この災害は、停電作業の準備のために、屋上に設置されている遮断器架台に上がり、高圧用接地器具を運び込んでいるとき、遮断器2次側の66,000Vの充電部分に触れて感電したものである。
 災害発生直後、R相の架台とR相碍子の鉄製サポートに焦げ跡が発見されている。また、被災者の身体から、右肩から両足を経由して通電した痕跡が見られた。
 このような感電災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 通電状態の表示など
 2号または3号発電機が運転休止していても、これらの発電機の遮断器2次側は、いずれかの発電機が運転状態にあれば、2号または3号発電機の遮断器2次側が接続されているので、遮断器が開路されても他の発電機が運転状態にあるときは、2次側は通電状態となる。このような状態で作業が行われる場合は、遮断器2次側に、通電状態の表示を行い、接近限界範囲内への立ち入りができないような囲いを設けることが必要であること。
 なお、特別高圧に接近して作業が行われる場合には、活線作業用装置を使用するなどの感電防護措置を講ずること。
 ちなみに、充電電路に対する接近限界距離については、労働安全衛生規則に、66,000Vを超えて77,000V以下の場合、90cmと定められている。また、充電電路に近接するとは、66,000Vの場合、2.2mの離隔距離内にある状態をいうとされている。
2 送電系統の改善
 2号発電機および3号発電機の遮断器と負荷との間に開閉器を設け、遮断器の2次側に他の発電機から通電されない状態で補修作業が可能になるようにすることが望ましいこと。この場合、新たに設けた開閉器の2次側にも、この災害と同様の危険があることに留意し、その対策を講じることが必要となる。
3 遮断器架台の改造
 遮断器架台上での作業を想定し、架台上に作業に必要なスペースを確保すること。
4 タラップの増設
 遮断器架台に上がるためのタラップは、一次側および二次側の両側から上がれるように、もう一箇所増設すること。
5 作業手順書の作成
 作業手順書については、作成者、作成手順および作成要領、作成のための様式など作成要項を制定し、この要項に基づき作成すること。
 作業手順書は、危険個所における作業方法、防護措置などを具体的に示し、個々の作業員の具体的な役割を明確に示すものであること。
6 安全管理
  (1) 安全管理体制
 作業を直接指揮する立場の管理者に対して、作業手順を作成しなければならないなどの定められたルールが遵守されるように、上位の管理者がチェックする仕組みを構築すること。
(2) 作業指揮者の直接指揮
 作業手順作成要項に基づき作成された作業手順により、作業が行われるように作業指揮者を指名し、その者に直接指揮させること。作業指揮者は、グループ内の作業員の作業状況を監視する業務に専念することとし、他の業務を持たないようにすることが望ましい。
 なお、作業指揮者が現場を離れるときには、代行する者をあらかじめ指名し、全作業員に周知しておくこと。
(3) 協力会社との混在作業における作業指揮
 協力会社の作業員と混在して作業が行われる場合には、作業の段取りから作業工程ごとの具体的な作業方法を記載した作業手順書を作成して、危険の存在を明らかにし、それぞれの役割分担を明確にし、作業指揮者の指示に従うことを徹底すること。
(4) 作業員の適正配置
 電気系統の作業に就かせる者には、停電作業といえども、電気に関する知識を有する者を配置すること。
 また、協力会社の作業員が作業に必要な知識を有するか否かについて、あらかじめ協力会社に確認を行う仕組みを構築し、その確実な履行を確保するチェック体制も併せて確立すること。