この災害は、アセチレンガスと酸素を用いて、鉄板を加熱しながら曲げ加工の作業を始めるために、アセチレンガス溶接用吹管に点火用ライターで点火したところ、漏洩したアセチレンガスが爆発したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
1 ブルーワーク製作のため、ガス溶接用アセチレン吹管によって、鉄板を加熱して曲げ加工する燒鉄作業を屋外作業場で行う予定であったが、寒さが厳しいため、作業者の一存で換気の悪い屋内作業場で行ったこと。
2 定盤上に矢という木製の三角錘の台を置き、その上に鉄板を置いて曲げ加工を行っていたため、鉄板と定盤との間に隙間を生じ、漏洩したアセチレンガスが滞留しやすくなったこと。
3 休憩時間に入るときの作業中断の際に、ガス溶接用アセチレン吹管の調整ネジを確実に締めることなく、定盤上に放置したこと。
4 作業者が、アセチレンガスの爆発混合気体が形成されている戸は知らずに、ガス溶接用アセチレン吹管に点火したこと。
5 可燃性ガスおよび酸素を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の業務を行う者に必要なガス溶接作業主任者免許を受けた者またはガス溶接技能講習を終了した者でないものに、ガス溶接用アセチレン吹管による鉄板の加熱の作業を行わせたこと。
6 作業の危険性に対応した、作業指示、作業管理を行うための体制が不十分であったこと。
その他、この災害を詳細に検討すると、次のような要因が考えられる。
〈不安全な状態〉
(1) 作業性を考えて、鉄板の下に矢を噛ませたため、アセチレンガスが滞留しやすい隙間を形成したこと。
(2) 喚起、通風の悪い屋内作業場であったこと。
(3) 溶接用アセチレンガス吹管のガス調節ネジにガタがあったか、作業中断の際に閉め残しがあったため、アセチレンガスが漏洩していたこと。
(4) 溶接用アセチレンガス吹管とガスホースとの接続部が、十分に締め付けられていなかったこと。
〈不安全な行動〉
(1) 溶接用アセチレン吹管のアセチレンガス調節ネジを、作業中断の際に確実に閉めなかったこと。
(2) 作業中断の際に、アセチレン吹管を加工鉄板近くの定盤上に放置したこと。
〈人(Man)〉
(1) 場所を変えて作業を行うに際して、責任者の指示を受けなかったこと。
(2) 作業に必要な資格を、有していなかったこと。
〈機械・設備(Machine)〉
(1) 溶接用アセチレンガス吹管の点検整備が不十分であったため、アセチレンガス調節ネジにガタがあったこと。
(2) 吹管とゴムホースとの接続部に、所定のゴムホースバンドを使用していなかったため、締め付けが不十分であったこと。
〈作業方法・環境(Media)〉
(1) 危険物であるアセチレンガスを使用して行う作業場所の通風、換気が不十分であったこと。
〈管理(Management)〉
(1) 作業手順に関する安全教育がほとんど行われていなかったこと。
(2) 作業の危険性に対応した、作業指示、作業管理を行うために必要な作業責任者の配置がされず、安全管理を行うための管理体制が不十分であったこと。
(3) 危険物を取り扱う作業の変更時に関する手順が定められていなかったこと。
(4) 作業開始から、作業途中および作業終了後における、アセチレンガスの危険性に対処するための作業手順が定められていなかったこと。
(5) アセチレンガス吹管、ゴムホース等に係る定期的な点検、作業開始前の点検が実施されていなかったこと。
(6) 資格を必要とする作業に従事する者に対する資格をチェックする管理体制が無かったこと。