この災害は、製油所構内にある廃水処理装置の廃水タンク内部補修工事のための準備作業中に、タンク内で爆発したものである。
 災害が発生した製油所は、石油タンカーで輸送された原油を、一旦原油タンクに入れ、そしてこの原油タンクから石油精製プラントに原油を送給し、蒸留工程、脱硫工程、改質工程、分解工程などを経て各種石油製品を製造している。
 製油所構内に設けられた廃水処理設備は、プラントの各工程から排出される廃水から環境汚染物質を除去するために必要な油水分離装置、溶存ガス除去装置、活性炭吸着装置などで構成されている。
 この廃水処理設備に、プラント内から排出される廃水がすべて集められ、廃水に含まれる油、アンモニア、硫化水素などの環境汚染物質を除去し、排水のBOD、CODなどをチェックして排水口から排水するものである。
 事故が発生した廃水タンクは、排水処理装置の処理量を一定量に保持するために、廃水の送給量を調整するためのストレージタンクである。
 廃水タンクに送り込まれる廃水は、プラント内の各製造施設から排出される廃水から、油水分離装置を経て油水分離されたものであり、硫化水素、アンモニアなどの可燃性ガスが含まれているものである。
 通常運転時の廃水タンク内は、上部60%が気体で占められ、残りの40%に油水分離された廃水が入っており、タンクの底部にはスラッジが堆積している状態である。
 廃水タンク内のガスの組成は、硫化水素が大半を占め、窒素、アンモニア、ヘキサンなどが若干含まれている。
 このプラントの毎年行われる定期修理工事の一部として、廃水処理設備の一部である廃水タンク(容量250m3)の補修工事が行われることになった。この補修工事は、廃水タンク内の掃除とタンク内壁のコーティングを更新するものである。
 定期修理工事は、製油所からA会社に元請として、約2ヶ月間の工期で発注された。A会社は、その仕事の一部をB社およびC社に請け負わせた。B社はさらにその一部を下請けに請け負わせており、この定期修理工事全体での請負形態は4次下請までとなっていた。
 災害発生当日の廃水タンク内は、すでに、排水処理装置の運転停止後、窒素ガスで自動シールの状態で、タンク内の廃水は抜き出されており、下部に沈殿したスラッジが残っている状態であった。
 災害発生当日、廃水タンクの補修工事の準備作業が午前9時に始まり、廃水タンクに附属している各閉止弁が閉じられ、タンク頂部にあるトップマンホールの蓋が開けられた。
 そして、タンク内部の残留廃水の状況を確認するために、タンク側面の下部にあるボトムマンホールの蓋を、3本のボルト止めの状態で15mmほど開いた。次いで、チェーンブロックを用いて蓋をつった状態で2本のボルトを外し、蓋が1本のボルトで止められた状態で反時計回りに15cmつり上げた。この状態で、製油所の担当者の指示を受けて、1次下請けのC社の作業員がタンク内部のスラッジの上面がボトムマンホールの最下部以下にあることを確認した。この確認作業を終えて、チェーンブロックでボトムマンホールの蓋をつったままの状態で、元の位置に戻した。
 その後、再度、製油所の担当者3名の立会いのもとで、先ほどと同様C社の作業員がチェーンブロックでボトムマンホールの蓋をつり上げて、タンク内部のスラッジの残量がボトムマンホールの最下部以下にきていることを確認した。
 廃水タンク内の残量を再確認した後、ボトムマンホールの蓋を元に戻したところ、「ゴー」という音がしたので、製油所の立会いをしていた3人とC社の作業員は逃げ出した。30mほど走ったところで、振り返ったところ、ボトムマンホールから白い煙とともに火が噴出しており、付近にいた関係請負人の作業員が、その爆風にあおられて被災したものである。