この災害は、8階建てのビル建設工事において、7階の床版にコンクリート打設作業中発生したものであるが、その原因としては次のようなことが考えられる。
(1)現場でのフェローデッキを取り付ける工事の段階で施工上の不備があり、フェローデッキの強度に欠陥が生じたこと
今回災害のあったフェローデッキによる床版工事は、それぞれの建築工事の床版の寸法に合わせてフェローデッキ製造業者に発注され、専門工場で設計製作されてから現場へ納品されるものである。
現場での床版工事は、施工業者が現場でフェローデッキの取り付け工事を行ったあと、コンクリートの打設作業が行われるようになっている。
そのため、この現場での取り付け工事の段階で施工状況に不備があれば、フェローデッキの強度上の欠陥となって、フェローデッキ全体の構造物の崩壊の原因となることも考えられる。
この災害で崩落したフェローデッキの一部に、鉄板をトラス主筋に吊っている吊材と鉄板との溶接箇所の一部に外れている箇所があったが、これがいつ外れたものであるかは断定できない。
また、フェローデッキの施工要領書等では、デッキ全体のずれ止めのために主筋と直交してタイバー筋を渡し、このタイバー筋とフェローデッキの上端主筋とを溶接止めすることと記されているが、災害発生箇所を含めて、この現場では溶接止めは行われていなかった。
(2)製作工場でのフェローデッキの製造段階で、製品の一部に溶接上の欠陥がある等フェローデッキに強度上の不備な個所があったこと
フェローデッキは、専門の製造業者に発注され、そこで設計製作されるものであるが、そこでの製造工程等において、検査漏れ等があって製品の一部に欠陥があるものが現場に搬入されたような場合には、それが原因でフェローデッキ全体の構造物が崩壊することも考えられる。
(3)作業中に何らかの大きな衝撃荷重がかかり、フェローデッキで構成されている構造物の一部等が破損したこと
コンクリート打設作業中に、何らかの理由でフェローデッキに大きな衝撃荷重がかかり、構造物の一部が破損する等がきっかけで全体が崩壊したことも考えられる。
その他この災害を詳細に検討すると、次のような要因が可能性として考えられる。
〈不安全な状態〉
(1)フェローデッキの溶接が不適切であったこと
(2)コンクリ−ト打設後の不安定な場所での作業に防護措置がなかったこと
(3)コンクリ−ト打設直後に大人数をのせた作業手順の誤り
(4)フェロ−デッキの状態を事前に確認しなかったこと
〈不安全な行動〉
(1)デッキの落下に対する防護措置がなかったこと
(2)デッキ上の積載荷重が大きかったこと(3)危険場所に不用意に乗ったこと
(4)デッキの支え方の誤り
〈人(Man)〉
(1)危険感覚の欠如BR>
(2)作業場所の条件が異なるのにもかかわらず安全と考えたこと
(3)リ−ダ−シップがとられていないこと
〈械・設備(Machine)〉
(1)フェロ−デッキの設計が不適切であったこと
(2)フェロ−デッキの支持・防護が不十分であったこと
〈作業方法・環境(Media)〉
(1)フェロ−デッキについての情報が不十分であったこと
(2)フェロ−デッキ上での作業方法が不適切であったこと
〈管理(Management)〉
(1)安全管理体制の不備
(2)作業マニュアルがなかったこと
(3)部下の作業を監視していなかったこと