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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
メタクリル酸ノルマル−ブチル
作成日 2008年11月04日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称メタクリル酸ノルマル−ブチル
化学品の英語名称Methacrylic acid n-butyl
製品コードR03-C-066-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限塗料用樹脂原料として主にアクリル樹脂の原料、感光性樹脂・接着剤・繊維処理剤・紙加工剤・潤滑油添加剤・金属表面処理剤・MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン) 樹脂改質剤等の原料、化粧品原料/可撓性樹脂・紙コーティング材原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性引火性液体区分3
健康に対する有害性皮膚感作性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分3(気道刺激性)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分2(脾臓)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分2
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語警告
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による脾臓の障害のおそれ
水生生物に毒性
注意書き
 安全対策熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名メタクリル酸ノルマル−ブチル
慣用名又は別名n−ブチル=メタクリラート
英語名Methacrylic acid n-butyl
n-Butyl methacrylate
2-Methyl-2-propenoic acid butyl ester
2-Propenoic acid, 2-methyl-, butyl ester
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C8H14O2 (142.2)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号97-88-1
官報公示整理番号(化審法)2-1039
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
火傷したときは、直ちに患部を冷水でできるだけ長く冷やす。患部に衣類が張り付いていれば、脱がさない。
多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合多量の水で洗い流す(できればコンタクトレンズをはずす)。
飲み込んだ場合口をすすぐ。 吐かせない。 医療機関に連絡する。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咽頭痛。咳。息切れ。
皮膚:発赤。
眼:流涙。充血。痛み。
経口摂取:咳。咽頭痛。胃痙攣。吐き気。
短期曝露の影響:催涙性。本物質は、眼、皮膚および気道を刺激する。 飲み込むと嘔吐することがあり、誤嚥性肺炎をおこすことがある。 医学的な経過観察が必要である。
長期または反復曝露の影響:反復または長期の接触により、皮膚感作を引き起こすことがある。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項適切な空気呼吸器、防護服を着用する。
医師に対する特別な注意事項医師が暴露物質名を知り、防護のための注意を払うことを確認する。

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災
・粉末消火剤、二酸化炭素、散水または一般の消火剤。
大火災
・散水、水噴霧または一般の泡消火剤。
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性引火性。 加熱して分解すると、刺激的な煙を放出する。火災または爆発の危険を生じる。
特有の消火方法タンク、貨車あるいはタンク車が火災に巻き込まれた場合は、すべての方向に、適切な隔離距離と適切な初期避難距離をとる。
容器内に水を入れてはいけない。
火災後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火水をせき止め、後で廃棄する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消化する。
大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
必要により、風下に適切な避難距離をとる。
すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
環境に対する注意事項環境への放出を避けること。
排水溝、下水溝、地下室や閉鎖場所への流入をを防ぐ。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏洩物を取り扱うとき、用いるすべての設備は接地する。
漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
危険でなければ、漏れを止める。
蒸気抑制泡は蒸気濃度を低下させるために用いる。
乾燥した土、砂や不燃物質で吸収させ、あるいは覆って容器に移す。
吸収したものを集めるとき、きれいな帯電防止工具を用いる。
大量の漏れ
液体漏洩物の前方にせきを作り、後で廃棄する。
散水は蒸気濃度を低下させる;しかし、密閉空間では発火を防止できないおそれがある。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
安全取扱注意事項熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
50℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。流動、撹拌などにより、静電気が発生することがある。加熱や湿度、酸化剤、光の影響下で、重合することがある。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)未設定
ACGIH(2022年版)未設定
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度及び物質に対応した吸収缶を使用する
-作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特異臭、エステル臭
融点/凝固点-50 ℃(ICSC(2009))
-75 ℃(GESTIS(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲163 ℃(ICSC(2009)、GESTIS(2022))
160 ℃(PubChem(2022))
326.3〜338.9 °F(760 mm Hg )(PubChem(2022))
可燃性引火性(ICSC(2009))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界1〜8 vol%(空気中)(ICSC(2009))
0.96〜8 vol%(GESTIS(2022))
引火点50 ℃(Closed cup)(ICSC(2009)、GESTIS(2022))
52 ℃(Open cup)(PubChem(2022))
自然発火点290 ℃(ICSC(2009)、GESTIS(2022))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 0.08 g/100ml(25℃)(非常に溶けにくい)(ICSC(2009))
水: 360 mg/l(25℃)(GESTIS(2022))
エチルエーテル、エタノールに易溶(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 2.26〜3.01(ICSC(2009))
Log Kow: 2.88(GESTIS(2022))
蒸気圧0.3 kPa(20℃)(ICSC(2009)、GESTIS(2022))
2.12 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度0.9 (水=1)(ICSC(2009))
0.89 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
0.8936 g/cu cm(20℃)(PubChem(2022))
相対ガス密度4.9 (空気=1)(ICSC(2009))
4.91 (同じ温度と圧力での乾燥空気に対する密度の比率)(GESTIS(2022))
4.8 (空気=1)(PubChem(2022))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられる。
危険有害反応可能性引火性。50℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。流動、撹拌などにより、静電気が発生することがある。加熱や湿度、酸化剤、光の影響下で、重合することがある。 火災または爆発の危険を生じる。加熱して分解すると、刺激的な煙を放出する。
避けるべき条件熱、湿気、光
混触危険物質酸化剤、アミン、過酸化物、重合開始剤、硫黄化合物、重金属
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (OECD TG 401) (SIDS (2009)、ECETOC JACC (1997))、> 3,200 mg/kg (ECETOC JACC (1997))、16,000 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、ECETOC JACC (1997))、17,900 mg/kg (SIDS (2009)、ECETOC JACC (1997))、18, 020 mg/kg、18,561 mg/kg (ECETOC JACC (1997))、22,600 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、16,000〜22,600 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分に該当しないとした。
経皮ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (OECD TG 402) (SIDS (2009)、ECETOC JACC (1997))、10,181 mg/kg (ECETOC JACC (1997))、11.3 mL/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、11,300 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、10,181〜11,300 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミストラットの4時間吸入試験 (OECD TG 403) の結果、およその致死濃度 (ALC値) として、29 mg/Lとの報告 (SIDS (2009))、及びラットのLC50値 (4時間) として、19.7 mg/L (ECETOC JACC (1997))、28.6 mg/L (環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2009)) との報告に基づき、区分に該当しないとした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (17.2 mg/L) の90%より高いため、ミストが混在するものとして mg/L を単位とする基準値を適用した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG404) において、本物質0.5mLを4時間、半閉塞適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) や、刺激性は軽度であったとの報告がある (SIDS (2009))。他にもウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質を4時間、半閉塞適用した結果、認められた刺激性は軽度であったとの報告が複数ある (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2009)、ECETOC JACC (1997))。以上より、区分に該当しない (国連分類基準の区分3) とした。テストガイドラインに従った試験の報告に基づき、区分を変更した。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。旧分類に記載のある、1981年以降のガイドライン準拠データは確認できなかっため分類に用いなかった。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405) において、本物質適用による刺激性はみられなかったとの報告が2報ある (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2009))。その他、ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度の刺激性及び強度の刺激性が報告されているが (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2009)、ECETOC JACC (1997))、試験法等の詳細は不明である。以上、テストガイドラインに準拠した試験をもとに区分に該当しないとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on December 2015))。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022)にて感作性知見が公表されたため、旧分類から皮膚感作性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)マウス(n=5/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は2.19(25%)、3.28(50%)、5.41(100%)、EC3値は43.6%と算出されたとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。

【参考データ等】
(2)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのばく露歴のあった皮膚炎患者243名を対象として、2%の濃度でパッチテストが実施され、6名(2.5%)に陽性反応がみられたとの報告がある(MOE 初期評価(2013)、REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
(3)皮膚炎患者542名に1%濃度の本物質でパッチテストを実施した結果、1名に陽性反応がみられたが、この患者は過去にアクリル系ペイントを使用していた履歴があり、それとの関連が考えられた(MOE 初期評価(2013)、REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
(4)アクリレート類にばく露されたヒトに対して、本物質のパッチテストを実施したところ、極めて少数例で陽性反応がみられ、本物質の弱い皮膚感作性が確認された(AICIS IMAP (2014)、SIAP (2004), Canada CMP Screening Assessment (2018))。
(5)接触性皮膚炎の疑いのある患者347名を対象にパッチテストを実施した結果、本物質2%の濃度に対し1名(0.3%)で陽性反応がみられた(REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
(6)(メタ)アクリレート類へのばく露歴がある331名を対象として、2%の濃度でパッチテストが実施され、2名(0.6%)が陽性反応を示したとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
(7)モルモット(n=5)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:5%溶液)において、惹起後24時間後及び48時間後の陽性率は、それぞれ80%(4/5例)、40%(2/5例)であったとの報告がある(REACH登録情報 (Accessed Jan. 2022))。
(8)DFGではShに分類されている(List of MAK and BAT values (2020))。
(9)ECHAではSkin Sens. 1に分類されている(CLP分類結果 (Accessed Jan. 2022))。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により区分に該当しないが選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性 (NITE初期リスク評価書 (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2015)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2009))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2015)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、SIDS (2009))。
発がん性データ不足のため分類できない。
生殖毒性ラットを用いた経口経路による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物に一般毒性 (体重増加抑制、摂餌量減少、脾臓赤脾髄の萎縮等) が発現した1,000 mg/kg/dayで、雌親動物に黄体数及び着床数の減少 (着床率は不変) が認められたが、雄親動物の生殖能、及び児動物に影響はみられなかった (SIDS (2009)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2015)、環境省リスク評価第11巻 (2013))。また、妊娠雌ラットに本物質を妊娠6〜20日まで吸入ばく露した発生毒性試験では、母動物に300 ppm以上で体重増加抑制、1,200 ppmで摂餌量低下が、胎児には600 ppm以上の雌、1,200 ppmの雄にそれぞれ体重の低値がみられたが、催奇形性はみられなかったと報告されている (SIDS (2009)、環境省リスク評価第11巻 (2013))。
以上、実験動物での既存知見からは分類根拠とすべき明確な発生毒性の証拠はなく、経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験では限度量投与で雌に黄体数・着床数の減少がみられた。この所見は病理組織学的検査結果より、卵巣の卵胞形成に異常はなく、排卵に関連した何らかの影響と推察されたものの、雌親動物の出産率、妊娠期間、哺育状態に影響はなかったとの記述 (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2015)) から、少なくとも生殖影響として分類の根拠とすべき所見ではないと判断した。この他、分類に利用可能なデータはなく、データ不足のため本項は分類できないとした。再分類では、ガイダンス又は情報源の見直しにより、区分を変更した。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は気道刺激性がある (ECETOC JACC (1997)、HSDB (Access on November 2015)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012))。ヒトの吸入ばく露で、咳、息切れ、咽頭痛、経口摂取で腹痛がみられる (環境省リスク評価第11巻 (2013))。実験動物では、区分を付けられる知見はない。以上より、区分3 (気道刺激性) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトに関するデータはない。
実験動物では、ラットを用いた14日間反復経口投与毒性試験において区分2の範囲である500 mg/kg/day (90日換算値:77.8 mg/kg/day) の雄でヘマトクリット値の減少がみられ、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において区分2の範囲である100 mg/kg/day (90日換算値:48.9 mg/kg/day) の雄で脾臓の絶対及び相対重量減少、髄外造血の減少による赤脾髄の萎縮がみられた (環境省リスク評価第11巻 (2013)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on November 2015))。 ラットを用いた4週間の吸入毒性試験では区分2の範囲内で影響はみられていない (環境省リスク評価第11巻 (2013))。
以上のように、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において区分2の範囲で脾臓への影響がみられた。なお、14日間試験の結果は分類の基準を満たす程度の毒性ではないことから分類根拠としなかった。
したがって、区分2 (脾臓) とした。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on November 2015) に収載された数値データ (粘性率: 3.116 mPa・s (21 ℃)、密度: 0.8936 g/cm3 (20 ℃)) より、動粘性率は3.486 mm2/sec (21/20 ℃) と算出される。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)魚類(メダカ)96時間LC50 = 5.57 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008、SIDS, 2009、環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(28日間でのBOD分解度=88%、GC分解度=100%(通産省公報, 1997))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (繁殖) = 1.1 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008、SIDS, 2009)であることから、区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(メダカ)96時間LC50 = 5.57 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008、SIDS, 2009、環境省リスク評価第11巻, 2013)であるが、急速分解性があり、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 2.88(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分に該当しないとなる。
以上から、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2227
品名(国連輸送名)メタクリル酸ノルマルブチル(安定剤入りのもの)
国連分類3
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*130P
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)( 令和4年度分までの対象)
第二種指定化学物質(法第2条第3項、施行令第2条別表第2)(令和5年度分以降の対象)
毒物及び劇物取締法該当しない
消防法第4類 引火性液体 第二石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
大気汚染防止法揮発性有機化合物対象外物質(法第2条4項、施行令第2条の2)
海洋汚染防止法有害液体物質(Z類物質)(施行令別表第1)
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」