この災害は、工場改修工事のうち、塗装ブース他機械設備の解体撤去工事において、換気扇の取り外し作業中に発生したものである。
1 工事の概要
工場改修工事は、4月13日から開始されているが、大きくは、次の4つの工事に分かれていた。
[1]塗装工場を事務所に改修する工事
[2]研究棟の内装の改装工事
[3]研究室の内装の改装工事
[4]研究開発室、広告制作室の内装の改修工事
この中で[1]の改修工事はさらに次のような工事に区分されていた。
1)塗装ブース他機械設備の解体撤去工事
2)工場床面のピットの埋め戻し工事
3)給排水、空調、換気設備工事
この災害は1)の解体撤去工事において、換気扇の取り外し作業中に発生したものである。
2 施工請負関係と工事の管理体制
この工事の施工業者と工事管理の担当者は次のとおりであった。
[1]元請業者(元方事業者)・・・A建設建設事業部の主任が、発注者との調整及び現場の進捗状況等の工事管理を行っていた。
[2]一次下請(関係請負人)・・・械商店
解体事業部の作業員が、解体工事の進捗状況の管理及び現場の安全管理を行っていた。
[3]二次下請(関係請負人)...気解体工業
現場責任者(a)が解体工事の作業指揮を行っていた。
3 解体撤去工事の進捗状況
塗装ブース他機械設備の解体撤去工事については4月17日から開始され、主として気解体工業の現場責任者(a)他2名の作業員により行われていた。
災害発生当日の4月24日には、工場の壁に設置されていた換気扇の撤去、機械設備の撤去、工場床面に埋め込まれたレールの撤去が行われることになっていた。
4 災害発生当日の作業状況
当日、午前7時10分頃、(有)C解体工業の事務所に現場責任者(a)、作業員(b)(=被災者)及び作業員(c)の3名が集合し、会社の車で、現場である工場に向かい、7時50分頃到着した。
その後、この3名と械商店の作業員(d)の4名で作業開始前のミーティングを行い、当日の作業内容を確認した。また、械商店の作業員(d)から安全に関する注意事項の指示を受けたのち、4名は午前8時頃から作業を開始した。
現場責任者(a)と作業員(b)は、工場床面に埋め込まれていた扉のレールの撤去作業をベビーサンダー(カッター)を使って開始したが、作業開始後10分位で、カッターが熱を帯びてしまい、その作業を一時中断することになった。
5.換気扇の取り外し作業の状況と災害の発生態様
2人は工場内北側に置いてあった元請業者所有のローリングタワーを借用し、組み立て、取り外す予定の換気扇の設置されている工場の壁近くまで移動し、脚部のストッパーをセットした。
その後、2人はローリングタワーの最上部の作業床上にのぼり、工場に設置された換気扇の取り外し作業を開始した。
換気扇は、工場の壁に、12箇所、ボルトで固定されており、被災者が、工具を使ってこのボルトの取り外しを行っていたが、12個のボルトのうち、換気扇の右下の箇所のボルトが錆ついていたためか外れず、現場責任者と2人でこの換気扇全体を揺さぶり、ボルトの部分をネジ切ることにより、工場床面(約3.5m下)に落下させようとした。そこで被災者が換気扇を再度揺すり始めた。
現場責任者は、ローリングタワーが揺れ始めたので、ローリングタワーを降り、その南西部分の建地を支えていた。
換気扇を揺すり始めて1〜2分経った頃、被災者の「ああっ」という声と同時に、取り外そうとしていた換気扇が、被災者とともに工場床面上に落下した。現場責任者が換気扇の落下した箇所に近づいてみると、被災者がコンクリート床面に仰向けの格好で倒れていた。(図参照)
被災者は、事故直後は、倒れたまま呻いた状態であったが、その後自力で体を起こしたので、車で近くの脳神経外科医院に搬送したが、医師の判断で救急車を呼び、別の脳神経外科病院に転送し、治療を受けていたが4日後に脳挫傷のため死亡した。