1.化学品及び会社情報 | |||
---|---|---|---|
化学品の名称 | オルト-ニトロアニソール | ||
化学品の英語名称 | o-nitroanisole | ||
製品コード | R03-B-014-MHLW | ||
供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 | 医薬・染料中間体 (NITE-CHRIPより引用) |
2.危険有害性の要約 | |||
---|---|---|---|
GHS分類 | |||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 | ||
物理化学的危険性 | 自己反応性化学品 | タイプG | |
健康に対する有害性 | 急性毒性(経口) | 区分4 | |
生殖細胞変異原性 | 区分2 | ||
発がん性 | 区分1B | ||
生殖毒性 | 区分2 | ||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分2(全身毒性) | ||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分2(腎臓) | ||
分類実施日 (環境有害性) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) | ||
環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 | |
水生環境有害性 長期(慢性) | 区分3 | ||
GHSラベル要素 | |||
絵表示 | |||
注意喚起語 | 危険 | ||
危険有害性情報 | 飲み込むと有害 遺伝性疾患のおそれの疑い 発がんのおそれ 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い 全身の障害のおそれ 長期にわたる、又は反復ばく露による腎臓の障害のおそれ 長期継続的影響により水生生物に有害 | ||
注意書き | |||
安全対策 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 取扱い後は手をよく洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 環境への放出を避けること。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 | ||
応急措置 | 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 口をすすぐこと。 | ||
保管 | 施錠して保管すること。 | ||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
他の危険有害性 | 情報なし |
3.組成及び成分情報 | |||
---|---|---|---|
化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
化学名又は一般名 | オルト-ニトロアニソール | ||
慣用名又は別名 | 2−ニトロアニソール 1−メトキシ−2−ニトロベンゼン | ||
英語名 | o-nitroanisole 2-Nitroanisole 1-Methoxy-2-nitrobenzene | ||
濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
分子式 (分子量) | NO2C6H4OCH3 / C7H7NO3 (153.1) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | |||
CAS番号 | 91-23-6 | ||
官報公示整理番号(化審法) | 3-787 | ||
官報公示整理番号(安衛法) | 情報なし | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | 情報なし |
4.応急措置 | |||
---|---|---|---|
吸入した場合 | 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師の診察/手当てを受けること。 医師に連絡すること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 | ||
皮膚に付着した場合 | 汚染された衣服を脱がせる。 洗い流してから水と石鹸で皮膚を洗浄する。 | ||
眼に入った場合 | 数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医療機関に連絡する。 | ||
飲み込んだ場合 | 気分が悪いときは医師に連絡すること。 口をすすぐこと。 水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。安静。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:紫色(チアノーゼ)の唇、爪および皮膚。めまい。頭痛。吐き気。錯乱。 皮膚:皮膚の乾燥。 経口摂取:「吸入」参照。 短期曝露の影響:高濃度で曝露すると、メトヘモグロビン生成を引き起こすことがある。これらの影響は、遅れて現われることがある。医学的な経過観察が必要である。 長期または反復曝露の影響:皮膚の脱脂を起こし、乾燥やひび割れを生じることがある。人で発がん性を示す可能性がある。血液に影響を与えることがある。貧血を生じることがある。 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 適切な空気呼吸器、防護服を着用する。 被災者が物質を飲み込んだり、吸入したときは、口対口法を用いてはいけない;人工呼吸をする前には顔と口を洗うこと。逆流防止のバルブがついたポケットマスクや他の適当な医療用呼吸器を用いて、人工呼吸を行う。 | ||
医師に対する特別な注意事項 | 医師が暴露物質名を知り、防護のための注意を払うことを確認する。 |
5.火災時の措置 | |||
---|---|---|---|
適切な消火剤 | 小火災 粉末消火剤、二酸化炭素または散水。 大火災 水の散布、噴霧または一般の泡消火剤。 | ||
使ってはならない消火剤 | 棒状注水 | ||
火災時の特有の危険有害性 | 可燃性。蒸気は空気より重い。燃焼すると、有毒で腐食性のフュームを生成する。加熱分解する。1-メトキシ-2-ニトロベンゼンと亜鉛および水酸化ナトリウムとの反応は、爆発性化合物を形成する可能性がある。熱および圧力下で水素と触媒が存在すると、激しい反応が起こる可能性がある。加熱分解すると、窒素酸化物の有毒ガスを放出する。 | ||
特有の消火方法 | 消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。 容器内に水を入れてはいけない。 消火後も大置の水を用いて容器を冷却する。 安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する 。火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。 大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。これが不可能な場合にはその場所から難避し、燃える ままにしておく。 安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。 | ||
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、防護服(耐熱性)を着用する。 |
6.漏出時の措置 | |||
---|---|---|---|
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 適切な呼吸器用保護具を着用する。 耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がないとき)。 | ||
環境に対する注意事項 | 環境汚染を引き起こすおそれがある。 漏出物が地面や河川や下水に流出することを避ける。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | すべての着火源をすぐ近くから取り除(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。 適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。危険でなければ、漏れを止める。 排水溝、下水溝、地下室や狭い場所への流入を防ぐ。プラスチックシートで覆いをし、散乱を防ぐ。 乾燥した土、砂や不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。容器内に水を入れてはいけない。 | ||
二次災害の防止策 | 情報なし |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
---|---|---|---|
取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
安全取扱注意事項 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 | ||
接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
衛生対策 | 取扱い後は手をよく洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 施錠して保管すること。 | ||
安全な容器包装材料 | 消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
---|---|---|---|---|
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
管理濃度 | 未設定 | |||
許容濃度等 | ||||
日本産衛学会(2021年版) | 未設定 | |||
ACGIH(2022年版) | 未設定 | |||
設備対策 | 取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。 作業場では全体換気を行う。 設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。 粉じんが発生する場合は防爆型電気設備および照明を用いる。 | |||
保護具 | ||||
呼吸用保護具 | 必要に応じて、状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。 防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。 -防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。 -濃度及び物質に対応した吸収缶を使用する -作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する -酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。 | |||
手の保護具 | 保護手袋を着用する。 | |||
眼の保護具 | 保護眼鏡を着用する。 | |||
皮膚及び身体の保護具 | 保護衣を着用する。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
---|---|---|---|
物理的状態 | |||
物理状態 | 液体 (20℃、1気圧) (GHS判定) | ||
色 | 無色〜黄赤色 | ||
臭い | 特異臭 | ||
融点/凝固点 | 10 ℃(ICSC(2004)) 9 ℃(GESTIS(2021)) 10.5 ℃(PubChem(2021)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 277 ℃(ICSC(2004)) 273 ℃(GESTIS(2021)) 268〜271 ℃(PubChem(2021)) | ||
可燃性 | 可燃性(ICSC(2004)) | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | 1.04〜66 vol%(空気中、150℃)(ICSC(2004)、GESTIS(2021)) | ||
引火点 | 124 ℃(ICSC(2004)) 142 ℃(Closed cup)(PubChem(2021)、GESTIS(2021)) | ||
自然発火点 | 464 ℃(ICSC(2004)、GESTIS(2021)) | ||
分解温度 | データなし | ||
pH | データなし | ||
動粘性率 | データなし | ||
溶解度 | 20℃(水に溶けない)(ICSC(2004)) 水: 1.69 g/l(30℃)(GESTIS(2021)) エタノール、エチルエーテル、四塩化炭素に混和、可溶(PubChem(2021)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | Log Kow: 1.73 (ICSC(2004)、GESTIS(2021)、PubChem(2021)) | ||
蒸気圧 | 0.004 kPa(30℃)(ICSC(2004)) 0.06 hPa(GESTIS(2021)) 3.6X10-3 mmHg(25℃)(PubChem(2021)) | ||
密度及び/又は相対密度 | 1.25 g/cm3(20℃)(GESTIS(2021)) 1.2540 g/cu cm(20℃)(PubChem(2021)) | ||
相対ガス密度 | 5.29 (空気=1)(ICSC(2004)) 5.28 (GESTIS(2021)) | ||
粒子特性 | 該当しない |
10.安定性及び反応性 | |||
---|---|---|---|
反応性 | 「危険有害反応可能性」を参照。 | ||
化学的安定性 | 法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられる。 | ||
危険有害反応可能性 | 可燃性。蒸気は空気より重い。燃焼すると、有毒で腐食性のフュームを生成する。加熱分解する。1-メトキシ-2-ニトロベンゼンと亜鉛および水酸化ナトリウムとの反応は、爆発性化合物を形成する可能性がある。熱および圧力下で水素と触媒が存在すると、激しい反応が起こる可能性がある。加熱分解すると、窒素酸化物の有毒ガスを放出する。 | ||
避けるべき条件 | 熱、湿度 | ||
混触危険物質 | 亜鉛、水酸化ナトリウム | ||
危険有害な分解生成物 | 窒素酸化物 |
11.有害性情報 | ||||
---|---|---|---|---|
急性毒性 | ||||
経口 | 【分類根拠】 (1)〜(8)より区分4とした。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:740〜1,000 mg/kgの間(厚労省 リスク評価書 (2011)) (2)ラットのLD50:740 mg/kg(Patty (6th, 2012)) (3)ラット(雄)のLD50:760 mg/kg(DFG MAK (1998)) (4)ラット(雌)のLD50:740 mg/kg(DFG MAK (1998)) (5)ラットのLD50:874 mg/kg(DFG MAK (1998)) (6)ラット(雄)のLD50:1,000 mg/kg(DFG MAK (1998)) (7)ラット(雌)のLD50:890 mg/kg(DFG MAK (1998)) (8)ラットのLD50:1,980 mg/kg(DFG MAK (1998)) | |||
経皮 | 【分類根拠】 (1)より区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(厚労省 リスク評価書 (2011)、DFG MAK (1998)) | |||
吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 | |||
吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(半閉塞、4時間適用)において、刺激性変化はみられなかったとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2011)、DFG MAK (1998))。 | |||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(4日観察)において、1時間後に結膜の腫脹とびまん性発赤、軽度の流涙がみられたが、24時間後には影響は消失したとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2011)、DFG MAK (1998))。 | |||
呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
皮膚感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分2とした。新たな情報源を利用し分類した。 【根拠データ】 (1)In vivo では、ラットの骨髄細胞を用いた小核試験では陰性であったが、ラットの複数の標的臓器に対する付加体形成試験(腹腔内投与、5日間、0.15 mg/kg/day)では、肝臓、腎臓、脾臓、膀胱に対して陽性、肺、心臓、脳に対して陰性、ラットの腎臓、膀胱及び肝細胞を対象としたコメットアッセイ(DNA鎖切断:強制経口投与、2日間(2回)、最大750 mg/kg/day)では腎臓に対して陽性(250 mg/kg/day以上)、その他は陰性、また別の膀胱細胞を対象としたコメットアッセイ(及びhOGG1を用いる変法)(強制経口投与、3日間(3回))では陰性又は陽性の結果がある(IARC 127 (2021))。 (2)In vitroでは、複数の細菌復帰突然変異原性試験で陽性、マウスリンフォーマ試験で陽性、チャイニーズハムスター肺由来(V79)細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、同肺細胞(CHL)及びV79細胞を用いた染色体異常試験で陽性(主に+S9)の結果がある(IARC 127 (2021)、DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011)、安衛法変異原性試験 (Accessed Nov. 2021))。 | |||
発がん性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より動物種2種で悪性腫瘍の発生増加が認められ、動物実験において発がん性の十分な証拠があることから区分1Bとした。新たな情報源も利用し区分を変更した。 【根拠データ】 (1)ラット及びマウスを用いた2年間(103週間)混餌投与による発がん性試験(GLP、ラット:222〜2,000 ppm、マウス:666〜6,000 ppm)においてラットの試験では雌雄ともに単核細胞白血病の発生頻度に増加傾向と対照群と比べて有意な増加が認められた。マウスの試験では、雄に肝細胞腺腫、肝細胞がんおよび肝芽腫、雌に肝細胞腺腫の発生増加が認められた(IARC 127 (2021)、厚労省 リスク評価書 (2011)、DFG MAK (1998)、NTP TR416(1993))。 (2)ラットに27週間混餌投与(6,000、18,000 ppm)した後、基礎飼料に切り替え給餌し試験開始後28週、40週、65週及び103週目に剖検と殺した発がん性試験(Stop-exposure study)において、雌雄に膀胱の良性と悪性腫瘍、腎臓の移行上皮腫瘍、大腸の良性と悪性腫瘍の増加認められた(IARC 127 (2021)、NTP TR416(1993))。 (3)国内外の評価機関における既存分類結果として、IARCではグループ2Aに(IARC 127 (2021))、NTPでRに(NTP RoC 14th. (2016))、日本産業衛生学会で第2群Bに(産衛学会 許容濃度等の勧告 (2021))、EUでCarc. 1Bに(CLP分類結果 (Accessed November 2021))、DFGでCategory 2に(List of MAK and BAT values 2020 (Accessed November 2021))、それぞれ分類されている。 【参考データ等】 (4)本物質は芳香族アミンのo-アニジジン(CAS番号 90-04-0)に代謝されるという観点から、本物質はいくつかのメンバー化合物がヒトの発がん性物質に分類されている芳香族アミンのクラスに属するという作用機序の面における強い証拠がある。本物質は共通するDNA反応性部分の形成、遺伝毒性、慢性動物試験で発がん性の標的器官について、芳香族アミンと一致性を示す(IARC 127 (2021))。 | |||
生殖毒性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、発生影響を示唆する報告があることから、区分2とした。 【根拠データ】 (1)雌ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(20〜320 mg/kg/day、妊娠6〜15日)において、母動物への影響(症状、摂餌量減少)がみられる高用量で吸収胚の軽度増加(対照群の5.0%に対し8.5%)と胎児に内臓変異と癒合の軽度増加がみられた(DFG MAK (1989)、厚労省 リスク評価書 (2011))。 (2)厚生労働省は、(1)の影響より「生殖・発生毒性:あり」と結論している。(厚労省 リスク評価書 (2011)) 【参考データ等】 (3)ラットを用いた13週間混餌投与試験(200〜18,000 ppm)において、最高用量(18,000 ppm:約900 mg/kg/day)で精巣における精子形成細胞の著減を伴う精細管上皮の変性及び精子数の減少、雌に子宮の萎縮が認められた(NTP TR416 (1993)、DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011))。 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)より、標的臓器を特定できない毒性症状がみられ、区分2の用量範囲で死亡例が生じたことから、区分2(全身毒性)とした。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた単回経口投与試験において、投与後に非特異的な毒性症状(腹臥、衰弱、不安定歩行、不規則呼吸、被毛粗剛、部分閉眼、自発運動減少、ぼんやりした様子、反射低下、流涙等)がみられ、LD50値は875 mg/kg(区分2の範囲)であった。また死亡例の剖検では、胃や消化管粘膜の軽度発赤、数例で蒼白腎、副腎の暗色化、肺の赤褐色変色がみられたとの報告がある(DFG MAK (1998))。 【参考データ等】 (2)工場における2-ニトロアニソールの流出事故があり、汚染地域の清掃に伴う作業者50人についてメトヘモグロビンレベルを測定したが、全ての値は正常範囲であったとの報告がある(厚労省 リスク評価書 (2011)、DFG MAK (1998))。 | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分2(腎臓)とした。なお(3)、(4)でみられる血液系影響は、長期の試験結果から区分2を上回る用量での影響と判断し、分類に採用しなかった。 【根拠データ】 (1)ラットを用いた混餌投与による13週間反復経口投与試験において、200〜2,000 ppm(10〜100 mg/kg/day、区分2の範囲)で肝臓絶対重量増加(雌)及び腎臓絶対重量増加(雄)、腎臓影響(単核炎症性細胞浸潤を伴う腎尿細管上皮の多巣性変性及び壊死(雄))がみられ、6,000 ppm(300 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で膀胱(良性/悪性腫瘍、移行上皮過形成)への影響がみられ、18,000 ppm(900 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で血液(メトヘモグロビン増加)、脾臓(うっ血、ヘモジデリン沈着)、生殖器(精巣における精子形成細胞の著減を伴う精細管上皮の変性及び精子数の減少、子宮の萎縮)への影響がみられたとの報告がある(DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011)、NTP TR416 (1993))。 (2)ラットを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、222〜2,000 ppm(10〜80 mg/kg/day(雄)、10〜90 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)で、前胃の過形成、腎尿細管の過形成(雄)、腎症の重篤度の増加(雄)がみられたとの報告がある。(NTP TR416 (1993))。 【参考データ等】 (3)ラットを用いた強制経口投与による28日間反復経口投与試験において、200 mg/kg/day(90日換算値:62.2 mg/kg/day、区分2の範囲)で、軽度の溶血性貧血を示す血液学的変化、脾臓重量増加がみられたとの報告がある(DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011))。 (4)ラット(雄)に1用量(150 mg/kg)のみを30回経口投与した試験において、軽度の溶血性貧血、肝臓・腎臓・脾臓相対重量増加がみられたとの報告がある(DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011))。 (5)マウスを用いた混餌投与による13週間反復経口投与試験において、60〜2,000 ppm(9〜90 mg/kg/day、区分2の範囲)で肝細胞肥大の例数増加(雄)、肝臓の絶対・相対重量の増加(雌)がみられ、2,000および6,000 ppm(300および900 mg/kg/day、区分に該当しない範囲)で、血液影響(ヘモグロビン・ヘマトクリットの減少)がみられたとの報告がある(DFG MAK (1998)、厚労省 リスク評価書 (2011))。 (6)マウスを用いた混餌投与による2年間慢性毒性/がん原性併合試験において、6,000 ppm(830 mg/kg/day(雄)、1,200 mg/kg/day(雌)、区分に該当しない範囲)で、非腫瘍性変化はみられなかったとの報告がある(NTP TR416 (1993))。 | |||
誤えん有害性* | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 |
12.環境影響情報 | |||
---|---|---|---|
生態毒性 | |||
水生環境有害性 短期(急性) | 藻類(セネデスムス)の72時間ErC50=48.6mg/L(IUCLID、2000)から、区分3とした。 | ||
水生環境有害性 長期(慢性) | 急性毒性区分3であり、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存点検, 1976))ことから、区分3とした。 | ||
残留性・分解性 | 化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性)) | ||
生態蓄積性 | 化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性)) | ||
土壌中の移動性 | 情報なし | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
---|---|---|---|
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 | ||
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
---|---|---|---|---|
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | 2730 | |||
品名(国連輸送名) | ニトロアニソール(液体) | |||
国連分類 | 6.1 | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | V | |||
海洋汚染物質 | 該当しない | |||
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う。 | |||
航空規制情報 | 航空法の規定に従う。 | |||
陸上規制情報 | 道路法、消防法の規定に従う。 | |||
特別な安全上の対策 | 道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 152 | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
---|---|---|---|---|
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) | |||
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)( 令和4年度までの対象) | |||
毒物及び劇物取締法 | 該当しない | |||
消防法 | 第4類 引火性液体 第三石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) | |||
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) | |||
船舶安全法 | 毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
航空法 | 毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1) |
16.その他の情報 | ||||
---|---|---|---|---|
参考文献 | ||||
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用 ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 |