この災害は、ボーリング作業におけるロッドの継ぎ足し作業において連絡合図の不十分、作業状態の未確認、作業手順の不徹底などが原因である。
1 この災害での、作業手順は作業責任者Xが定めたものであったが、平成7年11月25日に、K会社社長より作業手順の変更について指示された。
 その作業手順は次の通りであった。
  [1] 前のロッドによる掘削作業が終了した。
[2] 親ロッド(6m×3本)を吊り上げ、親ロッドを固定する。次にやぐらの作業床上でウォータスイベルからワイヤにつながっている接続器をはずす。
[3] ボーリングマシンはスライドベース上を後退させ、ウォータスイベルからはずした接続機を次のロッドにつなぐ。
[4] 次の継ぎ足しロッド(6m×3本)を巻き上げる。
[5] 巻き上げたロッドを前の掘削中のロッドにつなぎ、ロッドから接続器をはずす。
[6] ボーリングマシンをスライドベース上で前進させ、やぐらの作業床で親ロッドのウォータスイベルに接続器を取り付ける。
[7] 親ロッドを継ぎ足しロッドにつなぎ、つなぎ確認の上、ボーリング運転者に合図し、掘削作業を開始する。
[8] [1]〜[7]を繰り返してボーリング作業が行われる。
2 災害発生時の作業手順との相違点
  [1] 一工程の掘削深さが6mから18mに変わった。
[2] 作業個所(親ロッドに継ぎ足しロッドをつなぐ場所)はボーリング作業台上でなく、親ロッドにつなぐ作業はやぐらに設けた作業床で行う。
 もう一人の作業者は地上にて次の継ぎ足しロッドをつなぎ作業をする。
[3] 当該作業に必要な労働者は2名を3名にしてあった。
[4] ロッドつなぎの際にボーリングマシンをスライドベースにより移動をすることによって、長いロッドの継ぎ足しができるようになった。
3 Xが災害時の古い作業手順により作業をした理由は、作業工程を短縮するためであった。
 新しい作業手順による作業をしなかった。
〈不安全な状態〉
[1] 作業位置は決められたやぐら上の作業床でなく、ウインチ上の作業台上であった。
[2] ウインチ上に設けた狭い場所の作業台には、高さ2m以上で手すりがなく、また、開口部には覆いや手すりが設けてなかった。
[3] 緊急のための連絡、合図が決めてなかった。
〈不安全な行動〉
[1] Xは、狭い場所の作業台上にある開口部に安全措置のないままで作業をした。
[2] Xが転倒したとき、その開口部に左足が落ちた。
[3] ウインチ運転者Yは連絡不十分のため、ワイヤーの巻き上げの合図があったものと誤解した。
[4] 作業手順を守らなかった。
〈人〉
[1] Xは現場責任者であり、作業手順を作成する立場にありながら、作業の短縮のため新しく決めた作業手順に従わなかった。
[2] ウインチ運転者Yは、作業台上の状態を確認しないで、ウインチを稼動させた。
〈機械・設備〉
[1] ロッドのつなぎが不十分なまま作業を開始した。
[2] 作業台に手すりもなく、開口部にはが覆い、手すりもなかった。
〈作業方法・環境〉
 特になし
〈管理〉
[1] 作業手順の周知徹底がされてない。
[2] 緊急の場合の連絡・合図等が決められていない。