1.化学品及び会社情報 | |||
---|---|---|---|
化学品の名称 | 硫酸 | ||
化学品の英語名称 | Sulfuric acid | ||
製品コード | R04-B-022-JNIOSH | ||
供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 | 肥料・繊維・無機薬品・金属製錬・製鋼・紡織・製紙・食料品工業等での原料・助剤・排水処理剤等 (NITE-CHRIPより引用) |
2.危険有害性の要約 | |||
---|---|---|---|
GHS分類 | |||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | R5.3.31、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用 | ||
物理化学的危険性 | 金属腐食性化学品 | 区分1 | |
健康に対する有害性 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分2 | |
皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 | ||
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | ||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1(呼吸器) | ||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1(呼吸器) | ||
分類実施日 (環境有害性) | ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014) | ||
環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 | |
水生環境有害性 長期(慢性) | 区分1 | ||
GHSラベル要素 | |||
絵表示 | |||
注意喚起語 | 危険 | ||
危険有害性情報 | 金属腐食のおそれ 吸入すると生命に危険 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 呼吸器の障害 長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器の障害 水生生物に有害 長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性 | ||
注意書き | |||
安全対策 | 他の容器に移し替えないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。 取扱い後は手をよく洗うこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 環境への放出を避けること。 | ||
応急措置 | 物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 直ちに医師に連絡すること。 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 漏出物を回収すること。 | ||
保管 | 耐腐食性/耐腐食性内張りのある・・・容器に保管すること。 注)”…”は、製造業者、供給者が指定する条件を記入してください。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 | ||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
他の危険有害性 | 情報なし |
3.組成及び成分情報 | |||
---|---|---|---|
化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
化学名又は一般名 | 硫酸 | ||
慣用名又は別名 | 情報なし | ||
英語名 | Sulfuric acid | ||
濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
分子式 (分子量) | H2O4S (98.08) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | |||
CAS番号 | 7664-93-9 | ||
官報公示整理番号(化審法) | 1-430 | ||
官報公示整理番号(安衛法) | 情報なし | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | 情報なし |
4.応急措置 | |||
---|---|---|---|
吸入した場合 | 新鮮な空気のある場所に移動させる。呼吸困難な場合は半座位の姿勢で酸素吸入させる。できるだけ早く、グルココルチコイド吸入スプレーを繰り返し深呼吸させる。呼吸停止の場合は人工呼吸を行う。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS参照。 | ||
皮膚に付着した場合 | 汚染された衣服を脱がせる。皮膚に付着した部分を流水で10分間洗浄する。水と接触すると酸は激しく反応し、大量の熱が発生するため、できるだけ速やかに、乾いた布またはティッシュペーパー(次善の策)で濃縮酸をしみこませる。その後、大量の水(強い噴流水や大量のシャワー)で皮膚を洗う。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS参照。 | ||
眼に入った場合 | できるだけ早く、流水で10分間洗浄する。コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外し、洗浄を続けること。酸の残留物をできるだけ早く、完全に除去するために、穏やかなジェット水流を直接眼に当てる。搬送中も洗浄を続けること。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS、GHS分類結果参照。 | ||
飲み込んだ場合 | 口をすすぐ。コップ一杯の水を飲ませる。塩基で中和しようとしたり、炭を与えたりしてはならない。無理に吐かせない。医師の診察/手当てを受けること。 以上、GESTIS参照。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:鼻・喉の焼けるような痛み、くしゃみ、胸の狭さ、胸骨下の痛み、咳(血)、呼吸困難、喉頭痙攣の危険、声門浮腫、肺の機能障害・損傷(数日遅れての膿瘍形成もある)。 皮膚:熱傷のように急速に現れる腐食性損傷(最初は白化、その後茶色から黒色の変色、後に潰瘍、化膿性炎症)。 眼:痛み、眼瞼痙攣、角膜の永久的な混濁と潰瘍(濃度に依存)、眼球消失の危険性(濃度に依存)。 経口摂取:粘膜の有痛性化学熱傷、化学熱傷の結果としての心臓/循環系への急性反応(虚脱、ショック、心停止)、食道/胃への穿孔の危険、全身的には腎機能障害、肝臓障害の可能性、数週間後にも後遺症の可能性(特に消化器系の狭窄と狭窄) 以上、GESTIS参照。 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 情報なし | ||
医師に対する特別な注意事項 | 情報なし |
5.火災時の措置 | |||
---|---|---|---|
適切な消火剤 | 不燃性。周辺の火災に応じた適切な消火剤を使用する。 以上、GESTIS参照。 | ||
使ってはならない消火剤 | 水 以上、ICSC参照。 | ||
火災時の特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(硫黄酸化物)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
特有の消火方法 | 周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。加熱により圧力が上昇し破裂する恐れがある。水スプレーで蒸気を封じ込める。 以上、GESTIS参照。 | ||
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 |
6.漏出時の措置 | |||
---|---|---|---|
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 周囲に注意喚起し、避難させる。漏出区域に入るときは保護具を着用すること。こぼれた硫酸によるスリップの危険がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
環境に対する注意事項 | 水域に対する危険性は低い。非常に多量に水、排水、下水、または地中に入った場合は、自治体に連絡する。 以上、GESTIS参照。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | こぼれた液体を吸収剤(酸の吸収剤と中和剤)で吸収し、規則に従って廃棄する。その後、換気し、漏出した場所を洗浄する。 以上、GESTIS参照。 | ||
二次災害の防止策 | 情報なし |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
---|---|---|---|
取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
安全取扱注意事項 | 容器を開けたままにしない。飛沫を避ける。使用時は十分な換気をすること。水または有機液体と混合する場合、濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと加え、必要であれば冷却する。 以上、GESTIS参照。 | ||
接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
衛生対策 | 皮膚や眼への接触を避ける。接触した場合は洗浄する。蒸気またはミストの吸入を避ける。休憩前や作業終了時には石鹸と水で皮膚を洗い、洗浄後は脂肪分の多いスキンケア製品を塗布する。使用するときには飲食、喫煙をしないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 施錠して保管する。容器を密閉して涼しくて乾燥した換気の良い場所に保管する。吸湿性があるので湿気は避ける。元の包装を使用する。 耐腐食性/耐腐食性内張りのある・・・容器に保管すること。 注)”…”は、製造業者、供給者が指定する条件を記入してください。 以上、GESTIS、GHS分類結果参照。 | ||
安全な容器包装材料 | 毒劇法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
---|---|---|---|---|
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
管理濃度 | 未設定 | |||
許容濃度等 | ||||
日本産衛学会(2022年版) | 最大許容濃度: 1 mg/m3 | |||
ACGIH(2022年版) | 未設定 | |||
設備対策 | 作業場所には換気設備を設置する。取り扱い場所の近くに洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。 以上、GESTIS参照。 | |||
保護具 | ||||
呼吸用保護具 | 緊急時(例:意図しない物質の放出、ばく露限界値を超える場合)には、呼吸保護具を着用する。 状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用する。 防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。 -防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。 -濃度に対応した・・・用吸収缶を使用する 注) ”…”は、物質に対応した吸収缶を記載します。SDS作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 -作業者が粉じんにばく露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する -酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。 以上、GESTIS参照。 | |||
手の保護具 | 保護手袋を着用する。10%および25%硫酸の場合は天然ゴム、クロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、PVCが適している。25%硫酸の場合はクロロプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、PVCが適している。天然ゴムは適さない。96%硫酸の場合はフッ素ゴムが適している。2時間未満ならブチルゴムも可。天然ゴム、クロロプレン、ニトリルゴム、PVCは適さない。 以上、GESTIS参照。 | |||
眼の保護具 | 化学用安全ゴーグルを着用する。顔面が危険な場合は保護シールドを着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
皮膚及び身体の保護具 | 必要に応じて十分な長さのエプロンと長靴、または化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
---|---|---|---|
物理的状態 | |||
物理状態 | 液体(GHS判定) | ||
色 | 無色〜濃茶色(純度による) | ||
臭い | 無臭 | ||
融点/凝固点 | 10.94 ℃(GESTIS(2022)) 10.4 ℃(Lewis(2001)) 3〜10.49 ℃(化学物質安全性データブック(1997)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 290 ℃(GESTIS(2022)) 〜290 ℃(340℃にて分解。)(Merck(2013)) 315〜338 ℃(Lewis(2001)) | ||
可燃性 | データなし | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | データなし | ||
引火点 | 非可燃性物質(GESTIS(2022)) | ||
自然発火点 | データなし | ||
分解温度 | 340 ℃(Merck(2013)) | ||
pH | データなし | ||
動粘性率 | ≒24 mPa.s(20℃)(GESTIS(2022)) | ||
溶解度 | 水: (完全に混合可能)(GESTIS(2022)) 水: (混和する)(ICSC(2016)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | データなし | ||
蒸気圧 | <10 Pa(20℃)(ほとんどない)(ICSC(2018)) <0.1 Pa(GESTIS(2022)) 0.13 kPa(化学物質安全性データブック(1997)) | ||
密度及び/又は相対密度 | 1.8305 g/cm3(20℃)(CRC(2018)) 1.84 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022)) 1.84 g/cm3(純物質)(Lewis(2001)) | ||
相対ガス密度 | データなし | ||
粒子特性 | データなし |
10.安定性及び反応性 | |||
---|---|---|---|
反応性 | 「危険有害反応可能性」を参照。 | ||
化学的安定性 | 情報なし | ||
危険有害反応可能性 | 多くの反応により火災又は爆発を生じることがある。 強力な酸化剤であり、可燃性物質や還元性物質と反応する。 強酸であり、塩基と激しく反応し、ほとんどの普通金属に対して腐食性を示して引火性/爆発性気体(水素)を生成する。 水、有機物と激しく反応して熱を放出する。 | ||
避けるべき条件 | 火気、加熱、高温、直射日光 | ||
混触危険物質 | 可燃性物質、還元性物質、強酸化剤、強塩基、混触危険物質 | ||
危険有害な分解生成物 | 燃焼の際は、イオウ酸化物などが生成される。 |
11.有害性情報 | ||||
---|---|---|---|---|
急性毒性 | ||||
経口 | 【分類根拠】 (1)より、区分に該当しない(国連分類基準の区分5)。なお、新たな評価に基づき分類結果を変更した。 【根拠データ】 (1)ラットのLD50:2,140 mg/kg(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001)、HSDB in PubChem (Accessed Sep. 2022)) | |||
経皮 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。 | |||
吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 (1)より、区分2とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度(0.000314 mg/L)より高いため、ミストと判断した。 【根拠データ】 (1)ラットのLC50(4時間):0.375 mg/L(OECD TG 403)(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001)、US AEGL (2009)、HSDB in PubChem (Accessed Sep. 2022)) | |||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)〜(3)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)濃硫酸による皮膚火傷が多数報告されている(SIAR (2001))。 (2)硫酸は皮膚、粘膜及び角膜の腐食性又は壊死までも生じる高度の刺激性を有する(DFG MAK (2001))。 (3)硫酸は腐食性及び刺激性を有し、十分な濃度でばく露した後には皮膚、眼及び消化管に直接的な局所影響を生じる。高濃度でのばく露は組織を急速に破壊し、重度の火傷を生じる(AICIS IMAP (2015))。 【参考データ等】 (4)EUではSkin Corr. 1Aに分類されている(CLP分類結果 (Accessed Sep. 2022)。 | |||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分1とした。 【根拠データ】 (1)皮膚腐食性/刺激性で区分1である。 (2)硫酸は腐食性及び刺激性を有し、十分な濃度でばく露した後には皮膚、眼及び消化管に直接的な局所影響を生じる。高濃度でのばく露は組織を急速に破壊し、重度の火傷を生じる(AICIS IMAP (2015))。 | |||
呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
皮膚感作性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、区分に該当しない。 【根拠データ】 (1)一般に皮膚の重度の刺激や火傷は接触アレルギーが起こりやすい状況をつくることが知られているが、硫酸ばく露後の皮膚刺激や火傷による二次的な皮膚感作性の報告はない(SIAR (2001)、AICIS IMAP (2015))。 (2)様々な金属の硫酸塩(硫酸ニッケル、硫酸コバルト等)が日常のアレルギー検査に使用されるが、陽性反応は金属の陽イオンに関連して生じ、硫酸塩による反応ではないことから、非アレルギー性であると推定される(SIAR (2001))。 | |||
生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)In vitroでは、ネズミチフス菌と大腸菌を用いた復帰突然変異試験で陰性、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた染色体異常試験で陽性の結果が得られているが、培養液の低pHに起因することが明らかにされている(SIAR (2001)、IARC 100F (2012))。 | |||
発がん性 | 【分類根拠】 (1)の既存分類結果からは本物質を含む強無機酸ミストは区分1Aとなるが(2)〜(4)より、ミスト(エアロゾル)の吸入曝露による気道の障害が認められる場合に限られることから、分類できないとした。 【根拠データ】 (1)国内外の評価機関による既存分類として、硫酸を含む強無機酸のミストに対して、IARCでグループ1に(IARC 100F (2012))、NTPでKに(NTP RoC 15th. (2021))、ACGIHでA2に(ACGIH (2004))、それぞれ分類されている。 (2)IARCは硫酸を含む強無機酸のミストへの職業ばく露はヒトに発がん性を有する(グループ1)と結論した。この分類はミスト(ないしエアロゾル)に対し適用されるもので、硫酸それ自体に対するものではない。十分に高濃度の硫酸エアロゾルは鼻咽頭領域及び/又は喉頭領域に好発的に沈着し、そこで傷害、炎症及び修復を繰り返し生じる。その結果、細胞増殖が生じ、他の発がん物質と連動して影響(硫酸ばく露との関連性の弱い影響:反復的な刺激性影響)を生じると推測される。このような好発部位への沈着と極度の局所誘発性影響の推測を可能にする例として、ラットの28日間反復吸入ばく露試験(4)において、喉頭の扁平上皮化生と持続的増殖としてみられている(AICIS IMAP (2015))。 (3)ラット、マウス及びモルモットの異なる3動物種を用いた硫酸エアロゾル吸入による発がん性試験では発がん影響は検出されなかった。硫酸溶液のラット及びマウスへの慢性的な強制経口投与又は気管内投与後に腫瘍発生のわずかな増加がみられたとの報告があるが、これらの結果からは本物質の発がん性について明確な結論を導くことができない。いくつかの疫学研究では硫酸を含む無機酸ミストへのばく露と喉頭がんの発生頻度増加との間に相関があると示唆されている(AICIS IMAP (2015)、SIAR (2001))。 (4)雌ラットを用いた硫酸ミストの28日間吸入ばく露試験(6時間/日、5日/週)では、0.3 mg/m3(ガイダンス値換算:0.000067 mg/L/6 hr)で喉頭の扁平上皮化生、1.38 mg/m3(同0.0003 mg/L/6 hr)以上では喉頭上皮の細胞増殖が認められた(AICIS IMAP (2015)、US AEGL (2009)、SIAR (2001))。 | |||
生殖毒性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、明らかな発生毒性は生じないと考えられる。一方、分類に利用可能な生殖毒性試験報告はないが、(3)より、区分に該当しないとした。 【根拠データ】 (1)マウスを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6〜15日)において、母動物に摂餌量減少(第1日のみ)及び肝臓重量減少がみられる高用量(19.3 mg/m3)まで、胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(US AEGL (2009)、SIAR (2001)、ATSDR (1998))。 (2)ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(妊娠6〜18日)において、母動物に亜急性鼻炎/気管支炎の発生頻度の増加が低用量(5.7 mg/m3)から用量に相関してみられ、高用量群では初日のみ体重増加抑制もみられた。胎児には軽微な変化として骨格変異(頭蓋骨の非骨化領域のサイズが小さい)がみられたのみであったとの報告がある(US AEGL (2009)、SIAR (2001)、ATSDR (1998))。 (3)実験動物を用いた硫酸の経口、経皮又は吸入ばく露による生殖毒性に関する報告は入手できなかった。しかし、硫酸は刺激性/腐食性影響を有するため、経口及び経皮経路で生殖影響を試験することは適切ではない。硫酸は接触部位で直接作用する毒物である。酸そのものが吸収されて全身に分布するわけではないと考えられる。したがって、いずれの経路によってもばく露後に硫酸が雌雄の生殖器官に硫酸として到達するとは考えにくい。イオン化した硫酸イオンは含硫アミノ酸の正常な代謝産物として尿中に過剰排泄されることもあり、毒性学的に特別な役割を果たすことはないと考えられるとの報告がある(SIAR (2001))。 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)〜(3)より、区分1(呼吸器)とした。 【根拠データ】 (1)硫酸を吸入したヒトでは鼻汁分泌、くしゃみ、喉と胸骨の後ろの灼熱感に続き、咳、呼吸困難(時に声帯の攣縮を伴う)、気管支炎の症例報告がある。高濃度ばく露では血液の混じった鼻汁及び喀痰、喀血及び胃炎がみられた。これらの他、硫酸に吸入ばく露した結果、呼吸器症状を発症した症例報告は多数ある(DFG MAK (2001))。 (2)ボランティアを用いた単回吸入ばく露試験において、0.38 mg/m3以上の硫酸にばく露中に深く吸入しながら運動したヒトで咳が出たとの報告、0.45 mg/m3の硫酸にばく露24時間後のボランティアで気道反応の亢進がみられたとの報告、0.45 mg/m3ばく露と1.0 mg/m3ばく露で喉の刺激を生じたとの報告等がある。硫酸濃度が3 mg/m3以上のばく露ではラ音と気管支収縮を生じたとの報告がある(DFG MAK (2001))。 (3)多数の急性吸入毒性試験がラット、マウス、ウサギ及びモルモットで実施され、気道の局所刺激性がみられた。影響は接触部位に限られるため、いずれの試験においても全身毒性の証拠は得られない。硫酸エアロゾル吸入ばく露後に気道でみられた主な所見は、モルモットでは肺の出血、浮腫、無気肺(肺の部分崩壊又は不完全拡張)、肺胞壁の肥厚、ラット及びマウスでは肺の出血及び浮腫、鼻甲介、気管及び喉頭の潰瘍である。これらの病変は硫酸の腐食性/刺激性に関連した影響である(AICIS IMAP (2015))。 | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)〜(4)より、区分1(呼吸器)とした。 【根拠データ】 (1)硫酸のミストの反復又は長時間吸入により気道の炎症を生じ、慢性気管支炎をきたすおそれがある。熱酸や発煙硫酸の濃縮蒸気又はミストの吸入は肺組織への重度の傷害を伴い急速な意識喪失を生じる可能性がある(AICIS IMAP (2015))。 (2)ラット(雌)を用いた28日間反復吸入(ミスト)ばく露試験(6時間/日、5日/週)において、0.3 mg/m3(ガイダンス換算値:0.000067 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で喉頭の扁平上皮化生がみられ、1.38 mg/m3(ガイダンス換算値:0.0003 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で喉頭上皮の細胞増殖がみられたとの報告がある(AICIS IMAP (2015)、US AEGL (2009)、SIAR (2001))。 (3)ラット(雄)を用いた82日間反復吸入ばく露試験(8時間/日)において、2 mg/m3(ガイダンス換算値:0.0018 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で肺胞上皮細胞(主に肺胞管)の肥大がみられたとの報告がある(US AEGL (2009))。 (4)サルを用いた78週間反復吸入(ミスト)ばく露試験において、約0.4 mg/m3(0.0004 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で肺の構造(細気管支上皮の過形成・肥厚)と機能(換気能の低下)への有害影響が軽度にみられ、2.43 mg/m3(0.00243 mg/L/6h、区分1の範囲)以上で明瞭にみられたとの報告がある(ACGIH (2003))。 | |||
誤えん有害性* | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 | |||
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 |
12.環境影響情報 | |||
---|---|---|---|
生態毒性 | |||
水生環境有害性 短期(急性) | 魚類 (ブルーギル)96時間LC50 (pH3.25〜3.5) =16〜28 mg/L (OECD SIDS: 2001)であることから、区分3とした。 | ||
水生環境有害性 長期(慢性) | 慢性毒性データを用いた場合、無機化合物につき環境中動態が不明であるが、魚類 (カダヤシ)の45日間NOEC (成長)(pH6.0)= 0.025 mg/L (OECD SIDS: 2001)であることから、区分1となる。カダヤシは卵胎生のため、本来分類に結果を利用できないが、対象物質の成長への影響が大きく、他の魚種で同等以上の毒性が予測されることから使用した。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、無機化合物につき環境中動態が不明であるが、甲殻類 (オオミジンコ)の24時間LC50=29 mg/L (OECD SIDS: 2001)であることから、区分3となる。 以上の結果から、区分1とした。 | ||
残留性・分解性 | 情報なし | ||
生態蓄積性 | 情報なし | ||
土壌中の移動性 | 情報なし | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
---|---|---|---|
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 | ||
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
---|---|---|---|---|
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | 1830 | |||
品名(国連輸送名) | 硫酸(濃度が51質量%を超えるもの) | |||
国連分類 | 8 | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | U | |||
海洋汚染物質 | 該当しない | |||
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う。 | |||
航空規制情報 | 航空法の規定に従う。 | |||
陸上規制情報 | 道路法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。 | |||
特別な安全上の対策 | 道路法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 137 | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
---|---|---|---|---|
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
労働安全衛生法 | 特定化学物質第3類物質(施行令別表第3第3号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第6号) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)、リスクアセスメント対象物(法第57の3) 腐食性液体(労働安全衛生規則第326条) 作業場内表示義務(法第101条の4) | |||
労働基準法 | 疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【硫酸(皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害又は歯牙酸蝕)】 | |||
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) | 該当しない | |||
毒物及び劇物取締法 | 劇物(法第2条別表第2) | |||
大気汚染防止法 | 特定物質 (法第17条第1項、施行令第10条) | |||
水質汚濁防止法 | 指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3) | |||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質(Y類同等の物質)(環境省告示第148号第2号) | |||
船舶安全法 | 腐食性物質(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
航空法 | 腐食性物質(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
港則法 | その他の危険物・腐食性物質(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表) | |||
道路法 | 車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2) | |||
麻薬及び向精神薬取締法 | 麻薬向精神薬原料(法第2条第7項、別表第4) |
16.その他の情報 | ||||
---|---|---|---|---|
参考文献 | ||||
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用 ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 R5.3.31: 物理化学的危険性、健康に対する有害性を見直した。 |