この災害はボウリングマシンのロッドつなぎ作業者が不十部分なつなぎのロッドに振られ転倒してウインチのドラムに巻き込まれたもので、その作業内容と災害の発生状況は次の通りであった。
1 請負関係
  [1] 発注者  :温泉経営者 個人
[2] 請負業者 :株式会社  K
 当業種は、各種の試錐工事、地質調査、探鉱、温泉さく井工事、軟弱地盤改良工事を事業内容とする。
[3] 工  期  平成7年9月〜12月(3ヶ月間)
[4] 請負金額  約2,500万円
2 作業内容
 午前8時過ぎから、現場において現場責任者Xは労働者Y・Zと作業方法について打ち合わせを行い、次いでボーリングマシンとポンプ類のエンジンを始動しながら点検を行った。その後、ロッドを継ぎ足して地中に挿入していく掘削作業を開始した。災害は掘削作業中に発生した。
 Xは現場責任者として、作業の決定、作業の指揮、合図等を行い、自らボーリングマシンのロッドのつなぎ作業に従事していた。
 労働者Yは、ボーリングマシンの運転業務に従事していた。労働者Zは、雑役工でボーリング作業には直接従事してなかった。ボーリング作業はXとYの2人だけで行った。
3 ボーリング作業は、次の作業手順によって行った。
  [1] Aロッドによる掘削が終了した後、ボーリング作業台上で、Aロッドからウォータスイベルをはずす。
[2] ウォータスイベルを、地上にある次のロッド(継ぎ足しロッド6m×1本)に取り付ける。
[3] ウォータスイベルに接続されたロッドをボーリングマシンのウインチで巻き上げ、作業台上にて吊り上げたロッドの下方をAロッドにつなぐ。
[4] このロッドつなぎ作業が終わると、ボーリングマシン運転者へ合図して、機械を稼動させ、掘削作業を開始する。
[5] 継ぎ足したロッドの上部が、地表近く挿入されて、この一連の掘削作業が終了する
[6] ボーリング作業は、[1]〜[5]の作業手順を繰り返して行われる。
4 災害発生状況
 午前10時頃、Xは作業台上で、8本目のロッドを巻き上げ、ロッドのつなぎが不十分であったため、ロッドが振れてXが接触し転倒した。この作業台の広さ(880mm×805mm、高さ2320mm)の右端部分に設けられていた開口部(250mm×255mm)は、ウインチからのワイヤーがとおる場所であり、ウインチの乱巻き監視のために設けてあるもので、その開口部には覆いもなく、手すりも設けてなかった。
 Xは転倒したとき、開口部に左足が入り、右手でワイヤを掴み立ち上がろうとした状態で、ウインチの巻上げを「巻け、巻け、巻け」と指示した。この指示に従ってYはウインチを稼動させた。その時、Xの左足がウインチのドラム上にあったため、ドラムとワイヤとの間に巻きこまれ、足が切断され出血多量で死亡した。
5 使用したボーリングマシンについて
  [1] ボーリングマシン
 型  式:TL2000型
 製造 年:1991年
[2] 機械の点検等
 月次点検 :毎月実施している
 作業前点検:実施している
[3] 製造者からの安全対策等
 ユーザーへの指示事項:特になし
 作業手順の有無:なし
 作業台の用途:ワイヤロープの乱巻き修正等
6 作業者の資格取得状況
  [1] 現場責任者X:法定資格の取得なし
[2] ボーリング運転者Y:ボーリング運転特別教育修了
7 被災者Xの健康状態
 平成7年7月実施の定期健康診断では、異常は認められなかった。