この災害は、鋳鋼製造工場にアルミニウム再処理工程を新設し、各設備の調整および試運転中に、アルミチップ研磨機用集じん機内でアルミニウム粉じんが爆発したものである。
 アルミニウム粉じん爆発は、微少な粉末の表面で酸化反応が起こると、酸化反応熱が大きいため粉末の加熱が有効に生じ、酸化物は溶融または気化し、新しい表面を露出すると同時に、内部から金属の蒸発も始まり、反応を促して大きい熱を発生し、さらにアルミニウムの蒸発が促進され、発火し、爆発しやすい粉じん雲に着火し発生するといわれれていることから、この災害の原因として、次のことが考えられる。
1 集じん機内に爆発下限界を越えた粉じんが浮遊していたこと。
 集じん機内は、0.5mm以下の異常に細かい粒子の粉じんを含む高濃度の粉じんがある中で、ろ布に付着した粉じんによる目詰まりを除去するためにコンプレッサーのエアーを、ろ布の排気側から一定時間ごとに吹き込まれていた。そのため、集じん機内では、粉じん雲が発生しやすい状態にあったこと。
2 次のような着火源が考えられること。
  (1) 研磨粉じんの発火
  [1] 爆発時には、トランジー、研磨機および集じん装置が稼働状態にあったこと。
[2] 研磨機内で高速回転するドラムの中に滞留するアルミチップ間の摩擦により研磨が行われるため、アルミチップ表面が最高約80℃、内部では約60℃に温度上昇し、研磨により表面が光沢を持つ活性化した粒径が24μm程度の極微細な粉じんを発生し、集じん機に吸引されていた。そして、この温度上昇した粉じんが、集じん機にいたるダクト内に堆積していた酸化アルミ粉じんを加熱し、発火したこと。
(2) 静電気の発生
  [1] 集じん機本体は接地されていたが、帯電防止用ろ布は金属製かご状の筒で覆われており、管板部でスプリングにより押さえ付けられているが確実な接地は確認されなかったこと。
[2] ダクトは、すみ肉溶接で加工され、総延長が97.6mに及んでおり、ダクト内部には著しい堆積および付着粉じんがあり、ダクト自体は、直接接地されていなかったこと。
 などから、ダクト内部または集じん機内での静電気の発生が推定されること。
 また、粉じん成分の分析結果を見ると、炭素系の粉じんの割合が、研磨工程で20%、ダクト内堆積粉じんで12%となっており、粉じん相互の接触による静電気放電の可能性も考えられること。
 その他この災害を詳細に検討すると、次のような要因が考えられる。
〈不安全な状態〉
(1) 集じん機、ダクトおよび帯電防止用ろ布の接地機能の確認がされていなかったこと。
(2) 集じん用ダクトが、分割して設置されていなかったこと。
(3) ダクト内の堆積粉じんを除去するための手段として、掃除口などが設けられていなかったこと。
〈不安全な行動〉
(1) 集じん機ホッパー内の堆積粉じんは、ホッパー下部に設けられているロータリーバルブにより、粉じんミキサーへ連続排出されて、注水されて練り固められるものであるが、注水が行われていなかったこと。
〈人の面の要因〉
(1) 作業者に、アルミニウム粉じん爆発の危険性に関する意識が低かったこと。
〈機械・設備の要因〉
(1) 集じん機およびダクトが系列別、目的別に設けられていなかったこと。
〈作業方法、作業環境面の要因〉
 堆積粉じんに対する清掃基準などが、定められていなかったこと。
〈管理面の要因〉
(1) 新規事業であるアルミニウム再生処理工程の新設に当たって、安全衛生に関する十分なアセスメントが行われなかったこと。
(2) 作業員に対して、アルミニウム粉じん爆発に関する安全衛生教育が行われていなかったこと。
(3) 安全に関する作業標準が、キメ細かく整備されていなかったこと。