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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ペンタクロロフェノール
作成日 2002年12月06日
改訂日 2006年03月14日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称ペンタクロロフェノール (Pentachlorophenol)
製品コードR02-B-027
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限除草剤(販売禁止農薬) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分3
急性毒性 (経皮)区分2
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
発がん性区分1A
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系、心臓)
区分3 (気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、皮膚)
分類実施日
(環境有害性)
平成26年度、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
皮膚に接触すると生命に危険
皮膚刺激
強い眼刺激
呼吸器への刺激のおそれ
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
神経系、心臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、皮膚の障害
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。直ちに医師に連絡すること。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名ペンタクロロフェノール
別名ペンタクロロヒドロキシベンゼン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C6HCl5O (266.34)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号87-86-5
官報公示整理番号
(化審法)
3-2850
官報公示整理番号
(安衛法)
4-(10)-585
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
半座位をとる。
人工呼吸が必要なことがある。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
コップ1、2杯の水を飲ませる。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、めまい、嗜眠、頭痛、発熱、息苦しさ、咽頭痛。
皮膚: 吸収される可能性あり!発赤、水疱、他の症状については、「吸入」参照。
眼: 充血、痛み。
経口摂取: 胃痙攣、下痢、吐き気、意識喪失、嘔吐、脱力感、他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護応急処置を行うときは、保護手袋を着用する。
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災: 粉末消火薬剤、二酸化炭素、散水
大火災: 粉末消火薬剤、二酸化炭素、耐アルコール泡消火剤、散水
使ってはならない消火剤情報なし
特有の危険有害性不燃性。
有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。
特有の消火方法情報なし
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に化学防護服及び防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの 密閉式容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
眼、皮膚、衣類につけないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
許容濃度を超えても、臭気として十分に感じないので注意すること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
強酸化剤および食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度0.5 mg/m3
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)0.5 mg/m3
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 0.5 mg/m3 (Inhalable fraction and vapor)
TLV-STEL: 1 mg/m3 (Inhalable fraction and vapor)
(Skin; BEI)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡/保護面を着用する。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、安全ゴーグル、顔面シールドまたは保護眼鏡を着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣 (化学防護服) を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
白色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点174℃ (HSDB (Access on April 2020))
沸点、初留点及び沸騰範囲309℃で分解する (ICSC (2003))
可燃性不燃性 (HSDB (Access on April 2020))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度200℃以上で分解する。 (ICSC (2003))
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水:0.001 g/100 mL (20℃) (ICSC (2003))
アセトン、ベンゼン、エタノール、メタノール、イソプロパノールに可溶 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow=5.01 (ICSC (2003))
蒸気圧1.10E-004 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.98 g/cm3 (ICSC (2003))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性200℃以上で分解する。
ダイオキシンを含む、有毒で腐食性のフュームを生じる。
強酸化剤と 激しく反応する。
避けるべき条件混触危険物質との接触
混触危険物質強酸化剤
危険有害な分解生成物ダイオキシンを含む、有毒で腐食性のフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 27〜175 mg/kg (IARC 53 (1991))
(2) ラットのLD50: 80〜120 mg/kg (ATSDR (2001))
(3) ラットのLD50: 80〜175 mg/kg (NTP TR483 (1999))
(4) ラットのLD50: 150〜200 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))
(5) ラットのLD50: 150 mg/kg (EHC 71 (1987))
(6) ラットのLD50: 雄: 146 mg/kg、雌: 175 mg/kg (EHC 71 (1987))
(7) ラットのLD50: 雄: 155 mg/kg、雌: 137 mg/kg (EPA Pesticides RED (2008))
経皮【分類根拠】
(1)〜(5) より、区分2とした。旧分類が使用したPatty (4th, 1999) のデータ (40 mg/kg) は、Patty (6th, 2012) では確認できなかったため、新たな情報源を使用した。したがって旧分類から分類結果が変更になった。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 96〜330 mg/kg (ACGIH (7th, 2014))
(2) ラットのLD50: 105 mg/kg (MOE初期評価第1巻 (2002))
(3) ラットのLD50: 149 mg/kg (MAK (DFG) vol.3 (1992))
(4) ラットのLD50: 320 mg/kg (EHC 71 (1987)
(5) ラットのLD50: 330 mg/kg (EHC 71 (1987)
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質へばく露は皮膚及び眼に刺激性を示す (ATSDR (2001)、EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(2) 急性毒性の結果から本物質は中等度から重度の眼刺激性、軽度の皮膚刺激性を有すると考えられる (ACGIH (7th, 2014))。
(3) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で中等度の刺激性が72時間後にも認められた (EPA Pesticides RED (2008))。
(4) 本物質は労規則35条において、皮膚障害又は気道・肺障害が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 本物質へばく露は皮膚及び眼に刺激性を示す (ATSDR (2001)、EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(2) 本物質のダストは眼を刺激する (ACGIH (7th, 2014))。
(3) 急性毒性の結果から本物質は中等度から重度の眼刺激性、軽度の皮膚刺激性を有すると考えられる (ACGIH (7th, 2014))。
(4) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で角膜の所見が適用7日後にも認められた (EPA Pesticides RED (2008))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1) より、区分に該当しないとした。新しいデータが得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) EPA OPPTS 870.2600に準拠したモルモットを用いた皮膚感作性試験 (ビューラー法) において陰性と報告されている (EPA Pesticides RED (2008))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、専門家判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット骨髄及びマウス骨髄の小核試験で陰性、ラット肝細胞の染色体異常試験で陰性、ラット肝細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性、トランスジェニックマウスを用いた肝臓遺伝子突然変異で陰性の報告がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験でほとんど陰性であるが、一部陽性 (TA98(S9+)) の報告がある。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験で陽性、ヒトリンパ球の染色体異常試験で陽性、陰性、ヒトリンパ球の姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある。ヒト粘膜細胞や哺乳類培養細胞を用いたDNA損傷試験で陽性、陰性の結果の報告がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。

【参考データ等】
(3) ヒトのデータでは、少数の作業員に基づいた結果であるが、本物質にばく露された作業員の末梢血リンパ球において、染色体異常で陽性、陰性、姉妹染色分体交換で陰性の知見がある (IARC 117 (2019)、NTP RoC (14th, 2016)、IRIS Tox Review (2010)、環境省発がん性の定性的評価 (2003)) 。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(6) より、IARCがヒトでも実験動物でも発がん性の十分な証拠があるとしてグループ1に分類していることに基づき、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ1 (IARC 117 (2019))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2014))、EPAでL (likely to be carcinogenic to humans) (IRIS (2010))、NTPでペンタクロロフェノールとその合成副産物に対してR (Reasonably anticipated to be human carcinogens) (NTP RoC (14th, 2016))、MAK (DFG) で2 (DFG List of MAK and BAT values (2019))、EU CLPで2 (EU CLP分類 (Access on May 2020)) に分類されている。
(2) 本物質へのばく露に関連するがんのリスクに関する疫学研究として4つの職業コホート研究と7つの症例対照研究が報告されており、本物質へのばく露後の非ホジキンリンパ腫 (NHL) のリスク上昇が4つのコホート研究と3つの症例対照研究で報告された。カナダの14の製材所で少なくとも1年間雇用された男性労働者27,000人を対象としたコホート研究では、本物質への累積ばく露量とNHL及び多発性骨髄腫の発生率に有意な正の相関があった。米国の化学会社が1937年から1980年の間に雇用した本物質生産労働者の小規模コホート研究では、本物質へのばく露によるNHLからの死亡率で有意な増加が認められた (IARC 117 (2019))。
(3) 雌雄のマウスに本物質 (純度90.4%) を2年間混餌投与した発がん性試験において、雄では肝細胞腫瘍 (腺腫及びがん) 及び副腎の褐色細胞腫、雌では血管肉腫の発生率の有意な増加がみられた。これより、本物質の発がん性に関して、雄マウスでは明らかな証拠 (clear evidence) が、雌マウスではある程度の証拠 (some evidence) があると結論された (NTP TR349 (1989)、IARC 117 (2019))。
(4) 雌雄のラットに本物質 (純度99%) を2年間混餌投与した発がん性試験において、雄では悪性中皮腫の発生率の有意な増加と鼻腔の扁平上皮がんの増加がみられた。雌では腫瘍の発生はみられなかった。これより、本物質の発がん性に関して、雌ラットでは証拠は得られず (no evidence)、雄ラットではある程度の証拠 (some evidence) があると結論された (NTP TR483 (1999)、IARC 117 (2019))。
(5) 雌のトランスジェニックマウスに本物質を20週間又は26週間経皮適用した試験では、皮膚乳頭腫の発生率の有意な増加が認められた。マウスで3つのイニシエーション−プロモーション試験 (混餌) が実施され、肝細胞腺腫又はがん、肝臓の胆管腫及び胆管がんの発生が促進された (IARC 117 (2019))。
(6) 本物質の発がん性の作用機序として、@酸化ストレス及びA遺伝毒性の誘発、B受容体介在性影響(抗エストロゲン作用)、C細胞増殖、Dその他細胞死又は栄養素供給の変化を生じ、ヒトでこれらの機序が作動するという強い証拠がある (IARC 117 (2019))。

生殖毒性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分1Bとした。

【根拠データ】
(1) 日本産衛学会では、ヒトのデータは不十分であるが、実験動物において母体毒性のみられない用量で胎児毒性がみられていること、成長・発達に重要な役割を持つ甲状腺ホルモン分泌の低下が複数の種でみられることを根拠として生殖毒性第2群 (ヒトに対しておそらく生殖毒性を示すと判断される物質) に分類している (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
(2) 雌ラットの妊娠6〜15日に経口投与した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で頭蓋骨の骨化遅延、皮下浮腫、肋骨、椎骨及び胸骨の異常が認められている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。

【参考データ等】
(3) ラットを用いた経口投与による2世代生殖毒性試験において、母体に全身毒性の出現する用量で児動物体重の減少、生後4 日までの児の死亡数の増加、児の性成熟の遅延、精子数の減少、着床数低下、胎児の吸収の増加等がみられている (産衛学会生殖毒性提案理由書 (2014))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分1 (神経系、心臓) 、区分3 (気道刺激性) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質は酸化的リン酸化を脱共役することが知られており、急性及び慢性の吸入ばく露や経皮ばく露において、その作用機序を介した体温の上昇、呼吸数及び心拍数の増加、神経性の筋力低下、痙攣及び心不全による死亡が複数例報告されている (ACGIH (7th, 2014))。
(2) 本物質の一般的な中毒症状として、運動失調、精神的及び肉体的疲労、頭痛、めまい、見当識障害、食欲不振、吐き気、嘔吐、呼吸困難、高熱、頻脈、代謝率の上昇がある。最も顕著な症状として、極端な脱力感、体温上昇及び多量の発汗がある。 心停止と中毒によって死亡し、通常、顕著な死後硬直を示す (EHC 71 (1987))。
(3) 急性の全身中毒症状は、頭痛、発汗、抑うつ、吐き気、脆弱、まれに発熱であり、頻度の高い症状は頻脈、頻呼吸、胸痛、口渇、腹痛である (IPCS PIM 405 (1989))。
(4) ACGIHによる作業環境許容濃度は、本物質の職業曝露による上気道刺激及び眼刺激の報告に基づき設定されている (ACGIH (7th, 2014))。

【参考データ等】
(5) イヌ、ウサギ、ラット及びモルモットで、多量の本物質の吸収 (投与量及び投与経路は不明) により、呼吸促迫、血圧上昇、発熱、高血糖、尿糖、蠕動促進がみられたとの報告がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))。
(6) げっ歯類では、本物質の急性毒性症状として、酸化的リン酸化の脱共役に伴う高熱や、振戦、痙攣及び正向反射の喪失がみられたとの報告がある (NTP TR483 (1999))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5)、(9) よりヒトにおいて神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓及び皮膚への影響がみられるとの情報があり、(7)、(8) より実験動物においても区分1の用量で腎臓、区分2の用量で肝臓への影響がみられたことから、区分1 (神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、皮膚) とした。なお、皮膚への影響については、(6) で指摘されているように市販品に含まれる不純物の影響の可能性がある。情報の再検討の結果、旧分類で標的臓器としていた血液系については本物質の標的臓器には含まれないと判断し、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質を用いた木材の加圧処理に従事した労働者で、不眠症やめまいが報告されている (EHC 71 (1987))。また、木材保存剤へのばく露により本物質とγ-ヘキサクロロシクロヘキサン (CAS番号 58-89-9) の血中濃度が高値であった15人の女性で、疲労、注意散漫、意欲の減退、気分の落ち込みといった自覚症状の増加と、複数の神経行動学的能力に関する客観的テストでのパフォーマンスの低下が報告されている (ATSDR (2001))。
(2) 気中濃度1 mg/m3以上の本物質にばく露された労働者が、痛みを伴う鼻の炎症を訴えたとの報告がある (EHC 71 (1987)、MAK(DFG) vol.3 (1992))。
(3) 本物質の職業ばく露または誤用に関連したヒトの肝臓及び腎の異常が知られており、肝臓では、脂肪浸潤、小葉中心変性、及びAST、ALT活性の上昇といった肝臓の異常が報告されている (NTP TR483 (1999))。また、腎臓では、可逆性のクレアチニンクリアランスの低下及びリンの再吸収に伴う腎機能の変化が報告されている (EHC 71 (1987))。
(4) 本物質は酸化的リン酸化を脱共役することが知られており、急性及び慢性の吸入ばく露や経皮ばく露において、その作用機序を介した体温の上昇、呼吸数及び心拍数の増加、神経性の筋力低下、痙攣及び心不全による死亡が複数例報告されている (ACGIH (7th, 2014))。
(5) 本物質はヒトで皮膚、鼻粘膜、気道への刺激性、塩素ざ瘡、憂鬱、頭痛、晩発性皮膚ポリフィリン症、肝臓、腎臓の機能変化、不眠、めまいを引き起こすとの報告がある (EHC 71 (1987))。
(6) 本物質に直接皮膚接触した労働者が塩素ざ瘡を発症したとの報告があるが、これは本物質の市販品に含まれるダイオキシン関連の不純物に起因すると考察されている (ACGIH (7th, 2014))。
(7) 本物質のマウスの6ヵ月間混餌投与試験では、200 ppm (ガイダンス値換算: 34.3〜34.6 mg/L、区分2の範囲) 以上で膀胱表面上皮の褐色色素沈着、鼻粘膜化生、肝臓絶対重量の増加、肝細胞の核や細胞の肥大、変性がみられた。また、雌では200 ppm (ガイダンス値換算: 34.6 mg/L、区分2の範囲) 以上で自発運動の増加、驚愕反応の亢進がみられた (NTP TR349 (1989))。
(8) 本物質のラットの2年間混餌投与試験では、10 mg/kg (区分1の範囲) 以上で雄に腎尿細管の褐色色素沈着、30 mg/kg (区分2の範囲) で雌雄に血清ALT活性の上昇がみられた (EHC 71 (1987)、MAK (DFG) vol.3 (1992))。
(9) 本物質は労規則35条において、皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は代謝亢進が記載されている (労働省告示第三十三号 (1996))。

【参考データ等】
(10) 本物質の市販品にはポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシンやジベンゾフラン (CAS番号 132-64-9) 等が不純物として含まれ、これらの影響による毒性も示唆されている (NTP TR483 (1999))。
(11) 3%の本物質と1.5%のテトラクロロフェノール (CAS番号 58-90-2) に継続的にばく露されていた21歳男性で、再生不良性貧血による死亡が報告されているが、1例のみの報告である (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1989))。カナダの木工労働者128人の原因不明の貧血と本物質へのばく露との関係を調査した研究では、本物質へのばく露は木工労働者の貧血の有病率と関連しないと結論付けられている (EHC 71 (1987))。


誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)魚類 (ニジマス) による96時間LC50 = 0.018 mg/L (環境省リスク評価第1巻 (2002)) であることから、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急速分解性がなく (BODによる分解度:1% (既存点検 (1982))) 、甲殻類 (ネコゼミジンコ属) の10日間NOEC < 0.0041 mg/L (環境省リスク評価第1巻 (2002)) から、区分1とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3155
国連品名PENTACHLOROPHENOL
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級II
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*154
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【ペンタクロルフェノール】
労働安全衛生法作業環境評価基準(法第65条の2第1項)【29 ペンタクロルフェノール及びそのナトリウム塩】
特殊健康診断対象物質・現行取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第1項)【3 ペンタクロルフェノール及びそのナトリウム塩】
特定化学物質第2類物質、管理第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2,5号)【31 ペンタクロルフェノール及びそのナトリウム塩】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【539 ペンタクロロフェノール及びそのナトリウム塩】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【539 ペンタクロロフェノール及びそのナトリウム塩】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【404 ペンタクロロフェノール】
毒物及び劇物取締法劇物(指定令第2条)【94 ペンタクロルフエノールを含有する製剤】
劇物(法第2条別表第2)【80 ペンタクロルフエノール】
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号430 ペンタクロロフェノール(平成23年4月1日をもって廃止)】
旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項)【旧番号41 ペンタクロロフェノール(平成23年4月1日をもって廃止)】
第1種特定化学物質(法第2条第2項・施行令第1条)【31 ペンタクロロフェノール又はその塩若しくはエステル】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 PCP】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】3155 ペンタクロロフェノール】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】3155 ペンタクロロフェノール】
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2チ 有機塩素系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】3155 ペンタクロロフェノール】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)【28 フェノール類】
水質汚濁防止法指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)【55 フエノール類及びその塩類】
農薬取締法販売禁止農薬(法第18条第2項、平成15年3月5日省令第11号)【19 ペンタクロロフェノール】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用