| 1.化学品等及び会社情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品の名称 | アンチモン | ||
| 化学品の英語名称 | Antimony | ||
| 製品コード | R06-B-137-JNIOSH | ||
| 供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
| 住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
| 電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
| 電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
| 緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
| 推奨用途及び使用上の制限 | 蓄電池,特殊鋼,硬鉛鋳物(NITE-CHRIPより引用) | ||
| 2.危険有害性の要約 | |||
|---|---|---|---|
| GHS分類 | |||
| 分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | 令和6年度(2024年度)、ガイダンスVer.2.1 (GHS 6版, JIS Z7252:2019) ※一部、平成18年度(2006年度)、マニュアル(H18.2.10版)(GHS 初版) | ||
| 物理化学的危険性 | - | ||
| 健康に対する有害性 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | |
| 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 | ||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1 (心血管系、消化管)、区分3 (気道刺激性) | ||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1 (呼吸器、心血管系、消化管) | ||
| 分類実施日 (環境有害性) | 平成18年度(2006年度)、マニュアル(H18.2.10版)(GHS 初版) | ||
| 環境に対する有害性 | - | ||
| GHSラベル要素 | |||
|---|---|---|---|
| 絵表示 | ![]() ![]() | ||
| 注意喚起語 | 危険 | ||
| 危険有害性情報 | 皮膚刺激 強い眼刺激 心血管系、消化管の障害 呼吸器への刺激のおそれ 長期にわたる、又は反復ばく露による呼吸器、心血管系、消化管の障害 | ||
| 注意書き | |||
| 安全対策 | 取扱い後はよく手を洗うこと。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 | ||
| 応急措置 | 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”・・・”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”・・・”を適切に置き換えてください。 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪い時は医師に連絡すること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 | ||
| 保管 | 施錠して保管すること。 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 | ||
| 廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
| 他の危険有害性 | 情報なし | ||
| 3.組成及び成分情報 | |||
|---|---|---|---|
| 化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
| 化学名又は一般名 | アンチモン | ||
| 慣用名又は別名 | アンチモニー アンチモン化合物 スチビウム C.I.77050 金属アンチモン | ||
| 英語名 | Antimony | ||
| 濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
| 分子式 (分子量) | Sb (121.76) | ||
| 化学特性 (示性式又は構造式) | ![]() | ||
| CAS番号 | 7440-36-0 | ||
| 官報公示整理番号 (化審法) | - | ||
| 官報公示整理番号 (安衛法) | - | ||
| GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | - | ||
| 4.応急措置 | |||
|---|---|---|---|
| 吸入した場合 | 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 意識がないが呼吸がある場合は、横向きに安定した姿勢で寝かせ、低体温症から保護する。 気分が悪い時や呼吸に関する症状が現れた場合は、医師の診察/手当てを受けること。 医師に連絡すること。 気道/呼吸器疾患の刺激が発生した場合:できるだけ早く、グルココルチコイド吸入スプレーを吸入する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 皮膚に付着した場合 | 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 炎症を起こした場合: 医師の診察/手当てを受けること。 直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 眼に入った場合 | 症状が続く場合には、医師に連絡すること。 まぶたを大きく広げて流水で少なくとも10分間(できればコンタクトレンズをはずして)、患部を洗眼する。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 飲み込んだ場合 | 意識がある場合は、コップ1〜2杯の水を飲ませる。 自然嘔吐の場合は、嘔吐物が呼吸器に侵入するのを防ぐため、頭を胸より低くし、うつぶせの姿勢にする。 | ||
| 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 急性: 粘膜への刺激、胃腸の不調。眼に刺激を引き起こすことがある。 慢性: 皮膚の損傷、心機能への影響。特にフュームにばく露された場合、反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を引き起こすことがある。 肺に影響を与えることがある。 塵肺症を生じることがある。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 救助者は、状況に応じて適切な眼、皮膚の保護具を着用する | ||
| 医師に対する特別な注意事項 | 情報なし | ||
| 5.火災時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 適切な消火剤 | 水噴霧、乾燥消火剤、二酸化炭素、泡消火剤、粉末消火薬剤、二酸化炭素。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 使ってはならない消火剤 | 火災が周辺に広がる恐れがあるため、直接の棒状注水を避ける。 | ||
| 特有の危険有害性 | 火災の場合、有害物質(三酸化アンチモンフューム)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 特有の消火方法 | 可能であれば、容器を危険区域から移動する。 着火(発火)源を遮断する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具、眼や皮膚を保護する防護服 (耐熱性) を着用する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 6.漏出時の措置 | |||
|---|---|---|---|
| 人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 周囲を換気し、こぼれた場所を洗浄する。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 環境に対する注意事項 | 閉鎖系装置のみを使用すること。 容器とパイプラインにラベルを貼ること 不適切な材料: アルミニウム 水、排水、下水、または地中への浸透を防ぐ。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 封じ込め及び浄化の方法及び機材 | リサイクルの方法がない場合は、地域の規制に従って廃棄すること。 湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 二次災害の防止策 | 情報なし | ||
| 7.取扱い及び保管上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 取扱い | |||
| 技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。。 粉じんを発生させないこと。避けられない粉じんの発生は、定期的に収集すること。 掃除中に粉じんを起こさないこと。 清掃にブロワーを使用しないこと。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 安全取扱い注意事項 | 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 作業場所を清潔に保つこと。 この物質は、作業に必要な量を超えて持ち込まない。 容器を開けたままにしないこと。 補充または移し替えには、排気口付きの漏れ防止機器を使用すること。 こぼれないようにすること。 ラベルの付いた容器にのみ注入すること。 粉じんを発生させないこと。 裸火禁止。密閉系、粉じん防爆型電気設備および照明の設置。 粉じんの堆積を防ぐ。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 接触回避 | 酸化剤、ハロゲンまたは酸。 感染性、放射性、爆発性の物質。 ガス。 強酸化性物質。 硝酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを含有する製剤 有機過酸化物および自己反応性物質。 危険な化学反応が起こりうる物質と一緒に保管しない。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 衛生対策 | この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 取扱い後はよく手を洗うこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 眼、皮膚、衣類への接触を避けること。汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 使用後は手を洗うこと。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 保管 | |||
| 安全な保管条件 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 作業場の換気を良好に保つ。 容器にはラベルを貼付すること。 できるだけ元の容器に保管すること。 内容物を窒素の下に保管すること。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 安全な容器包装材料 | 消防法、国連輸送法規で規定されている容器を使用する。 | ||
| 8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
| 管理濃度 | - | |||
| 濃度基準値 | ||||
| 八時間濃度基準値 | - | |||
| 短時間濃度基準値 | - | |||
| 許容濃度 | ||||
| 日本産衛学会 (2023年度版) | 許容濃度: 0.1 mg/m3 | |||
| ACGIH (2024年版) | TLV-TWA: 0.5 mg/m3 (as Sb) | |||
| 設備対策 | 粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。 取り扱い場所の近くに洗浄のための設備を設ける。 | |||
| 保護具 | ||||
| 呼吸用保護具 | 緊急時には、呼吸保護具を着用する。 フィルター装置の使用限界を超える濃度、体積18%未満の酸素濃度、または不明な状況では、絶縁装置を使用すること。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 手の保護具 | 必要に応じて適切な不浸透性の保護手袋を使用すること。着用する前に締まり具合を確認すること。手袋は取り外す前に十分に洗浄し、換気の良い場所に保管すること。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 眼の保護具 | 必要に応じて安全眼鏡、保護面、安全ゴーグルなどの眼用保護具を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 皮膚及び身体の保護具 | 身体の保護リスクに応じて、適切な防護服または適切な化学防護服を着用する。 以上、GESTIS参照。 | |||
| 9.物理的及び化学的性質 | |||
|---|---|---|---|
| 物理的状態 | |||
| 物理状態 | 固体 | ||
| 色 | 銀白色 | ||
| 臭い | データなし | ||
| 融点/凝固点 | 630.028 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 沸点、初留点及び沸騰範囲 | 1587 ℃ (HSDB in PubChem (2024)) 1330 ℃ (ホンメル (1991)) | ||
| 可燃性 | 可燃性 (特定の条件下) (ICSC (2006)) | ||
| 爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | データなし | ||
| 引火点 | データなし | ||
| 自然発火点 | データなし | ||
| 分解温度 | データなし | ||
| pH | データなし | ||
| 動粘性率 | データなし | ||
| 溶解度 | 水: 不溶 (HSDB in PubChem (2024)) 水: 混合しない (ホンメル (1991)) 濃硫酸: 熱した濃硫酸に溶ける (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| n-オクタノール/水分配係数 | データなし | ||
| 蒸気圧 | 1 mmHg (886℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 密度及び/又は相対密度 | 6.68 g/cm3 (20℃) (HSDB in PubChem (2024)) | ||
| 相対ガス密度 | データなし | ||
| 粒子特性 | データなし | ||
| 10.安定性及び反応性 | |||
|---|---|---|---|
| 反応性 | 物質は可燃性である。 消火設備が利用可能であること。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 化学的安定性 | 通常の取扱い条件下では安定である。 | ||
| 危険有害反応可能性 | 可燃性物質、難燃性。 次の物質と危険な反応をする: 臭素、アルミニウム、塩素、フッ素、酸化剤、硝酸、臭素、五フッ化物、臭素、三フッ化塩素、三フッ化二硫黄、二臭化ヨウ素、五フッ化カリウム、二酸化カリウム、過マンガン酸ニトロシル塩化ニトロシル、フッ化ニトロシル、過塩素酸、高温塩酸、一臭化硫黄、塩化セレニル、水素。 燃焼すると、酸化アンチモンの有毒なフュームを生成する。 酸化剤、酸、ハロゲンおよび金属粉末と 激しく反応する。酸と接触すると、有毒なガス(スチビン)が発生することがある。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 避けるべき条件 | 特定の条件下で可燃性。 火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。 空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じる。 以上、ICSC参照。 | ||
| 混触危険物質 | 接触すると爆発の危険がある: ヨウ素、アルカリ硝酸塩、硝酸アンモニウム、塩素酸、二塩素酸化ジフッ素、酸化ジフッ素、硝酸カリウム、金属粉末、硝酸ナトリウム。 酸またはハロゲンと接触すると、火災および爆発の危険性がある。 以上、GESTIS、ICSC参照。 | ||
| 危険有害な分解生成物 | 火災の場合、有害物質(三酸化アンチモンフューム)が放出される可能性がある。 以上、GESTIS参照。 | ||
| 11.有害性情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 急性毒性 | ||||
| 経口 | 【分類根拠】 (1)より区分に該当しない。なお、新たな知見に基づき、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)ラットにおけるLD50: > 7,000 mg/kg(ATSDR (2019)、GESTIS (Accessed July 2024)、HSDB in PubChem (同左)) | |||
| 経皮 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 吸入: ガス | 【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。 | |||
| 吸入: 蒸気 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 吸入: 粉じん及びミスト | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より区分2とした。なお、情報源の情報を精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)ろう付け棒製造工場でアンチモンの溶融工程に従事し、皮膚炎を罹患した労働者3人の症例報告がある。アンチモン鋳塊を破砕して、るつぼで断片を溶融する作業に3年間従事した28歳の労働者が前腕、胴、額に小胞状の丘疹や膿疱の発疹を生じた。同一の作業に従事した33歳の労働者では腕に小胞状の丘疹や膿疱、体幹に乾燥した湿疹様斑点がみられた。31歳のもう1 人には前腕に紅斑状の丘疹、脚と背に丘疹が認められた。3人ともアンチモン関連作業から離れた後に皮膚炎は完治した。金属アンチモンは溶融過程で蒸発し、空気中で凝固する際に酸化されて三酸化二アンチモンのフュームを生ずることが知られていることから、患者は作業中に金属アンチモンの粉じんや三酸化二アンチモンのフュームにばく露されたと著者らは推定している(産衛学会許容濃度の提案理由書 (2013)、MOE初期評価 (2017)、厚労省リスク評価書 (2012)、MAK (DFG) (2007))。 (2)アンチモンフューム及び三酸化二アンチモン粉じんは、全身 (皮膚) ばく露によってアンチモン皮疹と呼称される皮膚炎を発症し、色素沈着、水疱性あるいは膿疱性発疹を前腕、胴体、顔などに生ずる。特に夏場や高温作業で発症する(厚労省リスク評価書 (2012))。 したがって、アンチモンフューム、三酸化二アンチモンは皮膚刺激性を示す。 (3)アンチモン及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、頭痛、めまい、嘔(おう)吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、心筋障害又は胃腸障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。 【参考データ等】 (3)気中アンチモンにばく露された労働者で皮膚炎と眼刺激が報告されている。皮膚炎は夏期や高温に曝される労働者に多くみられた。アンチモンが汗に溶けて汗腺に浸透した結果と考えられている(ATSDR (2019))。 | |||
| 眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | 【分類根拠】 (1)〜(3)より区分2とした。 【根拠データ】 (1)アンチモン製錬所の労働者の27.5%に眼の炎症が報告されたが、これがアンチモン酸化物によるものか、製錬所の粉じんに含まれる他の成分によるものかは不明である(ATSDR (2019))。 (2)ウサギを用いた眼刺激性試験として、三酸化二アンチモン(CAS登録番号 1309-64-4)を100 mg適用後に重度の眼刺激性が認められたとの報告(厚労省リスク評価書 (2012)、NITE初期リスク評価書 (2008))とアンチモン84 mg(三酸化二アンチモンとして)を適用後に眼刺激性変化は認められなかったとの相反する報告がある(ATSDR (2019))。また、アンチモン66 mg(硫化アンチモンとして)を適用24時間後に眼刺激性所見(結膜の発赤・浮腫、眼の分泌増加)がみられたとの報告がある(同上)。 (3)アンチモン及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、頭痛、めまい、嘔(おう)吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、心筋障害又は胃腸障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号)。 | |||
| 呼吸器感作性 | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| 皮膚感作性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)陶磁器製造の5工場でエナメル装飾作業に従事した労働者190人(皮膚炎患者22人、皮膚炎既往症者44人、健常者124人) を対象に、皮膚感作性が調査された。労働者の48 人がパッチテスト陽性を示し、28 人が硫化ニッケルに、2 人が三酸化二アンチモン粉末に陽性を示した。皮膚感作性物質であると結論するには,今後の研究が必要であると著者らは結論している(産衛学会許容濃度の提案理由書 (2013)、厚労省リスク評価書 (2012)、NITE初期リスク評価書 (2008))。 | |||
| 生殖細胞変異原性 | 【分類根拠】 In vivo試験のデータはなく、データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)金属アンチモンについて、in vitro試験では、細菌を用いた復帰突然変異試験で1菌株(ネズミチフス菌TA1537)の代謝活性化無添加の試験条件のみ陽性、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた染色体異常試験では代謝活性化の有無にかかわらず陽性の報告がある(ATSDR (2019))。 | |||
| 発がん性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。また、ヒトの職業ばく露による疫学研究報告からは、交絡因子による制限のため、本物質自体の発がん性影響に関する情報は得られない。 【参考データ等】 (1)初期の疫学研究において、金属アンチモン、アンチモン合金、三酸化アンチモンにばく露された労働者を対象とした研究では、1940年以前又は1946年から1950年の間に雇用された労働者において肺がん死亡の増加が認められたとの報告がある(ATSDR (2019))。 (2)ヒトのアンチモンばく露とがんとの関連について、最も有益であると考えられている3件の疫学研究において、精錬所でアンチモンにばく露された労働者では肺がんによる標準化死亡比の上昇が一貫して観察された。これらの研究報告から、標準化死亡比は雇用期間によって上昇したこと、アンチモンへの累積ばく露加重値の増加につれて肺がんの過剰死亡リスクが増加することが明らかにされている(IARC 131 (2023)、ATSDR (2019))。 (3)ただし、これらの研究の制限はアンチモン精錬過程におけるヒ素などヒトの既知発がん物質による同時ばく露による交絡要因を排除することができず、アンチモンの単独ばく露影響として評価できないことである。しかも精錬所作業者がばく露されるアンチモンの化学形態は三価のアンチモン化合物とみなされている(IARC 131 (2023))。 (4)IARCの最新評価では、三酸化二アンチモン(CAS登録番号 1309-64-4)の発がん性試験データ、作用機序研究成績等に基づき、三価アンチモン化合物はグループ2A、五価アンチモン化合物はグループ3に分類された(同上)。 | |||
| 生殖毒性 | 【分類根拠】 データ不足のため分類できない。 【参考データ等】 (1)旧ソ連における初期の疫学調査において、金属アンチモン、五硫化アンチモン、三酸化二アンチモンにばく露された女性作業者の集団では月経周期異常が61.2%(対照群35.7%)、自然流産が12.5%(対照群4.1%)にみられ、女性作業者での性機能異常が報告されているが、対照群の妥当性を評価できる情報は提供されていない(ATSDR (2019))。 | |||
| 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 【分類根拠】 (1)〜(4)より、区分1(心血管系、消化管)、区分3(気道刺激性)とした。なお、情報源の情報を精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)動物試験の急性アンチモン中毒の兆候として、体重減少、脱毛、皮膚の乾燥と鱗屑、血液学的所見として好酸球増多、病理所見として心臓、肝臓、腎臓の急性うっ血がみられ、死因は心筋不全であった (ACGIH (2001))。 (2)ACGIHは、アンチモン及びその化合物について、上気道の刺激、腹痛及び食欲減退発現の可能性を最小化することを意図してTLV-TWA値を設定している。なお、著しく高い単回又は反復ばく露で心臓や血液の障害が生じることが予想されるとしている (ACGIH (2001))。 (3)一般店で、エナメルでコーティングされた容器にレモネード粉末を溶かしてつくったレモネードを飲んだ店員の50 人余が非常に不快になり、診療所で治療を受けた(その後、ほとんどすべての人が速やかに回復)。レモネード液の成分を分析した結果、金属アンチモンに換算して0.013%のアンチモン化合物と検出限界に近い微量な亜鉛が検出された。10 オンス (およそ300 mL)のレモネードに金属アンチモンとして37 mgが含まれていたことに相当した。一方、エナメルの成分分析から、2.9%の三酸化二アンチモンが検出された (NITE初期リスク評価書 (2008)、厚労省リスク評価書 (2012))。 (4)アンチモン及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、頭痛、めまい、嘔(おう)吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、心筋障害又は胃腸障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号))。 【参考データ等】 (5)金属アンチモン濃度32又は88.4mg/m3の蒸気(それぞれMMAD=0.93及び1.3μm)に90分間ばく露(アンチモン濃度の4時間換算値:0.096及び0.0541 mg/L、区分1の範囲)すると、ラットの肺洗浄液中のマクロファージ数が有意に減少した。ばく露終了21時間後、肺には出血斑が認められ、肺重量はわずかに増加した(MAK (DFG)(2007))。 | |||
| 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 【分類根拠】 (1)〜(5)より、区分1(呼吸器、心血管系、消化管)とした。なお、情報源の情報を精査し、分類結果を変更した(2024年度)。 【根拠データ】 (1)アンチモンを扱う労働者ではじん肺や咳や喉頭炎といった所見が報告されている。ただし、労働者は酸化ヒ素、酸化鉄、塩化水素、硫化水素など他の化合物にもばく露されていたため、以上の呼吸器影響がアンチモン自体の影響とは確定できない(ATSDR (2019))。 (2)気中アンチモン濃度 9 mg/m3の慢性的ばく露では、眼、皮膚、肺の炎症を悪化させる可能性がある。アンチモンの長期吸入ばく露はじん肺、心電図の変化、胃痛、下痢、嘔吐、胃潰瘍を増強する可能性があり、この結果は実験動物で確認された。製錬所では三酸化アンチモンへのばく露が主体であるとの記述がある(HSDB in PubChem (Accessed July 2024))。IARCも精錬所労働者のアンチモンへの職業ばく露は三価アンチモン化合物へのばく露と考えられる旨の判断を示している(IARC 131 (2023))。 (3)硫化アンチモン(V)(アンチモンとして0.6 〜 5.5 mg/m3)に8ヶ月から2年にわたってばく露された労働者125名の中から、6名の突然死と2名の慢性心疾患による死亡が見られた。心電図検査では、75名中37名の異常(ほとんどがT波の異常)が認められた。この工場では、フェノール樹脂に硫化アンチモン(V)を混合してグラインダーの研盤磨を製造していたが、アンチモン導入以前には、このような死亡例はなく、アンチモンの使用の中止後は、突然死の症例は見られなくなった。しかし、数年後に心電図を再検査された56 名中12 名に異常が残存していた (産衛学会許容濃度提案理由書 (2013))。 (4)アンチモン及びその化合物への著しく高い単回又は反復ばく露により、心臓や血液の障害が生じることが予想される (ACGIH (2001))。 (5)アンチモン及びその化合物について、労働基準法施行規則35条別表第一の二第四号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病として、頭痛、めまい、嘔(おう)吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、心筋障害又は胃腸障害が記載されている (平成二十五年厚生労働省告示第三百十六号))。 【参考データ等】 (6)金属アンチモンについて、ラットを用い24週間混餌投与試験(5,000〜20,000 ppm:370〜1,500 mg/kg/day)では、740 mg/kg/dayで肝細胞索の乱れ、及び混濁腫脹が認められ、NOAELは370 mg/kg/dayであった(ATSDR (2019)、MOE初期評価 (2017)、NITE初期リスク評価書 (2008))。 | |||
| 誤えん有害性* | 【分類根拠】 データがなく分類できない。 | |||
| * JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 | ||||
| 12.環境影響情報 | |||
|---|---|---|---|
| 生態毒性 | |||
| 水生環境有害性 短期(急性) | データがなく分類できない。 | ||
| 水生環境有害性 長期(慢性) | データがなく分類できない。 | ||
| 残留性・分解性 | - | ||
| 生態蓄積性 | - | ||
| 土壌中の移動性 | - | ||
| オゾン層への有害性 | - | ||
| 13.廃棄上の注意 | |||
|---|---|---|---|
| 化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 | ||
| 14.輸送上の注意 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
| 国際規制 | ||||
| 国連番号 | 2871 | |||
| 品名(国連輸送名) | アンチモン粉末 (粉末の場合) | |||
| 国連分類 | 6.1 | |||
| 副次危険 | - | |||
| 容器等級 | III | |||
| 海洋汚染物質 | 該当しない | |||
| MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
| 国内規制 | ||||
| 海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う | |||
| 航空規制情報 | 航空法の規定に従う | |||
| 陸上規制情報 | 消防法、道路法の規定に従う | |||
| 特別な安全上の対策 | 消防法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
| その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
| 緊急時応急措置指針番号* | 170 | |||
| * 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2024 Emengency Response Guidebook」に掲載されている。 | ||||
| 15.適用法令 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
| 労働安全衛生法 | 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【38 アンチモン及びその化合物】 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【5 アンチモン及びその化合物】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年3月31日まで)【38 アンチモン及びその化合物】 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2、施行令別表第9)(令和7年4月1日以降) 【5 アンチモン及びその化合物】 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 危険物・発火性の物(施行令別表第1第2号) 【12 マグネシウム粉及びアルミニウム粉以外の金属粉】 | |||
| 労働基準法 | 疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号1) 【アンチモン及びその化合物】 | |||
| 化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) 【48 アンチモン及びその化合物】 | |||
| 毒物及び劇物取締法 | - | |||
| 水質汚濁防止法 | 指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3) 【47 アンチモン及びその化合物】 | |||
| 船舶安全法 | 毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
| 航空法 | 毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1) | |||
| 港則法 | その他の危険物・毒物類(毒物)(法第20条第2項、規則第12条、危険物の種類を定める告示別表) | |||
| 道路法 | 車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2) 【硫化りん、赤リン、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、前記に掲げるもののいずれかを含有するもの、引火性固体】 | |||
| 大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) 【14 アンチモン及びその化合物】 | |||
| 消防法 | 第2類 可燃性固体(法第2条第7項危険物別表第1・第2類) 【5 金属粉】 | |||
| 16.その他の情報 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 参考文献 | ||||
| 9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・2024 Emengency Response Guidebook ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 ・厚生労働省「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第1版」 | ||||