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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル
作成日 2009年3月30日
改訂日 2018年3月16日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル
化学品の英語名称Methacrylic Acid 2-Hydroxyethyl Ester
製品コードR06-C-110-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限熱硬化性塗料・接着剤・コンタクトレンズ原料(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成29年度(2017年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
呼吸器感作性区分1
皮膚感作性区分1
分類実施日
(環境有害性)
平成29年度(2017年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性-

GHSラベル要素
絵表示健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報皮膚刺激
強い眼刺激
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
注意書き
 安全対策取扱い後はよく手を洗うこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
 保管情報なし
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別
化学名又は一般名メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル
慣用名又は別名2-ヒドロキシエチル=メタクリラート
英語名Methacrylic Acid 2-Hydroxyethyl Ester
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C6H10O3 (130)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号868-77-9
官報公示整理番号
(化審法)
2-1044
官報公示整理番号
(安衛法)
-
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で安静にさせる。医師に連絡すること。
意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。
呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。
気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。
気道/呼吸器疾患の刺激が発生した場合:できるだけ早く、グルココルチコイド吸入スプレーを吸入する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。
皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。
アルコール、ガソリン、その他の溶剤は絶対に使用しない。
持続的な刺激や大量の接触の場合: 医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
眼に入った場合できるだけ早く障害のない眼を保護しながら、流水で10分間、患部の眼を広く広げたまぶたですすぐこと。
刺激が感じられなくても、医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
飲み込んだ場合意識がある場合は、コップ1〜2杯の水を飲ませる。
自然嘔吐の場合は、嘔吐物が呼吸器に侵入するのを防ぐため、頭を胸より低くし、うつぶせの姿勢にする。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状急性: 本物質は、眼、皮膚および気道を刺激する。 液体を飲み込むと、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある。
慢性: アレルギー性皮膚疾患
以上、GESTIS、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、乾燥消火剤、アルコール耐性泡消火剤、二酸化炭素
以上、GESTIS、ICSC参照。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性火災の場合、有害物質(一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法周囲の容器を水スプレーで冷却する。
可能であれば、容器を危険区域から移動する。
加熱すると圧力が上昇し、破裂や爆発の危険がある。
着火(発火)源を遮断する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。
以上、GESTIS参照。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置個人用保護具:化学保護衣および空気中濃度に応じた有機ガスおよび蒸気用フィルター付マスク
以上、ICSC参照。
環境に対する注意事項容器とパイプラインにラベルを貼ること。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材こぼれた液体は吸収剤(珪藻土、バーミキュライト、砂など)で吸収し、規制に従って廃棄すること。
その後、周囲を換気し、こぼれた場所を洗浄する。
少量の物質の回収:ハロゲンフリー有機溶剤およびハロゲンフリー有機物質の溶液の回収容器に入れる。
廃棄物をシンクやゴミ箱に入れたり置いたりしないこと。
収集容器にはラベルを貼ること。容器は換気の良い場所に保管すること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
二次災害の防止策火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策すべての部屋と備品は定期的に清掃する必要がある。
「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する
以上、GESTIS参照。
安全取扱い注意事項機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。
周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。
容器を開けたままにしないこと。
補充、移し替え、または開放使用のためには、十分な換気を確保する必要がある。
飛沫を避けること。
ラベルの付いた容器にのみ注入すること。
裸火禁止。 97℃以上では、密閉系および換気の良い場所で取り扱うこと。
以上、GESTIS、ICSC参照。
接触回避ガス。
自然発火性物質
水と接触した可燃性ガスを放出する物質
硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤
有機過酸化物および自己反応性物質
危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しないこと。
以上、GESTIS参照。
衛生対策眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
使用後は手を洗うこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件容器にはラベルを貼付すること。
できるだけ元の容器に保管すること。
容器を密閉すること。
推奨保管温度:2?8℃
物質は光に敏感なため、遮光すること。
以上、GESTIS参照。
安全な容器包装材料消防法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2024年度版)-
ACGIH (2024年版)-
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼および身体洗浄のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
作業エリアは、可能であれば物理的に分離する必要がある。
作業エリアの換気を良好に保つこと。
作業場での洗浄設備を設置する。
洗眼設備を設置し、標識を付ける。
シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意すること。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時には、呼吸保護具を着用する。
フィルター装置の使用限界を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明な状況では、絶縁装置を使用すること。
以上、GESTIS参照。
手の保護具厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」参照のこと。
必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に清掃し、換気の良い場所に保管すること。
次の材料は保護手袋に適している(透過時間>= 8時間):ポリクロロプレン - CR (0.5 mm)ブチルゴム - ブチル(0.5 mm)フッ素炭ゴム - FKM (0.4 mm)
以下の素材の保護手袋は、連続して4時間以上着用しないこと(透過時間>= 4時間)ポリ塩化ビニル - PVC(0.5 mm)
以上、GESTIS参照。
眼の保護具必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体
無色透明
臭いエーテル様
融点/凝固点-12 ℃ (HSDB in PubChem (2024))
沸点、初留点及び沸騰範囲67 ℃ (3.5 mmHg) (HSDB in PubChem (2024))
可燃性可燃性 (ICSC (2008))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点97 ℃ (Closed cup) (HSDB in PubChem (2024))
106 ℃ (Closed cup) (GESTIS (2024))
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率8.4 mm2/s (20℃) (ICSC (2008))
3.42 mm2/s (40℃) (ECHA CHEM(2024))
溶解度水:水に混和 (GESTIS (2024))
有機溶剤:通常の有機溶剤に可溶 (HSDB in PubChem(2024))
n-オクタノール/水分配係数log Kow:0.42 (EU CLP CLH (2022))
蒸気圧0.126 mmHg (25℃) (HSDB in PubChem (2024))
0.08 hPa (20℃) (GESTIS (2024))
密度及び/又は相対密度1.07 g/cm3 (20℃) (GESTIS (2024))
相対ガス密度4.49 (空気=1) (GESTIS (2024))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性物質は可燃性である。
以上、GESTIS参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性可燃性。 97℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
加熱や過酸化物との接触、光の影響下で重合することがある。 加熱すると、激しく燃焼、または爆発することがある。 刺激臭のある煙を生じる。 安定化していない場合、 自然に重合することがある。
以上、ICSC参照。
避けるべき条件火気、加熱、高温、静電気、火花、爆発性混合気の形成
直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質酸化剤、還元剤等
危険有害な分解生成物火災の場合、有害物質(一酸化炭素と二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、5,564 mg/kg (SIDS (2005)、SIDS Dossier (2005))、5,050 mg/kg、8,700 mg/kg、11,200 mg/kg、> 4,000 mg/kg (SIDS Dossier (2005)) の5件の報告に基づき、区分に該当しないとした。
経皮ウサギのLD50値として、> 3,000 mg/kg (SIDS (2005)、DFGOT vol. 13 (1999)) との報告に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(3)より、非刺激性ないし軽微な皮膚刺激性物質との結果が得られているが、1980年代前半以前の現行ガイドラインに準拠した試験法に基づく結果ではなく試験条件等の記述も十分ではない。(4)より、本物質について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づき、皮膚障害が記載されていることから区分2とした。新たな知見を基に、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)ウサギを用いた初期の皮膚刺激性試験(原液0.1 mL (pH= 3)、4時間適用)において、適用24時間後の観察で2/6例に腐食性反応がみられた。その他の試験結果から、本物質はウサギの皮膚に対し非刺激性ないし軽微な皮膚刺激性物質と判断されている(SIAR & SIDS Dossier (2001)、AICIS IMAP (2014))。
(2)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(原液0.5 mL、24時間閉塞適用)では、2/6例に各々平均スコア0.5(24及び72時間後)及び1(24時間後)の紅斑がみられたが、残りの4例には紅斑は認められなかった(平均スコア0)。浮腫は全例ともみられなかった(ECHA CHEM (Accessed Aug. 2024))。
(3)ウサギ(n= 6)を用いた皮膚刺激性試験(原液0.5 mL、24時間閉塞適用)では、5/6例では紅斑はみられず、1例は平均スコア0.5(24及び72時間)で、72時間以内に完全回復した。浮腫は全例ともみられなかった(同上)。

【参考データ等】
(4)本物質(二―ヒドロキシエチルメタクリレート)について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、皮膚障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。
(5)EU CLP分類では、本物質を区分2としている(EU CLP CLH (2022))。
(6)本物質の50%溶液(アセトン-メタノール混合液中)の閉塞20時間適用では、回復可能な軽度〜重度の紅斑が生じた(MAK(DFG) (1997))。
(7)ウサギの剃毛皮膚に本物質の35%水溶液0.03 mLを7日間、毎日2回塗布したが、僅かな皮膚刺激がみられただけである。組織学的に皮膚の形態変化はみられなかった(MAK(DFG) (1999)、SIAR (2001))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験で眼刺激性指数が4.6 (最大値13) で中等度 (moderately) の刺激性との記載や、別のウサギでの試験で角膜の潰瘍と肥厚が生じたが15日後には軽度の角膜障害の1匹を除いて回復して本物質は強い (highly) 刺激性を示したとの記載 (いずれもSIDS (2005)) がある。また、ウサギの眼への本物質の適用で角膜傷害が7日以上残り中等度から強度 (moderate to severe) の刺激性を示したとの記載 (DFGOT vol. 13 (1999)) がある。よって、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2, H319に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。
呼吸器感作性【分類根拠】
(1)、(2)より区分1とした。新たな知見を基に、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)EUの調査において、メタクリル酸エステルへの職業ばく露により喘息を発症し、その原因物質として本物質の疑いが濃い症例は4つの文献で19症例が挙げられている。これらは本物質(を含む試験材料)による吸入負荷試験(チャレンジテスト)で特定された(RAC Opinion (2023))。
(2)22年間勤務した女性歯科医師が職業性皮膚炎を発症し、眼と呼吸器症状を呈した症例では、本物質を含むプライマーと接着剤を用いて6 m3のチャンバー内で吸入負荷試験を行った。接着剤とプライマーは咳、鼻結膜炎、FEV1の減少を誘発した。パッチテストでは1% 本物質で陽性となり、まぶたのかゆみ、腫れ、痛みを誘発した。したがって、本物質に対する明らかな感作反応と考えられた(EU REACH CoRAP (2021))。

【参考データ等】
(3)本物質と化学構造類似のメタクリル酸メチル(CAS登録番号 80-62-2)は日本産業衛生学会で気道感作性第2群に分類されている(産衛学会許容濃度等の勧告 (2023))。
皮膚感作性本物質を取扱うことにより接触性皮膚炎を発症した歯科技工士、及び本物質の80%溶液を扱う実験技術者がパッチテストで本物質に対して陽性であったとの報告や、電子顕微鏡包埋剤やソフトコンタクトレンズ製造者が本物質に感作された事例の他に複数の事例の記載 (SIDS (2005)、DFGOT vol. 13 (1999)) がある。モルモットを用いた皮膚感作性試験では、陽性と陰性の試験結果が複数報告されている (SIDS (2005))。これらの結果から本物質は感作性を有すると考え、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Sens. 1, H317に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により区分に該当しないが選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラットの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性 (SIDS (2005))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、SIDS (2005)、DFGOT vol. 13 (1999))。
発がん性データ不足のため分類できない。
生殖毒性ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、1,000 mg/kg/dayまでの用量で親動物、児動物ともに生殖発生影響は認められなかった (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、SIDS (2005))。しかし、スクリーニング試験のため、この結果のみで区分に該当しないとはできず、分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質のヒトでの単回ばく露の情報はない。実験動物ではラットの単回経口投与試験において、投与後10分〜24時間に用量依存性の活動性低下、振戦、協調運動性障害、歩行異常、四肢筋肉の緊張低下、体温上昇、立毛が認められたが、生存動物ではその後、完全に回復したとの報告がある。この試験の用量は区分2超の3,403、4,259、5,350、6,741 mg/kg、死亡率は各々1/10、1/10、4/10、8/10であり、被験物質に関連した病理組織学的変化は認められなかったと記載されている。症状がみられた最小用量の記載はないが、この試験の用量は全て区分2超である (SIDS Dossier (2005))。以上より、症状からは中枢神経系への影響が考えられるが、区分2超の用量でみられているため、分類できないとした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトに関する情報はない。
実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、区分2のガイダンス値の範囲内である30 mg/kg/day (90日換算: 16.3 mg/kg/day) 以上で尿素窒素の増加傾向あるいは増加、100 mg/kg/day (90日換算: 54.4 mg/kg/day (雄)、45.6 mg/kg/day (雌)) 以上で腎臓の相対重量増加がみられている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、SIDS (2005))。なお、腎臓の病理組織学的所見は、区分2のガイダンス値の範囲を超える1,000 mg/kg/day (90日換算: 544 mg/kg/day (雄)、456 mg/kg/day (雌)) の雄においてのみ尿細管拡張・集合管拡張がみられている (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on August 2017)、SIDS (2005))。
以上、みられた影響については分類根拠としては不十分であったため、分類できないとした。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類 (Pseudokirchneriella subcapitata)72時間EC50(速度法)= 710 mg/L(環境省生態影響試験:2017)、魚類(メダカ)96時間LC50 >100 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 380 mg/L(ともに環境省生態影響試験:2017、OECD SIDS:2001)であることから、区分に該当しないとした。
水生環境有害性 長期(慢性)急速分解性があり(良分解性、BODによる平均分解度:95%(化審法DB:1989))、蓄積性がなく(LogKow:0.47 (SRC PhysProp Database:2017))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC(繁殖阻害)= 24 mg/L(環境省生態影響試験:2017)であることから、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性-
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号該当しない
品名(国連輸送名)該当しない
国連分類該当しない
副次危険該当しない
容器等級該当しない
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当する
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報消防法の規定に従う
特別な安全上の対策消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*-
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)【1994 メタクリル酸2−ヒドロキシエチル】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)【1994 メタクリル酸2−ヒドロキシエチル】
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2) 【メタクリル酸2−ヒドロキシエチル】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) (令和7年4月1日以降)
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【2−ヒドロキシエチルメタクリレート】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法-
消防法第4類 引火性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) 【5 第三石油類水溶性液体】
海洋汚染防止法有害液体物質(Z類物質)(施行令別表第1) 【(60) 酸素含有脂肪族炭化水素】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」