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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
ジメチルフタリルイミドメチルジチオホスフェイト
作成日 2008年10月14日
改訂日 2021年03月12日
1.化学品等及び会社情報
化学品の名称ジメチルフタリルイミドメチルジチオホスフェイト (別名: ホスメット) (Phosmet)
製品コードR02-B-071
会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファックス番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限殺虫剤 (失効農薬) (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R3.3.12、政府向けGHS分類ガイダンス (令和元年度改訂版 (ver2.0)) を使用
JIS Z7252:2019準拠 (GHS改訂6版を使用)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性 (経口)区分3
急性毒性 (吸入: 粉じん、ミスト)区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2B
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)区分1 (神経系)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)区分1 (神経系)
区分2 (肝臓)
分類実施日
(環境有害性)
平成18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)
環境に対する有害性水生環境有害性 (急性)区分1
水生環境有害性 (長期間)区分1
GHSラベル要素
絵表示どくろ健康有害性環境
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有毒
強い眼刺激
吸入すると生命に危険
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓の障害のおそれ
水生生物に非常に強い毒性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
取扱後はよく手を洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
呼吸用保護具を着用すること。
 応急措置ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
漏出物を回収すること。
 保管換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
単一製品・混合物の区別単一製品
化学名又は一般名ジメチルフタリルイミドメチルジチオホスフェイト
別名ホスメット
PMP
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C11H12NO4PS2 (317.31)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号732-11-6
官報公示整理番号
(化審法)
情報なし
官報公示整理番号
(安衛法)
情報なし
分類に寄与する不純物及び安定化添加物情報なし

4.応急措置
吸入した場合空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
直ちに医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合汚染された衣服を脱がせる。
洗い流してから水と石鹸で皮膚を洗浄する。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
飲み込んだ場合直ちに医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
水に活性炭を懸濁した液を飲ませる。
吐かせる(意識がある場合のみ!)。
安静。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入: 縮瞳、筋痙攣、唾液分泌過剰、発汗、吐き気、めまい、息苦しさ、脱力感。
皮膚: 吸収される可能性あり!「吸入」参照。
眼: 充血。
経口摂取: 胃痙攣、嘔吐、下痢、痙攣、意識喪失、他の症状については、「吸入」参照。
応急措置をする者の保護情報なし
医師に対する特別な注意事項ばく露の程度によっては、定期検診を勧める。
この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。

5.火災時の措置
適切な消火剤水噴霧、粉末消火薬剤、泡消火薬剤、二酸化炭素
使ってはならない消火剤棒状注水
特有の危険有害性可燃性。
有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。
火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。
製剤が引火性/爆発性溶剤を含む場合火災および爆発の危険性がある。
特有の消火方法情報なし
消火を行う者の保護情報なし

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)
環境に対する注意事項周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材この物質を環境中に放出してはならない。
こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉塵を避けるために湿らせてから掃き入れる。
残留分を、注意深く集める。
地域規則に従って保管処理する。

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱い注意事項裸火禁止。
使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
容器を密閉しておくこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
環境への放出を避けること。
製剤に溶剤が使用されている場合は、その溶剤のICSCも参照のこと。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
安全な保管条件換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
施錠して保管すること。
消火により生じる流出物を収容するための用意
食品や飼料から離しておく。
安全な容器包装材料国連危険物輸送勧告で規定された容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGIHの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度
日本産衛学会 (2020年度版)未設定
ACGIH (2020年版)未設定
設備対策粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器又は局所排気装置を使用する。
保護具
呼吸用保護具状況に応じた適切な呼吸用保護具を使用すること。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器を使用することとの記載あり)
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡や保護面を着用する。(ICSCには、呼吸用保護具と併用して、顔面シールドまたは保護眼鏡を使用することとの記載あり)
皮膚及び身体の保護具保護衣(化学防護服)を着用する。(ICSCには、漏洩物処理時に自給式空気呼吸器付化学防護服を使用することとの記載あり)

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色〜オフホワイト
臭い特徴的な臭気
融点/凝固点72℃ (ICSC (2004))
沸点、初留点及び沸騰範囲沸点以下の温度で分解する (HSDB (Access on May 2020))
可燃性不燃性 (RAC Background Document (2016))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界該当しない
引火点該当しない
自然発火点該当しない
分解温度100℃ (ICSC (2004))
pHデータなし
動粘性率該当しない
溶解度水: 0.003 g/100 mL (20℃) (ICSC (2004))
アセトン、ベンゼン、メタノール、トルエン及びメチルイソブチルケトンに可溶 (HSDB (Access on May 2020))
n-オクタノール/水分配係数log Pow = 2.83 (ICSC (2004))
蒸気圧4.9E-007 mmHg (20〜25℃) (HSDB (Access on May 2020))
密度及び/又は相対密度1.03 g/cm3 (ICSC (2004))
相対ガス密度該当しない
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性加熱や燃焼により、分解し、窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフュームを生じる。
避けるべき条件加熱、混触危険物質との接触
混触危険物質他の農薬 (アルカリ条件下)
危険有害な分解生成物窒素酸化物、リン酸化物およびイオウ酸化物などの有毒なフューム

11.有害性情報
急性毒性
経口【分類根拠】
(1)〜(7) より、区分3とした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: 92〜310 mg/kg (Canada Pesticides (2017))
(2) ラットのLD50: 92.5〜164 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(3) ラットのLD50: 113 mg/kg (EPA Pesticides RED (2006)、EU CLP CLH (2016)、食安委 農薬評価書 (2012))
(4) ラットのLD50: 121 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(5) ラットのLD50: 雄: 135〜310 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(6) ラットのLD50: 雌: 224〜369 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(7) ラットのLD50: 230 mg/kg (EU CLP CLH (2016))
経皮【分類根拠】
(1) のラットのデータからは区分を特定できないため、 (2)〜(6) のウサギのデータより区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) ラットのLD50: > 1,000 mg/kg (CLH Report (2015)、RAC Background Document (2016)、食安委 農薬評価書 (2012))
(2) ウサギのLD50: 3,160 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(3) ウサギのLD50: 3160〜> 5000 mg/kg (Canada Pesticides (2017))
(4) ウサギのLD50: > 3,160 mg/kg (GESTIS (Access on May 2020))
(5) ウサギのLD50: > 4,600 mg/kg (食安委 農薬評価書 (2012))
(6) ウサギのLD50: > 5,000 mg/kg (CLH Report (2015)、EPA Pesticides RED (2006)、RAC Background Document (2016)、食安委 農薬評価書 (2012)、Patty (6th, 2012))
吸入: ガス【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト【分類根拠】
(1)、(2) より、区分2とした。
なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (8.4E-006 mg/L) よりも高いため、粉じんとしてmg/Lを単位とする基準値を適用した。

【根拠データ】
(1) ラットのLC50 (4時間): 0.054 mg/L (GESTIS (Access on May 2020))
(2) ラットのLC50 (4時間): > 0.152 mg/L (EPA Pesticides RED (2006)、RAC Background Document (2016)、食安委 農薬評価書 (2012))
(3) 本物質の蒸気圧: 4.9E-007 mmHg (20〜25℃) (HSDB (Access on May 2020)) (飽和蒸気圧濃度換算値: 8.4E-006 mg/L)

【参考データ等】
(4) ラットのLC50 (4時間): 1.12 mg/L ((6) の外挿値) (RAC Background Document (2016))
(5) ラットのLC50 (4時間): 1.6 mg/L (70%水和剤) (RAC Background Document (2016))
(6) ラットのLC50 (1時間): 2.76 mg/L (4時間換算値: 0.69 mg/L) (HSDB (Access on May 2020))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分に該当しないとした。新しいデータ (1)〜(4) が得られたことから、分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) OECD TG 404類似のウサギを用いた皮膚刺激性試験で適用24時間後に刺激性反応はみられなかった (CLH Report (2015)、RAC Background Document (2016))。
(2) EPA OPPTS 870.2500に準拠したウサギを用いた皮膚刺激性試験で刺激性を示さない (EPA Pesticides RED (2006))。
(3) 本物質はウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ドレイズ法) で刺激性を示さない (食安委 農薬評価書 (2012))。
(4) 本物質は皮膚刺激性を示さない (HSDB (Access on May 2020))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)〜(4) より、区分2Bとした。

【根拠データ】
(1) 本物質は中等度の眼刺激性を示す (Canada Pesticides (2017)、HSDB (Access on May 2020))。
(2) OECD TG 405類似のウサギを用いた眼刺激性試験で1/3例に角膜混濁、結膜の発赤及び浮腫、分泌物がみられたが、適用7日後までに回復した (CLH Report (2015)、RAC Background Document (2016))。
(3) EPA OPPTS 870.2400に準拠したウサギを用いた眼刺激性試験で中等度の刺激性を示す (EPA Pesticides RED (2006))。
(4) 本物質は軽度の眼刺激性を示す (食安委 農薬評価書 (2012))。
呼吸器感作性【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性【分類根拠】
(1)、(2) より、区分に該当しないとした。新しいデータ (1)、(2) が得られたことから分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) 本物質は皮膚感作性を示さない (Canada Pesticides (2017))。
(2) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (改変ビューラー法) で陽性反応を示した動物は10例中1例 (陽性率10%) であった (CLH Report (2015)、RAC Background Document (2016)、食安委 農薬評価書 (2012))。
生殖細胞変異原性【分類根拠】
(1)〜(3) より、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) in vivoでは、マウス経口投与又は腹腔内投与の骨髄細胞を用いた小核試験で陰性、ラット経口投与の肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性 (EU CLP CLH (2016)、食安委 農薬評価書 (2012)、Canada Pesticides (2017))。マウス腹腔内投与の肝臓及び腎臓を用いたコメットアッセイで陰性 (EU CLP CLH (2016))。なお、マウス経口投与の骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性の報告があるが、観察された染色体異常の増加は用量依存的でなく、試験結果は許容できないと考えられた (RAC Background Document (2016))。
(2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の報告がある。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験で陽性、陰性の報告、姉妹染色分体交換試験で陽性、遺伝子突然変異試験で陽性 (EU CLP CLH (2016)、食安委 農薬評価書 (2012)、Canada Pesticides (2017))、形質転換試験で陰性の報告がある (食安委 農薬評価書 (2012)、Canada Pesticides (2017))
(3) 本物質の遺伝毒性評価として、RACでは、証拠の重付けにより、in vitroで遺伝毒性の可能性があるが、in vivoではその懸念がないとしている (RAC Background Document (2016))、また食安委では、生体にとって問題となる遺伝毒性は認められなかったとしている (食安委 農薬評価書 (2012))。
発がん性【分類根拠】
(1)、(2) より、EPAはSに分類しているが、JMPR、EU EFSA及び食安委の判断に基づき、区分に該当しないとした。

【根拠データ】
(1) 国内外の分類機関による既存分類では、EPAでS (suggestive evidence of carcinogenicity, but not sufficient to assess human carcinogenic potential) (EPA Annual Cancer Report 2019 (Access on August 2020):1999年分類) に分類されている。
(2) 雌雄のラット及びマウスに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性試験において、雌雄のラット及び雌マウスでは発がん性は認められなかった。雄のマウスで肝細胞腺腫の発生がみられたが、発生率に有意差は認められず、JMPRはマウスにおいて発がん性はないと結論づけている (JMPR (1994))。EU EFSAの専門家は、この軽度なマウス肝腫瘍の増加について、同時期の試験実施施設における発生頻度を僅かに超えていることから、発がん性分類R40 (発がん性作用の証拠が限定的である (Limited evidence of a carcinogenic effect)) に分類しなかった (EU EFSA (2011))。食安委は、EU EFSAの判断を支持した (食安委 農薬評価書 (2012))。
生殖毒性【分類根拠】
(1) より、親動物で体重増加抑制等が認められた用量において交尾率及び受胎率の低下等が認められたことから区分2とした。

【根拠データ】
(1) ラットを用いた混餌による2世代繁殖試験において、親動物に赤血球コリンエステラーゼ (ChE) 活性阻害、体重増加抑制がみられる用量で、交尾率及び受胎率の減少がみられ、親動物に摂餌量減少、雌で脱水症状、雄で精巣重量の減少、肝細胞空胞化がみられる用量で児動物数、低体重児の頻度及び児動物の生存率の低下がみられている (食安委 農薬評価書 (2012)、EU CLP CLH (2016))。

【参考データ等】
(2) 雌ラットの妊娠7〜16日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に体重減少、摂餌量低下、身ぶるい (shaking) 及び立毛がみられる用量でも胎児に影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2012)、EU CLP CLH (2016))。
(3) 雌ウサギの妊娠7〜19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物で僅かな体重増加抑制、不安定 (unsteadiness)、身震い、流涎、不整呼吸 (irregular breathing) がみられる用量でも胎児に軽度の骨格変異のみがみられた (食安委 農薬評価書 (2012)、EU CLP CLH (2016))。
(4) 雌ザルの妊娠22〜32日に強制経口投与した発生毒性試験において、影響はみられていない (食安委 農薬評価書 (2012))。
(5) EU CLP分類でRepr. 2に分類されている (Access on May 2020)。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)【分類根拠】
(1)〜(4) より、呼吸困難や呼吸不全の所見は神経系への影響による二次的影響と考えられたため、区分1 (神経系) とした。なお、新たな情報源の使用により、旧分類から分類結果を変更した。

【根拠データ】
(1) ヒトにおいて、本物質の急性ばく露により、著しい縮瞳、かすみ目、頭痛、めまい、筋肉の痙攣、重度の脱力感、嘔吐、下痢、腹痛、痙攣、昏睡、高血圧が起こることがある。胸痛、低血圧、呼吸困難に続いて呼吸不全が認められる場合もある (HSDB (Access on May 2020))。
(2) 動物試験において、本物質の急性症状は一般的にコリンエステラーゼ (ChE) 阻害剤に認められる典型的な副交感神経刺激様の症状を示した。毒性徴候は速やかに出現し、総体的に投与後30分以内に、振戦、流涎、咀嚼行動、眼球突出症、眼、鼻及び口の血液様滲出物、呼吸困難、下痢、痙攣及び死亡などの症状が認められた。毒性症候は一過性で、総体的に速やかに投与24〜72時間で消失した (食安委 農薬評価書 (2012))。
(3) 上記の中毒症状は、ラットの経口投与では LD50値が92.5〜369 mg/kgで多くが300 mg/kg以下であることから、区分1の範囲で生じる症状と考えられる (食安委 農薬評価書 (2012))。
(4) ラットを用いた強制経口投与による急性神経毒性試験では、22.5 mg/kg群の赤血球ChE活性は70%以上、脳ChE活性は60%以上阻害された (食安委 農薬評価書 (2012))。

【参考データ等】
(5) 有機リン中毒の症状は、次の3つのグループに分けられる。ムスカリン様症状 (気管支分泌の増加、過度の発汗、唾液分泌、流涙、著明な縮瞳、気管支収縮、腹部痙攣 (嘔吐と下痢)、徐脈)、ニコチン様症状 (筋肉の線維束性収縮 (fasciculation of fine muscles)、頻脈)、中枢神経系の症状 (頭痛、めまい、落ち着きのなさ、不安、精神錯乱、痙攣、昏睡、呼吸中枢の抑制) が生じる。軽度の中毒には、ムスカリン様性及びニコチン様の兆候のみが含まれる場合があり、重症の場合は常に中枢神経系の関与を示す。症状の組み合わせにより、臨床像は呼吸不全に支配され、時には肺水腫を引き起こす (EHC 63 (1986))。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)【分類根拠】
(1) より、ヒトにおいて神経系への影響がみられるとの情報があり、(2)〜(4) より、実験動物において区分1の用量で神経系への影響、区分2の用量で肝臓への影響がみられたとの情報があったことから、区分1 (神経系)、区分2 (肝臓) とした。

【根拠データ】
(1) 本物質を含む動物用ノミ駆除剤の業務上の使用による長期ばく露の症例が複数報告されている。これらの例では、赤血球コリンエステラーゼ (ChE) 活性は正常値の範囲内であったが、頭痛、めまい、かすみ目、縮瞳、息切れ、胸痛、頻脈、腹部の痙攣、吐き気、疲労感、発汗等の有機リン系中毒の症状がみられた (HSDB (Access on May 2020)、Patty (6th, 2012))。
(2) ラットの90日間混餌投与試験では、100 ppm (5 mg/kg/day相当、区分1の範囲) で赤血球及び脳ChE活性の阻害がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2012)、JMPR (1994))。
(3) ラットの2年間混餌投与試験では、200 ppm (雄/雌: 23/27 mg/kg相当、いずれも区分2の範囲) で赤血球及び脳ChE活性の阻害、脂肪肝及び重篤化がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2012)、JMPR (1994))。
(4) マウスの2年間混餌投与試験では、100 ppm (15 mg/kg/day相当、区分2の範囲) の雄で痙攣、肝細胞細胞質空胞化、雌で脳ChE活性阻害がみられたとの報告がある (食安委 農薬評価書 (2012)、JMPR (1994))。
誤えん有害性*【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。本有害性項目の内容に変更はない。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 (急性)甲殻類 (オオミジンコ) の48時間LC50 = 27 μg/L (農薬登録申請資料 (2003)) から、区分1とした。
水生環境有害性 (長期間)急性毒性が区分1、生物蓄積性が低いと推定されるものの (log Kow = 2.78 (PHYSPROP Database (2005)))、急速分解性がないと推定される (BIOWIN) ことから、区分1とした。
オゾン層への有害性-

13.廃棄上の注意
残余廃棄物廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
汚染容器及び包装容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号2783
国連品名ORGANOPHOSPHORUS PESTICIDE, SOLID, TOXIC
国連危険有害性クラス6.1
副次危険-
容器等級II
海洋汚染物質該当する
MARPOL73/78附属書K及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質-
国内規制
海上規制情報船舶安全法の規定に従う。
航空規制情報航空法の規定に従う。
陸上規制情報毒物及び劇物取締法、道路法の規定に従う。
特別な安全上の対策毒物及び劇物取締法、道路法の規定によるイエローカード携行の対象物
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*152
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2016 Emengency Response Guidebook (ERG 2016)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法-
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)-
毒物及び劇物取締法劇物(法第2条別表第2)【43 ジメチルフタリルイミドメチルジチオホスフエイト】
劇物(指定令第2条)【56 ジメチルフタリルイミドメチルジチオホスフエイトを含有する製剤】
道路法車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)【3 PMP】
航空法毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)【【国連番号】2783 殺虫殺菌剤(有機リン系)(固体)(毒性のもの)】
船舶安全法毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)【【国連番号】2783 有機リン系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】
海洋汚染防止法個品運送P(施行規則第30条の2の3、国土交通省告示)【【国連番号】2783 有機リン系殺虫殺菌剤類(固体)(毒性のもの)】

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)
International Chemical Safety Cards (ICSC)
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
GESTIS Substance database (GESTIS)
ERG 2016版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用