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安全データシート
2-ニトロプロパン
作成日 2002年11月11日
改定日 2006年05月15日
改訂日 2018年03月16日
1.化学品等及び会社情報
化学品等の名称2-ニトロプロパン (2-Nitropropane)
製品コードH29-B-109
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限溶剤

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性引火性液体区分3
自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
急性毒性(吸入:蒸気)区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(肝臓)、区分2 (血液系、呼吸器)
分類実施日
(環境有害性)
平成26年度、政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)を使用
環境に対する有害性-
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。
GHSラベル要素
絵表示炎どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報引火性液体及び蒸気
飲み込むと有害
眼刺激
吸入すると生命に危険
眠気又はめまいのおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
中枢神経系、肝臓、血液系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液系、呼吸器の障害のおそれ
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
 応急措置飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
直ちに医師に連絡すること。
火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名2-ニトロプロパン
別名1-メチル-1-ニトロエタン
濃度又は濃度範囲100%
分子式 (分子量)C3H7NO2 (89.09)
化学特性 (示性式又は
構造式)
構造式
CAS番号79-46-9
官報公示整理番号
(化審法)
2-194(2−ニトロプロパン)
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び
安定化添加物
情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
皮膚に付着した場合直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
眼に入った場合数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医師の診断/手当てを受けること。
飲み込んだ場合口をすすぐこと。気分が悪いときは医師に連絡すること。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、めまい、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、脱力感、息切れ
皮膚: 皮膚の乾燥、発赤
眼: 充血、痛み
経口摂取: 他の症状については、「吸入」参照
応急措置をする者の保護救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。

5.火災時の措置
消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、アルコール耐性泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性きわめて燃えやすい。熱、火花、火炎で容易に発火する。
蒸気は空気と爆発性混合気を形成する。
蒸気が着火源まで達し、発火するおそれがある。
火災時に刺激性、腐食性、毒性のガスを発生するおそれがある。 
特有の消火方法火元への燃焼源を断ち、消火剤を使用して消火する。
延焼の恐れのないよう水スプレーで周囲のタンク、建物等の冷却をする。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の保護消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服(耐熱性)を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び
緊急措置
関係者以外の立ち入りを禁止する。
作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての発火源を取り除く。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を、砂又は不活性吸収剤に吸収させる。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
容器を密閉しておくこと。
容器を接地すること/アースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
作業衣を家に持ち帰ってはならない 。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
注)【】の文言は、化学品の使用時に関する追加的な情報が、安全な使用のために十分であろう換気のタイプを説明している場合に使用できます。
接触回避「10.安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
耐火設備で保管する。
強塩基、強酸、アミン、粉末金属及び食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会(2017年度版)未設定
ACGIH(2017年版)TLV-TWA:10 ppm、36 mg/m3
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄剤のための設備を設ける。
高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具換気、局所排気、又は呼吸用保護具を使用する。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具顔面シールド、又は呼吸用保護具と眼用保護具を併用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
形状液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
情報なし
臭い果物臭 (HSDB (2017))
臭いのしきい(閾)値17.5 mg/m3〜1,029 mg/m3 (HSDB (2017))
pH情報なし
融点・凝固点-91.3℃ (HSDB (2017))
沸点、初留点及び沸騰範囲120.2℃ (HSDB (2017))
引火点26℃ (c.c.) (ICSC (J) (2006))
蒸発速度(酢酸ブチル=1)1.10(酢酸ブチル= 1) (HSDB (2017))
燃焼性(固体、気体)該当しない
燃焼又は爆発範囲2.6 vol.%〜11.0 vol.% (HSDB (2017))
蒸気圧1.72 mmHg (25℃) (HSDB (2017))
蒸気密度3.1 (NFPA (14th, 2010))
比重(相対密度)0.9821 g/m3 (25℃) (HSDB (2017))
溶解度水:110 g/100 mL (25℃) (ICSC (J) (2010))
クロロホルムに可溶でほとんどの芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル及び低級カルボン酸と混和 (HSDB (2017))
n-オクタノール/水分配係数0.93 (HSDB (2017))
自然発火温度428℃ (HSDB (2017))
分解温度情報なし
粘度(粘性率)0.721 cP (25℃) (HSDB (2017))

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性燃焼すると分解し、有毒なヒューム(窒素酸化物など)を生成する。酸、アミン、無機塩基及び重金属酸化物により、衝撃に敏感な化合物を生じる。ある種のプラスチック、ゴムや被膜剤を侵す。
避けるべき条件高温、混触危険物質との接触
混触危険物質強塩基、強酸、アミン、粉末金属
危険有害な分解生成物火災時に刺激性、腐食性、毒性のガスを発生するおそれがある。

11.有害性情報
急性毒性
経口GHS分類: 区分4
ラットのLD50値として、720 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮GHS分類: 区分外
ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (HSDB (Access on August 2017)) との報告がある。また、別のウサギの単回経皮投与試験において、2,000 mg/kgで毒性影響は認められなかったとの報告がある (EHC 138 (1992))。したがって区分外とした。
吸入:ガスGHS分類: 分類対象外
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気GHS分類: 区分2
ラットの6時間吸入ばく露試験のLC50値として、400 ppm (4時間換算値: 490 ppm) (雄) (ACGIH (7th, 2001)、IARC 29 (1982)、JECFA FAS 26 (1989))、別の6時間吸入ばく露試験のLC50値として、400 ppm (4時間換算値: 490 ppm) (雄)、720 ppm (4時間換算値: 882 ppm) (雌) (以上EHC 138 (1992))、4.5時間吸入ばく露試験のLC50値として、1,513 ppm (4時間換算値: 1,605 ppm) (JECFA FAS 26 (1989)) との4件の報告があり、2件が区分2、2件が区分3に該当する。有害性の高い区分を採用して区分2とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (22,700 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
吸入:粉じん及びミストGHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性GHS分類: 分類できない
ウサギの皮膚に本物質を適用した2件の試験において、局所影響は認められなかったとの記載及び皮膚刺激性は認められなかったとの記載 (いずれもEHC 138(1992)) がある。その一方で、本物質は皮膚刺激性を示すとの記載 (HSDB (Access on August 2017)) と相反する報告がある。よって、分類できないとした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性GHS分類: 区分2B
本物質は眼刺激性を有するとの記載 (HSDB (Access on August 2017)) や、ウサギを用いた眼刺激性試験 (ガイドライン非対応) で、本物質は軽度の眼刺激性を示すとの記載 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があることから、区分2Bとした。旧分類で分類根拠に用いたIUCLID (2000) は、現在入手できないため使用しなかった。
呼吸器感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ガイドライン試験と同等 (Landsteiner and Jacobs法)) で本物質に皮膚感作性は認められなかったとの報告 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があるが、ヒトにおける報告がないため分類できないとした。
生殖細胞変異原性GHS分類: 区分2
In vivoでは、ラットの優性致死試験で陰性、マウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、ラットの小核試験では骨髄細胞で陰性、肝臓細胞で陽性、マウスの骨髄細胞、末梢血を用いた小核試験で陰性、ラットの骨髄細胞、マウスの胃、腸、肝臓を用いたコメットアッセイで陽性、ラットのDNA損傷試験では、肝臓で陽性、肺、腎臓、骨髄、脳で陰性、ラットの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陽性である(IARC 71 (1999)、EHC 138 (1992)、OECD ROBUST STUDY SUMMARIES (Access on September 2017)、ACGIH (7th, 2001)、SIAP (2010))。In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、小核試験で陰性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (IARC 71 (1999)、EHC 138 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992)、NTP DB (Access on September 2017)、OECD ROBUST STUDY SUMMARIES(Access on September 2017))。なお、新しい評価書では、本物質はin vitro、in vivoともに遺伝毒性がある (Screening Assessment for the Challenge, Environment Canada and Health Canada (2010))、また、本物質はin vitro、in vivoともに変異原性があり、明らかに遺伝毒性がある (SIAP (2010)) と記載されている。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
発がん性GHS分類: 区分1B
ヒトでの発がんに関する情報はない。実験動物では、ラットに吸入ばく露した2つの試験のうち1試験では肝細胞がんがばく露群10例中全例に、他の1試験では肝細胞の腫瘍性結節の発生頻度に有意な増加が認められた (IARC 29 (1982)、IARC 71 (1999)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、NTP RoC (14th, 2016))。また、離乳後の雄ラットに16週間強制経口投与後、77週間放置後に剖検した結果、投与群22例全例に肝臓悪性腫瘍 (対照群: 0/29例) が認められた (IARC 71 (1999)、DFGOT vol. 3 (1992)、NTP RoC (14th, 2016))。以上より、IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、グループ2Bに分類した。その他、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2001))、NTPがRに (NTP RoC (14th, 2016))、EUがCarc. 1Bに (ECHA CL Inventory (Access on August 2016))、日本産業衛生学会が第2群Bに (許容濃度の勧告 (2016): 1991年提案) 分類している。以上、各機関による分類結果からは区分2又は区分1Bが支持される。試験報告からはラット1種のみであるが、複数の経路で肝臓の悪性腫瘍が100%の頻度で認められたことから、実験動物での発がん性の証拠は十分であると判断できる。よって、EUの分類結果を支持し、本項は区分1Bとした。
生殖毒性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、妊娠ラットに170 mg/kg/dayを妊娠1〜15日に腹腔内投与した試験で、着床前及び着床後の胚/胎児生存率の減少、及び胎児の成長遅延、心血管系発達遅延がみられたとの報告がある (IARC 71 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on August 2017)) が、投与経路が腹腔内であることを考慮し採用しなかった。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系)、区分3 (麻酔作用)
ヒトでは本物質を含む溶剤を換気の不十分な環境で扱っていた労働者が、高濃度の本物質に吸入ばく露した事故例が複数報告されている (IARC 29 (1982)、EHC 138 (1992)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001))。初期の症状は頭痛、吐き気、めまい、眠気、脱力感、食欲不振、嘔吐、下痢、頸部・喉・腹部の痛みなどであった。その後の症状として、持続性の吐き気、嘔吐、食欲不振、黄疸、尿量減少、下痢、血便、せん妄、不穏、反射喪失、血中アミノトランスフェラーゼ活性上昇その他の肝傷害の所見などがみられ、11例中7例は、ばく露の4〜26日後に死亡した。全ての例で、死亡の主要な原因は急性肝不全とされた。
実験動物では、ラット、ウサギ、ネコを用いた単回吸入ばく露試験で、用量の記載はないが、高濃度のばく露で嗜眠、衰弱、呼吸困難、チアノーゼ、虚脱を生じ、昏睡状態から死亡したとの記載がある (EHC 183 (1992))。また、ラットの1時間単回吸入ばく露試験で、2.8 mg/L (4時間換算値: 1.4 mg/L) では血中メトヘモグロビン濃度が0.2〜8.6%、53.5 mg/L (4時間換算値: 26.8 mg/L) では84%に増加したとの報告、及びウサギの単回吸入ばく露試験で、8.5 mg/Lを2.25時間 (4時間換算値: 6.38 mg/L) のばく露又は15.4 mg/Lを4.5 時間 (4時間換算値: 16.33 mg/L) のばく露で、45〜80%の赤血球にハインツ小体形成がみられたとの報告がある (EHC 138 (1992))。
以上より本物質は中枢神経系、肝臓、血液系を標的臓器とし、また、麻酔作用を有すると考えられる。実験動物での血液系への影響は、区分1範囲の用量で認められた。したがって区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)GHS分類: 区分1 (肝臓)、区分2 (血液系、呼吸器)
ヒトについては、DFGOT vol. 3 (1992) には、長期間ばく露すると、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振及び重度の頭痛がみられるとの記載がある。しかし、EHC 138 (1992) には、ヒト職業ばく露例での悪心、嘔吐、食欲不振及び頭痛等は1日周期の急性影響であること、発がんや慢性影響に関する症例や疫学的証拠はないとの記載がある。
実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による4週間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲である50 mg/kg/day (90日換算: 11 mg/kg/day) 以上で貧血等、250 mg/kg/day (90日換算: 56 mg/kg/day) で死亡 、ALT・AST・γ-GT増加、肝臓・脾臓・心臓重量増加、脾臓のヘモジデリン沈着増加、肝臓の肝細胞と核の多形化、単細胞壊死、卵円形細胞及び胆管の増生の報告がある (EHC 138 (1992))。
ラットを用いた6ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) である750 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.88 mg/L) で肺の水腫等の病変、肝臓重量増加、肝細胞肥大・過形成・壊死がみられている (EHC 138 (1992))。
ラットを用いた18ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分2のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である360 mg/m3 (90日間換算: 0.42 mg/L) で腎臓の石灰化の増加、ALT増加、肝臓の病変 (壊死、空胞変性、腫大等) がみられている (EHC 138 (1992))。ラットを用いた22ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である78 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.091 mg/L) で肝臓の重量増加、肝臓の限局性肝細胞空胞化、わずかな肝臓のうっ血及び肝臓の限局性結節の増加傾向がみられている (IRIS (1991))。
以上、ヒトについては反復ばく露での影響は特定できなかった。実験動物では、区分1のガイダンス値の範囲から肝臓、区分2のガイダンス値の範囲で血液系、呼吸器、腎臓に影響が認められたが、腎臓への影響は偶発的所見と考え分類根拠としなかった。
したがって、区分1 (肝臓)、区分2 (血液系、呼吸器) とした。
吸引性呼吸器有害性GHS分類: 分類できない
データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on August 2017) に記載された数値データ (粘性率: 0.721 mPa・s (25℃)、密度: 0.9821 g/cm3 (25℃)) より、動粘性率は0.73 mm2/sec (25℃) と算出される。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性(急性)藻類72時間EC50 = 1088 mg/L (SIDS (2010))、甲殻類 (オオミジンコ)の24時間EC50 = 290 mg/L (SIDS (2010))、魚類 (ファットヘッドミノー)の96時間LC50 > 210 mg/L (EHC 138 (1992))であることから、区分外とした。
水生環境有害性(長期間)信頼性のある慢性毒性データが得られていない。難水溶性ではなく (水溶解度 = 17000 mg/L (PHYSPROP Database (2009)))、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号2608
国連品名NITROPROPANES
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級K
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書K及び
IBCコードによるばら積み
輸送される液体物質
該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、消防法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、消防法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
特別安全対策移送時にイエローカードの保持が必要。
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*129
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)
消防法第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)
海洋汚染防止法有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

16.その他の情報
参考文献各データ毎に記載した。
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。