この災害は、納入製品をユーザーへ配送するために、倉庫からトラックまでフォークリフトを使用して運搬中に積荷の荷崩れが生じ、その荷崩れを直す作業中に発生したものであるが、その原因としては次のことが考えられる。
1 直接的な原因
  [1] フォークリフトの運転席を離れる時は、フォークを最低下降位置に下げ、さらに、原動機を止め(キースイッチをOFF状態にする)る必要があるのにそのいづれも行わずに運転席を離れたこと。
[2] この会社においてはフォークリフトを使用する作業が常時あるにも拘わらず、フォークリフト運転の有資格者が1名のみであるため、たまたま運転の有資格者が不在の時に無資格者である被害者が運転したこと。
2 間接的な原因
  [1] フォークリフトの原動機キーが常時、付放し状態であり、運転の資格のないものでも使用され得る状態にあったこと。
[2] 倉庫内の照明が暗く、また、通路が狭い等フォークリフトを使用して安全に荷役運搬作業ができる作業環境でなかったこと。
[3] パレット上の積荷が、細長いロールで、しかも、4個の間隔が、運搬中に荷崩れが生じ易い不安定な状態で置かれていたこと。
 さらに、この災害を詳細に分析すると、次のような要因が考えられる。
〈不安全な状態〉
(1) パレット上の積荷が、細長いロールで、しかも、4個各々の間隔が、運搬中に荷崩れが生じ易い不安定な状態で置かれていたこと。
(2) フォークリフトの走行通路に製品の一部等が置かれており、走行を安全に行なえる通路幅が確保されてなかったこと。
(3) 倉庫内の照明が暗く、照度が低い状態での作業が行なわれたこと。
〈不安全な行動〉
(1) 運転席を離れる時は、フォークを最低下降位置に下げ、さらに、原動機を止めなければならないのにそのいづれも行なわずに運転席を離れたこと。
(2) フォークリフトの保管状態については、原動機のキーが付放しであり、また、保管場所も定まっていないため、作業指示者以外の者でも、容易に、フォークリフトが使用されるうる不安全な状態て放置されていたこと。
〈人(Man)〉
(1) 走行中に、積荷が運転席側に倒れてきたため、被災者は、積荷の落下による製品損傷を防止するため、走行を止め、積荷の荷崩れを修復しようと、荷役レバーとの接触による危険な位置から咄嗟に、行動したこと。
(2) キースイッチの「ON」と「OFF」状態を聴覚で判断したため、キースイッチがOFF状態にあるとものと錯誤したこと。
〈作業方法・環境(Media)〉
(1) パレット上に積み置かれた運搬物が、複数の小物で、荷崩れが生じ易い製品にも拘わらず、梱包等での固定がなされない状態で、フォークリフトによる作業方法が行なわれたこと。
(2) 荷崩れを修復する時の作業姿勢が、フォークリフトから降りないで、運転席から身を乗り出してして行なったこと。
〈管理(Management)〉
(1) フォークリフトの運転を無資格者に行なわせたこと。
(2) フォークリフトを使用しなければならない作業が、常時あるにも拘わらず、フォークリフトの運転が行える有資格者が一人しか配置せず、フォークリフトの運転が行える有資格者が不在の時は、無資格者が運転せざるを得ない状況であったこと。
(3) 作業計画書に、フォークリフトの運転者の名前が明記がなされてなかったこと。
(4) フォークリフトの原動機キーが常時、付放し状態であり、運転の資格のないものでも使用され得る状態にあったこと。