1.化学品等及び会社情報 | |||
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化学品等の名称 | ジクロロメタン (Dichloromethane) | ||
製品コード | H29-B-064 | ||
会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファックス番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 | 洗浄剤(プリント基板,金属脱脂)、医薬・農薬溶剤、エアゾール噴射剤、塗料剥離剤、ポリカーボネートの反応溶剤、ウレタンフォーム発泡助剤、繊維・フィルム溶剤、接着剤、ペイントはく離剤、プリント基板洗浄剤、低沸点用有機溶剤 |
2.危険有害性の要約 | ||||
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GHS分類 | ||||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | H30.3.16、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用 | |||
GHS改訂4版を使用 | ||||
物理化学的危険性 | - | |||
健康に対する有害性 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 | ||
皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | |||
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | |||
発がん性 | 区分1A | |||
生殖毒性 | 区分2 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1 (中枢神経系、呼吸器) 区分3 (麻酔作用) | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) | |||
分類実施日 (環境有害性) | 環境に対する有害性はH18.3.31、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用 | |||
環境に対する有害性 | 水生環境有害性 (急性) | 区分3 | ||
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、政府向けガイダンス文書で規定された「分類対象外」、「区分外」又は「分類できない」に該当する。なお、これらに該当する場合は後述の11項に記載した。 | ||||
GHSラベル要素 | ||||
絵表示 | ||||
注意喚起語 | 危険 | |||
危険有害性情報 | 皮膚刺激 強い眼刺激 吸入すると有害 眠気又はめまいのおそれ 発がんのおそれ 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い 中枢神経系、呼吸器の障害 長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)の障害 水生生物に有害 | |||
注意書き | ||||
安全対策 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 取扱後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 環境への放出を避けること。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 | |||
応急措置 | 皮膚に付着した場合:多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 | |||
保管 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 | |||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | |||
他の危険有害性 | 情報なし |
3.組成及び成分情報 | |||
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単一製品・混合物の区別 | 単一製品 | ||
化学名又は一般名 | ジクロロメタン | ||
別名 | 塩化メチレン メチレンジクロライド 二塩化メチレン | ||
濃度又は濃度範囲 | 100% | ||
分子式 (分子量) | CH2Cl2 (84.93) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | |||
CAS番号 | 75-09-2 | ||
官報公示整理番号 (化審法) | 2-36 | ||
官報公示整理番号 (安衛法) | 情報なし | ||
分類に寄与する不純物及び 安定化添加物 | 情報なし |
4.応急措置 | |||
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吸入した場合 | 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。気分が悪い時は医師に連絡すること。 | ||
皮膚に付着した場合 | 多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断、手当てを受けること。 | ||
眼に入った場合 | 水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 | ||
飲み込んだ場合 | 口をすすぐこと。気分が悪いときは医師に連絡すること。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:めまい、嗜眠、頭痛、吐き気、脱力感、意識喪失、死 皮膚:皮膚の乾燥、発赤、灼熱感 眼:痛み、発赤 経口摂取:腹痛、その他(「吸入」参照) | ||
応急措置をする者の保護 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する。 | ||
医師に対する特別な注意事項 | 情報なし |
5.火災時の措置 | |||
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消火剤 | 粉末消火剤、二酸化炭素、散水 | ||
使ってはならない消火剤 | 棒状注水 | ||
特有の危険有害性 | 火災時に刺激性もしくは有毒なヒュームやガスを放出する。 空気/蒸気混合気は発火により爆発するおそれがある。 少量の引火性物質の添加又は空気中の酸素濃度の上昇により、可燃性が著しく増強される。 | ||
特有の消火方法 | 消火活動は風上から行う。 火災場所の周辺には関係者以外の立ち入りを規制する。 危険でなければ火災区域から容器を移動する。 | ||
消火を行う者の保護 | 消火作業の際は、適切な保護具や耐火服を着用する。 |
6.漏出時の措置 | |||
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人体に対する注意事項、保護具及び 緊急措置 | 関係者以外の立ち入りを禁止する。 作業者は適切な保護具(自給式呼吸器付完全保護衣等)を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。 | ||
環境に対する注意事項 | 周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | すべての着火源を取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。 換気する。 漏れた液やこぼれた液を密閉式の容器に出来る限り集める。 残留液を砂又は不活性吸収剤に吸収させて安全な場所に移す。 |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
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取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
安全取扱い注意事項 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 火や高温面の近くで、又は溶接作業中に使用してはならない。 取扱後はよく手を洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 環境への放出を避けること。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 | ||
接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
衛生対策 | この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。 取扱い後はよく手を洗うこと | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 強酸化剤、強塩基、金属類及び食品や飼料から離しておく。 乾燥した涼しい場所に保管する。 壁面に沿って換気する。 | ||
安全な容器包装材料 | 国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | |||
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管理濃度 | 50 ppm | ||
許容濃度 | |||
日本産衛学会(2017年度版) | 50 ppm、170 mg/m3 | ||
ACGIH(2017年版) | TLV-TWA: 50 ppm、174 mg/m3 | ||
設備対策 | 取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄剤のための設備を設ける。 高温下や、ミストが発生する場合は換気装置を使用する。 | ||
保護具 | |||
呼吸用保護具 | 換気、局所排気、又は呼吸用保護具を使用する。 | ||
手の保護具 | 保護手袋を着用する。 | ||
眼の保護具 | 安全眼鏡、又は眼用保護具を着用する。 | ||
皮膚及び身体の保護具 | 保護衣を着用する。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
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物理的状態 | |||
形状 | 液体 (20℃、1気圧) (GHS判定) | ||
色 | 無色液体[注:104°Fを超えると気体] 無色で揮発性の液体(HSDB (2017)) | ||
臭い | トリクロロメタンに似たやや甘い香り (HSDB (2017)) | ||
臭いのしきい(閾)値 | 205〜307 ppm (HSDB (2017)) | ||
pH | 情報なし | ||
融点・凝固点 | -95℃ (HSDB (2017)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 39.75℃ (760 mmHg) (HSDB (2017)) | ||
引火点 | 情報なし | ||
蒸発速度(酢酸ブチル=1) | 情報なし | ||
燃焼性(固体、気体) | 該当しない | ||
燃焼又は爆発範囲 | 13〜25 vol% (危険物ハザードデータブック (2007)) | ||
蒸気圧 | 435 mmHg (25℃) [換算値 57955 Pa(20℃)] (HSDB (2017)) | ||
蒸気密度 | 2.93(空気= 1.02) (HSDB (2017)) | ||
比重(相対密度) | 1.3255 (20℃/4℃) (HSDB (2017)) | ||
溶解度 | 20 g/L (20℃) (GESTIS (2017)) アルコール、エーテル、ジメチルホルムアミドとエタノールと混和、四塩化炭素に可溶 (HSDB (2017)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | log Kow = 1.25 (HSDB (2017)) | ||
自然発火温度 | 556℃ (HSDB (2017)) | ||
分解温度 | 情報なし | ||
粘度(粘性率) | 0.437 mPa・s (20℃) (HSDB (2017)) |
10.安定性及び反応性 | |||
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反応性 | 「危険有害反応可能性」を参照 | ||
化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
危険有害反応可能性 | 高温面や炎に触れると分解し、塩化水素、ホスゲン、一酸化炭素などの有毒で腐食性のヒュームを生成する。強酸化剤、強塩基、及びアルミニウム粉末、マグネシウム粉末などの金属と激しく反応し、火災及び爆発の危険をもたらす。ある種のプラスチック、ゴム、被膜剤を侵す。 | ||
避けるべき条件 | 高温面や炎との接触、混触危険物質 | ||
混触危険物質 | 強酸化剤、強塩基、及びアルミニウム粉末、マグネシウム粉末などの金属 | ||
危険有害な分解生成物 | 火災時に刺激性もしくは有毒なヒュームやガスを放出する。 |
11.有害性情報 | |||
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急性毒性 | |||
経口 | GHS分類: 区分外 ラットのLD50値として、2,280 mg/kg (雄)、1,410 mg/kg (雌)、2,120 mg/kg (雄)、1,530〜2,524 mg/kg、1,710〜2,250 mg/kg (EHC 164 (1996)、NITE初期リスク評価書 (2005)) の5件の報告があり、1件が区分4、2件が区分外 (国連分類基準の区分5)、2件が区分4〜区分外 (国連分類基準の区分5) に該当する。件数の多い区分を採用し、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。 | ||
経皮 | GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。 | ||
吸入:ガス | GHS分類: 分類対象外 GHSの定義における液体である。 | ||
吸入:蒸気 | GHS分類: 区分4 ラットの6時間吸入ばく露試験のLC50値として15,000 ppm (雄) (4時間換算値: 18,371 ppm) (EHC 164 (1996)、NITE初期リスク評価書 (2005)) との報告に基づき、区分4とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (574,109 ppm (25℃)) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 | ||
吸入:粉じん及びミスト | GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。 | ||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | GHS分類: 区分2 ウサギを用いた皮膚刺激試験において、強度又は中等度の皮膚刺激性を示す複数の試験結果 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)、NITE初期リスク評価書 (2005)) から、区分2とした。 | ||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | GHS分類: 区分2A ウサギを用いた眼刺激性試験で本物質を適用後1時間以内に軽度から中等度の炎症が生じ、流涙は1週間続き、結膜・瞬膜・瞼の縁の充血は適用2週間後まで続いたとの報告や、ウサギを用いた別の眼刺激性試験で中等度の刺激性を示し一次刺激性指数は33 (最大値: 110) との報告 (いずれもDFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) から、区分2Aとした。 | ||
呼吸器感作性 | GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、ヒトにおいて呼吸器感作性において陽性を示す知見はないとの記載 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) や、本物質がヒトにおいて感作性物質であるとの指摘はないとの記載 (SIAP (2011)) があるが、詳細が不明である。よって、分類できないとした。 | ||
皮膚感作性 | GHS分類: 分類できない マウスを用いたLLNA試験で、アセトン/オリーブオイル (4:1) に本物質を5%、25%、100%含む溶液25μLをマウスの耳に適用したところ、刺激指数 (SI) はそれぞれ1.3、1.5、1.7であり、本物質は皮膚感作性を示さなかったとの報告 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)) がある。ヒトにおいて、本物質が皮膚感作性物質であることを示す知見はないとの記載 (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))、SIAP (2011)) があるが詳細が不明である。よって、分類できないとした。 | ||
生殖細胞変異原性 | GHS分類: 分類できない ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、マウスの赤血球を用いたPig-aアッセイ、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、末梢血を用いた小核試験で弱い陽性、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、末梢血、肺細胞を用いた染色体異常試験で弱い陽性、ラットの骨髄を用いた染色体異常試験で陰性、マウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性、マウスの肺細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性、ラット、マウスの肝臓、肺を用いたDNA損傷試験で陽性、陰性の結果、ラット、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2000)、IARC 110 (2016)、ACGIH (7th, 2015)、IRIS Tox. Review (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。In vivo小核試験、染色体異常試験での弱い陽性結果は、本物質のグルタチオントランスフェラーゼによる種特異的な高い代謝率によるものと考えられており、本物質には遺伝毒性がないと評価されている (SIAP (2011))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、小核試験で陰性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果、姉妹染色分体交換試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、IARC 110 (2016)、IRIS Tox. Review (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2015))。 | ||
発がん性 | GHS分類: 区分1A ヒトでは本物質へのばく露と胆道がん及び非ホジキンリンパ腫との間に正の相関がみられ、IARCは本物質の発がん性に関してヒトでは限定的な証拠があると結論した (IARC 110 (2016))。また、先に日本産業衛生学会は本邦で本物質と1,2-ジクロロプロパンとの混合ばく露により、胆管がん発症が強く疑われる症例報告があることを報告し、動物試験結果 (後述) を併せて本物質の発がん性分類を第2群Aに分類した (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2015))。実験動物では、マウスを用いた複数の発がん性試験において経口又は吸入経路により肝臓、吸入経路により肺などに腫瘍発生頻度の増加が認められ、ラットを用いた複数の発がん性試験において吸入経路により皮膚と乳腺などに腫瘍発生頻度の増加が認められており、IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があると結論した (IARC 100 (2016)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2015))。既存分類ではIARCがグループ2Aに (IARC 110 (2016))、NTPがRに (NTP RoC (14th, 2016))、EPAがL に (IRIS (2011))、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2015))、日本産業衛生学会が第2群Aに (許容濃度の勧告 (2017): 2015年提案) それぞれ分類している。さらに本物質に関して、厚生労働省は労働基準法施行規則に基づき、「本物質にさらされる業務による胆管がん」を平成25年 (2013) に労災補償の対象となる別表第1の2 (職業病リスト) に加えた (厚生労働省ホームページ (Access on November 2017))。以上より、本項は区分1Aとした。 | ||
生殖毒性 | GHS分類: 区分2 ヒトでの生殖影響に関しては、以下の報告がある。すなわち、本物質のばく露を受け (ばく露濃度は不明であったが、本物質の入ったバケツに手を浸け、部品にかけて拭き取る作業に従事)、中枢神経機能障害で通院していた34人の労働者のうち8人 (年齢20〜47歳、ばく露期間0.4〜2.9年) が精巣、精巣上体、前立腺の痛みを訴え、不妊状態にあった。このうち、精液採取に協力した4人では明らかに精子数、運動精子数が少なく、精子奇形率も高かった (環境省リスク評価第3巻 (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、ATSDR (2000))。その後、NIOSHが環境測定を行って結果、本物質の平均ばく露濃度は68 ppm (3.3〜154.4 ppm) で、労働者は許容濃度以下のスチレン (平均濃度: 7.2 ppm (1.5〜10.4 ppm)) にもばく露されていた (ATSDR (2000)。一方、上記報告よりも2倍高い濃度の本物質に3ヵ月以上ばく露された労働者4人では、精子の減少はみられなかったとの報告があり、ATSDRは両報告結果の差異はばく露期間によるもの (ばく露期間が長くなると影響が出る) か、前者の報告が本物質以外に他の物質にも同時ばく露された結果によるのかは明らかでないとした (ATSDR (2000))。しかし、本物質は経皮吸収があるとされており (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、SIAP (2011))、本物質の入ったバケツに手を入れた労働者の事例では吸入経路に加えて経皮経路を介した吸収による影響の関与があり、気中濃度が半分でも十分な量が吸収され、生殖影響が生じた可能性も考えられる。 | ||
実験動物では、ラットを用いた吸入経路による2世代試験で、1,500 ppm (5,300 mg/m3) の高用量までばく露されたが、F0、F1親動物、F1、F2児動物のいずれにも有害影響はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2005)、SIAP (2011)、DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))。経口経路での生殖能に関しては、ラットに交配前13週間飲水投与 (125 mg/L) した結果、雌の受胎率、産児数への影響はなかったとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2005))、ラットに交配前10日間強制経口投与 (25〜225 mg/kg/day) した結果、最高用量の225 mg/kg/day まで受胎率に影響はなかったとの報告がある (DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017))。一方、妊娠ラット、又は妊娠マウスの器官形成期に1,250 ppm (4,400 mg/m3) を吸入ばく露した発生毒性試験では、ラット、マウスともばく露群で母動物に一酸化炭素ヘモグロビン (CO-Hb) の増加と肝臓重量の増加がみられたが、胎児には軽微な影響 (腎盂拡張、骨化遅延 (ラット)、過剰胸骨 (マウス)) がみられただけであった (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT vol. 1 (2016) (Access on May 2017)、ACGIH (7th, 2015))。また、妊娠ラットの妊娠期間を通して、最大4.0%で混餌投与した試験では、4.0%で母動物に体重増加抑制、胎児に体重低値がみられたのみであった (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。 | |||
以上、ヒトでは本物質への職業ばく露による男性労働者を対象とした不妊の調査研究があり、8人が不妊状態で、うち4人で精子減少が示されたとする報告があるのに対し、より高濃度でばく露された4人の労働者では精子減少はみられなかったとの報告がある。ただし、本物質は経皮吸収されるため、バケツに手をいれた労働者では吸入経路だけでなく、経皮経路による吸収が加わり、気中濃度に関わらず生殖影響を生じた可能性が考えられる。一方、動物試験結果からは本物質は吸入、経口のいずれの経路でも生殖発生影響を示す証拠は得られなかった。以上より、本物質職業ばく露による男性生殖能への有害影響が報告されたが、ヒトの生殖影響は1報告のみで限定的と考えられること、動物試験からは生殖発生影響は検出されなかったことを踏まえ、本項は区分2とした。 | |||
特定標的臓器毒性(単回ばく露) | GHS分類: 区分1 (中枢神経系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用) ヒトでは本物質を主成分とするペンキ剥離剤の使用中の事故による急性吸入ばく露例として、換気不良の場所でペンキ剥離作業を行なった男性が、救急室搬入時、頭痛、胸部痛を訴え、見当識障害、進行性の警戒性の喪失を起こし、疲労感と無気力状態の亢進、記憶喪失、時間感覚の喪失を示したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。また、同様の事故によるばく露で、中枢神経の抑制、嗜眠、眼と呼吸器の炎症、肺の浮腫がみられ、死に到る場合もあるとの記述がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。さらに換気不十分な環境で作業をしていた植物成分抽出釜の作業員4名が、中枢神経抑制、麻酔、眼の刺激、気管と肺の浮腫を示して死亡したとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。ボランティアによる急性吸入ばく露実験では、200 ppm、1.5〜3 時間のばく露で神経行動学的影響 (警戒心の混乱、複合警戒追跡行動の障害) がみられたとの報告、300 ppm、95分のばく露で、視覚機能検査で検出された臨界融合頻度の低下がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。実験動物では、ラットの単回吸入ばく露試験で、中枢神経抑制、体温低下、血圧低下、痙攣、感覚麻痺、呼吸困難、体性感覚誘発の変化がみられたとの報告、マウスの単回吸入ばく露試験で、中枢神経の抑制による回復性の昏睡がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、EHC 164 (1996))。実験動物に対する影響は、区分2に相当するガイダンス値の範囲で認められた。以上より区分1 (中枢神経系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。 | ||
特定標的臓器毒性(反復ばく露) | GHS分類: 区分1 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) ヒトについては、幻聴・幻覚を伴う中枢神経の不可逆的損傷がみられたとの症例報告、側頭葉両側の変性がみられたとの症例報告、精神錯乱、てんかん発作の症例報告がある、胆嚢の病変や肝臓の腫大がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、EHC 164 (1996))。また、ばく露濃度は不明であったが、本物質の入ったバケツに手を浸け、部品にかけて拭き取る作業に従事していた労働者8人(年齢20〜47才、ばく露期間0.4〜2.9年)が精巣、精巣上体、前立腺の痛みを訴え、不妊状態にあった。このうち、精液採取に協力した4人では明らかに精子数、運動精子数が少なく、精子奇形率も高かったとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999))。 実験動物については、ラットを用いた2年間飲水投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である雄の52 mg/kg/day以上の群、雌の58 mg/kg/day以上の群で肝臓の変異細胞巣・脂肪変性がみられている (環境省リスク評価第3巻 (2004))。マウスを用いた1ヵ月間連続吸入毒性試験 (24時間/日、7日/週) で区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) の75 ppm (90日換算: 0.35 mg/L) 以上で肝臓に脂肪の蓄積、肝臓重量の増加、血中ブチリルコリンエステラーゼ量の上昇、マウス及びラットを用いた100日間連続吸入毒性試験 (24時間/日、7日/週) で区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) の25 ppm (ガイダンス値換算: 0.35 mg/L) 以上で肝細胞脂肪染色陽性、軽度肝細胞空胞化がみられている (NITE初期リスク評価書 (2005))。 以上より区分1 (中枢神経系、肝臓、生殖器 (男性)) とした。 | ||
吸引性呼吸器有害性 | GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on May 2017) に収載された数値データ (粘性率: 0.437 mPa・s (20 ℃)、密度 (比重): 1.3255) より、動粘性率は0.33 mm2/sec (20℃) と算出される。 |
12.環境影響情報 | |||
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生態毒性 | |||
水生環境有害性(急性) | 甲殻類 (オオミジンコ)の48時間LC50 = 27 mg/L (CaPSAR (1993))から、区分3とした。 | ||
水生環境有害性(長期間) | 揮発性が高く速やかに大気中に揮散し、かつ生物蓄積性が低い (BCF = 400 (既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分外とした。 | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
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残余廃棄物 | 特別管理産業廃棄物に該当する。 特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬又は処分を委託する。 | ||
汚染容器及び包装 | 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
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該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | 1593 | |||
国連品名 | DICHLOROMETHANE | |||
国連危険有害性クラス | 6.1 | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | L | |||
海洋汚染物質 | 該当しない | |||
MARPOL73/78附属書K及び IBCコードによるばら積み 輸送される液体物質 | 該当する(Y) | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う。 | |||
航空規制情報 | 航空法の規定に従う。 | |||
陸上規制情報 | 毒物及び劇物取締法の規定に従う。 | |||
特別な安全上の対策 | 毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 160 | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2008 Emengency Response Guidebook (ERG 2008)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
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法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
化審法 | 旧第3種監視化学物質(旧法第2条第6項) 旧第2種監視化学物質(旧法第2条第5項) | |||
労働安全衛生法 | 変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項・厚労省指針公示) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 作業環境評価基準(法第65条の2第1項) 特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) | |||
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) | 第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) | |||
船舶安全法 | 毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
航空法 | 毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
水道法 | 有害物質(法第4条第2項)、水質基準(平15省令101号) | |||
下水道法 | 水質基準物質(法第12条の2第2項、施行令第9条の4) | |||
水質汚濁防止法 | 有害物質(法第2条、施行令第2条、排水基準を定める省令第1条) | |||
大気汚染防止法 | 揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達) 有害大気汚染物質、優先取組物質(中央環境審議会第9次答申) 自主管理指針対象物質(環境庁通知) | |||
海洋汚染防止法 | 有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1) | |||
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | 特別管理産業廃棄物(法第2条第5項、施行令第2条の4) | |||
労働基準法 | がん原性化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第7号) 疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) | |||
土壌汚染対策法 | 特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条) |
16.その他の情報 | ||||
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参考文献 | 各データ毎に記載した。 | |||
[注意] 本SDSはJIS Z7253:2012 に準拠して作成しています。 |