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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジニウム=ジブロミド
作成日 2002年12月2日
改訂日 2006年8月21日
改訂日 2018年3月16日
改訂日 2019年3月15日
改訂日 2024年3月29日
化学品の名称1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジニウム=ジブロミド
化学品の英語名称6,7-Dihydrodipyrido[1,2-a:2',1'-c]pyrazine-5,8-diium dibromide
製品コードR05-C-067-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限農薬(除草剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R6.3.29、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版 (Ver2.1))を使用  ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(経皮)区分3
急性毒性(吸入:粉塵、ミスト)区分2
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
皮膚感作性区分1A
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系、腎臓)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(呼吸器、眼)、区分2(消化管)
分類実施日
(環境有害性)
H30.3.30、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分1
水生環境有害性 長期(慢性)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
皮膚に接触すると有毒
吸入すると生命に危険
皮膚刺激
強い眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系、腎臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器、眼の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による消化管の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けんで洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性-

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名6,7−ジヒドロジピリド[1,2−a:2’,1’−c]ピラジン−5,8−ジイウム=ジブロミド
慣用名又は別名ジクワット
ジクワットジブロミド
1,1’−エチレン−2,2’−ビピリジニウムジブロミド
1,1’−エチレン−2,2’−ビピリジニウム=ジブロミド
2,2’−ジピリジリウム−1,1’−エチレンジブロミド
英語名6,7-Dihydrodipyrido[1,2-a:2',1'-c]pyrazine-5,8-diium dibromide
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C12H12Br2N2 (344)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号85-00-7
官報公示整理番号(化審法)5-3913
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動させる。気道に炎症がある場合はできるだけ早く、グルココルチコイド吸入用スプレーで繰り返し深呼吸させる。酸素吸入は行わない。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を多量の流水/石けんで少なくとも10〜20分間洗浄する。医師の診察/手当を受けること。
以上、GHS分類結果、GESTIS参照。
眼に入った場合多量の流水で10分間洗浄する。できればコンタクトレンズを外す。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合口をすすぐ。活性炭懸濁水(コップ1杯の水に大さじ3杯を懸濁させたもの)を飲ませる。意識がある場合は嘔吐させ、これを繰り返す。強力な下剤である硫酸ナトリウム水溶液(コップ 1 杯の水に大さじ少し山盛り 1 杯)を飲ませる。直ちに医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳、咽頭痛、鼻出血、気道への刺激。
皮膚:発赤、非常に軽度から中程度の刺激 (角質増殖の可能性)、高濃度では変色や爪の損傷。
眼:充血、痛み、軽度から中程度の刺激(結膜炎)。
経口摂取:吐き気、嘔吐、口腔内の潰瘍、下痢、粘膜の腐食による強い刺激 (口、喉、胸、腹部の灼熱痛)、腹部けいれん。
吸収:神経系への影響(神経過敏、過敏症、落ち着きのなさ、攻撃性、完全な見当識障害、失認、反射神経の制限、おそらくパーキンソン病、強直間代性けいれんのような症状、昏睡状態で死亡の可能性)、肺組織の損傷 (びまん性浸潤)、腎臓、肝臓、腸の重度の損傷による機能変化 。
以上、GESTIS、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤不燃性。周辺の火災に応じた適切な消火剤を使用する。
以上、ICSC参照。
使ってはならない消火剤情報なし
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(亜硝酸ガス;窒素酸化物、臭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。
以上、ERG参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用する。
環境に対する注意事項化学品を扱う場合の一般的な注意として、周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
こぼれた物質を密閉式容器内に掃き入れる。
残留分を注意深く集め、安全な場所に移す。
粉塵の拡散を防ぐ。
この物質を環境中に放出してはならない。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
換気が不十分な場合は呼吸用保護具を着用すること。
以上、GHS分類結果参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策粉じんを吸入しないこと。取扱後、食事前には手を洗うこと。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GHS分類結果、ICSC参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管する。容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。金属から離しておく。
以上、GHS分類結果、PubChem参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規及び毒劇法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度等
日本産衛学会(2023年版)-
ACGIH(2023年版)TLV-TWA:0.5 mg/m3(I) (Skin; A4)
TLV-TWA:0.1 mg/m3(R) (Skin; A4)
設備対策局所排気を設置する。
以上、ICSC参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時(例:意図しない物質の放出)には、呼吸保護具を着用する。
作業者が粉じんにばく露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。
防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。
−酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。
−防じんマスクは、国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
手の保護具適切な不浸透性の保護手袋を着用する。
保護手袋の選択については、厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」を参照のこと。
眼の保護具顔面シールドか安全ゴーグルを着用する。
以上、PubChem参照。
皮膚及び身体の保護具ゴムエプロン、長靴を着用する。
以上、PubChem参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
無色〜黄色
臭いデータなし
融点/凝固点337 ℃(HSDB in PubChem(2023))
加熱により分解する。(GESTIS(2023))
沸点、初留点及び沸騰範囲データなし
可燃性可燃性、低引火性(GESTIS(2023))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点>90 ℃(GESTIS(2023))
自然発火点データなし
分解温度335 ℃(ICSC(2021))
約 325 ℃(GESTIS(2023))
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 718 g/L(20℃)(GESTIS(2023))
水: 70 g/100mL(20℃)(ICSC(2001))
非極性有機溶剤:(実用上、不溶)(HSDB in PubChem(2023))
n-オクタノール/水分配係数log Pow: -4.60(20℃)(ICSC(2021))
log Kow: -4.60(HSDB in PubChem(2023))
蒸気圧<0.0001 Pa(ICSC(2021))
<1×10-7 mmHg(25℃)(HSDB in PubChem(2023))
密度及び/又は相対密度1.22〜1.27 g/cm3(20℃)(GESTIS(2023))
1.2 g/cm3(ICSC(2021))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性335℃で分解する。 窒素酸化物および臭化水素などの有毒なフュームを生じる。
危険有害反応可能性火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
以下の条件を満たす場合、粉じん爆発の危険性がある。
- 粉末、粉塵のような非常に細かく分散した状態にある。
- 空気中に十分な量が舞い上がっている。
- 炎、火花、静電気放電などの着火源が存在する。
避けるべき条件高温
混触危険物質情報なし
危険有害な分解生成物窒素酸化物、臭化水素

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、214 mg イオン/kg (雄) (本物質換算値: 400 mg/kg)、222 mg イオン/kg (雌) (本物質換算値: 415 mg/kg)、231 mg イオン/kg (雌雄) (本物質換算値: 432 mg/kg) (いずれもJMPR (1993))、600 mg/kg (雌)、810 mg/kg (雄) (いずれもEPA Pesticide (1995)) との報告に基づき、区分4とした。旧分類が使用した農薬抄録 (1993) は入手できず、確認不能であるため使用しなかった。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
経皮ウサギのLD50値として、50〜100 mg イオン/kg (本物質換算値: 93〜187 mg/kg) (JMPR (1993))、262 mg/kg (雄)、288.5 mg/kg (雌雄)、315 mg/kg (雌) (いずれもEPA Pesticide (1995))、> 400 mg イオン/kg (雌) (本物質換算値: > 747 mg/kg) (JMPR (1993)) の5件の報告がある。1件は区分2、3件は区分3に該当し、1件は区分不能である。件数の多い区分を採用し、区分3とした。旧分類が使用した農薬抄録 (1993) は入手できず、確認不能であるため使用しなかった。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
吸入: ガスGHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミスト本物質のエアロゾルを用いたラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、0.121 mg イオン/L (雄) (本物質換算値: 0.226 mg/L) 及び0.132 mg イオン/L (雌) (本物質換算値: 0.247 mg/L) (いずれもJMPR (1993)) に基づき、区分2とした。新たな情報源の使用により、旧分類から区分を変更した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ラットを用いた皮膚刺激性試験において、本物質が中等度の刺激性を有するとの報告 (JMPR (1993)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2 に分類されている (ECHA CL Inventory (Accessed June 2017))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質が重度から軽度の刺激性を有するとの報告 (EPA Pesticide (1995)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2 に分類されている (ECHA CL Inventory (Accessed June 2017))。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(OECD TG 406、GLP、皮内投与:0.1%溶液)において、陽性反応率は31%(≧30%で区分1A)であったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2019)、REACH登録情報 (Accessed Dec. 2023))。
生殖細胞変異原性ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、ラットの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性 (EPA Pesticide (1995))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞を用いたマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験で陽性である (EPA Pesticide (1995))。
発がん性ラット及びマウスに2年間混餌投与した発がん性試験において、ラット、マウスともに発がん性の証拠はないと結論された (ACGIH (7th, 2001)、EPA Pesticide (1995))。ただし、ラットの雄では高用量 (375 ppm) で骨肉腫の頻度増加 (3/49例 (6%)) がみられた (背景データ頻度は0〜2%) が、EPAでは本物質投与による影響ではなく自然発生的なものと結論された (EPA Pesticide (1995))。既存分類として、EPAはグループEに (EPA Pesticide (1995))、ACGIHはA4に分類した (ACGIH (7th, 2001))。より新しいACGIHの分類結果を基に、分類できないとした。
生殖毒性ラットを用いた混餌投与による2世代試験において、F0及びF1の高用量群 (F0は400 ppm、F1は400 ppm を4週間投与後に240 ppmに減量) の親動物では、一般毒性として体重増加抑制に加え、口蓋及び舌の潰瘍、眼の病変 (眼球混濁、白内障) などがみられ、生殖発生影響として、一腹当たりのF1児数の減少、F1及びF2児動物の離乳時 (生後22日) の体重増加抑制がみられた (EPA Pesticide (1995)、環境省リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006))。妊娠ラット又は妊娠ウサギの器官形成期に強制経口投与した発生毒性試験において、ラットの試験では母動物毒性発現用量 (4 mg/kg/day以上で体重増加抑制、摂餌量減少) を超える40 mg/kg/day で腎出血を呈する胎児の頻度増加が、ウサギの試験では母動物毒性用量 (3 mg/kg/day以上で体重増加抑制、摂餌量減少) を超える10 mg/kg/day で肝臓の脆弱化や斑状の肝臓を呈した胎児の頻度増加が報告された (EPA Pesticide (1995))。
  以上、ラット2世代試験で同腹児数の減少、ラット及びウサギの発生毒性試験で肝臓・腎臓に肉眼的異常を認めた胎児の頻度増加がいずれも親動物の一般毒性用量でみられたことから、区分2とした。なお、旧分類とは異なる新しい情報源を用いたため、分類結果が変わった。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)ヒトでは本物質の経口摂取による中毒例が2例報告されている。1例では初期症状の腹痛に続いて乏尿と昏睡、ショックを起こして心停止を生じ、もう1例では腎不全、無尿、心室細動を起こして死亡したと記述されている (JMPR (1993))。摂取量が比較的少ない場合には、症状が24〜48時間みられない場合もあるが、その後、循環体液量が顕著に減少し (循環血液量減少症)、急性尿細管壊死と中枢神経系の出血性傷害を起こすとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。実験動物では、ラットの単回経口投与試験において区分1範囲の150 mg/kgで、下痢、立毛、尿失禁、爪先歩行、円背位および行動抑制が認められたとの報告がある (EPA Pesticide (1995))。また、ラット、マウス、ウサギ及びイヌでは経口LD50値は区分1範囲相当の62〜200 mg/kgであり、致死量の経口摂取後24時間はあまり症状がみられないが、その後、嗜眠、呼吸困難、体重減少、衰弱を起こして投与後2〜14日で死亡するとの記載がある (ACGIH (7th, 2001))。以上より本物質は中枢神経系と腎臓に影響を及ぼすと考えられる。したがって区分1 (中枢神経系、腎臓) とした。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトに関する情報はない。
  実験動物については、ラットを用いた3週間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において区分1のガイダンス値の範囲内である0.49 mg イオン/m3 (本物質換算: 0.91mg/m3) (ガイダンス値換算: 0.000152 mg/L) 以上で多巣性慢性間質肺炎、肺の発赤等、肺の絶対・相対重量増加の報告がある (環境省 リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006)、EPA Pesticide (1995))。また、ラットを用いた混餌による2年間反復経口投与毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である15 ppm (雄: 0.58 mg イオン/kg/day、本物質換算: 1.08 mg/kg/day、雌: 0.72 mg イオン/kg/day、本物質換算: 1.34 mg/kg/day) 以上で白内障、活性部分トロンボプラスチン時間の延長、75 ppm以上 (雄: 2.91 mg イオン/kg/day、本物質換算: 5.43 mg/kg/day、雌: 3.64 mg イオン/kg/day、本物質換算: 6.8 mg/kg/day) で水晶体の混濁、血中尿素窒素濃度の増加、血清の総タンパク質・アルブミンの減少、区分2のガイダンス値の範囲内である375 ppm (雄: 14.88 mg イオン/kg/day、本物質換算: 27.8 mg/kg/day、雌: 19.44 mg イオン/kg/day、本物質換算: 36.3 mg/kg/day) で平均赤血球容積・ヘモグロビン濃度の減少がみられ、イヌを用いた混餌による1年間反復経口投与毒性試験においても区分1のガイダンス値の範囲である2.5 mg イオン/kg/day (本物質換算: 4.67 mg/kg/day) 以上で白内障、区分2のガイダンス値の範囲である12.5 mg イオン/kg/day (本物質換算: 23.34 mg/kg/day) で体重増加の抑制、腎臓の絶対・相対重量の増加、大腸炎 (粘膜の厚さの減少、粘膜腺の消失あるいは異常、陰窩の上皮の過形成、杯細胞の活性増加) が認められている (環境省リスク評価第5巻:暫定的有害性評価シート (2006)、JMPR (1993))。
  以上から区分1 (呼吸器、眼)、区分2 (消化管) とした。
  なお、新たな情報源を用いたことから旧分類と分類結果が変更となった。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)甲殻類(Mysid Shrimp)96時間LC50 = 1.02 mg/L(EPA RED:1995)であることから、区分1とした。
水生環境有害性 長期(慢性)信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:0%(化審法DB:1984))、急性毒性区分1であることから、区分1とした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2781
品名(国連輸送名)ビピリジリウム系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)
国連分類6.1
副次危険-
容器等級試験結果によってT〜Vを決定する。
海洋汚染物質該当
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)
劇物(指定令第2条)
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害防止用保護具の選定マニュアル第1版」
修正履歴
R6.3.29:
・危険有害性の分類について「皮膚感作性(分類できない→区分1A)」のみ見直した。
・SDS全般について表記の見直し・改訂をした。