この災害の直接的原因としては、
(1) 吊りチェーンの留め金具(ハイカップリング)が破断したこと
(2) 移動式クレーンでワイヤを吊り上げる際、吊り上げられたワイヤの下に労働者を立ち入らせたこと
 が挙げられる。
 呼び径6mmの吊りチェーンは破断試験荷重1.36トン、安全荷重0.27トンであり(JIS.F.3303参照)、また、吊りチェーンの留め金具(ハイカップリング)の破断荷重は4トン以上であることから、破断するのであれば吊りチェーンが先のはずである。しかし、災害発生時に吊りチェーンの留め金具がどの位置にあったかは不明であり、また、留め金具の破断して飛んだ部分は警察とともに探したが、発見されなかった。
 さらに間接的原因としては、留め金具が破断したときのクレーンの位置は、ジブの先端の高さが地面から15.2m、ジブの長さが16.6m、傾斜角56.9度、作業半径8.2m、補巻きのフックの高さが6.86mであった。(運転席内モニターによる。)
 警察の調査によれば、クレーン位置をジブの先端が地面から15.9m、ジブの長さが16.6m、傾斜角58.8度、作業半径7.2m、補巻きのフックの高さが6.86m(運転席内モニターによる)の状態にし、ワイヤをチェーンで三重巻きにしてフックにかけた状態で、荷重は154kgであった。その後補巻きを上げていったところ、荷重は2615kgまで上昇した(計測機器は「LOAD CELL 5t タイプLT5−TGKYOWA」)。このとき、運転席内のモニターに表示された値は3トンになり、警告音が鳴り赤色灯が回った。(災害発生時には警告の赤色灯は回っていなかったと移動式クレーンの運転士Bは述べている。)呼び径6mmの吊りチェーンは破断試験荷重1.36トン、安全荷重0.27トンである。
 従って、間接的な災害要因として、
(1) 移動式クレーンでワイヤを吊り上げる際に、呼び径の小さい吊りチェーンを使用したこと
(2) 特定元方事業者が、関係請負人に対して、移動式クレーンでの作業に係る労働者の配置についての指導を行わなかったこと
 が挙げられる。