この災害は、フォークリフトを使用して荷の運搬作業中、フォークリフトが後進し門柱に激突したため転倒し、投げ出された運転者がフォークリフトと地面との間に挟まれものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。
この災害の直接の原因は、フォークリフトを使用してトラックからの荷下ろし作業中にフォークリフトが傾斜路面を急に後進し、門柱に激突して転倒したことにあるが、フォークリフトが急に後進し転倒した原因としては、次のようなことが想定される。
[1] フォークリフトでの作業位置が傾斜地あったにも拘わらず、駐車ブレーキを掛けずに、積荷との高さ調整を行うために、ベールクランプを上昇させたこと。
[2] 走行操作レバーは、運転席の右側から順に前後進レバー、1〜2速レバーと配置されているが、製造年月、製造メーカーによっては、その配置が逆の場合があり、前進レバーを入れたつもりが、1〜2速レバーに入ってしまったこと。
[3] トルコン車には、ブレーキペダルが2個装着されており、1個は通常の走行時の制動時に使用し、他の1個は荷の積込み、積卸し時にアクセルペダルを踏込んでエンジン回転を上昇させた時でも車体の制動が可能なように使用されるが、インチングペダルの装着位置がクラッチ車のクラッチペダルと同じ位置にあるため、被災者が下り坂で後進し始めたので制動しようとしてインチングブレーキペダルのつもりで、クラッチペダルを操作してしまったこと。
間接的な原因としては、トラックの駐車場所の路面が傾斜地であったこと、フォークリフトの運転を有資格者でないものが行ったこと等があげられる。
さらに、この災害を詳細に分析すると次のような要因が考えられる。
〈不安全な状態〉
(1) インチングブレーキペダルとクラッチペダルの位置が適切でないこと。
(2) トラックの駐車場所の路面が傾斜地であったこと。
(3) トラックから荷下ろしするためのフォークリフトの位置から、フォークリフトが後進し転倒した位置までの路面の傾斜状態は約3乃至8度の下り勾配であったこと。
〈不安全な行動〉
(1) 作業位置が傾斜地であったにも拘わらず、駐車ブレーキをかけなかったこと。
(2) 作業位置が傾斜地であったにも拘わらず、確認せずに荷下ろし作業を行なったこと。
(3) 不慣れなフォークリフトの運転操作を行ったこと。
〈人(Man)〉
(1) 作業場所の状況を確認せずに次の動作を無意識に行なったこと。
(2) 作業者に危険感覚が欠如していたこと。
(3) トラックの運転、フォークリフトによるトラックからの荷下ろし業務と長時間労働で心身が疲労していたこと。
(4) 荷下ろし作業に関するコミュニケーションが十分でなかったこと。
〈機械(Machine)〉
(1) インチングブレーキペダルとクラッチペダルの位置についての設計が適切でないこと。
(2) ペダルの踏違い防止措置等本質的安全化対策が不十分であったこと。
〈作業方法(Media)〉
(1) 会社から作業方法等が明確に指示されず、また、荷の受け取り会社でも作業方法についての十分な説明がなかったこと。
(2) 傾斜地での作業等作業方法が適切でなかったこと。
〈管理(Management)〉
(1) 会社に安全管理体制がなかったこと。
(2) フークリフト作業における作業手順が明示されなかったこと。
(3) フォークリフト作業における作業指揮者が選任されていなかったこと。
(4) フォークリフト作業があるのに無資格者を派遣したこと、また、機械の貸与に際し資格の有無を確認しなかったこと。