職場のあんぜんサイト

安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ジクロロ酢酸
作成日 2015年11月30日
改訂日 2024年3月29日
化学品の名称ジクロロ酢酸
化学品の英語名称Dichloroacetic acid
製品コードR05-C-001-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限有機合成原料,医薬原料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
H28.3.31、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性金属腐食性化学品区分1
健康に対する有害性急性毒性(経皮)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分1
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1 (呼吸器)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1 (中枢神経系)、区分2 (肝臓、膵臓、腎臓、男性生殖器)
分類実施日
(環境有害性)
H28.3.31、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分3
GHSラベル要素
絵表示腐食性どくろ健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報金属腐食のおそれ
皮膚に接触すると有毒
重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
呼吸器の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓、膵臓、腎臓、男性生殖器の障害のおそれ
水生生物に有害
注意書き
 安全対策他の容器に移し替えないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱い後は手をよく洗うこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
環境への放出を避けること。
 応急措置物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けんで洗うこと。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管耐腐食性/耐腐食性内張りのある・・・容器に保管すること。
注)”…”は、製造業者、供給者が指定する条件を記入してください。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性-

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名ジクロロ酢酸
慣用名又は別名
英語名Dichloroacetic acid
2,2-Dichloroacetic acid
Bichloroacetic acid
DCA
Dichlorethanoic acid
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C2H2Cl2O2 (129)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号79-43-6
官報公示整理番号(化審法)2-1161
官報公示整理番号(安衛法)2-(4)-657
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動させる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。できるだけ早く、グルココルチコイド吸入用スプレーで繰り返し深呼吸させる。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を流水で少なくとも10〜20分間洗浄する。医師の診察/手当を受けること。
以上、GESTIS参照。
眼に入った場合できるだけ早く、流水で10分間洗浄する。できればコンタクトレンズを外す。その後も洗浄を続けること。直ちに医師の診察/手当てを受ける。それまで生理食塩水または水で洗浄を続けること。
以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合口をすすぐ。コップ一杯の水(約200mL)を飲ませる。嘔吐させない。食用油、ひまし油、牛乳またはアルコールは使用しない。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳、呼吸困難 (喉頭および声門浮腫)、気管支炎、肺炎、肺水腫。
皮膚:0.01% を超える溶液は発赤、灼熱感、腫れ、水疱。1% を超える溶液は激しい痛み、凝固壊死、潰瘍形成、壊死。
眼:0.01% を超える溶液は発赤、灼熱感、結膜炎。1% を超える溶液は激しい痛み、角膜損傷 (凝固壊死、潰瘍形成、穿孔) 。
経口摂取:吐き気、嘔吐 (吐血)、腹痛。1% を超える溶液は凝固壊死、潰瘍形成、出血、穿孔。
吸収:過呼吸および頻呼吸(クスマウル呼吸)を伴う代謝性アシドーシス、心室性不整脈、頭痛、めまい、錯乱、昏睡、溶血、血色素尿、腎不全を伴う低血圧ショック。
以上、GESTIS参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤不燃性。周辺の火災に応じた適切な消火剤を使用する。
以上、ICSC参照。
使ってはならない消火剤情報なし
火災時の特有の危険有害性火災の場合、刺激性あるいは有毒なフュームやガスが放出される可能性がある。
以上、ICSC参照。
特有の消火方法周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。加熱により圧力が上昇し破裂する恐れがある。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性は大きい。地面や河川、下水への流出を避ける。少量でも流出した場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
危険でなければ漏れを止める。
少量の場合、ウエス、雑巾等でよく拭き取り適切な廃棄容器に回収する。
大量の場合、盛土等で囲って流出を防止する。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項他の容器に移し替えないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を開けたままにしない。飛沫を避ける。接触を避ける。補給または移送には排気装置付きの漏れ防止装置を使用すること。床への浸透を避ける(鉄製パンの使用)。
機器類は防爆構造とし、設備は静電気対策を実施する。
周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
静電気放電に対する予防措置を講ずること。
以上、GHS分類結果、GESTIS、日化協発行ガイドライン参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策皮膚や眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。蒸気またはミストの吸入を避ける。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。衣服との接触を避ける。汚染された衣類は交換し、注意深く洗うこと。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管する。容器を密閉し、涼しくて換気の良い場所で保管すること。湿気を避けること。金属、可燃性物質、還元剤、強酸化剤および塩基から離しておく。
以上、GHS分類結果、GESTIS、ICSC参照。
安全な容器包装材料毒劇法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度-
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度等
日本産衛学会(2023年版)-
ACGIH(2023年版)TLV-TWA: 0.5 ppm(Skin; A3)
設備対策作業場所には換気設備を設置する。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設け、標識を付ける。多量の物質を取り扱う場合は、緊急用シャワーが必要である。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、電動ファン又は面体が国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した・・・用吸収缶を使用する
注) ”…”の吸収缶は国家検定合格品又は日本産業規格(JIS T8152)に適合した物質に対応した吸収缶を記載します。SDS作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
-作業者が粉じんにばく露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具適切な不浸透性の保護手袋を着用する。
保護手袋の選択については、厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」を参照のこと。
眼の保護具化学用安全ゴーグルを着用する。顔面が危険な場合は、顔面保護シールドを着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具十分な長さのエプロンと長靴、または化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体
無色
臭い刺激臭
融点/凝固点9〜13 ℃(GESTIS(2023))
13.5 ℃(ICSC(2021))
沸点、初留点及び沸騰範囲194 ℃(GESTIS(2023), ICSC(2021))
可燃性不燃性(ICSC(2021))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度>=195 ℃ (GESTIS(2023))
pH1.2(GESTIS(2023))
動粘性率データなし
溶解度水: (混和)(GESTIS(2023))
水: (混和)(ICSC(2021))
n-オクタノール/水分配係数log Kow: 0.92(GESTIS(2023), ICSC(2021))
蒸気圧0.19 hPa(20℃)(GESTIS(2023))
19 Pa(20℃)(ICSC(2021))
密度及び/又は相対密度1.56 g/cm3(20℃)(GESTIS(2023))
1.56 (ICSC(2021))
相対ガス密度4.4 (空気=1)(ICSC(2021))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性フルフリルアルコールとの接触により爆発の危険性
危険有害反応可能性アミン、塩基、強酸化剤、還元剤、水と激しく反応する可能性がある。
避けるべき条件加熱
混触危険物質金属、可燃性物質、還元剤、強酸化剤、強塩基
危険有害な分解生成物塩化水素を含む、有毒で腐食性のフューム
炭酸塩 → 二酸化炭素
メルカプタン類 → 硫化水素
金属 → 水素
硫黄化合物 → 二酸化硫黄

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、2,820 mg/kg (環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006))、2,820-4,480 mg/kg、> 5,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2005)) との3件の報告があり、いずれも区分に該当しない。そのうち、2件が国連分類基準の区分5に該当するため、区分に該当しない (国連分類基準の区分5) 。
経皮ウサギのLD50値として、510 mg/kgとの報告 (ACGIH (7th, 2005)) に基づき、区分3とした。
吸入: ガスGHSの定義における液体である。
吸入: 蒸気データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性本物質10 mgをウサギに適用した結果刺激性がみられたとの記載や (ACGIH (7th, 2005))、本物質2 mgを24時間適用した結果重度の刺激性がみられたとの記載がある (ACGIH (7th, 2005))。また、具体的な情報ではないが本物質は皮膚に対して腐食性を示すとの記載がある (環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006)、GESTIS (Accessed July 2015))。さらに、本物質は、EU CLP分類において「Skin. Corr. 1A H314」に分類されている (ECHA CL inventory (Accessed September 2015))。以上から区分1とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性ウサギの眼に対して重度の刺激性を示したとの記載や (ACGIH (7th, 2005))、ウサギの眼に本物質を適用した結果重度の刺激性がみられ、その評価は10段階評価のうち10であったとの報告がある (HSDB (Access on July 2015))。その他に、ヒトの眼に対して腐食性を示す (環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006)、GESTIS (Accessed July 2015))、ヒトの眼に不可逆的な障害を生じる (SITTIG (5th, 2008) , HSFS (1999)) との記載がある。また、本物質は皮膚腐食性/刺激性の分類で区分1に分類されている。以上より、区分1とした。
呼吸器感作性データ不足のため分類できない。
皮膚感作性データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性In vivoでは、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、ラット骨髄細胞の小核試験で陰性、マウス末梢血赤血球の小核試験で陽性、陰性の結果、マウス肝臓等のDNA損傷試験 (DNA鎖切断) で陽性、陰性の結果、ラット肝臓のDNA損傷試験 (DNA鎖切断) で陽性、陰性の結果が報告されている (IARC vol. 84 (2004)、IARC vol. 106 (2014)、ACGIH (7th, 2005))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞の小核試験及びDNA損傷試験 (DNA鎖切断) で陰性の報告がある (IARC vol. 84 (2004)、IRIS Tox. Review (2003)、ACGIH (7th, 2005))。以上より、in vivo及びin vitroで陽性結果が認められることから、区分2とした。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(3)より、動物種2種で肝臓に悪性腫瘍を含む腫瘍の発生増加が認められており、IARC等では区分2が支持されているがEPA及びNTPでは区分1B相当の判断がされていること、動物種2種の試験結果から、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)マウスを用いた多くの飲水投与による発がん性試験(試験期間:52〜104週間)において、ほぼ全ての試験の雌雄に肝細胞腺腫及び肝細胞がん(又は両者の組合せ)の発生頻度に有意な増加が認められた(IARC 106 (2014)、食安委 水道水評価書 (2014)、ACGIH (2005)、IRIS (2002))。
(2)ラット雄を用いた飲水投与による発がん性試験(試験期間:60〜104週間)において、60週後に高用量(2.4 g/L)群で肝臓に過形成性結節の発生頻度に有意な増加(19/27例)がみられ、肝細胞腺腫が7/27例(非有意)にみられた。104週後の最終解剖時に中用量(0.5 g/L)群で肝細胞腺腫(6/29)、肝細胞がん(3/29)が認められた。確認試験(〜103週間)においても、本物質投与(時間加重平均:1.6 g/L)群では最終解剖時に肝臓の過形成性結節(3.6%)、肝細胞腺腫(10.7%)又は肝細胞がん(21.4%)が認められた(IARC 106 (2014)、食安委 水道水評価書 (2014)、ACGIH (2005)、IRIS (2002))。
(3)ヒトと実験動物での薬物動態に種差は少なく、ヒトは動物と同様の代謝を受けると考えられている。実験動物における発がん性の作用機序は完全に解明されてはいないが、遺伝毒性による寄与は部分的で、エピジェネティック作用、酸化ストレス、細胞増殖/アポトーシスによる影響、ペルオキシソーム増殖の関与など複合的な非遺伝毒性作用による影響が想定されている(IARC 106 (2014))。

【参考データ等】
(4)遺伝子改変マウス(Tg. ACヘミ接合型)を用いた飲水投与試験(雄、41週間)で細気管支-肺胞腺腫の発生増加、同じ遺伝子改変マウスを用いた経皮投与試験(雌雄、39週間)で皮膚乳頭腫の発生増加がみられた(IARC 106 (2014)、食安委 水道水評価書 (2014))。
(5)国内外の評価機関による既存分類結果としては、IARCでグループ2B(IARC 106 (2014))、EPAでL(IRIS (2003))、ACGIHでA3(ACGIH (2005))、NTPでR(NTP RoC 15th. (2021))、DFGでカテゴリー4(List of MAK and BAT values 2022)に分類されている。ガイダンス上、EPAのL(Likely to be Carcinogenic to Humans)は区分1B、NTRのRは区分1Bまたは区分2、それ以外はすべて区分2相当である。
生殖毒性ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物では妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6-15日) に強制経口投与した試験で、母動物毒性 (体重増加抑制、肝臓・腎臓重量の増加) が生じる用量 (140 mg/kg/day以上) で、胎児重量の減少、及び心血管系の奇形 (右心室、大動脈の奇形) の発生頻度の増加がみられた (ACGIH (7th, 2005)、IRIS Tox. Rev. (2003)) との報告があるが、同様の条件の他試験では300 mg/kg/dayの用量投与で、母動物に体重増加抑制、胎児に胎児重量の低値がみられたが、心血管系奇形の発生は認められなかった。著者らによる追試により、奇形発生は極めて高用量で発生することが確認され、この他、妊娠ラットの妊娠9-13日に2,500 mg/kgを3日間、又は3,500 mg/kgを単回経口投与することにより、心臓の奇形 (心室中隔欠損) の発生率増加が生じたとの報告もある (ACGIH (7th, 2005)、IRIS Tox. Rev. (2003))。一方、雄ラットに31.25-125 mg/kg/dayの用量範囲で10週間強制経口投与後に屠殺剖検し、一部の動物は投与終了後に非ばく露の雌と交配させ、妊娠14日に生存着床胚数を評価した試験において、投与終了時に雄の生殖器官 (包皮腺、精巣上体) 重量減少が最低用量からみられ、体重増加抑制がみられる中用量 (62.5 mg/kg/day) 以上で精巣上体内精子の数、運動能の低下、及び形態異常、高用量 (125 mg/kg/day) ではさらに精巣の精子形成阻害がみられた。また、高用量群の雄を未処置の雌と交配させた結果、妊娠14日に腹当たりの生存着床胚数の減少が示された (ACGIH (7th, 2005)、IRIS Tox. Rev. (2003))。以上、実験動物では雌雄いずれにも生殖発生毒性を示す知見があり、有害性影響は総じて親動物に一般毒性影響の生じる用量で発現すると判断されるが、胎児における心血管系の奇形誘発、雄親動物における精子形成阻害、受精能低下を示す所見があることを考慮して、本項の分類は区分1Bが妥当と考えられた。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は腐食性、気道刺激性があり (ACGIH (7th, 2005)、環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006))、経口摂取でも腐食性を示す (環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006))。ヒトにおいて、蒸気吸入により灼熱感、咽頭痛、咳、息苦しさ、息切れ、肺気腫、経口摂取では腹痛、灼熱感、ショックまたは虚脱を生じ、死に至ることがある (環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006))。実験動物の情報はない。
上記の吸入による呼吸器への影響から区分1 (呼吸器) とした。
旧分類の区分を見直した。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトでは、代謝性疾患 (家族性高コレステロール血症、先天性乳酸アシドーシス、ピルビン酸脱水素酵素欠損症患者) の治療目的で使用した症例で、神経系への影響 (鎮静、多発性神経障害) の報告がある (ACGIH (7th, 2005)、環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006)、IARC vol. 84 (2004)、IRIS Tox. Review (2003))。
実験動物では、ラットを用いた90日間飲水投与毒性試験において、35.5 mg/kg/day以上で体重増加抑制、肝臓・腎臓の相対重量増加、ALP増加がみられ、マウスを用いた60週間飲水投与毒性試験において、77 mg/kg/day以上で肝臓の相対重量増加がみられた(ACGIH (7th, 2005)、環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006)、IRIS Tox. Review (2003))。また、本物質のナトリウム塩について、イヌを用いた90日間強制経口投与毒性試験において、12.5 mg/kg/day以上で肝臓の相対重量増加、肝臓の軽度空胞化・炎症・ヘモジデリン沈着、膵臓の慢性炎症・細葉の変性、腎臓の蒼白化、大脳・小脳・脊髄の白質の空胞化、精巣の合胞体巨細胞の形成や胚上皮の変性、39.5 mg/kg/day以上で体重増加抑制、腎臓の相対重量増加、腺胞の有意な減少を伴った前立腺の萎縮、72 mg/kg/dayで呼吸困難、後肢の部分麻痺、死亡 (3/10例)、赤血球数・ヘモグロビン濃度の減少、肺炎、肺の相対重量増加、髄膜脳炎がみられた (ACGIH (7th, 2005)、環境省リスク評価第5巻暫定的有害性評価シート (2006)、IRIS Tox. Review (2003))。
以上のようにヒトでは神経系への影響がみられ、実験動物では肝臓、膵臓、腎臓、神経系、雄性生殖器への影響が区分2の範囲でみられている。
したがって、区分1 (中枢神経系)、区分2 (肝臓、膵臓、腎臓、男性生殖器) とした
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)甲殻類(ソコミジンコ)の96時間LC50 = 23000 μg/L(MEPC 67/INF.17, 2014、AQUIRE, 2016)であることから、区分3とした。
水生環境有害性 長期(慢性)信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性があり(良分解性:14日でのBOD分解度=97%、TOC分解度=94%、HPLC分解度=100%(通産省公報, 1979))、急性毒性は区分3であるが、生物濃縮性が低いと推測される(LogPow=0.92(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分に該当しない。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書A〜C及びEni列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1764
品名(国連輸送名)ジクロロ酢酸
国連分類8
副次危険-
容器等級U
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*153
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2)
皮膚等障害化学物質(労働安全衛生規則第594条の2)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)-
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)
水道法有害物質(法第4条第2項)【ジクロロ酢酸】
水質基準(平15省令101号)【ジクロロ酢酸】
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
船舶安全法腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・腐食性物質(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」
修正履歴
R6.3.29:
・危険有害性の分類について「発がん性(区分2→区分1B)」のみ見直した。
・SDS全般について表記の見直し・改訂をした。