この災害は、自動車部品工場において、豎型2槽式洗浄機の洗浄液であるジクロルメタンの交換作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 安全衛生管理体制の整備
 この会社は、販売を中心として事業を行なっているが、労働者数90名の事業場なのに安全管理者、産業医が未選任であった。
 作業者の安全と健康を守るためには、まず、安全管理者、産業医の選任等安全衛生管理体制の整備を図ることが重要である。
 なお、事業の内容として有機溶剤の業務があることから、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任する必要がある。
 また、この者に、作業者が有機溶剤に汚染され又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定させ、作業を指揮させること、保護具の使用状況を監視させること等を行なわせることが必要である。
2 安全衛生教育の充実
 雇い入れ時、作業内容変更時の安全衛生教育は勿論のこと、有害業務に従事する者に次のような内容の教育を行うことが重要である。
  [1] 取り扱う物質等の有害性及びこれの取り扱い方法に関すること。
[2] 有害物抑制装置や保護具の性能及び取り扱い方法に関すること。
[3] 作業手順に関すること。
[4] 作業開始時の点検に関すること。
[5] 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
[6] 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
3 作業環境測定等の実施
 第一種又は第二種の有機溶剤業務に労働者を従事させる場合は、定期に作業環境測定を実施することが必要であるが、臨時又は短時間作業の場合にも安全な状態であることを確認することが必要である。
 特に、有機溶剤を入れたことのある洗浄槽内等で作業を行わせるときは、作業開始前に、次の措置を行なうことが重要である。
  [1] 有機溶剤等を洗浄槽等から排出し、かつ、これに接続されているすべての配管から有機溶剤が流入しないようにする。
[2] 水又は水蒸気等を用いて洗浄槽等の内部を洗浄し、かつ、その洗浄に用いた水又は水蒸気等を洗浄槽等から排出する。
[3] 洗浄槽等の容積の3倍以上の量の空気を送気若しくは排気し、または洗浄槽等に水を満たした後、その水を洗浄槽等から排出する。
4 作業マニュアル等の整備
 有機溶剤等を取り扱う作業については、緻密な作業マニュアルを作成し、出張作業等での短時間作業であってもそのマニュアルによる作業を行なわせることが重要である。
 また、作業中に緊急事態が発生時した場合の対応マニュアルも策定し、関係者に繰り返し教育訓練しておくことも必要である。
 さらに、危険・有害業務に従事させるときには、墜落等危害防止のための保護具、取り扱う有害物質の性状等に対応した保護具等をあらかじめ準備するとともに、作業者にあらかじめその使用方法を徹底しておくことが重要である。
 なお、有機溶剤中毒防止のための保護具としては、防毒マスクを使用させることが一般的であるが、濃度が高い場合、今回ような救出作業の場合には送気マスクを準備し、使用させる必要がある。
 一方、今回の災害の場合、安全帯を使用していたならば、搬器から槽の底まで墜落することだけは避けられた筈であり、高所作業を伴うときにはあらかじめ墜落防止用の保護具として安全帯を準備し、着用させることも忘れてはならない。
5 情報を収集し計画を定めること
 出張作業等においては、作業環境の変化もあるので、作業に先立ってその会社から詳細な情報を収集し、それに基づいた作業計画を定め作業を行なうことが重要である。
 なお、状況変化に対応した作業マニュアルがない場合には本社の専門家と相談の上作業に着手するよう徹底しておくことも重要である。