この災害は、制御盤の検査工程で、検査のために必要な電源回路にケーブルを接続する作業を行うときに、ケーブル端末に接続されていたワニ口クリップのクリップ部に触れて感電したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策を講じることが必要である。
1 ワニ口クリップ
ケーブル端末にクリップ方式を使用する場合は、クリップ部が絶縁覆いにより完全に覆われるものであること。
なお、端末はクリップ方式ではなく、設計段階で、試験用電源接続用のプラグを制御盤本体に設けるなどにより、仮配線用のケーブルを接続するときに充電部分が露出しない方式を採用することが望ましいこと。
2 ターミナルボックス
ターミナルボックスには、電源表示ランプを備え、電源側ケーブルが電源と接続されているときに点灯するなどの措置を講じること。
また、電源を遮断したときに、ターミナルボックスの開閉器を再投入しなければ電源が入らないようなリセット機構を備えるものであることが望ましいこと。
3 電源ケーブル
ターミナルボックスへの接続は、その都度ビス止めするのではなく、コンセントのように差し込みによって接続できるものとし、負荷と接続するときには、ワニ口クリップを負荷に接続してからコンセントをターミナルボックスへ差し込むようにすること。
設計段階で、制御盤本体に接続用端子を設ける場合には、その端子に対応したソケットを取り付けるなどケーブルの導体部分が露出しないように端末とすること。
4 分電盤開閉器に作業状態を表示
作業中には、分電盤開閉器が誤操作されないように、インターロック機構を設けたり、負荷側の作業状況を表示するなどにより作業状態が判別できるようにしておくこと。
なお、負荷側に仮配線用のケーブルなどが接続されていることを表示することも必要であること。
5 電源の遮断
電源を遮断するときは、その負荷側にある開閉器をすべて遮断すること。
なお、電源の投入は、電源側から負荷側の開閉器の順序で投入すること。また、電源の遮断は、負荷側から電源側の順序で遮断すること。
6 作業手順の標準化
通電状態での配線の接続作業は、可能な限り排除することとし、ケーブルの導体部に接触する作業となる場合は、通電状態を確認する手順を標準化すること。
また、複数のグループにより同時に、同一の開閉器を使用する場合の錯誤による開閉器の投入を防止するための確認方法についても標準化すること。
また、その都度作業の段取りの中で、作業開始前に作業手順を確認し、作業ごとに安全作業に必要な手順を追加して作業を開始すること。
さらに、作業手順は、その実施状況を踏まえ見直すことによって、作業手順が形骸化しないように、作業手順が常に履行されやすいものにすること。
7 教育・訓練の実施
標準化された作業手順によって作業が履行されるように、教育・訓練を実施すること。また、定期的に、作業に応じた安全衛生教育を計画的に実施すること。
構内協力業者の作業員に対しては、新規入場時に、構内の一般的な安全に関する教育訓練に併せて、作業ごとに定められた作業手順に係る教育訓練を実施すること。
8 安全衛生管理の充実
経営首脳者が、自らの安全衛生に関する基本方針を示し、この基本方針のもとに各級の管理者が、それぞれの立場での安全管理が行われるように責任体制を明確化すること。
この責任体制のもとに、常に上位の管理者は、作業ごとに担当責任者が、作業手順の履行状況および作業に使用する機器類の安全確保の状況などの確認を確実に履行するように管理すること。
また、構内協力業者の作業員が作業手順を確実に履行させるために、これらの作業員に対する教育訓練を実施する担当部署を明確に定めること。