この災害は、住宅地にプロパンガスを供給しているガス管からガス漏れがあり、修理作業中の2人の作業員が、作業坑の中で酸素欠乏症になり意識を失った。2人は救助され、病院に移送されたもののまもなく死亡した。
この住宅地のガス供給は、高圧のプロパンガスのボンベをボンベ庫と称するボンベ置場に設置し、減圧器でガスの圧力を減圧してから各家庭に供給する、いわゆる集中配管方式により行われている。
各家庭にガスを供給する導管は、内径40センチメートルの本管と内径20センチメートルの供給管で構成されており、今回のガス漏れ事故は、このうちの各家庭に供給される供給管の部分で発生している。
今回のガス漏れ事故について、通報を受けたガス供給業者は、ガス設備工事業者に修理を依頼し、工事業者は作業員を手配し、翌日の朝に作業員2人を現場に派遣して現場を調査させた。2人の作業員は漏洩個所を探すための試験掘りを行い、約2時間後に漏洩しているガス管を発見した。2人はその日の午後から別の現場にいく予定があり、その日は作業を中止して翌週に修理を行うこととなった。
3日後の朝、2人は再び現場に行き、ガス管取替え作業のための作業坑の掘削を開始した。
このあとの2人の作業行動については目撃者がなく不明であるが、午前11時頃には付近の主婦が現場で作業を行っている2人を目撃している。
午前11時30分頃、現場の作業坑の中で倒れている2人が発見され、直ちに病院に移送されたが2人ともまもなく死亡した。
2人が倒れていたときの現場の状況は、作業坑はまだ完成しておらず掘削途中の状況であった。この作業坑は1メートル弱四方の枡形の竪穴に、民家の敷地内に向かって約60センチメートル程度の横穴が掘られていた。
倒れているところを発見されたときの2人の状態は、2人とも作業坑の横穴に頭を突っ込んだ状態で意識を失っていた。
また、作業坑の中のガス管の状況は、横穴の奥に方の、ガス管が上方に立ち上げてあるジョイント部分で、管が折れた状態となっていて、そこからガスが漏れ出していた。
さらに、作業坑の中央部分付近で、ガス管をカッターで切断作業中の状態になっていて、ガス管の直径の半分程度まで切りこまれていて、その部分からもガスが漏れ出していた。
以上のような状況から、災害発生状況を推定すると、ガス漏れしているガス管を交換するため、2人で作業坑内で作業中、掘削作業中のスコップがガス管にあたったか、またはガス管をカッターで切断しているときの振動により、以前から腐食により弱くなっていたガス管の、ガス漏れ個所のジョイント部分が折れ、ガス管からさらに大量のガスが流出することとなった。
そのとき、作業中の1人が作業坑の横穴の奥に頭を突っ込んで、漏れているガスを止めようとした。ところが、横穴の奥の方は、半ば閉鎖されたような状態の場所であったことから、漏れ出したプロパンガスで充満されていて、作業員は酸素欠乏状態の空気を吸引したため、酸素欠乏症により意識を失ったものと思われる。
なお、既設ガス管のガス漏れ修理作業は、通常次の手順により行われる。
[1] 地中に埋設されているガス漏れしているガス管を発見するため試験掘りを行う。この試験掘りは通常直径20センチメートル程度の穴を掘る。
[2] ガス管を発見したあとは、ガス検知器でガス漏れの有無を検査する。
[3] ガス漏れを確認したあとは、ガス管交換の為の作業坑を手掘りで掘削する。
[4] 作業坑をつかってガス管の漏洩している部分を外し、新しい管に交換する。
[5] 供給管の遮断の方法は、管をすばやく切断したあと、粘土などでガスを仮止めしてから、ガス止め専用バルブを取り付けて完全にガスを遮断する。