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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン
作成日 2010年2月1日
改訂日 2024年3月29日
化学品の名称N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン
化学品の英語名称N-(1,3-Dimethylbutyl)-N'-phenyl-1,4-phenylenediamine
製品コードR05-B-017-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限有機ゴム薬品(老化防止剤) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R6.3.29、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
皮膚感作性区分1A
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分2(血液系)
分類実施日
(環境有害性)
H21.3.31、ガイダンス(H20.9.5版)(GHS 2版)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分1
水生環境有害性 長期(慢性)区分1
GHSラベル要素
絵表示感嘆符健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
眼刺激
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けんで洗うこと。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性-

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン
慣用名又は別名N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
英語名N-(1,3-Dimethylbutyl)-N'-phenyl-1,4-phenylenediamine
1,4-Benzenediamine, N-(1,3-dimethylbutyl)-N'-phenyl-
6PPD
N-(1,3-dimethylbutyl)-n'-phenyl-p-phenylenediamine
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C18H24N2 (268)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号793-24-8
官報公示整理番号(化審法)3-136/3-368
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動させる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。気道に炎症がある場合はできるだけ早く、グルココルチコイド吸入用スプレーで繰り返し深呼吸させる。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を水と石けんで丁寧に洗浄する。アルコール、ガソリン、その他の溶剤は絶対に使用しない。皮膚刺激または発しん(疹)が生じた場合は医師の診察/手当を受けること。
以上、GHS分類結果、GESTIS参照。
眼に入った場合多量の流水で10分間洗浄する。できればコンタクトレンズを外す。その後も洗浄を続けること。眼の刺激が続く場合は医師の診察/手当てを受けること。
以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合口をすすぐ。意識があればコップ一杯の水(約200mL)を飲ませる。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳、気道への刺激の可能性。
皮膚:発赤。
眼:充血、軽度の刺激(異物感、流涙、通常は急速に回復)。
経口摂取:胃腸障害(下痢およびその他の症状)。
以上、GESTIS、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、耐アルコール泡消火薬剤、二酸化炭素。
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤棒状注水
以上、GESTIS参照。
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(亜硝酸ガス;窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。着火源となるものを遮断する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性は大きい。地面や河川、下水への流出を避ける。少量でも流出した場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
こぼれた物質を密閉式容器内に掃き入れる。
残留分を注意深く集め、安全な場所に移す。
粉塵の拡散を防ぐ。
この物質を環境中に放出してはならない。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を開けたままにしない。漏出を避ける。接触を避ける。粉じんの発生を避ける。使用する場合は十分な換気を確保すること。
以上、GHS分類結果、GESTIS参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策皮膚への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。粉じんの吸入を避ける。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。衣服との接触を避ける。汚染された衣類は交換し、注意深く洗うこと。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管する。容器を密閉し、涼しくて乾燥した換気の良い場所に保管すること。強酸化剤から離しておく。
以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度等
日本産衛学会(2023年版)-
ACGIH(2023年版)-
設備対策作業場所には換気設備を設置する。取り扱い場所の近くに洗浄のための設備を設ける。床に排水溝を設けないこと。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具緊急時(例:意図しない物質の放出)には、呼吸保護具を着用する。
作業者が粉じんにばく露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。
防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。
-防じんマスクは、国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
手の保護具適切な不浸透性の保護手袋を着用する。
保護手袋の選択については、厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」を参照のこと。
眼の保護具サイドガード付きの保護眼鏡を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具適切な保護衣または化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
茶色〜紫色
臭いデータなし
融点/凝固点45〜48 ℃(GESTIS(2023)、ICSC(2006))
50 ℃(HSDB in PubChem(2023))
沸点、初留点及び沸騰範囲370 ℃(計算値)(ICSC(2006))
230 ℃(13.3hPa)(GESTIS(2023))
約 370 ℃(計算値)(OECD(2004))
可燃性可燃性、低引火性(GESTIS(2023))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点200 ℃(密閉式)(ICSC(2006))
200 ℃(GESTIS(2023))
204 ℃(PubChem(2023))
自然発火点〜500 ℃(ICSC(2006))
約 500 ℃(GESTIS(2023)、OECD(2004))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 約 1 mg/L(50℃)(GESTIS(2023))
水: 0.01 g/100mL(ICSC(2006))
アセトン、酢酸エチル、メチレンクロライド:(可溶)(OECD(2004))
n-オクタノール/水分配係数log Kow: 5.4(ICSC(2006)、HSDB in PubChem(2023))
log Kow: 4.68(計算値)(OECD(2004))
蒸気圧6.85×10-3 Pa(計算値)(OECD(2004))
25℃(ほとんどない)(ICSC(2006))
密度及び/又は相対密度約 1.02 g/cm3(20℃)(GESTIS(2023))
1.02 g/cm3(20℃)(ICSC(2006))
0.995 g/cm3(50℃)(OECD(2004))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性燃焼すると分解する。
危険有害反応可能性分解により窒素酸化物などの有毒なフュームを生成する。 強酸化剤と反応する。
避けるべき条件火気、加熱
混触危険物質強酸化剤、塩素、過酸化水素
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(2)より、OECD TG及びGLP準拠の試験データを採用し、区分4とした。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:500〜2,000 mg/kg(OECD TG401、GLP)(厚労省 既存点検結果 (Accessed Nov. 2023)、SIAR (2004)、DFG MAK (2013))
(2)ラットのLD50:3,340〜3,580 mg/kg(SIAR (2004) 、DFG MAK (2013))
経皮【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ウサギのLD50:> 3,000 mg/kg(SIAR (2004) 、DFG MAK (2013))
吸入: ガス【分対根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(24時間適用、7日観察)において、皮膚刺激性影響はみられなかったとの報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(2)ウサギ(n=4)を用いた皮膚刺激性試験(OECD TG 404、4時間適用、7日観察)において、24/48/72時間後の紅斑スコアの平均は1.2、浮腫スコアの平均は0であったとの報告がある(DFG MAK (2013)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)より、区分2Bとした。

【根拠データ】
(1)ウサギ(n=3)を用いた眼刺激性試験(5日間観察)において、1時間後に軽度の発赤と浮腫、流涙、角膜領域のくすみがみられ、急性眼刺激指数(AOI)は20.6(区分2Bに相当)であり、72時間後には正常に回復したとの報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。

【参考データ等】
(2)ウサギ(n=6)を用いた眼刺激性試験(7日間観察)において、急性眼刺激指数(AOI)は1.2であり、みられた影響は72時間以内に完全回復したとの報告がある(DFG MAK (2013)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)〜(3)より、区分1Aとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(皮内投与:0.5%溶液)において、0.05%溶液惹起群及び0.5%溶液惹起群のそれぞれで50%及び90%の陽性反応がみられた(≧60%で区分1A)。ただし、他のフェニレンジアミン化合物に対する交差感作性も示された(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、CLH Report (2023))。
(2)モルモット(n=15)を用いたMaximisation試験(GLP、皮内投与:1%溶液)において、惹起終了24、48時間後の陽性率は12.5%溶液惹起群で40%(6/15例)、20%(3/15)、25%溶液惹起群で100%(15/15例)、93%(14/15例)であった(≧60%で区分1A)との報告がある(CLH Report (2023))。
(3)ヒト反復侵襲パッチテスト(HRIPT)において、本物質50%溶液を50名に適用したところ、5名が陽性であった。陽性を示した5名に追加的にN‐イソプロピル‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン(CAS登録番号:101-72-4)で惹起したところ、陽性反応はみられなかった(CLH Report (2023)、DFG MAK (2013))。

【参考データ等】
(4)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA)(OECD TG 429、GLP)において、刺激指数(SI値)は1.55(10%)、12.37(25%)、12.38(50%)であり、EC3値は12.06%(>2%で区分1B)と算出されたとの報告がある(CLH Report (2023))。
(5)マウス(n=4/群)を用いた局所リンパ節試験(LLNA:BradU)(OECD TG 442B相当、GLP)において、適用濃度:0.1 %、0.3 %、1%、3 %%溶液に対し刺激指数(SI値)は1.35(0.3%)、2.34(1%)、5.06(3%)であった(SI値≧1.8で区分1)との報告がある(CLH Report (2023)、DFG MAK (2013))。
(6)DFGではShに分類されている(List of MAK and BAT values (2022))。EUではSkin Sens. 1Aに分類提案中である(CLH Report (2023))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)In vivoでは、ラットの骨髄細胞を用いた強制経口投与(1,000 mg/kg)による染色体異常試験、マウスの骨髄細胞を用いた2回腹腔内投与(最大200 mg/kg、24時間以内)による染色体異常試験、マウスの骨髄細胞を用いた単回腹腔内(1,000 mg/kg)又は2回腹腔内投与試験(最大200 mg/kg、24時間以内)による2つの小核試験において、全て陰性の報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験(OECD TG471)、CHO細胞を用いたHGPRT遺伝子突然変異試験、CHO細胞を用いた染色体異常試験では全て陰性であった。CHI/IUを用いた染色体異常試験(OECD TG473)では、短時間ばく露で陰性、連続ばく露で陽性(構造異常)の報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、厚労省 既存点検結果(Accessed Nov. 2023))。
発がん性【分類根拠】
マウスの知見がなく、データ不足のため分類できない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた2年間混餌投与による2つの発がん性試験において、1件の試験では最高用量の1,000 ppm(約75 mg/kg/day)で腫瘍の発生増加は認められなかったが、一般毒性変化もなくNOAELが1,000 ppmと報告されている。異なる試験では最高用量1,500 (1,000)ppmまでの投与各群で肝臓と甲状腺に良性及び悪性腫瘍の発生増加がみられたが、対照群の発生率と有意な差異はなく、検体投与に関連した腫瘍発生ではないと判断された(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015))。
生殖毒性【分類根拠】
(1)、(2)より、親動物に明瞭な全身毒性がない用量で母動物に分娩困難(難産)が生じ、F1児動物に母親の哺育不良による生後の生存率低下、成長遅延がみられたこと、(3)より母動物毒性が軽度な用量で流産の増加、胚/胎児損失の増加がみられたことから、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた強制経口投与(投与期間:F0雄:交配前70日間、交配期間を含め剖検前日までの少なくとも10週間、F0雌:交配70日前から交配・妊娠・哺育期間を経てF1離乳まで)による拡張一世代生殖毒性試験(OECD TG443、GLP)において、F0雌雄親動物には最高用量の60 mg/kg/dayまで僅かな肝臓影響(相対重量増加、肝臓の空胞化(雄、軽度〜中程度))以外に全身毒性は認められなかった。F0雄親動物には生殖毒性はみられなかったが、F0雌動物では中用量以上で分娩困難(難産)による死亡又は切迫屠殺例(中用量:2/25例、高用量:5/25例)、高用量で全胚吸収(雌、25例中5)がみられた。一方、F1児動物では高用量群で生後の生存率低下、及び離乳時の体重低値がみられた。なお、F1雌雄成熟動物には全身毒性及び神経毒性に関するパラメータに影響はみられなかったとの報告がある(CLH Report (2023)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(2)(1)の用量設定のための予備試験として実施されたラットを用いた強制経口投与による生殖発生スクリーニング試験(GLP、投与期間:F0:交配14日前から剖検まで、F1:生後21日から生後49日まで)において、F0雌親動物の50、75及び100 mg/kg/dayの各群で難産又は全児死亡により15例中2例、2例及び5例の死亡又は切迫と殺例が生じた(50、75及び100 mg/kg/dayの各群で難産による確定死亡例:15例中1例、1例、5例)。また投与各群で妊娠期間の増加がみられた。F1児動物では高用量(100 mg/kg/day)で生後0日及び生後0〜4日の生存率の低値、低体温(体が冷たい)と痩せがみられ、母体の全身状態悪化(分娩困難例)に伴う哺育不良(胃内にミルクのない死亡児が多い)に起因すると考えられたとの報告がある。F1の生後の甲状腺ホルモン測定において、生後4日ではT3低値が50 mg/kg/day以上の各群、T4低値が75及び100 mg/kg/day群でみられた。T3の低値はF1成熟動物(生後50日)の75及び100 mg/kg/day群でもみられた。F1の生後50日での剖検で雌の50 mg/kg/day及び雌雄の75 mg/kg/day以上の各群で肝臓絶対・相対重量増加がみられたとの報告がある(CLH Report (2023)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。
(3)妊娠ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(OECD TG414、GLP)において、母動物に軽度の一般毒性影響(体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓重量増加等)がみられる高用量(100 mg/kg/day)で、母体に流産(3/24例)、妊娠子宮重量減少、胎児に着床後胚/胎児吸収率増加(早期吸収胚、後期吸収胚とも)がみられたとの報告がある(CLH Report (2023)、REACH登録情報 (Accessed Nov. 2023))。

【参考データ等】
(4)ラットを用いた強制経口投与(6、25及び100 mg/kg/day)による生殖発生毒性スクリーニング試験(OECD TG421、GLP:投与期間、雄:交配14日前から交配期間を通して計48日間、雌:交配14日前から哺育3日までの41〜54日間)では、F0親動物には25 mg/kg/day以上で流涎(雌は100 mg/kg/day群のみ)、肝臓の重量増加、肥大及び肝細胞の空胞変性が認められたが、親動物の生殖能及び出生児への影響は100 mg/kg/dayまで認められなかった(厚労省既存点検結果 (Accessed Nov. 2023)、SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015))。
(5)妊娠ラットを用いた強制経口投与(妊娠6〜15日)による発生毒性試験では、中用量(50 mg/kg/day)以上で母動物毒性がみられたが、高用量(250 mg/kg/day)まで胎児に発生影響は認められなかった(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、CLH Report (2023))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(3)より、経口経路及び経皮経路では区分に該当しないものの、吸入経路ではデータ不足のため分類できない。なお、(1)でみられた消化管、呼吸器系への所見は強制経口投与による影響と考えられるほか、(3)でみられた嗜眠については死亡に伴う非特異的な症状であると考えられるため、標的臓器として採用していない。用いる知見を精査し、分類を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた単回強制経口投与試験において、死亡前の毒性症状として1,000 mg/kg(区分に該当しない範囲)以上で活動性低下、下痢、緩徐呼吸、低体温、腹臥、2,000 mg/kg(区分に該当しない範囲)で異常歩行、流涙及び四肢の筋力低下等がみられたとの報告がある。また、死亡例では消化管(前胃の穿孔、前胃/腺胃粘膜の白濁、前胃の肥厚、線胃粘膜の剥離等)及び呼吸器系(肺の暗色部/暗赤色化、胸水貯留等)への影響がみられたとの報告がある(厚労省 既存点検結果 (Accessed Nov. 2023)、SIAR (2004)、DFG MAK (2013))。
(2)ラットを用いた単回経口投与試験では、2,510 mg/kg(区分に該当しない範囲)の用量で投与後に重度の下痢、食欲低下、流涙、活動性低下、脆弱、呼吸困難、虚脱がみられたとの報告がある。また、剖検では消化管の炎症の他、肝臓、腎臓、肺に所見がみられたとの報告がある(SIAR (2004))。
(3)ウサギを用いた単回経皮投与試験では、5,010 mg/kg(区分に該当しない範囲)以上で死亡例が生じ、食欲低下、嗜眠をきたし、徐々に衰弱したとの報告がある(SIAR (2004))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)、(3)、(4)より、区分2の範囲で血液系への影響がみられたことから、区分2(血液系)とした。なお、(1)〜(3)でみられた肝臓への影響はより長期の試験である(4)でみられておらず、適応性変化と考えられることから標的臓器として採用していない。

【根拠データ】
(1)ラットを用いた28日間反復投与毒性試験(OECD TG407、GLP)において、雌雄とも20 mg/kg/day(90日換算:6.2 mg/kg/day、区分2の範囲)以上で門脈周囲性の肝脂肪化、100 mg/kg/day(90日換算:31 mg/kg/day、区分2の範囲)で肝臓相対重量増加、尿蛋白強陽性例、血液影響(ヘマトクリット・MCVの減少、血小板数の増加、ヘモグロビン減少(雌)、PT及びAPTTの短縮(雌)等)がみられたとの報告がある(厚労省既存点検結果 (Accessed Nov. 2023)、SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、CLH Report (2023))。
(2)ラットを用いた生殖発生スクリーニング試験(OECD TG421、GLP:雄:48日間、雌:41〜54日間)において、25及び100 mg/kg/day(90日換算:11.4〜45.6 mg/kg/day:区分2)以上で肝臓影響(重量増加、肝肥大、空胞変性(雄))がみられたとの報告がある。なお、本試験において血液検査は実施されなかったとの報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、CLH Report (2023))。
(3)ラットを用いた13週間混餌投与試験において、1,000 ppm(62.3 mg/kg/day(雄)、75.0 mg/kg/day(雌)、区分2の範囲)以上で、血液影響(貧血、リンパ球減少、血小板減少)、肝臓相対/絶対重量増加(組織変化なし)。250 ppm以上の雌では中間検査(6〜7週目)で軽度貧血がみられたが、終了時の検査では回復がみられたとの報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、CLH Report (2023))。
(4)ラットを用いた2年間混餌投与試験において、1,000 ppm(75 mg/kg/day、区分2の範囲)まで明瞭な標的臓器毒性はみられなかったが、中間検査時(3ヵ月〜18ヵ月)において、貧血所見(赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値の減少)がみられたとの報告がある(SIAR (2004)、DFG MAK (2013)、MOE 初期評価 (2015)、CLH Report (2023))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)魚類(メダカ)の96時間LC50 = 0.028mg/L(SIDS, 2005)から区分1とした。
水生環境有害性 長期(慢性)急性毒性区分1であり、急速分解性がない(難分解、BODによる分解度:2%(難分解性、BODによる分解度:2%(既存点検, 1995))ことから区分1とした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性 : 濃縮度試験は変化物、p−フェニルベンゾキノン=イミン及び1,3−ジメチルブチルアミンで実施した。(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号3077
品名(国連輸送名)環境有害性物質(固体)、n.o.s.
国連分類9
副次危険-
容器等級V
海洋汚染物質該当
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*171
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)(令和7年4月1日以降)
作業場内表示義務(法第101条の4)(令和7年4月1日以降)
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)
毒物及び劇物取締法-
船舶安全法有害性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法有害性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」
修正履歴
R6.3.29:
・危険有害性の分類について物理化学的危険性、健康に対する有害性を見直した。
・SDS全般について表記の見直し・改訂をした。