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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
クロロエチレン
作成日 2002年3月12日
改訂日 2010年3月31日
改訂日 2024年3月29日
化学品の名称クロロエチレン
化学品の英語名称Ethene, chloro-
製品コードR05-B-007-JNIOSH
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限塩化ビニル樹脂原料[塩化ビニル樹脂(ペーストレジンを含む),塩化ビニル成分の多い共重合体(2 成分系:塩化ビニルモノマー,3 成分系:塩化ビニルモノマー)],その他の共重合体[2 成分系:(塩化ビニルモノマー),3 成分系:(塩化ビニルモノマー)],塗料 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R6.3.29、政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))を使用
物理化学的危険性可燃性ガス区分1、化学的に不安定なガス区分B
高圧ガス低圧液化ガス
健康に対する有害性生殖細胞変異原性区分2
発がん性区分1A
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(血管系、神経系、肝臓、生殖器(男性)、骨)
分類実施日
(環境有害性)
H22.3.31、ガイダンス(H21.3版) (GHS 2版, JIS Z 7252:2009)
環境に対する有害性-
GHSラベル要素
絵表示炎ガスボンベ健康有害性感嘆符
注意喚起語危険
危険有害性情報極めて可燃性の高いガス
圧力及び/又は温度が上昇した場合、空気がなくても爆発的に反応するおそれ
高圧ガス:熱すると爆発のおそれ
遺伝性疾患のおそれの疑い
発がんのおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系の障害
眠気またはめまいのおそれ
長期にわたる、又は反復ばく露による血管系、神経系、肝臓、生殖器(男性)、骨の障害
注意書き
 安全対策全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
使用前に取扱説明書を入手すること。
熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
 応急措置漏えい(洩)ガス火災の場合:漏えいが安全に停止されない限り消火しないこと。
漏えいした場合、着火源を除去すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
気分が悪いときは医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
 保管施錠して保管すること。
日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性重合の可能性がある。

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名クロロエチレン
慣用名又は別名ビニルクロライド
塩化ビニル
塩化ビニルモノマー
塩化ビモノマ−
英語名Ethene, chloro-
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C2H3Cl (63)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号75-01-4
官報公示整理番号(化審法)2-102
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合新鮮な空気のある場所に移動させる。呼吸困難な場合は酸素吸入をさせる。呼吸が止まっている場合は、人工呼吸を行う。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
皮膚に付着した場合汚染された衣類を脱がせ、全身にシャワーを浴びせる。
液体と接触した後、凍結した身体部分をぬるま湯で解凍し、衣服を注意深く脱ぎ、繰り返し洗い流した後、乾燥した滅菌包帯で患部の皮膚領域を覆う。医師の診察/手当てを受けること。
以上、GESTIS参照。
眼に入った場合水または生理食塩水で 20 〜 30 分間洗い流す。コンタクトレンズがある場合は外す。 直ちに医師の診察/手当てを受けること。
以上、PubChem参照。
飲み込んだ場合すぐにガス状に変化するため、飲み込む可能性はほとんどない。
以上、GESTIS参照。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:めまい、嗜眠、頭痛、意識喪失、かすみ眼、痺れ、刺痛感。
皮膚:液体に触れた場合は凍傷。
眼:充血、痛み、。
以上、ICSC参照。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項負傷者が吐き出した空気を吸入しないようにすること。
以上、GESTIS参照。
医師に対する特別な注意事項情報なし

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、泡消火薬剤。
以上、GESTIS参照。
使ってはならない消火剤二酸化炭素
以上、GESTIS参照。
火災時の特有の危険有害性火災の場合、有害物質(塩化水素、ホスゲン、一酸化炭素、二酸化炭素)が放出される可能性がある。
以上、GESTIS参照。
特有の消火方法ガスの供給源を遮断できる場合にのみ消火を行う。周囲の容器を水スプレーで冷却する。可能であれば、容器を危険区域外に持ち出す。加熱により圧力が上昇し破裂する恐れがある。自己重合の危険がある。着火源となるものを遮断する。ガス蓄積やバックファイヤーに注意する。
以上、GESTIS参照。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護具を着用する。
以上、GESTIS参照。
環境に対する注意事項水域に対する危険性がある。水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。多量の場合は、自治体に連絡する。
以上、GESTIS参照。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ漏れを止める。
散水や水噴霧等により拡散させ、ガスを吸収する措置を取る。
ガスが拡散するまでその場所を隔離する。
すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
二次災害の防止策付近の着火源となるものを速やかに除くとともに消火剤を準備する。
火花を発生しない安全な用具を使用する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
作業場所にガスボンベを保管しない。ガスボンベに機械的ダメージを与えない。ガスボンベの運搬には必ず専用台車または他の適切な装置を使用する。人と一緒にエレベーターで運搬しない。ボンベ交換の際は、必ず充填済みボンベと空ボンベの漏れ止めを点検すること。ボンベの転倒を防止する。圧力の上昇を避けるためにバルブはゆっくりと開き、無理に開けない。使用後は毎回バルブを閉じる。水やその他の液体がガス容器に逆流しないようにする。ガスをある容器から別の容器に移し替えしない。容器内の圧力を上げるために炎や電気ヒーターを使用しない。重合反応が起こらないように十分に安定化されていない限りは輸送しないこと。
以上、GHS分類結果、GESTIS参照。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策ガスの吸入を避ける。取扱い後は手をよく洗うこと。この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。汚染された衣類は直ちに交換し、着火源から離れた場所で乾燥すること。ボンベを扱うときには喫煙をしないこと。
以上、GHS分類結果、GESTIS参照。
保管
安全な保管条件施錠して保管するか、権限のある者のみが管理する。容器を密閉し、火災の危険のない換気の良い場所に50℃以下で保管すること。容器を立てて保管し、転倒防止をすること。日光にさらさない。可燃物および酸化剤から離しておく。
以上、GESTIS、ICSC参照。
安全な容器包装材料国連輸送法規、高圧ガス保安法で規定されている容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度2 ppm
濃度基準値
八時間濃度基準値-
短時間濃度基準値-
許容濃度等
日本産衛学会(2023年版)- (参考情報(過剰発がん生涯リスクレベルと対応する評価値):過剰発がん生涯リスクレベルを0.001とする場合の評価値は1.5ppm,過剰発がん生涯リスクレベルを0.0001とする場合の評価値は0.15ppm)
ACGIH(2023年版)TLV-TWA: 1 ppm(A1)
設備対策作業場所には換気設備を設置する。蒸気/空気の混合物は空気より重いので床面での十分な換気も必要である。排出された空気は作業場所に戻さない。ガスの検知・警報装置を設置する。ガスがダクトや下水道に入らないようにすること。
以上、GESTIS参照。
保護具
呼吸用保護具必要に応じて状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用する。
防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。
-防毒マスクは、電動ファン又は面体が国家検定合格品であることを確認し、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
-濃度に対応した・・・用吸収缶を使用する
注) ”…”の吸収缶は国家検定合格品又は日本産業規格(JIS T8152)に適合した物質に対応した吸収缶を記載します。SDS作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
-作業者が粉じんにばく露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。
手の保護具必要に応じてガスボンベを取り扱う際は、作業手袋を着用する。
以上、GESTIS参照。
眼の保護具必要に応じてサイドガード付きの安全ゴーグルを着用する。
以上、GESTIS参照。
皮膚及び身体の保護具必要に応じて耐火性/帯電防止性のある保護衣を着用する。ガスボンベを取り扱う場合は、安全長靴を使用すること。緊急時に使用できるよう、適切な耐薬品性の防護服を常備しておくこと。
以上、GESTIS参照。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態気体
無色
臭い特徴的な臭い
融点/凝固点-153.7 ℃(GESTIS(2023))
-154 ℃(ICSC(2017))
-159.7 ℃(Lewis(2001))
沸点、初留点及び沸騰範囲-13.4 ℃(GESTIS(2023))
-13 ℃(ICSC(2017))
-13.9 ℃(Lewis(2001))
可燃性高引火性(GESTIS(2023))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界データなし
引火点-78 ℃(開放式)(GESTIS(2023))
-78 ℃(密閉式)(ICSC(2017)、Merck(2013))
自然発火点415 ℃(GESTIS(2023))
472 ℃(ICSC(2017)、Lewis(2001))
分解温度データなし
pHデータなし
動粘性率データなし
溶解度水: 1.1 g/L(20℃)(GESTIS(2023))
水: 1.1 g/L(25℃)(ICSC(2017))
アルコール、エーテル、四塩化炭素、ベンゼン:(可溶)(Merck(2013))
n-オクタノール/水分配係数log Kow: 1.52(GESTIS(2023))
log Kow: 1.6(ICSC(2017))
log Kow: 1.41(Howard(1997))
蒸気圧334 kPa(20℃)(ICSC(2017))
3.343/4.5/7.8 bar(20℃/30℃/50℃)(GESTIS(2023))
密度及び/又は相対密度0.970 g/cm3(沸点)(GESTIS(2023))
8 g/L(15℃で蒸気)(ICSC(2017))
0.9121 g/cm3(液体、20/20℃)(Lewis(2001))
相対ガス密度2.2 (空気=1)(ICSC(2017))
2.16 (空気=1)(GESTIS(2023))
2.15 (空気=1)(SAX(2000))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性自己重合する傾向にある。加熱、空気や光の影響、触媒、強酸化剤、銅やアルミニウムなどの金属との接触により、 容易に重合する。
危険有害反応可能性特定の状況下で、爆発性過酸化物を生成することがある。
避けるべき条件加熱、光、空気
混触危険物質-以下の物質と接触すると重合する。
 アルミニウム、アルカリ/アルカリ土類金属、酸化剤、硫化水素、粉塵、不純物
-以下の物質と接触すると爆発の危険性がある。
 空気(→過酸化物の生成)、酸化剤、酸素、一酸化窒素、塩基性物質(粉塵)、銅、過酸化物、重合開始剤、光、熱
-この物質は以下の物質と激しく反応する可能性がある。
 ハロゲン、アセチレン、金属粉
危険有害な分解生成物情報なし

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 4,000 mg/kg(SIAR (2004)、AICIS IMAP (2014))
経皮【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: ガス【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。

【根拠データ】
(1)ラットのLC50(2時間):150,000 ppm(4時間換算:106,066 ppm)(NITE 初期リスク評価書 (2005)、US AEGL (2012)、SIAR (2004)、AICIS IMAP (2014))
吸入: 蒸気【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、液化した本物質に関する複数の皮膚傷害の事例報告があるが、本物質の皮膚刺激性による影響ではなく、皮膚組織の凍結が原因と考えられるため、分類できない。新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【参考データ等】
(1)手に液状の本物質がスプレーされたヒトにおいて、手に2度の化学火傷、顕著な紅斑と浮腫がみられたとの報告がある(EHC 215 (1999)、NITE 初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2023))。
(2)液化した本物質が皮膚に滴下すると組織を凍結させ、揮発する際に皮膚傷害を生じ下層の組織に損傷を生じるおそれがあるとの報告がある(SIAR (2004))。
(3)液化した本物質による刺激性は本物質にユニークなものはなく、皮膚への影響は塩化ビニルの直接的な毒性というより皮膚上で急速に揮発する液体に共通する組織の凍結によるものと考えられるとの報告がある(ATSDR (2023))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。なお、液化した本物質に関する複数の眼刺激性の事例報告があるが、本物質の眼刺激性による影響ではなく、眼組織の凍結が原因と考えられるため、分類できないとした。新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【参考データ等】
(1)開放したバルブから漏出した本物質にばく露後に死亡した男性には結膜と角膜に局所的な火傷がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012))。
(2)本物質を輸送していた列車の脱線事故の初期対応者と付近の製油所の作業者が眼の刺激、疼痛や灼熱感を訴えた。列車の脱線事故後に医療処置を求めた付近の住民も眼の症状を訴えたとの報告がある(ATSDR (2023))。
(3)液化した本物質を眼に滴下すると組織を凍結させ、揮発する際に眼傷害を生じ下層の組織に損傷を生じるおそれがあるとの報告がある(SIAR (2004)、AICIS IMAP (2014))。
(4)モルモットにおいて、最大400,000 ppmで30分間吸入ばく露したが、眼刺激性はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2023))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3)より、区分2とした。

【根拠データ】
(1)In vivoではラット及びハムスターを用いた吸入ばく露(一部腹腔内投与)による染色体異常試験、マウスを用いた吸入ばく露による複数の小核試験、ラットの肝臓、脳等の組織に対する複数のDNA付加体形成試験(吸入)等において、いずれも陽性の報告がある。一方、マウス、及びラットを用いた吸入ばく露による優性致死試験では陰性の報告がある(ATSDR (2023))。
(2)In vitroでは、細菌復帰突然変異試験、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた遺伝子突然変異試験、チャイニーズハムスター肺由来(CHL)細胞を用いた染色体異常試験で陽性の報告がある(ATSDR (2023))。
(3)本物質に吸入ばく露した作業者の末梢血リンパ球の解析により、染色体異常、染色分体交換、小核試験で陽性の報告が多数ある(ATSDR (2023)、産衛学会 許容濃度提案理由書 (2017))。
発がん性【分類根拠】
(1)〜(6)より、区分1Aとした。

【根拠データ】
(1)ポリ塩化ビニル(PVC)の生産に従事する作業者に肝血管肉腫が多発していることが1974年に報告されて以降、特に本物質(塩化ビニルモノマー)からPVCへの重合反応の後の重合釜の消掃作業に従事する作業者に肝血管肉腫の多発を見ることが多くの国・地域から報告された。本物質ばく露に伴う悪性腫瘍の発生臓器について中枢神経系、肺、造血系のがんによる死亡率上昇を報告した事例があるが、肝血管肉腫のみが確定的とされている(産衛学会 許容濃度提案理由書 (2017))。
(2)塩化ビニルが肝細胞がんの既知リスク因子である肝硬変のリスクを増加させるとの観察結果と併せて、2つの大規模多施設コホート研究による知見から、本物質が肝細胞がんと肝血管肉腫の原因物質であることの確たる証拠が得られる(IARC 110F (2012))。
(3)本物質ばく露によるヒトの発がんは塩化ビニル製造工場の作業者を対象とした多くの疫学研究で証明されている。最も強固な証拠はヒトで極めて希少な腫瘍と考えられている肝血管肉腫(米国:25〜30症例/年)が期待値よりも高い発生頻度でみられたことである。1974年以前に本物質にばく露された作業者では肝血管肉腫発生の潜伏期間は24〜56年間であった。肝細胞がん、胆管細胞がんなど他の肝臓腫瘍も塩化ビニルの職業ばく露との関連性がある。肝細胞がん発生の潜伏期間は32〜67年間の範囲と推定されている(ATSDR (2023))。
(4)ラットの吸入ばく露(5〜5,000 ppm)で乳腺がん、ジンバル腺がん、腎芽腫及び肝血管肉腫、マウス(一部ハムスター)の吸入ばく露(20〜2,500 ppm)で肝血管肉腫、肝がん、肝血管腫、肺腺腫、乳腺がん、脂肪組織血管肉腫、皮下組織と腹膜の血管肉腫の発生頻度の増加の報告がある。また、経口経路でもラット、マウス、ハムスターで腫瘍(肝臓・皮膚・脾臓の血管肉腫、乳腺がんなど)の発生増加の報告がある(ATSDR (2023))。
(5)労働基準法施行規則別表第1の2 において、「塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫と肝細胞がん」が業務上疾病の対象になっている(労働基準法施行規則別表第1の2 (Accessed Dec. 2023))。
(6)既存の発がん性分類として、IARCでグループ1に(IARC 100F (2012))、EPAでK/Lに(IRIS (2000))、NTPでK(Known to be a human carcinogen)に(NTP RoC 15th. (2021))、ACGIHでA1に(ACGIH (2001))、日本産業衛生学会で第1群に(産衛学会 許容濃度提案理由書 (2022):1981年提案)、EUでCarc. 1Aに(CLP分類結果 (Accessed Nov. 2023))、DFGでカテゴリー1に(List of MAK and BAT values (2022))分類されており、いずれも区分1A相当である。
生殖毒性【分類根拠】
(1)、(2)より、児動物に発生影響がみられるとの報告があるが、(3)〜(5)より、同様のばく露で影響がみられなかったとの報告もある。また、(6)、(7)より、実験動物で親の生殖器官への影響がみられたとの報告もある。なお、ヒトの疫学知見では、(8)より、生殖影響を示すデータもあるが、(9)より、因果関係は確定的ではないとする評価もある。以上より、総合的に考えて区分2とした。

【根拠データ】
(1)妊娠ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(500〜2,500 ppm)において、母動物に体重増加抑制のみがみられる低用量(500 ppm)で児動物に頭殿長および腰椎棘の増加がみられ、明瞭な母動物毒性(死亡17匹中1匹、摂餌量減少、肝臓重量増加)がみられた高用量(2,500 ppm)では胎児に尿管拡張の発生増加がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012)、SIAR (2004)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。
(2)妊娠マウスを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(50〜500 ppm)において、母動物毒性(死亡29匹中5匹、体重増加抑制、摂餌量減少)がみられた高用量(500 ppm)で、一腹当たりの生存胎児数の減少、胎児の低体重、頭蓋骨及び胸骨分節の骨化遅延がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012)、SIAR (2004)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。
(3)ラットを用いた吸入ばく露による2世代生殖毒性試験(10〜1,100 ppm)において、F0、F1親動物に肝臓影響(重量増加、小葉中心性肝細胞肥大、好酸性/好塩基性/明細胞変異巣の増加)がみられた高用量(1,100 ppm)まで、親動物の生殖影響及び児動物の発生・発達への有害影響はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012)、SIAR (2004))。
(4)妊娠ウサギを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(500〜2,500 ppm)において、母動物に摂餌量減少、胎児に骨化遅延(胸骨分節)がみられた低用量(500 ppm)で児動物に胸骨分節の骨化遅延がみられたが、母動物7匹中1匹が死亡した高用量(2,500 ppm)では胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012)、SIAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。
(5)妊娠ラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験(10〜1,100 ppm)において、母動物毒性(体重増加抑制、肝臓・腎臓相対重量増加)がみられた高用量(1,100 ppm)まで胎児に発生影響はみられなかったとの報告がある(ATSDR (2023)、US AEGL (2012)、SIAR (2004))。
(6)雄ラットを用いた12ヵ月間吸入ばく露試験(11.1〜2,918 ppm)において、中用量(105.6 ppm)以上で精巣毒性(精細管の傷害、精母細胞の著減)がみられたとの報告がある(ATSDR (2023))。
(7)雄ラットを用いた10か月間吸入ばく露試験(50〜20,000 ppm)において、中用量(500 ppm)で精巣毒性(精子形成上皮の損傷、精子形成障害の増加)がみられ、高用量(20,000 ppm)では精巣毒性はみられなかったが、これは高用量群の動物数が少なかった(対照群28匹に対して投与群17匹)ことによる統計的有意性の欠如であるとの指摘がある(ATSDR (2023))。
(8)本物質に職業ばく露した労働者を対象にした疫学研究では、男性に性交能力の低下、アンドロゲン分泌の低下がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。
(9)本物質を扱う男性作業者に生殖毒性が観察されたとする報告が散見されるが因果関係についてなお確定的ではない(産衛学会 許容濃度提案理由書 (2017))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)、(2)より、ヒト知見において神経系への影響や麻酔作用がみられたことから、区分1(中枢神経系)、区分3(麻酔作用)とした。

【根拠データ】
(1)ボランティアに12,000〜20,000 ppmの濃度で5分間吸入するとめまい、頭痛、吐気を含め軽度の麻酔作用を生じるおそれがあるとの報告(SIAR (2004))、8,000 ppmで吸入ばく露したボランティアでめまい、20,000〜25,000 ppmのばく露濃度では悪心に続き頭痛が生じたとの報告がある(ATSDR (2023))。
(2)ヒトの本物質吸入ばく露による神経学的影響としては、めまい、眠気、疲労感、頭痛、多幸感、被刺激性、神経質、睡眠障害、悪心、視覚及び聴覚障害、意識喪失などがあり、その他錐体障害、小脳障害もみられる。一方、末梢神経障害として、手足末端の麻痺、チクチク感、暖かさ、指の無力感や痛み、反射の抑制などに関する症状の報告もある(ATSDR (2023))。

【参考データ等】
(3)本物質を運搬していた列車の脱線事故後に、初期対応者、製油所の作業者及び付近住民に鼻汁、鼻と喉の灼熱感、嗄声、息切れ、胸部締め付け感、喘鳴、肺の灼熱感、咳、充血や痰の増加など呼吸器症状の主訴の報告がある(ATSDR (2023))。
(4)事故により本物質にばく露され死亡した作業者では、剖検によりチアノーゼ、腎臓所見、血液凝固不全とともに肺に刺激性影響(強度充血、肺胞上皮の脱落)がみられたとの報告がある(US AEGL (2001)、ATSDR (2023))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1)〜(5)より、ヒト疫学知見に基づき、区分1(血管系、神経系、肝臓、生殖器(男性)、骨)とした。なお、新たな知見に基づき、分類結果を見直した(2023年度)。

【根拠データ】
(1)多くの吸入ばく露試験及び経口投与試験から、ヒトの標的臓器として肝臓の特定が支持されるとの指摘がある。職業ばく露研究において、本物質の肝臓影響として肝細胞及び類洞細胞の肥大と過形成、類洞の拡張、巣状細胞変性、脂肪性肝炎、門脈性線維化及び肝硬変の報告がある(ATSDR (2023))。
(2)高濃度の本物質にばく露された作業者では、レイノー現象(手指への血流減少)、肢端骨溶解症(遠位指骨の骨吸収)、関節痛及び筋肉痛、コラーゲン沈着亢進、手のこわばり、強皮症様皮膚変化等の症状がみられたとの報告がある(ATSDR (2023))。
(3)ヒトで吸入ばく露による神経学的影響として、めまい、眠気、疲労感、頭痛、多幸感、被刺激性、神経質、睡眠障害、悪心、視覚及び聴覚障害、意識喪失などの症状の報告がある。また、末梢神経の異常として、感覚異常、四肢末端のチクチク感や温もり、指の無力や痛み、反射の低下が報告されている(ATSDR (2023))。
(4)本物質に職業ばく露した労働者を対象にした疫学研究では、男性に性交能力の低下、アンドロゲン分泌の低下がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。
(5)本物質に職業ばく露した労働者の症例報告では、四肢の先端骨融解がみられたとの報告がある(ATSDR (2023)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。

【参考データ等】
(6)本物質にばく露された作業者の数パーセントに強皮症様の手の皮膚変化が生じたとの症例報告や職業健康研究報告が多数ある。皮膚の所見は皮膚の肥厚、弾力性の低下と浮腫により特徴づけられる。皮膚バイオプシーにより、皮膚の表皮下層にコラーゲンの束の増加がみられ、生化学的分析によりコラーゲン合成の亢進が生じているとの報告がある(ATSDR (2023))。
(7)本物質に職業ばく露した労働者を対象にした疫学研究では、肺気腫発生率の増加、呼吸量・肺活量の減少、呼吸不全、肺線維症がみられたとの報告があるが、ばく露期間との相関はみられず、呼吸器影響が本物質の反復ばく露に起因しているかどうかは不明であると指摘されている(ATSDR (2023)、NITE 初期リスク評価書 (2005))。
誤えん有害性*【分類根拠】
GHSの定義におけるガスであり、区分に該当しない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)魚類(ゼブラフィッシュ)の96時間LC50 = 210 mg/L (SIDS, 2001)であることから、区分に該当しないとした。
水生環境有害性 長期(慢性)信頼できる慢性毒性データが得られていない。
魚類(ゼブラフィッシュ)の96時間LC50 = 120 mg/L (SIDS, 2001)であり、難水溶性ではない(水溶解度=11000mg/L、PHYSPROP Database, 2009)ことから、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:難分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性化審法濃縮度試験:低濃縮性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書A〜C及びEに列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
該当の有無は製品によっても異なる場合がある。法規に則った試験の情報と、12項の環境影響情報とに基づいて、修正が必要な場合がある。
国際規制
国連番号1086
品名(国連輸送名)塩化ビニル(安定剤入りのもの)
国連分類2.1
副次危険-
容器等級-
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報道路法、高圧ガス保安法の規定に従う。
特別な安全上の対策道路法、高圧ガス保安法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*116P
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法特定化学物質第2類物質(施行令別表第3第2号・特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号)
特定化学物質第2類物質、特定第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、3号)
特定化学物質特別管理物質(特定化学物質障害予防規則第38条3)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)
名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、労働安全衛生規則別表第2)(令和7年4月1日以降)
危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3)
がん原性物質(作業記録等の30年保存対象物質)(労働安全衛生規則第577条の2)
危険物・可燃性のガス(施行令別表第1第5号)
特殊健康診断対象物質・現行取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第1項)【塩化ビニル】
特殊健康診断対象物質・過去取扱労働者(法第66条第2項、施行令第22条第2項)【塩化ビニル】
作業環境評価基準(法第65条の2第1項)
作業場内表示義務(法第101条の4)
労働基準法がん原性化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第7号)【塩化ビニル】
疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1)【塩化ビニル】(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、中枢神経系抑制、レイノー現象、指端骨溶解又は門脈圧亢進)
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)特定第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1、施行令第4条)
毒物及び劇物取締法-
大気汚染防止法揮発性有機化合物(法第2条第4項)(環境省から都道府県への通達)
有害大気汚染物質、優先取組物質(中央環境審議会第9次答申)
有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申)
水質汚濁防止法有害物質(法第2条、施行令第2条)
土壌汚染対策法第1種特定有害物質(法第2条第1項、施行令第1条)
船舶安全法高圧ガス(危規則第3条危険物告示別表第1)【引火性高圧ガス】
航空法高圧ガス(施行規則第194条危険物告示別表第1)【引火性高圧ガス】
港則法その他の危険物・高圧ガス(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表)【引火性高圧ガス】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)
高圧ガス保安法可燃性ガス(一般高圧ガス保安規則第2条1)

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」
修正履歴
R6.3.29:
・危険有害性の分類について物理化学的危険性、健康に対する有害性を見直した。
・SDS全般について表記の見直し・改訂をした。