この災害は、他社のコンテナ積み卸し作業現場(コンテナヤード)で共同作業中に発生したものである。
被災者の所属する会社は、貨物運送業であり、貨物運送業を営む大手A社の系列下請け業者として、小包等の集配作業等を請負っているほか、鉄道貨物運送を行うB社のコンテナ貨物の運搬及びコンテナの荷物の積み卸し作業を受託している。
コンテナ作業の場合には、B社構内において、A社の作業者と混在した形で行われることが多いが、作業の明確な分担はなされておらず、作業指示は、A社の営業課の社員から、被災者の所属する会社の個々の作業者に直接なされている。
災害発生当日、被災者は、午前7時に出勤し、客先へ荷物の運送および担当の集配業務を行っていたが、作業が全て終了したので、午後5時30分に帰庫し、後片付け作業を行っていた。
一方、A社の班長は、当日、午前中から、最大荷重10トンのフォークリフト(通称大型フォーク)を運転して、貨物鉄道で到着したコンテナを構内に卸す作業を行っていた。
午後5時30分頃、A社の班長は、同社のトラック運転手に「コンテナの荷(ドッグフード)が、一袋足りなくなっているので、上屋から持ってきて該当するコンテナに入れてくれ」と指示した。
指示を受けた運転手は、指示された上屋へ行って荷を探したが、袋の破損した荷しかなかったので、「どこにあるか分からない」と班長に報告して、担当のトラックを運転してコンテナヤードから事務所へ引き揚げた。
たまたま、同じ場所で後片付け作業を行っていた被災者は、その状況を見聞していて誰からも指示はなかったが、自分で構内西側に設置されている上屋へ荷を探しに行き、破損していない袋(ドッグフード)を探し出した。
それから、この袋を平パレット(縦100cm×横100cm×厚さ13cm)上に載せ、最大荷重3.5トンのフォークリフトでコンテナ積み込み場所付近まで運搬したあと停車し、フォークをほぼ水平の作業床面まで降下させた後、他の作業者を探すためこの現場を離れた。
他の作業者を探しに行ったのは、運んできた荷の積み込みをするコンテナが、2段積みの上段(地上高2.3m)にあり、そこに行くための昇降設備が用意されていなかったからである。
他の作業者を探していた被災者は、たまたま集配作業を終了して帰社し、トラック運転席で、当日の運転日報を記録していたA社の副班長を見つけたので「コンテナの中へ荷物を1つ上げたいので、自分がパレットに乗るからフォークリフトを運転して下さい」と依頼し、これを了解した副班長と2名でフォークリフトの停車位置に向かった。
コンテナは、通称ゴトコンと呼ばれる5トンコンテナ(縦242cm×横360cm×高さ234cm)で、2段積みとなっており、被災者が運んできた袋は、ひな段状に並べられたコンテナのうち上段のコンテナへ積み込む必要があった。
フォークリフト停車位置に到着した被災者は、平パレットの隅に乗り込み、荷を両手で押さえてかがみこみ、A社の副班長はフォークリフトの運転席に搭乗し運転操作を開始した。
フォークを上昇させ、高さ250cmまでリフトし、1段目のコンテナの屋根にパレットを乗せようとして、フォークリフトを82cm前進させたところ、被災者がパレット上から墜落し、頭部がコンクリート作業床面に激突した。
被災者は、保護帽を着用していたが、コンクリート作業床面に激突した際に帽子の後部が破損し、被災者の倒れた位置の横に飛んでいた。
A社の班長は、災害発生現場から約50m離れた場所でコンテナへ積み卸し作業をしていたが、異常を知って駆けつけたところ、被災者は頭部から出血し、動けない状況であった。
直ちに、救急車を手配し、被災者を病院に収容し治療を続けたが、災害発生日から3日後の午後3時45分に頭蓋骨骨折による脳挫傷のため死亡したものである。