この災害は、鋳鋼製造工場にアルミニウム再処理工程を新設し、各機械設備の調整および試運転中に、アルミチップ研磨機用集じん機内でアルミニウム粉じんが爆発したものである。
 可燃性の個体が微粉化されて空気中に浮遊したり、堆積すると、着火源があると、微粒子と空気中の酸素が反応し、反応熱による温度上昇に伴って燃焼したり、爆発する。微粉が浮遊している場合は、ガス爆発とよく似た現象を呈する。
 また、高温の粒子は、粒子自体が気化したり、溶解したりするので、粉じん雲または堆積粉じんを発火させることがある。
 このような粉じん爆発は、粉体と空気との接触面積が増大し、酸化反応が促進されることによって生ずるが、その要件として次のことが挙げられる。
[1] 粉じんが可燃性であること。
[2] 粉じんが微粒子であること。
[3] 支燃性ガス中で、浮遊していること。
[4] 浮遊場所に、点火源があること。
 したがって、労働安全衛生法施行令で発火性のものとしているアルミニウム粉の爆発を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 有効な安全対策が実施できるための安全衛生に関する事前の評価の実施
 アルミニウム再生処理工程において、材料の搬入から製品の出荷に至までの各工程における材料による危険性、使用する機械設備などによる危険性およびこれらの危険性と作業員との関わりについて、定性的および定量的な評価を有効に実施しなければならない。
2 粉じん取扱装置の安全化
  [1] 粉じんが発生する装置には、有効な集じん装置を設置する必要がある。この集じん装置については、危険物である粉じんとそれ以外の粉じんとを区分して集じんする必要があること。
[2] 危険物が滞留する機械設備および集じんする装置には、爆発を起こしたときに、爆発エネルギーを安全に放出できる爆発戸を設けること。
[3] 危険物が滞留または流入する機械設備には、支燃性ガスが入り込まないように不活性ガスを送入することも有効な手段であること。この際には、不活性ガスが作業場所に漏洩した場合の安全措置を講ずる必要があること。
[4] 発火性の粉じんは、堆積することによって、比較的長時間の低温の加熱でも十分に発火し、特に堆積の厚さが厚くなるほど発火温度が低下して危険性が増大するので、粉じんが堆積しやすい箇所には掃除口を設けること。
 また、ダクトは、粉じんが堆積しないような搬送速度を確保するとともに、急角度の立ち上がりまたはポケット部を設けないようにすること。
3 作業規程などの整備と周知
  [1] 危険物を取り扱う工程で使用する機械設備に係る作業規程、作業標準、機械設備運転に係るマニュアルなどを正常時のみではなく、想定しうる異常時の対応をも含めて整備すること。これらのマニュアルの整備に当たっては、安全衛生に関する事前の評価の結果を十分に反映させることが必要であること。
[2] 整備されたマニュアル類は、関係者に周知徹底を図るための教育を十分に行い、必要に応じて現場での異常時の対応についての模擬訓練などを実施することが望ましいこと。
[3] マニュアル類は、随時見直しを行い、常に工程の実体に即したものに整備すること。
[4] マニュアル類が確実に履行されるように、定期的または見直しが行われる都度、必要な教育訓練を実施すること。
[5] 構内協力業者の作業員に対するマニュアル類の周知のための教育訓練に当たっては、担当部署を明確に定めておくこと。
 特に、新規に入場する作業員に対する教育訓練は、単に一般的な安全教育だけではなく、実際の工程に設置されている機械設備に係る安全衛生に係る留意事項についても十分に教育すること。
4 検査・点検の実施
 機械設備に係る検査・点検基準を定め、検査・点検者を指名し、定期的に検査・点検を実施する体制を確立すること。
5 安全衛生管理の強化
 経営首脳者は、安全衛生に関する基本方針を示し、生産管理者には、異常事態での運転中止、適切な避難など安全衛生に関する措置をなし得る能力と経験を有する者を配置し、これらの措置をなし得る権限を付与し、的確な職務を遂行させること。
 また、生産管理者の指揮のもとで、グループごとに安全担当者を配置し、マニュアルどおりに作業が行われているかを、常時管理させることも必要であること。