この災害は、生コンクリートの製造プラントで発生したものである。
 このプラントは、1バッチ3,000m3(180m3/時間)の能力を持ち、前年に設置されたものである。
 製造プラントは、休日は運転が停止されることになっており、災害発生当日の前は3日間の連休で運転が中止されていたので、休日明けで出勤した製造・品質管理等を担当するA部長は、直ぐに製造プラントの機械設備の点検を行なったところ、骨材のホッパーの地下ピットに設置されている水中ポンプと車の洗車場の水中ポンプが異常であることが確認された。
 そこで、A部長は、午後1時頃から3時過ぎまで部下のB課長と係員の三人で、まず洗車場の水中ポンプの修理を行なった。
 この作業が終了した後、A部長は、一人で骨材ホッパーの地下ピットに入り、水中ポンプの修理作業を始めた。
 この水中ポンプは、地下ピット内に溜まる湧水を排水するために設置されているものであるが、コンクリートプラントのホッパーやコンベアからこぼれ落ちる砂等が混入するため、ポンプの損耗が激しく、設置後においても何度もインペラー(羽根車)やフード等の修理を行なっていた。
 この事業場では、通常、水中ポンプの修理を自社で行なっており、必要な部品もあらかじめ購入しておき、前回は10か月程前に行なっていた。
 災害発生当時の地下ポンプの修理は、インペラー等が損耗して吐き出し能力が低下していたので、インペラー等の交換をすることになり、午後3時半頃からはB課長も作業を手伝うため地下ピットに入った。
 この時、A部長は、水中ポンプを通常の据え付け位置である水の中からポンプを地下ピットの傾斜部分まで引き出して修理を行なっていた。
 B課長は、インペラー等の交換を行なっていたA部長の作業を30分程手伝って、一旦地下ピットを離れたが、手伝い作業中に水中ポンプのモーターオイルに水が混入して白濁していることを確認している。
 午後4時40分頃、B課長が再び地下ピットに行ったところ、A部長が地下ピットの底部の深さ20cm位の溜まり水の中に顔を漬けるようにして倒れ込み、水中ポンプが部長の身体の下で横倒しになっていた。
 B課長は、直ちにA部長を助けようとして身体に触れたところ、電気ショックを感じたので救出を中断し、一旦地下ピットを出て、水中ポンプの電源スイッチを切り、続いて、A部長が感電して倒れたことを事務所の他の社員等に知らせ、再び地下ピットに向かい救出活動を行なった。
 A部長は、救急車で病院に運ばれたがまもなく死亡した。
 なお、倒れていたA部長の服装は、作業ズボンの上につなぎの作業衣、保護帽、安全靴という姿であった。
 A部長が中心になって修理を行なっていた水中ポンプの状況等は、次のようになっている。
(能力等)
・ 三相200ボルト、水中型誘導電動機、定格出力0.75Kw、吐き出し量0.26/分、平成4年製造
(絶縁抵抗)
・ ポンプのフレームと給電配線との間の絶縁抵抗は、ゼロ
(配線・接地等)
・ 配電盤には、渦電流しゃ断器は接地されていたが、漏電しゃ断器は接地されていなかった。
 また、配線には4芯キャブタイヤケーブルが使用されていたが、配電盤の接地極には接続されていなかった。
 なお、事故後、修理状況を調査したところでは、水中ポンプ部分の修理のみで、ポンプ用モーター等電気部分については行なっていなかった。