この災害は、千葉県安房郡鋸南町吉浜の保田漁港修築事業現場において発生したものである。
 工事現場では浚渫船による港内の浚渫作業を行っていた。使用した全旋回浚渫船兼起重機(通称「グラブ浚渫船」)は第18東昭号(SSK-23018GDT-F型)であり、型式は旋回式浮きクレーンである。つり上げ荷重は主236、補31.5tである。
 災害当日の朝6時頃にミーティングを行い、作業事項等の確認と安全指示を行った。グラブ浚渫船団(グラブ船、土運搬船、揚錨船各1隻)は吉浜埋立地係留場所より300m離れた浚渫箇所に曳航した。
 6時40分頃スパットと呼ばれる船体固定装置を海底に打ち込み位置を固定した。最初の左スパットを打った際にスパット巻き上げ用のチェーンに一箇所切断を確認した。そのため、3名のスパット修理グループはスパットガントリーの足場上にてチェーンの修理を行った。
 一方6時45分頃、浚渫作業のグループはレッドマント呼ばれる作業員が前日までの浚渫箇所を確認した後に、オペレーターに指示して浚渫作業を10~12回行った。この時、待機状態であった甲板作業員AとBは自主的にグラブ浚渫船本体(起重機部の下部にある倉庫)に入った。Bは倉庫内の整理を行い、Aは白ペイントを取り出して外にでた。この時AとBは倉庫入り口にて顔を合わせたが話はしていない。
 甲板作業員Aは浚渫作業中の本体右舷後方に行き、ウインチ装置の周りに設けられた鉄製のウインチガードに昇って塗装を行っていた。この時、旋回してきた上部旋回体の後方下部にあるカウンターウエイトとウインチガードパイプの間に首を挟まれて被災した。
 6時55分頃浚渫作業中のレッドマンが後方での異常音を聞き振り返えると、甲板作業員Aがカウンターウエイトとウインチガードパイプの間に挟まれているのを発見した。レッドマンは直ちにオペレーターに旋回停止の合図をした。オペレーターは直ちに旋回を停止して操縦室より降り、被災者に声をかけた。この時、被災者は呼吸をしていたが、呼びかけに対する返事はなかった。被災者は救急車にて病院に直行したが頸椎損傷のため死亡した。