この災害は、8階建てのビル建設工事において、7階の床版にコンクリート打設作業中発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
(1)フェローデッキの取り付け工事施工手順を定め、それに基づいて作業を行うとともに、検査体制を整備して適正に検査を実施すること
 フェローデッキは工場製作された製品であり、現場の設計に合わせて精密に製作されているが、それだけに、現場での取り付け工事に必要な十分な精度が要求されており、これらの工事に不備があると重大な事故になるおそれがある。
 そのため、現場での施工の精度を上げ、不備のない工事を行うためには、綿密な施工手順書により作業を行うとともに、適切な検査体制により、適正な検査を行うことが必要不可欠のものとなる。
 現場での施工手順書は、工場での製作手順書とは異なり、いたずらに精緻な事項を要求するのではなく、現場の労働者が手早く正確に作業ができるものでなければならず、必要な事項が明瞭簡潔に表現されていなければならない。
(2)作業の責任者を定め、その者の指揮により安全な作業を行うこと
 作業方法や作業条件から、または、取り扱う設備、機械等から生じる危険性に対応して、その作業または設備等に関する十分な知識、経験を有する者が、その作業の現場で直接労働者の作業を指揮することがその作業によって生ずる災害を防止するために重要なことである。
 フェローデッキの取り付け工事およびコンクリート打設工事についても、それらの工法および設備等について十分な知識、経験を有する作業責任者に作業を直接指揮をさせ、常に安全な作業が行われるよう監視させなければならない。
(3)関係労働者に対する安全教育を徹底すること
 新しい機械等の導入や作業形態の変化等に対応するためには、それらの新しい機械や作業方法について関係労働者に対し適切な安全衛生教育を実施することが必要である。
フェローデッキの取り付け工事およびコンクリートの打設工事についても、これらの工事の安全な施工を確保するために、その作業に従事する労働者に対し、この工法の安全な施工のために必要な事項を事前に教育しておかなければならない。
(4)フェローデッキ製作時の検査体制を整備し、適正な検査を実施すること
 フェローデッキを製造する段階においても、安全を確保する必要があることから、その設計内容について再検討すること。
 また、フェローデッキは納入する現場ごとに設計して製作するものであるから、その都度各種寸法等が異なることが多く、それぞれの製品に合わせた加工とその検査体制が必要である。
 そのためには、適正な検査マニュアルの整備と専門の検査要員の養成が不可欠であり、常に、それらのものに厳正な検査を行わせなければならない。