この災害は、生コンクリートの製造プラントにおいて修理した水中ポンプの据え付け中に感電したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 漏電しゃ断装置等の設置
この災害のように移動式の水中ポンプ等においては、使用中にモーターの絶縁が劣化し、フレーム等に漏電していることも多く、低圧の電気であってもフレーム等に接触して感電死することも珍しくない。
そのため、電動機械器具で、対地電圧が150ボルトを超える移動式或いは可搬式もの、水等導電性の高い液体によって湿潤している場所、鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所で使用する移動式或いは可搬式ものについては、漏電による感電を防止するため、感電防止用漏電しゃ断器を電路に接続することが安全衛生法令でも定められている。
また、これが著しく困難なときには、電動機械器具の金属性のフレーム等を多芯ケーブルの1芯を接地線として利用するか、接地用の電線を用いて確実に接地することとなっている。
生コンクリートの製造プラントは、まさにこの場所に該当しており、確実に作動する漏電しゃ断器を設置すべきところである。
ただし、モーター等が接続されている電路が非接地式である場合、二重絶縁構造のモーター等の場合は、免除されているのでこれらの採用についても検討することが望ましい。
2 点検基準の策定と補修
機械設備、電気設備等については、定期に点検を行なうとともに、随時点検を行なって常に正常な状態で使用することが重要であり、そのためには、これら設備等の損傷の頻度、状態等を勘案した点検基準を策定し、指名した者により見逃しなく点検し、必要な補修等を行なうことが必要である。
また、専門的な見地から補修を行なう必要があるものについては、メーカー等と密接な連絡をとり、確実な補修を行なうことも必要である。
なお、漏電しゃ断器、接地線、移動電線等については、その日の使用を開始する前に機器の作動状況や電線の切断、接続部の状況等について点検することが義務づけられているので、点検者を指名して確実に点検することが必要である。
3 地下水等の排水処理方法の検討
ピット等に溜まった地下水等の処理ついては、そのまま、ポンプで排水することなく、一旦沈殿槽又は池に誘導し、その後に排水する等の方法の検討が必要である。
このような方法を採用すると、機械設備の損傷も少なくなり、また、移動式のものでなく、固定式の排水ポンプとすることができるのでポンプの管理は勿論のこと付属の電線等の損傷を少なくすることができる。
4 安全管理体制の整備
この災害は、製造設備の管理、品質管理等を統轄する者自身が被災したものであるが、前述の点検基準の策定をはじめ、日常の安全衛生活動を継続的に実施していくための管理体制の整備が必要である。
規模の小さい事業場では、通常の業務と安全衛生に関する業務を兼務せざるを得ないが配下の職員の安全と健康を守ることは事業者の責務であり、役割分担を明確にして夫々が与えられた職務を確実に実行するよう徹底することが重要である。
5 安全教育の実施
感電災害は、各種安全対策の推進もあり、近年減少してきてはいるが、夏期を中心に依然として発生しており、特に、低圧の電気設備、配線等については比較的安易に取り扱って被災する例が多い。
電気による電撃危険、作業の場合の停電要領、作業終了後の電源投入要領、作業用保護具、感電防止用防具の使用要領等に関してあらかじめ十分な安全教育を行なうとともに、作業状況を監視し、必要な指示を与えることが重要である。