から行い、安全帯を通路の手すりにかける。
2) スタートパネルの架設
○ スタートパネルの架設のため、先に取り付けた単管に4本のつりチェーンを一定の間隔でかける。
○ 単管にかけたつりチェーンをスタートパネルの補強管にかける。
○ 2名の作業員がスタートパネルの両端のつりチェーンを各々持ち、パネルを下へおろす。
<安全対策>
 つりチェーンの脱落防止のため、フック部分にテープを張る。
3) 2枚目以降のパネルの架設
○ 2名の作業員がスタートパネルの上にのり、先に取り付けた単管の前方30cm位の所に次のつりチェーンをかける。
○ 点検用通路より2枚目のパネルをスタートパネル上にいる作業員に手渡しする。
○ 先にかけたつりチェーンを2枚目のパネルに取り付ける。
○ スタートパネルの連結用ジョイント部に2枚目のパネルの接続部を差し込み、脱落防止用ピンを差す。
○ 連結用ジョイント固定ボルトを締め付ける。
○ 3枚目以降のパネルも同様の手順で架設して行く。
○ パネルの取り付けが終ったら、手すりと幅木を取り付ける。
<安全対策>
○ チェーンの取付け前にスタートパネルの揺れ止めパイプを取り付ける。
○ 安全帯はチェーンつり下げ用の単管又は点検用通路の手すりにかける。
 なお、解体の手順は、概ね、この逆の手順で行われる。
 さて、この解体作業から通常のパネル式つり足場の架設の状況であったのであれば、解体の手順もほぼ手順書どおりに実施すれば安全上さして問題は生じなかったものと思われるが、やや特殊な状況下でのパネルの解体作業であったので、異なった視点から同種災害の防止対策をたてる必要がある。
[1] 工事を直接担当する工事責任者は、資材搬入用のために設けられた開口部の養生パネル部分の解体作業について、あらかじめ開口部の箇所を明記した図面、注意事項など施工計画書、安全管理計画書に追加し、作業内容、作業手順、安全対策などを関係者に明示するとともによく説明しておく必要があること。
[2] 養生パネルの解体の作業方法、作業手順、安全作業のポイントなどについて、作業開始前のミーティングで関係労働者によく説明し、作業員一人ひとりに十分理解させること。
[3] 養生パネルの部分については、連結ジョイントのない箇所である旨、適切な表示を行い、関係労働者に周知すること。
[4] 作業開始前には、開口部の養生パネル部分周辺の関連する作業について、関係労働者に対し、つりチェーン用の単管などに安全帯をかけるよう、その使用の励行を図るとともに作業手順どおりの作業が行われるよう、作業主任者が直接指揮して作業を行うこと。