1 この災害は、ジャンプ足場の解体作業に際に、突風が吹いて足場が転倒したものである。解体作業は次により行われた。
  [1] 足場の解体、組替え作業は事故2日前から行う予定であったが、強風のため作業は中止されていた。事故当日の朝は最大風速9m/秒の風があったが、足場の解体作業を開始した。
[2] 当日の作業は、T組から鳶工の足場組立等作業主任者A、作業監督B、クレーン合図者C及び作業者Dの4名とS組から鳶工のE、F、G及びHの4名が作業に従事した。
[3] 解体作業は、次の工程で行われた。
 8:30 玉掛けワイヤの準備と解体作業段取りをする
 9:00 上部(4段2ブロック)を建屋東側から吊りだし解体ヤードに仮置きし、4段をさらに2分割して仮置きする。
 10:30 上部仮置き足場の解体及び手すり復旧
 11:00 残りジャンプ足場(11段4スパン)の2ブロック中の1ブロックをつり出す
 11:30 ジャンプ足場下段(3段)解体中、突風により足場が転倒する
[4] 事故は、上部(4段2ブロック)の足場を吊りだし仮置き場で解体した。その後で、建屋に取り残されていたジャンプ足場(11段4スパン)2ブロックのうち1ブロックを移動式クレーンで吊りだし、解体ヤードでジャンプ足場下段(3段)を解体しょうとしているとき発生した。
2 その作業の配置は、
  [1] 外壁に設置されてあるジャンプ足場(11段スパン)の取り外しはT組のD及びS組のFが行った。
[2] ジャンプ足場下段(3段)の解体作業は、S組のE、G、Hが足場の縁切り作業をし、T組のA、Bは地上での指揮及び監視、Cは玉掛け業務の合図をしていた。
[3] ジャンプ足場(11段4スパン)は、下段(3段)が3スパンで4段目から11段目までが4スパンとなっている。下段から6段目の位置に補強材が入っており、そこに玉掛けワイヤをかけてつり出し、解体ヤードでは吊った状態で地面に接地させ、下段(3段)の3スパンを縁切りし、その上部(11段4スパン)を切り離すため約20cmほど吊り上げた。
[4] ジャンプ足場には、ネットが取り付けられたままの状態なので、ネットを上げる作業とジョイント部のピンを外す作業を終了し、上部ユニットをさらに少し吊り上げた。その時、作業者は一旦足場から離れたが、足場にネット及び跳ねだし部の布板が引っ掛かっていることに気づき、S組のG、Hがネット外しに、Eが布板外しに行った。
[5] その時、風が強くなってきたので、近くで作業中の他職の鳶工M、Nも加わり介錯ロープで枠組足場を支えながら作業を続けた。急に突風が吹き出し、吊り上げられた枠組足場が回転し、下部に残っていた足場3段3スパンが支えきれず転倒した。
[6] 転倒した枠組み足場の3段目にいたEは安全帯をしていたが、倒れるときに飛び降りた。又、同じ3段目にいたG、2段目にいたHは枠組足場と一緒に転倒した。一方枠組足場の横にいたAは逃げようとしてつまづき4名が被災した。
3 災害に関する事項
  (1) 移動式クレーンについて
  [1] 種類:クローラクレーン
[2] 吊り上げ荷重:100トン
(2) 資格関係について
  [1] 移動式クレーンの運転資格:Oについて移動式クレーン運転士免許証確認
[2] 玉掛け業務資格:Aについて玉掛け業務技能講習終了確認
[3] 足場組立等作業主任者:Aについて足場組立等作業主任者技能講習終了確認
(3) 当日の気象状況
  [1] 11:00 気象庁観測点(無人)
 天候:雨又は曇り、風:西北西3m
 温度:5.6℃
[2] 10:30 現場内クレーンに付けた風速計
 風:西北西16.5m(瞬間)、平均4〜14m
[3] 11:50 事故発生の時刻頃
 風:西北西16.5m、瞬間最大風速約17.5mを記録している
4 現場における安全管理体制
  [1] 工程管理:現場の工程管理は、元請が3ヶ月及び3週間の工程表を作成している。
[2] 作業指示:T組では作業前日までに作成し、元請の承認を受ける。
[3] 作業指示内容は、作業工区、班長に安全指示事項を明示しているが、作業中止の判断は元請で行うこととなっていた。