この災害は、被災者の死体検案の結果、左手から電流が入った痕跡が認められたこと、災害発生時に電気室主要機器警報盤の調合室系統の漏電警報器(0.5Aの漏電電流により作動)が作動していたことから、調合室に設置されている操作盤Aの電源表示ランプ取り替え作業中に、電源表示ランプ本体の変圧器1次側端子(200V)に触れて、左手から0.5A以上の電流が身体を流れ、感電したものと推定されるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 操作盤および電源表示ランプ
  (1) 電源表示ランプ本体を固定するナットは、専用工具を使用しなければ、締め付けたり、ゆるめたりすることができないものとすること。
(2) 操作盤のブタには、施錠し、取扱責任者を定めて表示するなど、特定の者以外が容易に開けることのできない措置を講じること。
(3) 操作盤の裏ブタを開けたときは、電源が遮断される構造とすること。
(4) 電源表示ランプが切れたときには、操作盤電源が遮断される電気回路とすることが望ましいこと。
(5) 操作盤の取り付け位置は、点検・修理作業が容易にできるスペースが確保された場所に設置すること。
(6) 操作盤内の配線および端子部その他充電露出部分は、絶縁覆いをすること。
(7) 一の電気系統のいずれかの部分で漏電事故が発生したときには、その系統の電源が遮断される漏電遮断器を接続すること。
 感電防止のための漏電遮断器は、負荷を分割し、できるだけ小さい電流で作動するものを使用すること。
 ちなみに、労働安全衛生規則では、電動機を有する機械または器具で対地電圧が150Vを超える移動式若しくは可搬式のものには感電防止用漏電遮断器を接続しなければならないことが規定されており、電流動作形のものにあっては動作感度電流がおおむね30mAであり、かつ、動作時限が、0.1ms以下である性能を有するものとされている。
2 作業方法の安全対策
  (1) 活線作業を必要とするときは、使用電圧に応じた適切な絶縁保護具を使用すること。また、必要に応じて絶縁工具をも使用すること。
(2) 電路を遮断して作業を行うときには、遮断した開閉器に、作業中であることを明示し、施錠するなど、誤投入されない措置を講じること。
(3) 電気取扱作業は、指名された者が、作業マニュアルに基づいて作業が行われるようにすること。
3 安全管理体制
  (1) 機器類の修理点検に係る作業マニュアルを作成すること。
(2) 作業マニュアルに基づき、作業が行われるように管理すること。
 また、作業マニュアルは、組織的に改訂する仕組みを設けて、定期的または不都合が生じたときに見直しを行うこと。
(3) 専用工具類は、みだりに使用されないように責任者を指名し、管理すること。
(4) 特定の作業については、作業に必要な知識を有する者をあらかじめ指名し、作業分担を明確にし、必要に応じて、管理監督者はその都度、的確に作業指示を行うこと。
(5) 電気取扱作業に就く者には、電気に関する安全に必要な知識を付与する教育を実施し、その者に行わせること。
(6) 電気取扱作業のように専門的知識を必要とする作業を特定し、指名された者以外の者が、みだりにその作業を行わないように周知徹底すること。
(7) 電気関係または機械設備の点検修理などの専門的知識を有する作業については、それぞれの分野ごとに、他部門との役割分担を明確にし、連絡調整を的確に行えるルールを定めておくこと。
4 安全教育の実施
  (1) 作業マニュアルに基づいた作業が励行されるように、マニュアル作成時、改訂時に必要な教育を実施すること。
(2) 定期的なマニュアルの見直し時などの機会をとらえて、安全作業の再確認、マニュアルの励行などを含め安全意識の高揚を図るために、計画的に安全教育を実施すること。