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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
o−フェニレンジアミン
作成日 2002年12月25日
改訂日 2010年03月31日
改訂日 2020年03月13日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称o−フェニレンジアミン
化学品の英語名称o-Phenylenediamine
製品コードR03-C-005-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限アゾ染料・白毛染料・ゴム加硫促進剤・写真現像薬原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A
皮膚感作性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(血液系)、区分2(中枢神経系)、区分3(気道刺激性)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分2(鼻腔、腎臓、膀胱、血液系)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)※一部JIS Z7252:2019(GHS 6版準拠)を採用
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分1
水生環境有害性 長期(慢性)区分1
GHSラベル要素
絵表示感嘆符健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
血液系の障害
中枢神経系の障害のおそれ
呼吸器への刺激のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による鼻腔、腎臓、膀胱、血液系の障害のおそれ
長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名o−フェニレンジアミン
慣用名又は別名1,2−フェニレンジアミン
o−ジアミノベンゼン
1,2−ベンゼンジアミン
英語名o-Phenylenediamine
1,2-Phenylenediamine
o-Diaminobenzene
1,2-Benzenediamine
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C6H8N2 (108.14)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号95-54-5
官報公示整理番号(化審法)3-185
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:紫色(チアノーゼ)の唇、爪および皮膚。錯乱。痙攣。めまい。頭痛。吐き気。意識喪失。
皮膚:発赤。
眼:充血。痛み。
経口摂取:「吸入」参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。
喘息の症状は 2〜3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。
したがって、安静と経過観察が不可欠である。
この物質により、喘息の症状を示した者は、以後この物質に接触しないこと。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災:粉末消火剤、二酸化炭素、耐アルコール泡消火剤、散水
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性可燃性。
火災の場合、有害物質(窒素酸化物、一酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火水をせき止め、後で廃棄する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
密閉型防護服を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がない時)。
すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
必要により、風下に適切な隔離距離をとる。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏出物を地面や河川や下水に直接流してはいけない。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ、漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室や狭い場所への流入を防ぐ。
乾燥した土、砂や不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。
容器内に水をいれてはいけない。
こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管・処理する。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
安全取扱注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
裸火禁止。
粉じんの堆積を防ぐ。
汚染された衣服は(火災の危険があるため)、多量の水ですすぎ洗いする。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。
容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)許容濃度: 0.1 mg/m3
ACGIH(2022年版)TLV-TWA: 0.1 mg/m3
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。
粉じんが発生する場合は防爆型電気設備および照明を用いる。
保護具
呼吸用保護具作業者が粉塵に暴露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。
防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。
-防じんマスクは、日本工業規格(JIS T8151)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
茶色〜黄色、光に曝露すると暗色になる。純粋な場合は白色。
臭いデータなし
融点/凝固点103〜104 ℃(ICSC(2002))
102.1 ℃(GESTIS(2021))
102.5 ℃(PubChem(2021))
沸点、初留点及び沸騰範囲256〜258 ℃(ICSC(2002))
257 ℃(GESTIS(2021))
252 ℃(危険物災害等支援システム(2021))
可燃性可燃性(ICSC(2002))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点156 ℃(Closed cup)(ICSC(2002)、GESTIS(2021)、PubChem(2021)、危険物災害等支援システム(2021))
自然発火点540 ℃(GESTIS(2021))
分解温度> 500 ℃(GESTIS(2021))
pH7〜8(GESTIS(2021))
動粘性率データなし
溶解度水: 54 g/l(GESTIS(2021))
水: 0.4 g/100 ml(35℃)(ICSC(2002))
エタノール、エチルエーテル、ベンゼン、クロロホルムに易溶(PubChem(2021))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 0.15(計算値)(ICSC(2002)、GESTIS(2021))
蒸気圧0.0013 kPa(20℃)(ICSC(2002))
2.06X10-3 mm Hg(25℃)(PubChem(2021))
密度及び/又は相対密度1.14 20℃(GESTIS(2021))
相対ガス密度3.73 (空気=1)(ICSC(2002))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性可燃性。粉末や顆粒状で空気と混合すると、粉塵爆発の可能性がある。燃焼すると分解する。窒素酸化物などの有毒なフュームを生じる。
避けるべき条件熱、空気、発火源
混触危険物質強酸、酸化剤
危険有害な分解生成物窒素酸化物など

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)、(2) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50:660〜1,284 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(2) ラットのLD50:500〜1,300 mg/kg (DFGOT vol.21 (2005))
経皮【分類根拠】
(1)〜(3)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 5,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
(2) ウサギのLD50: > 5,000 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014))
(3) ウサギに 5,000 mg/kgを経皮適用して死亡例あり (ACGIH (7th, 2001))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、ガイダンスにおける分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1)、(2) のいずれも区分を特定できず、分類できないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50値 (1時間):> 0.056 mg/L (4時間換算値:> 0.014 mg/L) (ACGIH (7th, 2001))
(2) マウスのLC50値 (4時間):> 0.091 mg/L (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第12巻 (2014))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 404に準拠し、ウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性なしと報告されている (DFGOT vol.13 (1999))。
(2) OECD TG 404に準拠し、3匹のウサギを用いた皮膚刺激性試験で48時間後にごく軽度の紅斑がみられたが72時間後には回復し、24/48/72 hの紅斑と浮腫の平均スコアは0.6及び0と報告されている (REACH登録情報 (Access on June 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1) より、区分2Aとした。

【根拠データ】
(1) OECD TG 405に準拠した眼刺激性試験で刺激性を示し、平均スコアは角膜:2.1、虹彩:1、結膜発赤:3、結膜浮腫:2.9であったが、14日以内に回復している (REACH登録情報 (Access on June 2019))。

【参考データ等】
(2) OECD TG 405に準拠した眼刺激性試験で結膜の発赤・浮腫、角膜混濁、虹彩の炎症を引き起こすが14日以内に回復した (DFGOT vol.13 (1999))。
(3) EU-CLP分類でEye Irrit. 2 (H31) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2019))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1とした。

【根拠データ】
(1) 産衛学会 感作性分類 皮膚3群に分類されている (産衛学会感作性分類基準 (暫定) の提案理由書 (2010))。
(2) モルモットを用いた皮膚感作性試験で10例中3〜7例で軽度から中等度の感作性反応 (陽性率30〜70%) が示されている (REACH登録情報 (Access on June 2019))。

【参考データ等】
(3) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on May 2019))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3) より、ガイダンスに従い区分2とした。

【根拠データ】
(1) in vivoではラットの優性致死試験及びマウススポット試験で陰性、マウス等の骨髄を用いた小核試験及び染色体異常試験で陽性の報告がある (DFGOT vol.6 (1994)、DFGOT vol.13 (1999)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
(2) in vitroではマウスリンフォーマ試験で陽性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験及び細菌の復帰突然変異試験の多くで陽性の報告がある (DFGOT vol.6 (1994)、DFGOT vol.13 (1999)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。
(3) EU CLP調和分類では区分2に分類されている。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(4)より、動物種2種に悪性腫瘍を含む明らかな発がん性の証拠が認められたこと及び(4)より健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質であることを重視し、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した。旧分類からIARC及び日本産業衛生学会の分類が変更されたため、発がん性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)o-フェニレンジアミン二塩酸塩(CAS番号 615-28-1)を被験物質としたラットの2年間飲水投与による発がん性試験(OECD TG451、GLP)において、雌雄の肝臓で肝細胞腺腫及び肝細胞がんの顕著な発生増加がみられ、さらに、雄の膀胱に移行上皮乳頭腫及び移行上皮乳頭腫と移行上皮がんを合わせた発生増加がみられた。これらの結果は o-フェニレンジアミン二塩酸塩の雌雄ラットに対するがん原性を示す明らかな証拠であると結論された(厚生労働省委託がん原性試験結果 (2004)、IARC 123 (2020))。
(2)o-フェニレンジアミン二塩酸塩を被験物質としたマウスの2年間飲水投与による発がん性試験(OECD TG451、GLP)において、雄では肝臓に肝細胞腺腫の発生増加が、雌では肝細胞腺腫及び肝細胞がんの顕著な発生増加が、さらに雌雄の胆嚢に乳頭状腺腫の発生増加がみられた。これらの結果は o-フェニレンジアミン二塩酸塩の雄マウスに対するがん原性を示す証拠と雌マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠と結論された(厚生労働省委託がん原性試験結果 (2004)、IARC 123 (2020))。
(3)本物質は塩基性化合物で、酸-塩基反応を受ける。体内では本物質と本物質二塩酸塩との間でpH依存性の酸-塩基平衡関係が成立すると考えられることから、一方の発がん性試験結果を他方の発がん性評価に関する情報として利用できる(IARC 123 (2020))。
(4)本物質は厚生労働省化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号)。
(5)国内外の評価機関による既存分類結果として、IARCではグループ2Bに(IARC 123 (2020))、日本産業衛生学会では第2群Bに(産衛誌62巻5号 (2020):2019年提案)、ACGIHではA3(ACGIH (7th, 2001))に、EUではCarc. 2に(CLP分類結果 (Accessed Sep. 2021))、DFGではCategory 3に(List of MAK and BAT values 2020 (Accessed Sep. 2021))それぞれ分類している。

【参考データ等】
(6)本物質の二塩酸塩を被験物質とし、雄ラット及び雌雄マウスに18ヵ月間混餌投与(ラットは6ヵ月後に剖検)した発がん性試験においても、肝細胞がんの発生増加がみられている(IARC 123 (2020)、厚労省リスク評価書 (2014)、MOE初期評価 (2014)、AICIS (旧NICNAS) IMAP (2013)、ACGIH (7th, 2001)、Patty (6th, 2012))。
(7)本物質の発がん性の評価に関して、利用可能なヒトのデータはない(IARC 123 (2020))。
生殖毒性【分類根拠】
本物質の生殖発生毒性を評価・分類するための十分な情報はなく、データ不足で分類できない。

【参考データ等】
(1) ラットに0.8 mg/kg/day を経口投与した結果、胎児への影響を認めたという報告があるが、詳細は不明である (厚労省初期リスク評価書 (2014))。
(2) 妊娠10 日の雌マウスに腹腔内投与したマウススポット試験の結果、妊娠の維持率の低下、出生前/出生後死亡の増加がみられた (環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol.13 (1999))。
(3) 雄ラットに腹腔内投与後、未処置の雌と交配させた優性致死試験の結果、着床数や吸収胚数、生存胎児数に影響はなかった (同上)。
(4) 本物質を含む毛染剤を妊娠1、4、7、10、13、16、19 日の雌ラットに塗布した結果、黄体数、着床数、生存胎児数、吸収胚数に有意な影響はなく、奇形の発生もなかった (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、PATTY (6th, 2012)、厚労省初期リスク評価書 (2014))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。実験動物での (1)〜(3) の情報より、区分1 (血液系)、区分2 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。旧分類は呼吸器も標的臓器に含めていたが、根拠となる情報が経口投与試験でみられた呼吸困難のみであり、組織学的所見でも呼吸器の傷害に関する情報はない。したがって、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ネコの単回経口投与試験において、本物質25〜50 mg/kgの用量 (区分1相当) で、血中メトヘモグロビン濃度増加がみられた (DFGOT vol.13 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、BUA 97 (1992))。
(2) ラットの単回経口投与試験において、本物質500〜2,000 mg/kgの用量 (区分2相当) で、一般状態悪化、興奮、抑うつ、呼吸困難、振戦、痙攣、麻痺が認められた (DFGOT vol.13 (1999)、BUA 97 (1992))。
(3) ラット及びマウスに本物質の蒸気と粉じんの混合物0.0905 mg/Lを4時間、吸入ばく露した試験で、鼻粘膜の軽度の刺激がみられた (DFGOT vol.13 (1999))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(2) より、実験動物への本物質の二塩酸塩 (CAS番号 615-28-1) の経口投与で区分2の範囲で鼻腔、腎臓、膀胱、血液系への影響がみられていることから、区分2 (鼻腔、腎臓、膀胱、血液系) とした。ハーダー腺についてはヒトへの外挿性がないと考えられることから標的臓器としなかった。なお、新たな情報源の情報を加えて検討した結果、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ラットに本物質の二塩酸塩250〜3,000 ppm (区分2の範囲) を13週間飲水投与した結果、ハーダー腺の炎症、血液系への影響 (赤血球数とヘマトクリット値の減少等)、腎臓への影響 (乳頭変性、尿素窒素増加等)、鼻腔への影響 (嗅腺の管拡張、嗅上皮の壊死)、膀胱への影響 (移行上皮細胞の単純過形成) がみられた (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on May 2019))。
(2) マウスに本物質の二塩酸塩500〜5,000 ppmを13週間飲水投与した結果、1,000 ppm (概ね区分2の範囲) 以上で血液系への影響 (MCV及び血小板数増加)、腎臓への影響 (尿素窒素増加等) がみられた (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on May 2019))。

【参考データ等】
(3) ラット、マウスに二塩酸塩を104週間飲水投与した結果、区分2の範囲以上で鼻腔と腎臓に本物質の投与による影響と考えられる非腫瘍性病変がみられた (厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on May 2019)) 。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(セレナストラム)72時間EC50 = 0.821 mg/L(環境省生態影響試験, 2001、環境省リスク評価第12巻, 2014)であることから、区分1とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:0%(既存点検, 2001)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.083 mg/L(環境省生態影響試験, 2001、環境省リスク評価第12巻, 2014)であることから、区分1となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:2%(既存点検, 2001)、魚類(メダカ)の96時間LC50 = 4.6 mg/L(環境省生態影響試験, 2001、環境省リスク評価第12巻, 2014)であることから、区分2となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1673
品名(国連輸送名)フェニレンジアミン
国連分類6.1
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)
健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項)
化審法優先評価化学物質(法第2条第5項)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)
消防法貯蔵等の届出を要する物質(法第9条の3・危険物令第1条の10六別表2−18・平元省令2号第2条)【オルトフェニレンジアミン】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」