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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
1,1-ジクロロエチレン
作成日 2017年03月17日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称1,1-ジクロロエチレン (1,1-Dichloroethylene)
製品コードR02-B-034
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限合成原料[家庭用ラップ、包装用フィルム、その他加工品 (人工芝、漁網等)、塩化ビニリデンラテックス、難燃性繊維] (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性引火性液体区分1
自己反応性化学品タイプG
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分4
急性毒性 (吸入: 蒸気)区分4
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2
発がん性区分2
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (呼吸器、肝臓、腎臓)
区分3 (麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (血液、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性))
分類実施日
(環境有害性)
平成28年度、GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分2
水生環境有害性 (長期間)区分3
GHSラベル要素
絵表示炎感嘆符健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報極めて引火性の高い液体及び蒸気
飲み込むと有害
強い眼刺激
吸入すると有害
眠気又はめまいのおそれ
発がんのおそれの疑い
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
呼吸器、肝臓、腎臓の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による血液、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)の障害
水生生物に毒性
長期継続的影響によって水生生物に有害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置火災の場合:消火するために適切な消火剤を使用すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名1,1-ジクロロエチレン
別名塩化ビニリデン
1,1-ジクロロエテン
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C2H2Cl2 (96.94)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号75-35-4
官報公示整理番号
(化審法)
2-103
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水【又はシャワー】で洗うこと。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
吐かせない。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 咳、めまい、嗜眠、意識喪失。
眼: 充血。
経口摂取: 腹痛、他の症状については「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火剤、泡消火剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性引火性がきわめて高い。
火災時に刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
蒸気/空気の混合気体は爆発性である。
特有の消火方法水を噴霧して容器類を冷却する。
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険区域から立ち退く!
すべての発火源を取り除く。
専門家に相談する!
下水に流してはならない。
この物質を環境中に放出してはならない。
漏れた液やこぼれた液を、密閉式の容器にできる限り集める。
残留液を砂または不活性吸収剤に吸収させる。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
熱,高温のもの,火花,裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
許容濃度を超えても、臭気として十分に感じないので注意すること。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
涼しいところに置くこと。
施錠して保管すること。
安定化した状態でのみ貯蔵すること。
耐火設備で保管すること。
暗所に保管すること。
安全な容器包装材料消防法、国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)TLV-TWA: 5 ppm, 20 mg/m3
設備対策容器を接地しアースをとること。
防爆型の電気機器/換気装置/照明機器を使用すること。
火花を発生させない工具を使用すること。
静電気放電に対する措置を講ずること。
取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
適切な局所排気装置・換気装置等を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に防毒マスクを使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、保護眼鏡を着用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点-122℃ (ICSC (2014))
沸点、初留点及び沸騰範囲32℃ (NFPA (14th, 2010))
可燃性引火性が極めて高い (ICSC (2014))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界6.5〜15.5 vol% (NFPA (14th, 2010))
引火点-28℃ (c.c.) (NFPA (14th, 2010))
自然発火点570℃ (NFPA (14th, 2010))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率0.3302 cP (20℃) (HSDB (Access on April 2020))
溶解度水:2,420 mg/L (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
エタノール、ベンゼン、アセトン、四塩化炭素に可溶、エーテル、クロロホルムに易溶 (HSDB (Access on April 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow=2.41 (ICSC (2014))
蒸気圧600 mmHg (25℃) (HSDB (Access on April 2020))
密度及び/又は相対密度1.2 (水=1) (ICSC (2014))
相対ガス密度3.3 (空気=1) (ICSC (2014))
粒子特性該当しない

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性加熱または酸素、日光、銅、アルミニウムの影響下で容易に重合する。
危険有害反応可能性爆発性過酸化物を生成しやすい。
火災または爆発の危険を生じる。
加熱したり、炎と接触すると爆発することがある。
燃焼すると分解し、塩化水素およびホスゲンの有毒で腐食性のフュームを生じる。
酸化剤と激しく反応する。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質酸化剤
危険有害な分解生成物塩化水素およびホスゲンの有毒で腐食性のフューム、爆発性過酸化物

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(6) より、区分4とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 雄: 1,500 mg/kg (Patty (6th, 2012))
(2) ラットのLD50: 雄: 1,510 mg/kg (EHC 100 (1990)、MAK (DFG) vol.8 (1997)、ATSDR (2019))
(3) ラットのLD50: 雄: 1,550 mg/kg (EHC 100 (1990)、MAK (DFG) vol.8 (1997)、IRIS Tox Review (2002)、CICAD 51 (2003))
(4) ラットのLD50: 1,510〜1,550 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007))
(5) ラットのLD50: 雄: 1,800 mg/kg、雌: 1,500 mg/kg (EHC 100 (1990)、ECETOC JACC (1985)、IRIS Tox Review (2002)、CICAD 51 (2003)、ATSDR (2019))
(6) ラットのLD50: 雄: 2,500 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))
経皮【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における液体であり、区分に該当しないとした。
吸入: 蒸気【分類根拠】
(1)〜(6) より、ばく露前に給餌したデータを用いて、区分4とした。但し、本物質は絶食により毒性が増強するため、(7)〜(11) を根拠から除外した。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (789,536 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間、給餌): 雄: 6,350 ppm (ECETOC JACC (1985)、EHC 100 (1990)、MAK (DFG) vol.8 (1997)、ACGIH (7th, 2001)、IRIS Tox Review (2002)、ATSDR (2019))
(2) ラットのLC50 (4時間、給餌): 雄: 7,145 ppm、雌: 10,275 ppm (ATSDR (2019))
(3) ラットのLC50 (4時間、給餌): 雄: 7,100 ppm、雌: 10300 ppm (MAK (DFG) vol.8 (1997))
(4) ラットのLC50 (4時間、給餌): 8,600 ppm (MAK (DFG) vol.8 (1997))
(5) ラットのLC50 (4時間、給餌): 1,5000 ppm (EHC 100 (1990)、ATSDR (2019))
(6) 本物質の蒸気圧: 600 mmHg (25℃) (飽和蒸気圧濃度換算値: 789,536 ppm) (HSDB (Access on April 2020))

【参考データ等】
(7) ラットのLC50 (4時間、絶食): 雄: 415 ppm、雌: 6,545 ppm (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (2019))
(8) ラットのLC50 (4時間、絶食): 雄: 600 ppm (EHC 100 (1990))
(9) ラットのLC50 (4時間、絶食): 雄: 2,300 ppm (MAK (DFG) vol.8 (1997))
(10) ラットのLC50 (4時間、絶食): 4,100 ppm (MAK (DFG) vol.8 (1997))
(11) ラットのLC50 (4時間、絶食): 8,000 ppm (MAK (DFG) vol.8 (1997))

吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 本物質はヒト及び動物に適用すると皮膚刺激性を生じるが、その刺激はすぐに消失する。この刺激性は製品に含まれるp-ヒドロキシアニソールの影響の可能性がある (ATSDR (2019)、NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR582 (2015)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 100 (1990)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) 人工皮膚モデル (EST-1000) を用いたin vitro皮膚腐食性試験において3分、60分ばく露後、生存率はそれぞれ79%、53%であり、腐食性は否定された (AICIS IMAP (2016))。
(3) 本物質はEU Method B.40に準拠したin vitro皮膚腐食性試験 (経皮電気抵抗試験、TER) で腐食性は否定された (REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(4) 人工皮膚モデル (EpiSkin) を用いたin vitro皮膚刺激性試験において、15分ばく露後の細胞生存率は96.6%であり、刺激性物質ではないと判定されている (AICIS IMAP (2016))。

【参考データ等】
(5) 本物質は眼、皮膚、気道を刺激する (MOE初期評価第14巻 (2016)、CICAD 51 (2003)、GESTIS (Access on May 2020))。
(6) 本物質は眼及び皮膚に対して中等度の刺激性を有する (MAK (DFG) vol.8 (1997))。
(7) 本物質は腐食性物質ではないが、皮膚刺激性は有する (AICIS IMAP (2016))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。新しいデータ (1)、(2) が得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質は眼、皮膚、気道を刺激する (MOE初期評価第14巻 (2016)、CICAD 51 (2003)、GESTIS (Access on May 2020)。
(2) 本物質は眼及び皮膚に対して中等度の刺激性を有する (MAK (DFG) vol.8 (1997))。

【参考データ等】
(3) OECD TG 437に準拠し、ウシ角膜を用いたin vitro眼損傷性試験 (BCOP) において、平均刺激性スコア (IVIS) は43.9であり、中等度の眼刺激性物質と判定された (AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
(4) 本物質はヒト及び動物に適用すると眼刺激性を生じるが、その刺激はすぐに消失する。この刺激性は製品に含まれるp-ヒドロキシアニソールの影響の可能性がある (ATSDR (2019)、NITE初期リスク評価書 (2007)、NTP TR582 (2015)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 100 (1990)、GESTIS (Access on May 2020)、HSDB (Access on May 2020))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため、分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) TG 429に準拠したマウス局所リンパ節試験 (LLNA) において、陰性と判定された (AICIS IMAP (2016)、REACH登録情報 (Access on June 2020))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)、(2) より、専門家判断に基づき区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、ラット、マウスの優性致死試験で陰性、マウス骨髄細胞及び末梢血の小核試験、マウスまたはラット骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、チャイニーズハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陽性の報告がある(食安委 清涼飲料水評価書 (2007)、MOE初期評価第14巻 (2016)、IARC 119 (2019)、ATSDR (2019)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1994)、CICAD 51 (2003)、MAK (DFG) vol.8 (1997)、EHC 100 (1990)、IRIS Tox Review (2002)、IARC 71 (1999)、NTP TR582 (2015))。マウスの腎臓を標的としたDNA損傷試験で弱陽性の報告がある (ATSDR (2019))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、遺伝子突然変異試験で陰性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果、姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある(食安委 清涼飲料水評価書 (2007)、MOE初期評価第14巻 (2016)、IARC 119 (2019)、ATSDR (2019)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994)、CICAD 51 (2003)、MAK (DFG) vol.8 (1997)、EHC 100 (2007)、EPA IRIS Tox Review (2002)、IARC 71 (1999)、NTP TR582 (2015))。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(3) より、最新の既存分類結果に基づき区分2とした。最新の既存分類結果に基づき分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ2B (IARC 119 (2019))、産衛学会で第2群B (産業衛生学会誌許容濃度の勧告 (2018年提案))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、EPAでGroup C (possible human carcinogen) (IRIS (2002))、EU-CLPでCarc.2 (EU CLP分類 (Access on April 2020))、MAK (DFG) で3B (DFG List of MAK and BAT Values 2019) に分類されている。
(2) 雌雄のラットに本物質を2年間吸入ばく露した発がん性試験において、雄で悪性中皮腫、雌で甲状腺腺腫、甲状腺腺腫及びがんの合計、単核細胞白血病の発生率に有意な増加がみられた。また、有意差はなかたものの、雄では腎尿細管がん及び鼻の呼吸上皮腺腫の発生率の増加もみられた (NTP TR582 (2015)、IARC 119 (2019)、MOE初期評価第14巻 (2016))。これより、本物質の発がん性に関して、雄のラットには明らかな証拠 (clear evidence) が、雌ラットにはある程度の証拠 (some evidence) があると結論された (NTP TR582 (2015))。
(3) 雌雄のマウスに本物質を2年間吸入ばく露した発がん性試験において、雄で腎尿細管腺腫及びがん、雌で肝細胞腺腫及びがん、肝臓の血管肉腫及び血管腫の発生率の有意な増加がみられた。また、有意差はなかったものの、雌雄で肝胆管細胞がんの発生率の増加もみられた (NTP TR582 (2015)、IARC 119 (2019)、MOE初期評価第14巻 (2016))。これより、本物質の発がん性に関して、雌雄マウスには明らかな証拠 (clear evidence) があると結論された (NTP TR582 (2015))。
(4) 米国のプラスチック製造工場の労働者における肺がんによる死亡率に関する質の高いコホート研究では、肺がんと本物質へのばく露との間に関連は見らなかった。

【参考データ等】
(5) ラット及びマウスの経口経路での試験では発がん性の証拠はなかった。 吸入経路での試験ではハムスターには投与に関連した腫瘍性変化はなかった (IARC 119 (2019))。
(6) IARCは (2)、(3) のNTPの発がん性試験結果に基づき、最新の評価で発がん性分類をグループ3からグループ2Bに変更したが、少数のグループは、 ヒトに対して発がん性があると分類される塩化ビニル (CAS番号 75-01-4、IARC発がん性分類グループ1) との類似性に基づいて、本物質のより高い分類 (グループ2A) を主張した (IARC 119 (2019))。

生殖毒性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分2とした。

【根拠データ】
(1) 雌ラットの妊娠6〜15日に吸入ばく露 (7時間/日) した発生毒性試験において、母動物毒性 (記載なし) がみられる用量で、胎児に波状肋骨、頭蓋骨骨化遅延がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) 雌ウサギの妊娠6〜19日に吸入ばく露 (7時間/日) した発生毒性試験において、母動物毒性 (記載なし) がみられる用量で、吸収胎児、骨格変異増加がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(3) 雌マウスの妊娠6〜16日に吸入ばく露 (22〜23時間/日) した発生毒性試験において、母動物毒性がみられない用量で胎児に骨化遅延がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007)、CICAD 51 (2003))。

【参考データ等】
(4) 雌ラットの妊娠6〜19日に吸入ばく露 (22〜23時間/日) した発生毒性試験において、母動物毒性 (体重減少、死亡 (2/18例)) がみられる用量で胎児に側脳室性水頭症、胸骨分節の骨化遅延がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007)、CICAD 51 (2003))。CICAD 51 (2003) は、この試験は厳しい母体毒性のため、発生毒性の評価には有用ではないとしている。
(5) ラットを用いた飲水投与による3世代生殖毒性試験において、親動物毒性 (肝臓のごく軽度の肝細胞脂肪変性等) 用量においても、生殖毒性はみられていない (食安委 清涼飲料水評価書 (2007)、CICAD 51 (2003)、NITE初期リスク評価書 (2007))。
(6) 雌ラットの妊娠6〜15日に飲水投与した発生毒性試験において、母動物毒性、胎児に対する影響は認められていない (食安委 清涼飲料水評価書 (2007)、CICAD 51 (2003)、NITE初期リスク評価書 (2007))。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(2)〜(4) より、区分1 (呼吸器、肝臓、腎臓)、(1) より区分3(麻酔作用) とした。なお、旧分類で特定標的臓器として神経系が含まれていたが、根拠と考えられる (6) については本物質そのものの毒性影響ではないことから根拠から除外し、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトでは本物質の急性吸入ばく露により、中枢神経系の抑制ないし興奮症状を示し、重篤な場合は意識不明になることが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(2) ラットを用いた複数の単回強制経口投与試験が実施されており、肝臓に対する影響として25 mg/kg (区分1の範囲) 以上で毛細胆管の障害、50 mg/kg (区分1の範囲) 以上でAST及びALTの増加、200 mg/kg (区分1の範囲) 以上で尿素窒素 (BUN) の増加がみられている。腎臓に対する影響として、400 mg/kg (区分2の範囲) でクレアチニンの増加と組織変化 (尿細管上皮の空胞化・色素沈着・壊死、尿細管拡張) がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(3) マウスを用いた複数の単回強制経口投与試験では、腎臓に対する影響として200 mg/kg (区分1の範囲) で投与後8 時間以内に近位尿細管の障害が約半数の動物で認められ、呼吸器に対する影響として200 mg/kg (区分1の範囲) で肺水腫と出血、及び24 時間以内にクララ細胞の壊死と剥離が認められた (NITE初期リスク評価書 (2007))。
(4) ラットを用いた単回吸入毒性試験 (4時間ばく露) において、200〜250 ppm (800〜1,000 mg/m3) (区分1の範囲) で血清ソルビトールデヒドロゲナーゼとオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ活性の増加、及び肝細胞の小葉中心性壊死が認められている (NITE初期リスク評価書 (2007))。

【参考データ等】
(5) 経口投与、吸入ばく露後の急性毒性の標的臓器は、肝臓、腎臓、肺のクララ細胞である。肝臓における作用には、血清中の肝臓酵素値の上昇、毛細胆管破裂、細胞質空胞変性、出血性壊死などの重度の病理組織学的損傷、本物質の共有結合の増加、ならびにGSHの減少などがあることが報告されている (CICAD 51 (2003)、食安委 清涼飲料水評価書 (2007))。
(6) 本物質共重合体の水分散液輸送に使用していたタンクを清掃中に持続性の脳神経障害を発症した2症例では、三叉神経への影響が最も強く現れ、後頭耳介神経や頸部皮神経、咀嚼筋、眼筋、舌下神経にも影響がみられた。なお、清掃時に用いた石鹸と本物質が反応して生成したジクロロアセチレンが原因物質として考えられている (MOE初期評価第14巻 (2016))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分1 (血液、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)) とした。

【根拠データ】
(1) ヒトについては、6年以下のばく露期間で作業していた重合工場作業者27/46人 (59%) に肝機能障害が認められたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994))。
(2) ラットを用いた飲水投与による2年間反復投与毒性試験において、50 ppm (雄:7 mg/kg/day、雌:9 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上の雌、200 ppm (雄: 20 mg/kg/day、雌: 30 mg/kg/day、区分2の範囲) の雄で小葉中心性肝細胞脂肪変性、肝細胞腫脹がみられている (食安委 清涼飲料水評価書 (2007)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994))。
(3) ラットを用いた14週間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において6.25〜50 ppm (ガイダンス値換算: 0.017〜0.132 mg/L、区分1の範囲) で呼吸器への影響 (嗅上皮の萎縮・鉱質沈着・壊死、鼻甲介の萎縮等)、肝臓への影響 (小葉中心性細胞質変性、細胞質空胞化等)、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.26 mg/L、区分2の範囲) で上記に加えさらに精巣への影響 (精子の運動性低下、精子数減少) がみられている (NTP TR582 (2015))。
(4) マウスを用いた14週間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、25〜50 ppm (ガイダンス値換算: 0.017〜0.132 mg/L、区分1の範囲) で血液への影響 (赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値の減少)、呼吸器への影響 (喉頭の呼吸上皮の扁平上皮化生)、精巣への影響 (精巣上体尾部精子数減少)、腎臓への影響 (腎症、尿細管壊死・タンパク円柱)、100 ppm (ガイダンス値換算: 0.26 mg/L、区分2の範囲) で上記に加えさらに肝臓への影響 (肝臓の壊死・小葉中心性肝細胞肥大) がみられている (NTP TR582 (2015))。

誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、(1)より、動粘性率は20℃で0.27 mm2/secと算出され、40℃の動粘性率が14 mm2/s以下であるが、その他の情報は得られなかった。

【参考データ】
(1)動粘性率が20℃で0.27 mm2/s(20℃での粘性率0.33 mPa・s(HSDB (Access on April 2020)) と密度(比重)1.21 g/cm3 (HSDB (Access on April 2020)) から算出)である。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)藻類 (クラミドモナス) 72時間EbC50 = 9.12 mg/L (CICADs 51 (2003) 、 ECETOC TR91 (2003)) であることから、区分2とした。
なお、分類に用いた藻類のデータはバイオマス法によるものであるが、甲殻類、魚類のいずれのデータよりも小さい値が報告されており、区分が小さくなることから、本データを採用して分類を行った。
水生環境有害性 (長期間)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:0% (既存点検 (1991))) 、藻類 (セネデスムス) の96時間EC10 = 240 mg/L (CICADs 51 (2003)) から、区分外となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく (BODによる分解度:0% (既存点検 (1991)) 、甲殻類 (オオミジンコ) のLC50 = 11.6 mg/L (CICADs 51 (2003)) であることから、区分3となる。
以上の結果を比較し、区分3とした。
オゾン層への有害性データなし

13.廃棄上の注意
残余廃棄物特別管理産業廃棄物に該当する。
特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬又は処分を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号1303
国連品名VINYLIDENE CHLORIDE, STABILIZED
国連危険有害性クラス3
副次危険-
容器等級I
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質有害液体物質(Y類物質)
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報消防法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策消防法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*130P (P:爆発的な重合を起こすおそれ)
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)【4の2 その他の引火点−30℃以上0℃未満のもの】
有害物ばく露作業報告(安衛則第95条の6、平成18年2月16日告示第25号・第1条)【247 1,1−ジクロロエチレン】
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9)【241 ジクロロエチレン】
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9)【241 ジクロロエチレン】
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
作業場内表示義務(法第101条の4)
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)【158 1,1−ジクロロエチレン】
毒物及び劇物取締法-
化学物質審査規制法旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項)【旧番号378 1,1−ジクロロエチレン(別名塩化ビニリデン)(平成23年4月1日をもって廃止)】
消防法第4類引火性液体、特殊引火物(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)【1 特殊引火物】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【5 特殊引火物】
航空法引火性液体(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】1303 塩化ビニリデン(安定化されたもの)】
船舶安全法引火性液体類(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】1303 塩化ビニリデン(安定剤入りのもの)】
港則法その他の危険物・引火性液体類(法第21条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【2ロ 塩化ビニリデン(安定剤入りのもの)】
海洋汚染防止法危険物(施行令別表第1の4)【17 二塩化エチレン】
有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)【105 塩化ビニリデン】
個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】1303 塩化ビニリデン(安定剤入りのもの)】
下水道法水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4)【15 1,1−ジクロロエチレン】
大気汚染防止法揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達)【揮発性有機化合物】
有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)【75 1,1−ジクロロエチレン】
水質汚濁防止法有害物質(法第2条、施行令第2条、排水基準を定める省令第1条)【14 1,1−ジクロロエチレン】
土壌汚染対策法特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条)【9 1,1−ジクロロエチレン】
廃棄物処理法特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4)【5 1,1−ジクロロエチレンを含有する特定有害産業廃棄物】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用