この災害は、橋梁下部工事における支保工解体作業中に、地上からの深さが6.9メートルの箇所で発生したものである。
 この工事の概要は、道路の交差箇所に建設する橋梁工事のうち下部工事を行うもの。フーチング部の幅は24.15メートル、奥行は8.4メートル、橋梁の高さは12.67メートルであり7ヶ月の工期で施工するものであった。
 工事は、次のような工程で行われることになっていた。
[1] 場所打杭工
[2] 掘削土止め工
[3] フーチング施工
 鉄筋工、足場組立、型枠工、コンクリート打設
[4] 躯体施工
 鉄筋工、足場組立・盛替工、型枠工、コンクリート打設
[5] 型枠脱型
[6] 足場解体
[7] 支保工解体・撤去
[8] 埋戻し
 このうち、被災者の所属する事業場は、上記の[1]、[7]及び[8]を担当することになっていたが、災害が発生する前には、上記の作業工種のうち[6]までの工事が完了しており、工期の終了まであと15日であった。
(1) 災害発生時の工事は、[7]の工事のうち切梁、腹起こし等土止め支保工の解体工事であった。
(2) 同工事は、[6]の完了した翌日から開始され、4段目(最下層)の切梁、腹起こし及び火打ちの解体及び搬出作業を行った。
(3) その翌日(災害発生当日)は、次の作業が行われることになっていた。
  イ 前日に引き続き、4段目の切梁の残り2本、腹起こし及び火打ちの解体並びに搬出を行うこと。
ロ 長尺物を搬出する場合には、切梁間の間隔が狭いため、解体したものを堀削場所の端部に移動したうえで、つり上げること。
ハ 切梁及び火打ちの解体後に躯体(橋梁)に残った鋼材の突出部(切梁及び火打ちは、躯体内部を貫通している。)を溶断すること。
(4) 災害発生当日の出面は、次のようであった。
  [1] 元請け 現場代理人他1名
[2] 解体担当一次下請け(株)3名
 A(職長、移動式クレーンオペレータ)
 B(鋼材解体工、搬出時の合図者)
 C(被災者、鋼材搬出時の玉掛け及び鋼材の溶断)
[3] コンクリートはつり工等3名
(5) 4段目の切梁の残り2本及び火打ちの解体並びに搬出を行い、搬出作業に並行して躯体(橋梁)に残った鋼材の突出部の溶断作業を行った。
(6) 災害発生の加害物となった腹起こしは(6メートル)、長尺物であるため、当初の作業指示どおり腹起こしを移動させ、広い空間のある場所から搬出することになった。
 この腹起こしの解体作業は、腹起こしが落下しないように、移動式クレーンによってつった状態で行われた。そして、解体した腹起しは、いったん掘削床へつり卸された。このつり卸された腹起こしを地上につり上げるのに、上部三段の切梁が邪魔になるので、腹起こしから玉掛けワイヤロープをはずし、巻上げワイヤロープを巻上げ、切梁間の広い場所から巻上げワイヤロープを巻下げて、再度、腹起こしに玉掛けワイヤロープを取り付けた。
 その後、Cは東側のウイング部に残った解体後の火打ちの突出部の溶断作業を行うため、同作業箇所に向かった。(Cはこの位置で被災することになる。)
 Bは、Aに対してトランシーバーで腹起こしをつり上げるよう合図を行った。Aがクレーンの主巻を巻き上げたところ、斜めづりになっていたため、腹起こしが2.05メートルほど東側に急激に移動した。その結果、近くで作業を行っていたCの頭部に激突し、同腹起こしとウイング部との間に同部位が挟まれ、被災したものである。