この災害は、4Mビットメモリー等の半導体を製造している工場で発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1 安全衛生管理体制の確立
 感電災害を含めた労働災害の防止について、経営首脳は自らの問題として認識し、率先して取り組むことが必要であり、そのためには、会社の安全衛生管理体制を確立する必要がある。
 また、作業のリーダーには、その作業または設備等に関する十分な知識、経験を有する者を指名し、現場において直接作業者を指揮させることが重要である。
2 作業指揮の徹底
 高圧電気で充電されている場所或いはその場所に接近して作業を行なう場合には、作業指揮者を定め、次のようなことを行なわせることが必要である。
  (1) 作業の方法、順序を周知させ、作業を直接指揮すること。
(2) 停電して作業を行なうときには、開閉器等の施錠、通電禁止の表示、監視人の配置、検電器による停電の確認等を行なって後に作業に着手させること。
(3) 近接した電路の系統等を周知すること。
(4) 作業終了後には、人員の確認、使用器材の確認等を行なうこと。
3 安全衛生教育の徹底
 作業者に対しては、あらかじめ電撃危険、作業の安全な進め方、感電防止のための保護具、防具等の使用方法ついて十分な安全教育を行なうことが必要である。
 なお、感電災害の中には、通常の状態では低圧電気であっても混触による高圧電気の侵入、落雷等異常状態により電撃を受けることもあるので、安全教育においては広く、かつ、十分な知識の付与を行なうことが重要である。
4 作業マニュアルの作成と徹底
 感電災害は、危険な状況が目視できない中で発生することから、安全教育は特に重要であるが、その場合、作業の手順、夫々のポイントで配慮すべき安全措置等を定めた作業マニュアルを作成し、それに基づいて繰り返し教育訓練を行なうことが重要である。
 なお、電気機械器具には、一般の操作のための取扱説明書が添付されており、保守点検の際の留意事項も記載されているものもあるが、点検補修の場合にはそれを参考にしつつ、作業の安全確保のための手順を自ら作り上げていくことが重要である。
5 保護具、防具の整備等
 停電で作業を行なえない場合、充電部分に接近して作業を行なう場合等においては、作業者が絶縁用保護具を着用し、絶縁用防具を装着することもあるが、作業の内容を検討する段階でこれらのものが必要な場合には、短時間の作業であっても準備することを忘れてはならない。
 また、これらの保護具、防具については、定期にその絶縁性能を確認するとともに、その日の作業開始前に、ひび、割れ、破れその他の損傷の有無、乾燥状態を確認することが必要である。
 また、検電器についても、その性能を確認するとともに、低圧用のものでは絶対に高圧電路等の検電を行なわないよう徹底することが重要である。