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安全データシート
テトラエチルチウラムジスルフィド(別名:ジスルフィラム)
作成日 2002年3月12日
改訂日 2006年9月15日
改訂日 2019年3月15日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称テトラエチルチウラムジスルフィド(別名:ジスルフィラム)
製品コードH30-B-003-MHLW
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限有機ゴム薬品(加硫促進剤)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H31.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性皮膚感作性区分1
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(神経系、腎臓)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(神経系、心血管系、甲状腺、消化管、肝臓)
分類実施日
(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性水生環境有害性(急性)区分1
水生環境有害性(長期間)区分1
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示感嘆符健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系、腎臓の障害
長期にわたる又は反復ばく露による神経系、心血管系、甲状腺、消化管、肝臓の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱い後は...よく洗うこと。
この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激または発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
特別な処置が必要である (このラベルの...を見よ)。注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣服を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当を受けること。
気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性-

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名テトラエチルチウラム=ジスルフィド
別名ジスルフィラム
テトラエチルチウラムジスルフィド
1,1'-Dithiobis(N,N-diethylthioformamide)
bis-(N,N-Diethylthiocarbamoyl)disulfide
Disulfiram
TETD
Tetraethylthiuramdisulfide
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C10H20N2S4 (296.52)
化学特性 (示性式又は
構造式)
構造式
CAS番号97-77-8
官報公示整理番号
(化審法)
2-1820
官報公示整理番号
(安衛法)
-
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
-

4.応急措置「2.危険有害性の要約」における応急措置も確認すること。
吸入した場合情報なし
皮膚に付着した場合多量の水かシャワーで、皮膚を洗い流す。
眼に入った場合数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。
飲み込んだ場合口をすすぐ。 水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。 医療機関に連絡する。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状錯乱。 頭痛。 吐き気。 嘔吐。
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項本製品にはアルコール忌避作用があるため、いずれの場合にもアルコールを含有する飲み物を与えてはならない。

5.火災時の措置
消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、泡消火薬剤、二酸化炭素を使用する。
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性火災によって刺激性、腐食性又は毒性のガスを発生するおそれがある。
加熱により容器が爆発するおそれがある。
熱で容器が爆発するおそれがある。
特有の消火方法危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
大火災の場合、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合には、その場所から避難し、燃焼させておく。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び
緊急措置
個人用保護具:空気中濃度に応じた粒子用フィルター付マスク。
この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
こぼれた物質を密閉式容器内に掃き入れる。
残留分を注意深く集め、安全な場所に移す。
粉塵の拡散を防ぐ。
この物質を環境中に放出してはならない。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
密閉系、粉塵防爆型電気設備および照明。粉塵の堆積を防ぐこと。
帯電を防ぐこと。(例えばアースを使用)。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
容器は丁寧に取扱い、取り付け作業等では漏えいに注意する。
使用後はバルブを完全に閉め、口金キャップを取り付け、保護キャップを付ける。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策作業中は飲食、喫煙をしない。
保管
安全な保管条件強酸化剤から離しておくこと。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
安全な容器包装材料破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2019年度版)未設定
ACGIH(2019年度版)TLV-TWA: 2 mg/m3
設備対策この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
ばく露を防止するため、装置の密閉化又は防爆タイプの局所排気装置を設置すること。
保護具
呼吸用保護具換気、局所排気、または呼吸用保護具を使用する。
手の保護具取扱う化学物質に適した、耐劣化性、耐透過性の保護手袋を着用する。
眼の保護具安全眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて保護衣、保護エプロン等を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状固体(結晶)
無色、黄白色
臭い無臭
臭いのしきい(閾)値情報なし
pH情報なし
融点・凝固点70 ℃(Merck (2013)、SAX'S (2000))
71 ℃(ICSC (2002))
71〜72 ℃(HODOC (1989))
沸点、初留点及び沸騰範囲117 ℃(HODOC (1989)、ICSC (2002)、SRC)
引火点情報なし
蒸発速度(酢酸ブチル=1)情報なし
燃焼性(固体、気体)情報なし
燃焼又は爆発範囲情報なし
蒸気圧0.00000661 mmHg(25 ℃、推測値)(SRC)
蒸気密度情報なし
比重(相対密度)情報なし
溶解度水: 4.09 mg/L(25 ℃、実測値)(SRC)
水: 0.02 g/100mL
その他の情報: アルコール、エーテル、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、二硫化炭素に可溶(Merck (2013))
n-オクタノール/水分配係数log Kow = 3.88(実測値)(SRC)
log Kow = 3.9(ICSC (2002))
自然発火温度情報なし
分解温度情報なし
粘度(粘性率)情報なし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性通常の取扱いにおいては安定。
危険有害反応可能性通常の取扱いにおいては安定。
避けるべき条件高温、加熱。粉末や顆粒状で空気と混合すると、粉じん爆発の可能性がある。
混触危険物質情報なし
危険有害な分解生成物加熱や燃焼により分解し、一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの有害なガスを生じる。

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(6)より、区分4が1件、区分外(国連分類基準区分5)が3件、区分外が2件該当する。よって件数の多い区分外(国連分類基準区分5)とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50値:8,600 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)、NTP TR166(1979))
(2)ラットのLD50値:4,573 mg/kg(雌)(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))
(3)ラットのLD50値:>5,200 mg/kg(雄)(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))
(4)ラットのLD50値:1,300 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993))
(5)ラットのLD50値:2,500 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993))
(6)ラットのLD50値:3,100 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993))
経皮【分類根拠】
(1)より、区分外とした。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50値:>2,000 mg/kg(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))
吸入:ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、蒸気圧は0.116 Pa(Howard(1997)、推定値)で、わずかに昇華性がある。
吸入:粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
本物質は皮膚刺激性を示さないとする証拠(1)〜(4)より、区分外とした。

【根拠データ】
(1)製造事業所の労働者へのばく露により酩酊様の影響が見られたものの、皮膚への刺激は発汗時に一般的に見られるものでもあり、全体の9%にしか微小な皮膚刺激性がみられず、ばく露量も特定できなかったとの報告がある(ACGIH(7th, 2001))。
(2)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、n=6)で本物質を4時間適用したところ、PII(皮膚一次刺激指数)は0.13(最大8)だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))
(3)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、GLP準拠)で本物質を24時間適用したところ、Draizeスコア(紅斑)は0.25だが3日で完全に回復、Draizeスコア(浮腫)は0だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。
(4)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、GLP準拠)で本物質を24時間適用したところ、Draizeスコア(紅斑)は0.96だが7日で完全に回復、Draizeスコア(浮腫)は0だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2)より、区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、新たな情報源を用いることで、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG405相当、n=6、GLP準拠)で本物質を適用したところ、24〜72時間の平均Draizeスコアは角膜混濁で0(6/6匹)、虹彩炎で0.33(2/6匹)であり、7日で完全に回復したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。
(2)ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405相当、n=6)で本物質を適用したところ、24〜72時間の平均Draizeスコアは角膜混濁で0.17、虹彩炎で0.17、結膜発赤で0.94、結膜浮腫で0.67であり、7日で完全に回復したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(5)より、本物質はヒトに対して皮膚感作性を有すると考えられるため、区分1とした。なお、新たな情報源を用いることで、旧分類から区分を変更した。

【根拠データ】
(1)ジスルフィラム錠を取り扱った40歳女性看護師の前腕と顔面に10カ月間断続的に皮膚炎が見られ、ゴム手袋を着用後にも悪化したが、休日や週末に回復し、パッチテストを行ったところ本物質やチウラム混合物に陽性反応を示したとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(2)本物質は皮膚感作性を有するだけでなく、ジチオカーバメートと交差反応するとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(3)接触性皮膚炎が疑われた作業者408人に対してゴム化学品に対するパッチテストで185人に反応がみられ、うち92人が本物質に対して反応を示したとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(4)ヒト2,260人に対する感作性試験で108人(4.8%)に本物質に対する反応がみられ、うち78人にはチウラム製剤の成分に対する反応性もみられたとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(5)接触性皮膚炎患者3,851人に対するパッチテストで、145人(3.8%)にチウラム製剤に対して反応が、さらにそのうち35人中9人(29%)で本物質に対する反応が見られたとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。

【参考データ等】
(6)厚生労働省は本物質を皮膚感作性ありと結論づけている(厚労省初期リスク評価書(2018))。
(7)EU CLPでは本物質をSkin Sens. 1に分類している。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3)より、ガイダンスに従い分類できないとした。

【根拠データ】
(1)In vivo体細胞変異原性試験では、ラットの染色体異常試験、マウスの小核試験で陰性であった(厚労省初期リスク評価書(2018))。
(2)In vivo体細胞遺伝毒性試験では、マウスの骨髄と精原細胞を用いた姉妹染色分体交換(SCE)試験において、SCE数の増加が報告されている(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(3)In vitro体細胞変異原性試験では、ヒト末梢血リンパ球による染色体異常試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性であった (厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT vol. 5(1993)、ACGIH(7th, 2001)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。

【参考データ等】
(4)その他in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験では陰性、哺乳類培養細胞の姉妹染色分体交換試験、DNA鎖切断試験で陽性であった(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT vol. 5(1993)、ACGIH(7th, 2001)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
(5)厚生労働省は本物質の遺伝毒性は「判断できない」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2018))。
発がん性【分類根拠】
発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。
(2)〜(4)の初期の試験結果は信頼性が不十分と判断されたため、(1)の既存分類も踏まえ分類できないとした。なお、厚生労働省は本物質のヒトに対する発がん性については「判断できない」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2018))。

【根拠データ】
(1)国内外の分類機関による既存分類では、IARCがグループ3(IARC 12(1976))、ACGIHがA4(ACGIH(7th, 2001))に分類している。

【参考データ等】
(2)2系統のマウスに100 mg/kg/dayを4週齢まで、その後323 ppmで約78週齢まで混餌投与した試験で、1系統の雄に肺腺腫及び肝腫瘍(ヘパトーマ)の増加、他1系統の雄に皮下の線維肉腫の増加がみられた。化学物質経口投与後の皮下の線維肉腫は極めて異例で、上記の知見には疑問があるとIARCは指摘している(IARC 12(1976)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(3)雄ラットに本物質を週2回強制経口投与(500 mg/kg/week、投与期間不記載)した試験で、平均生存期間が65週間で2例に精巣の良性間細胞腫がみられたが、IARCのワーキンググループは試験期間の不十分な試験と指摘した(IARC 12(1976)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(4)雌雄ラットに300又は600 ppmを107週間、雄マウスに500又は2,000 ppm、雌マウスに100又は500 ppmを108週間混餌投与した発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄の投与群に用量相関性のある体重の低値が試験期間を通してみられたものの、発がん性は認められなかった(NTP TR166(1979)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
生殖毒性【分類根拠】
(1)のヒトに関する報告や、(2)の動物実験の報告からは、催奇形性の確定的判断は困難であり、その他発生影響は分類根拠とすべき所見はないと判断される。一方で(3)より、ラットの2世代試験において、親動物の一般毒性用量で児動物数の減少がみられたことから、区分2と分類した。なお、厚生労働省は催奇形性や胎児毒性に重きをおいた評価として、本物質の生殖毒性は「判断できない」と結論付けている(厚労省初期リスク評価書(2018))。

【根拠データ】
(1)本物質の摂取に伴う出生児の奇形(内反足、顔面奇形、あざらし肢症など)が複数報告されているが、他の物質の影響を除外することが困難であり、本物質がヒトへの催奇形性を有するとは判断できないと指摘されている(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。
(2)妊娠ラット、又は妊娠マウスを用いた多くの発生毒性試験で、胎児体重の低値や骨化遅延など胎児毒性を示すデータはあるが、奇形発生の増加を示唆する報告はない(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。
(3)ラットを用いた混餌投与による2世代試験では、500又は1,000 ppmの投与により親動物に体重増加抑制と交配一組当たりの同腹児数及び産児数の減少がみられた(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。

【参考データ等】
(4)本物質は慢性アルコール中毒に対する抗酒薬として使用されているが、妊婦に対する安全性が確立されていないため、妊婦又は妊娠している女性に対しては禁忌とされている(医療用医薬品集2018(2017))。
(5)妊娠ハムスターに経口投与、妊娠モルモットに経口投与した試験では奇形発生がみられているが、溶媒の影響や用量相関性の検討が不十分などの理由により、結果の解釈は難しい(厚労省初期リスク評価書(2018))。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3)より、本物質の急性ばく露による標的臓器(所見)は複数の症例でみられた神経系(抑うつ、反射・痛覚消失、神経障害など)、腎臓(アルブミン尿)と考えられ、区分1(神経系、腎臓)とした。なお、消化管(嘔吐など)は1例のみの症例報告のため、標的臓器とはしなかった。旧分類とは異なる情報源を用いることにより、腎臓を標的臓器として追加した。

【根拠データ】
(1)本物質3 gを経口摂取し、急性中毒症状を生じた10歳の少女の症例では20時間後に眠気、瞳孔散大、2日目に嘔吐、不安、抑うつ、4日目に運動失調、アルブミン尿を伴う腎盂腎炎、3〜6日目に記憶喪失がみられたとの報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(2)本物質10 g を経口摂取10時間後に意識消失、チアノーゼ、呼吸困難、反射及び痛覚の消失を示した3歳7ヵ月の小児の症例、本物質10 g を摂取した24歳の女性が悪心、嘔吐、胃腸炎、頭痛、運動失調、アルブミン尿の増加を示したとの報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
(3)本物質10 g を摂取した15歳の少年では眼振、痙攣、昏睡など神経障害、記憶・認知障害がみられた報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(2)のヒトの知見から区分1(神経系、心血管系、消化管、肝臓)、(3)から区分1(甲状腺)に分類できる。よって、区分1(神経系、心血管系、甲状腺、消化管、肝臓)とした。なお、旧分類とは異なる情報源を用いて、分類結果を見直した結果、標的臓器を一部追加(心血管系、消化管)、又は削除(内分泌系:ヒトで一部甲状腺関連ホルモンや性腺刺激ホルモンなどホルモンレベルの変動の報告はあるが、ラットの甲状腺以外に内分泌系臓器に影響がみられていない)した。

【根拠データ】
(1)本物質は慢性アルコール中毒に対する抗酒薬である。重大な副作用は、精神神経系障害で、まれに重篤な脳障害(見当織障害、記憶障害、錯乱等)が現れたとの報告がある。また、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、LDH、ALP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現われることがある(医療用医薬品集2018(2017))。
(2)その他の副作用として消化管障害(悪心、嘔吐、腹部痙攣、下痢、便秘)、神経障害(眠気、頭痛、多発性神経障害、末梢神経炎)、心血管障害(蒼白、低血圧、血管拡張、頻脈、不整脈、心筋梗塞)に加えて、非常にまれではあるが、肝機能障害、肝炎、黄疸を呈し、重篤な場合には肝性昏睡をきたし死亡する症例も報告されている(厚労省初期リスク評価書(2018))。
(3)ラットに本物質25 mg/kg/dayを30日間経口投与(90日換算:8.3 mg/kg/day、区分1の範囲)した結果、甲状腺の重量増加と過形成がみられた(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
吸引性呼吸器有害性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=120μg/L(AQUIRE、2003)から、区分1とした。
水生環境有害性(長期間)急性毒性が区分1、生物蓄積性が低いと推定されるものの(log Kow=3.88(PHYSPROP Database、2005))、急速分解性がないと推定される(テトラエチルチウラムジスルフィドのBODによる分解度:2.8%より類推(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分1とした。
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号該当しない
国連品名該当しない
国連危険有害性クラス該当しない
副次危険該当しない
容器等級該当しない
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意化学品を扱う場合の一般的な注意として、輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*該当しない
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emergency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(法第57条、施行令第17条別表第3第1号並びに施行令第18条及び第18条の2別表第9)
化審法優先評価化学物質(法第2条第5項)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。