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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
塩化コバルト(II)
作成日 2008年10月6日
改訂日 2016年3月31日
改訂日 2019年3月15日
改訂日 2025年3月14日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称塩化コバルト(II)
化学品の英語名称Cobalt(II) dichloride
製品コードR06-C-141-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限触媒・塗料・顔料・インキ乾燥剤用原料,メッキ薬,医薬(パッチテスト貼付剤),毒ガス吸収剤(NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成27年度(2015年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分3
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
呼吸器感作性区分1
皮膚感作性区分1
生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1B
生殖毒性区分1B
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系) 、区分2 (精巣)
分類実施日
(環境有害性)
平成27年度(2015年度)、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分1
水生環境有害性 長期(慢性)区分1

GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
皮膚刺激
強い眼刺激
吸入するとアレルギー、ぜん(喘)息又は呼吸困難を起こすおそれ
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓の障害
呼吸器への刺激のおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による精巣の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策取扱い後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。。
【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
 応急措置飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
漏出物を回収すること。
 保管施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名塩化コバルト(II)
慣用名又は別名塩化コバルト
塩化コバルト(II)
塩化第一コバルト
英語名Cobalt(II) dichloride
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)Cl2Co (130)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号7646-79-9
官報公示整理番号
(化審法)
1-207
官報公示整理番号
(安衛法)
-
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)-

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。
気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。
気道/呼吸器疾患の刺激が発生した場合:できるだけ早く、グルココルチコイド吸入スプレーを吸入する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
皮膚に付着した場合皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚に付着した部分を流水またはシャワーで洗い流したのち、水と石けん(鹸)で丁寧に洗浄する。
直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。
以上、GESTIS、ICSC参照。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
以上、GESTIS、ICSC参照。
飲み込んだ場合意識がある場合は、コップ1〜2杯の水を飲ませる。
口をすすぎ、吐き出す。
自然嘔吐の場合は、嘔吐物が呼吸器に侵入するのを防ぐため、頭を胸より低くし、うつぶせの姿勢にする。
以上、GESTIS、ICSC参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状急性: 粘膜への刺激、皮膚および気道への感作作用
慢性: 気道に対するアレルギー性または刺激性の条件反応、肺の損傷(線維症)、アレルギー性皮膚疾患
経口摂取すると心臓、骨髄および甲状腺影響を与えることがある。
ヒトで発がん性を示す可能性がある。 ヒトの生殖に毒性影響を及ぼす可能性があることが示されている。
以上、GESTIS参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤周辺火災に応じて水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素を使用する。
使ってはならない消火剤火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。
特有の危険有害性火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。
特有の消火方法火災の場合:区域から退避させ、爆発の危険性があるため、離れた距離から消火すること。
消火活動は風上から行う。
火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。
危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な保護具や耐火服を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
影響を受ける周囲に警告すること。
個人用保護具を着用すること(「個人用保護具」の章を参照)。
周囲を換気し、こぼれた場所を洗浄する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項環境への放出を避けること。
発がん性物質および生殖細胞変異原性物質は、密閉装置でのみ使用する必要がある。
容器とパイプラインにラベルを貼ること
水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材漏出物を回収すること。
廃棄物をシンクやゴミ箱に入れたり置いたりしない。
収集容器にはラベルを貼ること。容器は換気の良い場所に保管すること。
この物質を環境中に放出してはならない
こぼれた物質を密閉容器内に収集する。
湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる。
以上、GESTIS、ICSC参照。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策毎日掃除すること。
「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
粉じんを発生させないこと。避けられない粉じんの発生は、定期的に収集すること。
掃除中に粉じんを起こさないこと。
清掃にブロワーを使用しないこと。
以上、GESTIS参照。
安全取扱い注意事項全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
密閉状態での加熱又は鈍性化剤の減少を避けること。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
職場を清潔で乾燥した状態に保つように注意すること。
この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。
容器を開けたままにしないこと。
補充または移し替えには、排気口付きの漏れ防止機器を使用すること。
こぼれないようにすること。
ラベルの付いた容器にのみ注入すること。
粉じんを発生させないこと。
以上、GESTIS参照。
接触回避感染性、放射性、爆発性の物質。
ガス。
強酸化性物質。
硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤
有機過酸化物および自己反応性物質。
危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しない。
以上、GESTIS参照。
衛生対策この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
取扱い後はよく手を洗うこと。
眼、皮膚、衣類への接触を避けること。接触した場合は患部を洗浄する。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
シャワー付きの洗面所と、可能であれば、私服と作業服用の独立した収納を備えた部屋を用意すること。
以上、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
国又は都道府県の規則に従って保管すること。
容器を密閉しておくこと。
乾燥した場所に保管すること。
容器にはラベルを貼付すること。
できるだけ元の容器に保管すること。
室温での保管を推奨する。
物質は吸湿性のため、湿気を避ける。
排水溝のない場で貯蔵する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度0.02 mg/m3 (コバルトとして)
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度
日本産衛学会 (2023年度版)0.05 mg/m3 (コバルト及びコバルト化合物として)
ACGIH (2024年版)TLV-TWA:0.02 mg/m3 (コバルトとして,Inhalable paticulate matter)
(コバルト及び無機コバルト化合物)(DSEN; RSEN)
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。
作業場は、可能であれば物理的に分離する必要がある。
作業場は換気をすること。
床に排水溝を設置しない。
作業場での洗濯設備を設置する。
取り扱い場所の近くに洗浄のための設備を設ける。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具換気が不十分な場合、呼吸用保護具を着用すること。
緊急時には、呼吸保護具を着用する。
フィルター装置の使用限界を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明な状況では、絶縁装置を使用すること。
以上、GESTIS参照。
手の保護具必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に洗浄し、換気の良い場所に保管すること。
布製または革製の手袋は不適切である。
次の材料は保護手袋に適している(透過時間>= 8時間):天然ゴム/天然ラテックス-NR(0,5 mm)(非粉末およびアレルゲンフリー製品を使用)、ポリクロロプレン-CR(0,5 mm)、ニトリルゴム/ニトリルラテックス-NBR(0,35 mm)、ブチルゴム-ブチル(0,5 mm)、フッ素炭素ゴム-FKM(0,4 mm)、ポリ塩化ビニル-PVC(0,5 mm)
記載されている時間は、22°Cでの測定と一定の接触によって示されている。温められた物質や体温などによる温度の上昇や、膨張による有効層厚の弱化により、透過時間が大幅に短縮される可能性がある。層の厚さが1.5倍に増減すると、透過時間が2倍/半減する。このデータは純物質にのみ適用される。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具身体の保護リスクに応じて、不浸透性の適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体
ピンク色、紫色、青色
臭いデータなし
融点/凝固点735 ℃ (ICSC (2013))
沸点、初留点及び沸騰範囲1049 ℃ (GESTIS (2024))
可燃性不燃性
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点データなし
自然発火点データなし
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水:586 g/L (20℃) (GESTIS (2024))
水:562,000 mg/1,000 g (25℃) (MOE初期評価第11巻 (2013))
n-オクタノール/水分配係数log Pow:0.85 (ICSC (2013))
蒸気圧0 Pa (20℃) (ECHA CHEM (2024))
密度及び/又は相対密度3.36 g/cm3 (25℃) (GESTIS (2024))
相対ガス密度データなし
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性不燃性である。他の使用する物質に応じて、火災および爆発防止対策を選択すること。
消火対策は、周囲の状況に合わせて選択すること。
以上、GESTIS参照。
化学的安定性通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性不燃性。 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
避けるべき条件直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質接触すると爆発する危険性:アルカリ金属
酸化剤と反応する。
以上、GESTIS、ICSC参照。
危険有害な分解生成物火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として、80 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013))、93.4 mg/kg (CICAD 69 (2006)、ATSDR (2004))、161.1 mg/kg (ATSDR (2004))、418 mg/kg (CICAD 69 (2006))、418 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013)) との5件の報告がある。3件が区分3に2件が区分4に該当するので、最も多くのデータが該当する区分3とした。今回の調査で入手した情報を追加し、区分を見直した。
経皮データ不足で分類できない。なお、ラットのLDLo値として、2,000 mg/kg (RTECS (Access on September 2015)) との報告があるが、List 3の情報であり、原著による確認ができなかったため、分類には採用しなかった。
吸入: ガスGHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気GHSの定義における固体である。
吸入: 粉じん及びミストデータ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性本物質はヒトの皮膚に対して刺激性を持つ (HSDB (Access on September 2015)) との記載があることから区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性本物質は眼を刺激するとの記載があることから (環境省リスク評価第11巻 (2013)、HSDB (Access on September 2015))、区分2とした。
呼吸器感作性本物質の職業ばく露において本物質ばく露による喘息の報告が複数ある (DFGOT vol.23 (2007))。また、日本産業衛生学会はコバルト化合物として気道感作性第1群としている (日本産業衛生学会 許容濃度の勧告 (2015))。以上から区分1とした。なお、感作性に関わる全ての物質が同定されているわけではないとの記載がある (日本産業衛生学会 許容濃度の勧告 (2015))。本物質はEU CLP分類において「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
皮膚感作性モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において本物質適用による感作性がみられたとの報告や (DFGOT vol.23 (2007))、ヒトへのパッチテストで陽性結果が複数報告されている (DFGOT vol.23 (2007))。また、日本産業衛生学会はコバルト化合物として皮膚感作性第1群としている (日本産業衛生学会 許容濃度の勧告 (2015))。以上から区分1とした。なお、感作性に関わる全ての物質が同定されているわけではないとの記載がある (日本産業衛生学会 許容濃度の勧告 (2015))。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
生殖細胞変異原性In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験、染色体異常試験で陽性 (CICAD 69 (2006)、DFGOT vol. 23 (2007))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、ヒト培養リンパ球の小核試験でいずれも陽性である (DFGOT vol. 23 (2007))。以上より、in vivo体細胞変異原性試験で陽性であり、ガイダンスに従い、区分2とした。
発がん性【分類根拠】
ヒトの発がん性に関する情報はない。動物試験では(1)本物質の発がん性について限定的な証拠があることに加え、(2)より本物質が属する二価の可溶性コバルト化合物には動物試験において発がん性の十分な証拠がある物質(硫酸コバルト(II)七水和物)があること、また(3)よりコバルトイオンが発がん性の主な原因であることが報告されていることから、区分1Bとした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。

【根拠データ】
(1)本物質をラットに皮下投与(40 mg/kg、5日/週を9日間あけて2回)した2つの試験で、8ヵ月後及び12ヵ月後にそれぞれ皮下肉腫(皮下線維肉腫)の発生が6/20例及び8/20例に認められた(IARC 131 (2023))。
(2)二価の可溶性コバルト化合物は、実験動物において発がん性の十分な証拠があることに加え、作用機序の面でそれらの化合物では発がん性のキーとなる性質を示す強い証拠がヒトの細胞と実験系で得られているとの報告があることから、グループ2Aに分類された(IARC 131 (2023))。
(3)生体内でコバルトイオンを遊離するコバルト金属およびコバルト化合物(水への溶解度に関係なく)が、同様の作用機序を介して細胞死、DNA損傷、がんなどの同様の種類の影響を引き起こすことから、コバルトイオンが毒性と発がん性の主な原因であることを示している(NTP (2021)、IARC 131 (2023))。

【参考データ等】
(4)国内外の評価機関による発がん性分類では、本物質を含む可溶性コバルト(II)塩に対しIARCでグループ2A(IARC 131 (2023))に、本物質自体に対しEUでCarc. 1B(CLP分類 (Accessed June 2024))に、コバルト及び(無機)コバルト化合物に対しACGIHでA3(ACGIH (2019))、日本産業衛生学会で2B(産衛学会許容濃度等の勧告 (2023))、DFGでカテゴリー2(List of MAK and BAT values (2023))に分類されている。
生殖毒性【分類根拠】
実験動物データも本物質自体の生殖影響に関する情報は限られているが、本物質投与に関連した毒性影響は生体に吸収後のコバルトイオンに起因するものと考えられる。したがって、他の水溶性コバルト化合物の情報も本分類に利用することとした。ヒトへの影響については、(5)のように塩化コバルトの催奇形性は認められないと報告されている。(1)、(3)、(4)より水溶性コバルト化合物は雄に精巣毒性及び精子への有害影響を生じ、雌を受胎させる能力(授精能)を低下させる。(2)から、母動物に顕著な毒性がない用量でラット、マウスに胎児毒性及び催奇形性を生じる報告がある。以上、本物質を含む水溶性コバルト化合物では経口経路で雄生殖器官への有害影響や授精能の低下、並びに母動物毒性のない用量で催奇形性を示すことが報告されているため、本項は区分1Bとした。

【根拠データ】
(1)硫酸コバルト・七水和物(CAS:10026-24-1)をマウスに13週間吸入ばく露した試験では、3 mg/m3以上で精子の運動性低下、30 mg/m3で精巣及び精巣上体重量減少、異常精子の比率の増加が認められた(環境省リスク評価第11巻(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018))。
(2)硫酸コバルト(II)(CAS:10124-43-3)を妊娠ラットに妊娠期間を通して強制経口投与した結果、母動物に軽微な影響(肝臓、副腎、脾臓の相対重量増加)がみられた100 mg/kg/dayよりも低い用量(25, 50 mg/kg/day)で、胎児の体重低値に加え、骨格・内臓の発達遅延、奇形(主に頭蓋、脊柱、腎盂、尿細管、卵巣、精巣に奇形)の増加がみられた。本物質50 mg/kg/dayを妊娠マウスの器官形成期(妊娠6〜15日)に強制経口投与した場合も、胎児に骨格の発育遅延、奇形(主に眼瞼、腎臓、頭蓋、脊椎)発生率の増加がみられた(環境省リスク評価第11巻(2013))。
(3)本物質を雄マウスに12週間飲水投与後に無処置雌と交配させた結果、200 ppm(25 mg/kg/day)以上で吸収胚数及び生存胎児数減少、400 ppm(47 mg/kg/day)以上で妊娠雌数及び着床部位数の減少が認められた。雄には精巣・精巣上体等の重量減少、精巣及び精巣上体における精子数の減少、精子形成能の低下が認められており、妊娠雌数の減少は雄の授精能の低下に起因すると考えられている(環境省リスク評価第11巻(2013)、NICNAS IMAP(Accessed Oct. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2009))。
(4)本物質を雄マウスに72 mg Co/kg/dayで10週間飲水投与後に無処置雌と交配させた結果、投与群では妊娠動物数の減少、1腹当たりの生存胎児数の減少、及び同着床前死亡の増加がみられた。以上の結果は、雄の精子濃度の減少による受精率の低下による影響と考えられた。飲水投与し交配後の雄を6週間休薬させた回復群では、精子濃度は回復しなかったが、精子の運動量及び運動速度は正常レベルまで回復した(厚労省初期リスク評価書(2009))。

【参考データ等】
(5)ヒトにおける催奇形性は認められないとの報告、また出産時に抗貧血剤として塩化コバルトを服用した女性から産まれた新生児に臨床学的な変化は認められなかったとの報告がある(厚労省初期リスク評価書(2009))。
(6)EU CLPではRepr. 1Bに分類されている。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質は気道刺激性がある (環境省リスク評価第11巻 (2013))。ヒトにおいては、約1.7 mgを摂取した6歳男児の症例報告で、ばく露7時間後に好中球減少症 (neutropenia) が報告されている (ATSDR (2004))。実験動物では、ラットの経口投与 (区分1相当の用量) で、自発運動低下、筋緊張低下、接触応答低下、呼吸数減少、肝臓、腎臓、胃腸管への影響、死亡 (死亡原因は不明との記載) がある (ATSDR (2004))。その他、動物種や用量は不明ながら、経口投与で鎮静、下痢、体温低下、また、モルモットの吸入ばく露 (用量不明) で、肺出血、肺水腫、死亡の報告がある (IARC 52 (1991))。
ヒトにおける好中球減少症は1例の所見であるため、血液系への影響は採用しなかった。
以上より、本物質は気道刺激性の他、実験動物の所見から中枢神経系への影響、肝臓、腎臓、消化管への影響が考えられ、区分1 (中枢神経系、消化管、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性) とした。
なお、旧分類のHSDB (2004) の所見が記載されており、「子供に赤血球の生成の抑制によるチアノーゼ、昏睡及び死に至るとの記述」、及び「本物質による影響には胸骨後面痛、耳鳴り、吐き気及び嘔吐、神経性難聴、気管圧迫を伴う甲状腺過形成、粘液水腫、倦怠感などが記述」
いずれの文献もtherapenticsとの記載があることから、ヒトの治療事例と推察され、単回ばく露の対象とはしなかった。
旧分類の区分を見直した。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)ヒトにおいて、貧血の治療用に本物質、又は硫酸コバルトを投与した際の過剰障害として、神経系 (食欲不振、吐き気、耳鳴り、難聴、神経障害)、甲状腺 (甲状腺腫、甲状腺へのヨウ素の取り込み阻害) への影響、ボランティアに本物質を経口投与した結果、赤血球系の造血亢進がみられた他、自覚症状として頭痛、腹部不快感の主訴が多かった (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006)) との報告がある。また、かつてビールの泡の安定化目的で、硫酸コバルトが添加されており、多量にコバルトを含むビールの大量消費者に心筋症による死亡例が報告され、コバルトの心筋障害作用が懸念され (CICAD 69 (2006)、ACGIH (7th, 2001))、コバルトの添加制限を行うことにより、心筋症の発生、それによる死亡例は消失したとされる (環境省リスク評価第11巻 (2013))。以上より、ヒトでの本物質を含む可溶性コバルト化合物の反復ばく露による標的臓器として、神経系、心血管系、甲状腺、血液系が挙げられる。
実験動物ではラットに本物質を7ヶ月間強制経口投与した試験において、0.5 mg/kg/day以上の用量で、赤血球数及びヘモグロビン量の増加が認められている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。また、本物質の6水和物をラットに8週間強制経口投与した試験でも血液影響がみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。この他、硫酸コバルト7水和物のラット、又はマウスを用いた13週間、又は2年間吸入ばく露試験において、ラット、マウスともに0.3 mg/m3の低濃度から、呼吸器に炎症性組織変化がみられ、ラット13週間ばく露では、加えて血液影響 (多血症、血小板数減少、網状赤血球数増加) もみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006))。この他、雄マウスに本物質を200〜800 ppmの濃度で12週間飲水投与した試験で、400〜800 ppm (43〜96 mg/kg/day: 区分2相当) で精巣重量減少、精巣上体精子数の減少、精子形成能の低下、精細管及び間質組織の変性がみられた (環境省リスク評価第11巻 (2013)、CICAD 69 (2006)) との報告がある。以上より、実験動物での本物質を含む可溶性コバルト化合物の標的臓器は呼吸器、血液系、精巣と考えられ、精巣は区分2、他は区分1の用量範囲での影響であった。
以上、ヒト及び実験動物での本物質を含む可溶性コバルト化合物の反復ばく露影響に関する情報に基づき、本項は区分1 (神経系、呼吸器、心血管系、甲状腺、血液系)、区分2 (精巣) とした。
誤えん有害性*データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)単子葉植物(コウキクサ)7日間EC50 (生長、湿重量) = 212 μgCo/L(換算値:0.47 mg CoCl2/L相当)(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分1とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、金属で水中での挙動が不明であり、魚類(ゼブラフィッシュ)の16日間NOEC (生存) = 0.06 mg Co/L(換算値:0.13 mg CoCl2/L)(CICAD 69, 2006)であることから、区分1となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、金属で水中での挙動が不明であり、甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50 = 1110 μgCo/L(換算値:2.4 mg CoCl2/L相当)(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2となる。
以上の結果を比較し、区分1とした。
残留性・分解性-
生態蓄積性-
土壌中の移動性-
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号3288
品名(国連輸送名)毒性固体、無機物、他に品名が明示されていないもの
国連分類6.1
副次危険-
容器等級III
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う
航空規制情報航空法の規定に従う
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*151
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質(施行令別表第3第2号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号) 【13の2 コバルト又はその無機化合物】
特定化学物質第2類物質、管理第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、5号) 【13の2 コバルト又はその無機化合物】
特定化学物質特別管理物質(特定化学物質障害予防規則第38条の4) 【コバルト又はその無機化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【172 コバルト及びその化合物】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【12 コバルト及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【172 コバルト及びその化合物】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【12 コバルト及びその化合物】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業環境評価基準(法第65条の2第2項) 【12の2 コバルト及びその無機化合物】
特殊健康診断対象物質・現行取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第1項) 【3 コバルト又はその無機化合物】
特殊健康診断対象物質・過去取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第2項) 【13の2 コバルト及びその無機化合物】
労働基準法疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【コバルト及びその化合物】
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) 【156 コバルト及びその化合物】
毒物及び劇物取締法-
水道法水質基準(平15省令101号) 【38 塩化物イオン】
船舶安全法毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)
航空法毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)
港則法その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)
大気汚染防止法有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【60 コバルト及びその化合物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・2024 Emengency Response Guidebook
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」