この災害は、フロンを製造する工場敷地内にある産業廃棄物処理場で、内容積200lのドラム缶に収められたプラントから排出された使用済みの乾燥剤を、工場敷地内にあるコンクリート製の産業廃棄物置場の汚泥置場に廃棄するため、ドラム缶に収められた乾燥剤を柄杓でトラクタショベルのショベルへ移し替える作業を行っているときに発生したものである。
 被災者が所属している企業は、この工場内に常駐構内下請として産業廃棄物の処理を請け負っているものである。その具体的な業務は、焼却炉の運転およびプラントから排出される産業廃棄物を受け入れて、工場敷地内にある産業廃棄物処理施設に運搬するなどが主なものである。
 産業廃棄物の処理の業務は、親企業の担当者Aが日勤で勤務しており、その者が請負業者への日常的な作業指示およびその進行状況の管理を行っている。
 請負業者の常駐者は、作業所長をトップに、3交代制の勤務形態を採り、1直3名の編成で各直にリーダーをおいている。そして、Aの指示により焼却炉の運転および産業廃棄物を受け入れて工場敷地内にある産業廃棄物処理場へ運搬するなどの日常的な作業を行っている。
 被補者は、3交代制勤務の一員として、直リーダーの指揮のもとに、産業廃棄物の処理を行うための焼却炉の運転および産業廃棄物を受け入れて、工場内にある産業廃棄物処理場へ運搬するなどの業務を担当していたものである。
 使用済みの乾燥剤は、フロン製造プラントの最終工程である脱水槽で使用されているものである。このフロン製造最終工程の脱水槽で使用される乾燥剤は、使用前は、ペレット状のものであり、その性状は一般に広く使われている乾燥吸着剤であって、水などの物質をよく吸着するものである。
 そして、この乾燥剤は脱水槽から定期的に取り出されるが、取り出される使用済みの乾燥剤は、脱水槽で吸着した水分などを含み汚泥状のものとなっている。
 取り出された使用済みの乾燥剤は、内容積が200lのドラム缶に収められるが、1回の取り出しにドラム缶4本を必要とする。そして、定期的に脱水槽から取り出された使用済みの乾燥剤は、産業廃棄物として処理される。
 ドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤は、直ちに工場敷地内にある産業廃棄物処理場のコンクリート製の汚泥置場に廃棄される場合と、しばらくの間、野積み場に放置されたまま保管されて後、汚泥置場に廃棄される場合とがあった。
 災害発生当日、親企業の日勤者Aから昼勤で勤務していた被災者に対して、工場敷地内産業廃棄物処理場の野積み場に約半年間保管されていた4本のドラム缶に収められてあった使用済みの乾燥剤を、コンクリート製の汚泥置場に廃棄するように指示があった。
 Aから指示を受けた被災者は、この指示によりトラクタショベルのショベルに、ドラム缶に収められた使用済みの乾燥剤を移し替えて、汚泥置場に運ぶことにした。そして、ドラム缶の乾燥剤の移し替えには、木製の柄に金属製の椀の付いた柄杓を使用することにした。
 この作業は、昼食後、被災者が一人で行うことになり、4本のドラム缶から乾燥剤をトラクタショベルのバケットに移し替え、被災者は車両系建設機械技能講習修了証を有していたので、自らトラクタショベルを運転して、汚泥置場に廃棄することにした。
 先ず、被災者は、Aの了解を得て、車庫にあったトラクタショベルを自ら運転して、ドラム缶が保管されている野積み場へ移動し、使用済みの乾燥剤をショベルへ移し替える準備を終えた。そして、1本目のドラム缶から乾燥剤をトラクタショベルのバケットへ柄杓で移し始めた。
 1本目の移し替えを終えて、さらに2本目のドラム缶からトラクタショベルのバケットへ乾燥剤を1本目と同様に、柄杓で移し始めたところ、ドラム缶の内部で「パチパチ」という音が聞こえた瞬間、ドラム缶内で突然爆発が起こり、ドラム缶は3つに千切れて飛び散っていた。