この災害は、アスファルトプラントを使用して道路舗装資材の製造を行なっている工場の骨材サイロで発生したものである。
 この工場では、工場長以下5名、A社からの出向労働者2名、B社等からの派遣労働者4名の計11名が働いている。
 災害発生現場は、工場内の骨材(砂利)サイロの頂頭部で、被災者はA社からの出向労働者Yである。
 地上で受け入れられた骨材(砂利)は、受け入れホッパーからベルトコンベア(急傾斜ベルコン、中継ベルコン)を経て骨材サイロの頂頭部に至る。そこには5基のサイロに骨材を投入するためのトリッパーベルコンが設置されている。
 トリッパーベルコンには、ベルトコンベアの両側に設けられたレール上を走行するトロリーホッパと呼ばれる装置があり、この装置によりベルトコンベア上の骨材をコンベア両側からのサイロに投下するようになっている。
 当日の午後5時前、通常の作業が終了し、アスファルトプラントの内部に残った骨材を骨材サイロに戻す作業を開始した。
 作業は、工場の製造担当者の指揮のもとに、出向労働者である被災者が管理事務所の操作盤により遠隔操作で行なった。
 まず、5号サイロ上部にトロリーホッパを停止させ、最も大きい砕石(5号砕石)をトリッパーベルコンから5号サイロへ投入した。
 次に、7号サイロに7号砕石を投入するため、7号サイロ上部にトロリーホッパを遠隔操作により移動させようとしたが、トロリーホッパが途中で停止した。
 そこで、被災者が骨材サイロの頂部に上って確認したところ、トロリーホッパを移動させるためのモーターとトロリーホッパの車輪を結ぶチェーンが外れていたので、工場の担当者とともに、作業標準に基づき事務所で保管していたキーで動力盤の施錠をした後、チェーンを掛け直し、再度動力盤のスイッチを投入したが、またチェーンが外れた。
 二人で再度、状況を確認したところ、トロリーホッパに設けられているモーターの変速機のシャフトが折れているのを発見したので、相談のうえ、とりあえずこのモーターを取り外しトロリーホッパを止め、ダンプホッパに残っている7号砕石は、5号サイロと隣の6号サイロの2基に投下することとした。
 これは、新しいモーターを当日中には購入できないためと、7号砕石はアスファルトプラント内の合材サイロから出るものであり、180〜200℃と高温のため貯蔵したままだとダンプホッパのベルトコンベアが損傷するおそれがあったためである。
 午後6時40分頃、担当者は、搬送ベルトコンベア及びトリッパーベルコンを稼動させることにし、被災者が骨材サイロの頂部のトリッパーベルコンの両側に設けられている通路にいることを確認し、かつ、同人にトリッパーベルコンを稼動させることを告げ、下に降りて動力盤を開けてスイッチを入れ、骨材受入れサイロ横の地上に設けられた骨材受入操作箱のスイッチを入れた。
 骨材受入操作盤のスイッチを入れてから、2〜3分後にトリッパーベルコンか非常停止したので担当者はその状況を確認するため、骨材サイロの頭頂部へ急いで戻ったところ、被災者が通路に横たわっていた。
 被災者には、意識があり、担当者に「挟まれた。」と言った。
 午後6時50分頃に被災者は救急車で病院に運ばれたが、午後8時58分に死亡した。
 被害者は、発見された時、頭を北方向に、顔面をベルトコンベアの方に向けて横たわり、履いていた安全靴の片方は6号サイロの骨材の上にあった。
 作業服には特に破れ、血痕等は認められず、ヘルメットも着用していたまであったが、前面に被災時の顔面の擦過傷によると思われる血痕が見られた。
 なお、担当者が、トロリーホッパの停止位置を事故直前に見たときは6号と7号サイロの中間であったが、事故後には6号サイロ上部となっていた。
 また、機械設備の修理作業は、製造担当者が指揮して、被害者以外の出向労働者と被災者(プラントオペレータ)の3名で行なうことが多かったが、他の者が休みのため2名で作業を行なった。