この災害の直接原因は、ドラフトチャンバーIIで使用されたメチルエチルケトンの残りを、関連会社のCがチャンバーIの作業台にある酸類の廃液貯蔵容器の漏斗に誤って投入したため、この容器内で激しい化学反応がおこり、急激な圧力上昇によって容器が破裂し、内容物が分析室内に飛散したことによるものである。
 メチルエチルケトンは、労働安全衛生法で引火性の危険物に指定されているものであり、揮発性が大きく、極めて引火しやすいほか、酸化剤(ここでは硝酸)と接触すると激しく反応し発火する性質を持っており、廃液容器内への投入はその状況を作り出したものと考えられる。なお、災害発生後の分析室内の状況では、爆発火災の形跡は認められていないが、急激な反応による圧力上昇の過程で容器が破裂したものと考えられる。
 また、間接的な原因としては、分析室内で会社の職員と関連会社の職員が混在して作業を行なうようになっているが作業分担、安全管理体制等の面で不備があったものと考えられる。
 さらに、発生原因を詳細に検討すると次のようなことが考えられる。
〈不安全な状態〉
(1) 酸類の廃液貯蔵容器及びその格納容器の強度不足
(2) メチルエチルケトンを酸類の廃液貯蔵容器に投入した作業手順の誤り
(3) チャンバー外にあった薬品(メチルエチルケトン)の性状の事前不確認
〈不安全な行動〉
(1) メチルエチルケトンを酸類の廃液容器に投入した行為
(2) 危険物(メチルエチルケトン)の入っている容器の不用意な取り扱い
〈人(Man)〉
(1) 作業者の危険感覚の欠如
(2) 錯誤によるメチルエチルケトンの酸類の廃液容器への投入
(3) リーダーシップが不明な中での作業
(4) コミュニケーション不足による安易な作業の実施
〈機械・設備(Machine)〉
(1) 酸類の廃液貯蔵容器及びその格納容器の強度不足
(2) 誤投入を防止する装置の不備
(3) チャンバーの配置等誤投入を防止する対策の不備
〈作業方法・環境(Media)〉
(1) 作業情報の不足に基づく安易な作業の実施
〈管理(Management)〉
(1) 分析室の安全衛生管理体制の不備
(2) 関係会社の職員を含めた安全衛生管理の不備
(3) 作業手順の不徹底
(4) 分析室の安全衛生管理計画の不備
(5) 取り扱い薬品の危険有害性等の教育不足
(6) 異常事態発生時の対応・訓練不足
(7) 部下等に対する監督指導の不備