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安全データシート
(JIS Z7253:2019準拠)
サリチル酸
作成日 2012年3月30日
改訂日 2022年03月15日
1.化学品及び会社情報
化学品の名称サリチル酸
化学品の英語名称Salicylic acid
製品コードR03-C-015-MHLW
供給者の会社名○○○○株式会社
住所東京都△△区△△町△丁目△△番地
電話番号03-1234-5678
ファクシミリ番号03-1234-5678
電子メールアドレス連絡先@検セ.or.jp
緊急連絡電話番号03-1234-5678
推奨用途及び使用上の制限アゾ染料中間体、防腐剤、医薬、紫外線吸収剤原料、食品添加物 (NITE-CHRIPより引用)

2.危険有害性の要約
GHS分類
分類実施日
(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009)
物理化学的危険性-
健康に対する有害性急性毒性(経口)区分4
皮膚腐食性/刺激性区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分1
皮膚感作性区分1
生殖毒性区分2
特定標的臓器毒性
(単回ばく露)
区分1(中枢神経系)
特定標的臓器毒性
(反復ばく露)
区分1(中枢神経系)
分類実施日
(環境有害性)
ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009)
環境に対する有害性水生環境有害性 短期(急性)区分3
GHSラベル要素
絵表示感嘆符腐食性健康有害性
注意喚起語危険
危険有害性情報飲み込むと有害
皮膚刺激
重篤な眼の損傷
アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ
生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
中枢神経系の障害
長期にわたる、又は反復ばく露による中枢神経系の障害
水生生物に有害
注意書き
 安全対策使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
環境への放出を避けること。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
 応急措置皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
直ちに医師に連絡すること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
口をすすぐこと。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
 保管施錠して保管すること。
 廃棄内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。
他の危険有害性情報なし

3.組成及び成分情報
化学物質・混合物の区別化学物質
化学名又は一般名サリチル酸
慣用名又は別名2−ヒドロキシ安息香酸
英語名Salicylic acid
2-Hydroxybenzoic acid
o-Hydroxybenzoic acid
濃度又は濃度範囲情報なし
分子式 (分子量)C7H6O3 (138.12)
化学特性 (示性式又は構造式)構造式
CAS番号69-72-7
官報公示整理番号(化審法)3-1640
官報公示整理番号(安衛法)情報なし
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む)情報なし

4.応急措置
吸入した場合ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚に付着した場合多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。
特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。
注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。
皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
眼に入った場合水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
直ちに医師に連絡すること。
飲み込んだ場合飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
口をすすぐこと。
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状吸入:咳。咽頭痛。「経口摂取」参照。
皮膚:発赤。
眼:充血。痛み。
経口摂取:吐き気。嘔吐。耳鳴り。
応急措置をする者の保護に必要な注意事項情報なし
医師に対する特別な注意事項アスピリン過敏症の人はこの物質に触れてはならない 。

5.火災時の措置
適切な消火剤小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水
大火災:粉末消火剤、二酸化炭素、耐アルコール泡消火剤、散水
使ってはならない消火剤棒状注水
火災時の特有の危険有害性可燃性。
火災の場合、有害物質(一酸化炭素)が放出される可能性がある。
特有の消火方法安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。
消火水をせき止め、後で廃棄する。
消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。
安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。
火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。
密閉型防護服を着用する。
防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。

6.漏出時の措置
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置適切な呼吸器用保護具を着用する。
保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がない時)。
すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。
適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。
必要により、風下に適切な隔離距離をとる。
環境に対する注意事項環境汚染を引き起こすおそれがある。
漏出物が地面や河川や下水に流出することを避ける。
封じ込め及び浄化の方法及び機材危険でなければ、漏れを止める。
排水溝、下水溝、地下室や狭い場所への流入を防ぐ。
乾燥した土、砂や不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。
容器内に水をいれてはいけない。
こぼれた物質を、ふた付きの容器内に掃き入れる。
湿らせてもよい場合は、粉じんを避けるために湿らせてから掃き入れる。
二次災害の防止策情報なし

7.取扱い及び保管上の注意
取扱い
技術的対策「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
安全取扱注意事項使用前に取扱説明書を入手すること。
全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
裸火禁止。
粉じんの堆積を防ぐ。
接触回避「10. 安全性及び反応性」を参照。
衛生対策取扱い後は手をよく洗うこと。
この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
保管
安全な保管条件施錠して保管すること。
強酸化剤から離しておく。
安全な容器包装材料情報なし

8.ばく露防止及び保護措置
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。
管理濃度未設定
許容濃度等
日本産衛学会(2021年版)未設定
ACGIH(2022年版)未設定
設備対策取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。
作業場では全体換気を行う。
設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置、粉じん防爆型電気設備および照明を用いる。
保護具
呼吸用保護具作業者が粉塵に暴露される場合は呼吸保護具(防じんマスク等)の着用を検討する。
防じんマスクの選択については、以下の点に留意する。
-酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。また、有害なガスが存在する場所においては防じんマスクを使用せず、その他の呼吸用保護具の利用を検討すること。
-防じんマスクは、日本工業規格(JIS T8151)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。
手の保護具保護手袋を着用する。
眼の保護具保護眼鏡を着用する。
皮膚及び身体の保護具保護衣を着用する。

9.物理的及び化学的性質
物理的状態
物理状態固体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色、白色〜淡褐色
臭い無臭
融点/凝固点159 ℃(ICSC(1997)、GESTIS(2022))
158 ℃(PubChem(2022))
沸点、初留点及び沸騰範囲211 ℃(27 hPa)(GESTIS(2022))
76  ℃(昇華点)(ICSC(1997)、GESTIS(2022))
可燃性可燃性(ICSC(1997))
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界15 g/m3(最小発火エネルギー:<10 mJ)(GESTIS(2022))
引火点157 ℃(Closed cup)(GESTIS(2022)、ICSC(1997))
自然発火点540 ℃(ICSC(1997))
570 ℃(GESTIS(2022))
分解温度76 ℃(光への暴露による昇華分解)(GESTIS(2022))
pH弱酸(ICSC(1997))
2.4(GESTIS(2022)、PubChem(2022))
動粘性率データなし
溶解度水: 0.2 g/100 m(20℃)(わずかに溶ける)(ICSC(1997)、GESTIS(2022))
テレピン油、アルコール、エーテルに可溶(PubChem(2022))
n-オクタノール/水分配係数Log Kow: 2.2 (ICSC(1997))
Log Kow: 2.26(GESTIS(2022))
蒸気圧114 Pa(130℃)(ICSC(1997)、PubChem(2022))
8.2X10-5 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))
密度及び/又は相対密度1.443 g/cm3(20℃)(GESTIS(2022))
1.4 (水=1)(ICSC(1997))
1.483 (危険物災害等支援システム(2022))
相対ガス密度4.8 (空気=1)(ICSC(1997)、PubChem(2022))
粒子特性データなし

10.安定性及び反応性
反応性「危険有害反応可能性」を参照。
化学的安定性情報なし
危険有害反応可能性可燃性。空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じる。粉末や顆粒状で空気と混合すると、粉塵爆発の可能性がある。水溶液は弱酸である。強酸化剤と反応する。光に敏感で、日光の下で徐々に変色する。分解温度:76℃(昇華)。加熱分解すると、刺激性のある煙を生成する。
避けるべき条件光、日光、空気、熱
混触危険物質強酸化剤、フッ素、酢酸鉛、鉄塩
危険有害な分解生成物フェノール

11.有害性情報
急性毒性
経口ラットのLD50値として5件のデータ(1500-2000 mg/kg(JECFA WHO 228(1962))、1100 mg/kg(JECFA 7742(2002))、891 mg/kg、1580 mg/kg、1280 mg/kg(NTP TR524(2007)))があり、いずれも区分4に該当する。
経皮ラットのLD50は>2000 mg/kgで死亡例なしとの報告(NTP TR524(2007))に基づき、区分に該当しないとした。
吸入: ガスGHSの定義における固体である。
吸入: 蒸気データなし。
吸入: 粉じん及びミストラットのLC50値は粉塵ばく露で >0.9 mg/L/1h(>0.225 mg/L/4h)(IUCLID(2000))と報告されているが、区分を特定できないので分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性ヒトに0.2%または1.5%のサリチル酸溶液を21日間の閉塞または半閉塞貼付した試験では、本物質は非刺激性(nonirritating)と結論され(NTP TR524(2007))、また、ウサギを用いた試験で刺激性スコアは0.16/8.0で軽度の刺激性(slightly irritating)と報告されている(IUCLID(2000))が、ヒトのボランティアによる試験で刺激性あり(irritating)との結果(IUCLID(2000))、13人の患者でサリチル酸塩使用と関連する中毒性の表皮壊死発生の報告(PIM 642(1998)、List1相当)、さらにサリチル酸は高濃度(20%以上)で焼灼作用があるとの記載(IUCLID(2000))により、区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性【分類根拠】
(1)より、区分1とした。新たな情報源を利用し分類結果を変更した。ECHA RACでGHS区分1相当の知見が得られたため、旧分類から眼損傷性/刺激性項目のみ見直した(2021年)。

【根拠データ】
(1)ウサギ(n = 3)を用いた眼刺激性試験(21日間観察)では、角膜と結膜に顕著な刺激影響がみられ、Draize の判定スコアによる角膜及び結膜炎の平均スコアはそれぞれ50.1(フルスコア:80)及び10.3(同:20)で影響は21日間の観察期間内には完全回復しなかったとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2016)、CLH Report (2014)、SCCS (2019)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。

【参考データ等】
(2)ウサギ(n = 6)を用いた眼刺激性試験(72時間観察)では、本物質は24時間後に重度の刺激性を生じた(眼刺激性平均スコア:51.5/110)。48時間後には軽減した(同スコア:40.3/110)が、72時間後にも影響はみられたとの報告がある(同スコア:38.7/110)(ECHA RAC Opinion (2016)、CLH Report (2014)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
(3)ウシ角膜を用いたin vitro眼刺激性試験(BCOP法)において、混濁度は本物質の0.1%、1%及び10%濃度でそれぞれ7.2%、70.4%及び98.7%を示し、重度と判断されたとの報告がある(ECHA RAC Opinion (2016)、CLH Report (2014)、SCCS (2019)、REACH登録情報 (Accessed Oct. 2021))。
呼吸器感作性データなし。なお、喘息のヒトは特にサリチル酸塩に対し著しい感受性を示し、蕁麻疹、発疹、血管性神経症、鼻炎、および重度で時に致死性とも言える発作性気管支痙攣、呼吸困難、ショック、失神など、種ーの反応を引き起こす(PIM 642(1998))と述べられている。
皮膚感作性マウスのLLNA法による皮膚感作性試験で陽性(positive)の報告(NTP TR524(2007))に基づき、区分1とした。なお、本物質は局所使用でアレルギー性接触皮膚炎を起こすおそれがあるとの記述(PIM 642(1998))の一方、マウス耳介腫脹試験では感作性なし(not sensitizing)との報告(IUCLID(2000))もある。
生殖細胞変異原性マウスに腹腔内または経口投与による染色体異常試験(in vivo変異原性試験)で、両経路とも染色体異常の有意な増加は見られず陰性(HSDB(2009))であったことから、区分に該当しないとした。なお、マウスの経口投与による精巣DNAへのトリチウムチミジン取り込み試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)では、トリチウムチミジン取り込みが有意に減少した(HSDB(2009))と報告されている。また、in vitro試験として、エームス試験で陰性の結果(HSDB(2009)、安衛法 変異原性試験データ集 補遺2版(2000))が報告されている。
発がん性データなし。
生殖毒性ラットの妊娠20および21日目に経口投与(10 mg/kg)により、分娩開始時間の有意な促進(HSDB(2009))、ラットの妊娠8〜14日に混餌投与により、母動物の体重低下に加え、新生仔死亡の増加、同腹仔数の減少が見られ、仔の外表異常および骨格異常の発生率が増加した(HSDB(2009))。以上より、母動物に一般毒性が発現している用量で生殖への影響が認められることから区分2とした。なお、サリチル酸塩はヒトで医薬品として使用され、出生前死亡率の増加、分娩前後の出血、妊娠期間の延長、分娩異常などが見られるため、妊娠3期(妊娠後期)の使用は避けるべきとされ(PIM 642(1998))、特に静注剤のサリチル酸ナトリウムについては、妊娠または妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌とされている(医療用医薬品集(2010)、List1相当)。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)本物質を含有する局所クリーム剤で治療された乾癬の患者が脳症を発症、さらに治療不応性低血糖あるいは酸・塩基平衡障害を呈し、救急血液透析により回復したとの症例報告(HSDB(2009))を初め、同様の症例が複数報告されている(HSDB(2009))。また、帯状魚鱗癬の5歳の子供に軟膏剤として使用後、発熱、呼吸亢進、呼吸性アルカローシス、昏睡状態、注視発作を起こしたと報告されている(HSDB(2009))。本物質は毒性用量で呼吸中枢を刺激し、呼吸性アルカローシスを生じ、重度の中毒では代謝性アシドーシスを起こす。さらに、標的臓器の一つに中枢神経系が記載されている(PIM 642(1998))ことから、区分1(中枢神経系)とした。なお、アスピリン(アセチルサリチル酸)を摂取した子供に肝性脳症が報告されている(PIM 642(1998))ように、サリチル酸塩では肝臓や肺など中枢神経以外の器官に対する影響が報告されているが、当該物質自体についてヒトでの具体的な報告はない。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)10%軟膏で4週間以上治療された尋常性魚鱗癬の7歳の子供が、ぜん鳴、嘔吐、めまいに続き、呼吸亢進によると思われる深い傾眠状態となり、入院に至った症例報告(PIM 642(1998))がある。また、クリーム剤を5日間使用していた乾癬の患者が脳症を発症し、集中治療室に入院した報告(HSDB(2009))もある。一方、急性的過剰摂取よりも慢性中毒による方が死亡率が高く、死亡は突然の心停止、または時には重度の脳障害に続く多発性の合併症に因る(PIM 642(1998))と述べられている。本物質ばく露による標的臓器の一つとして中枢神経系の記載((PIM 642(1998)))もあり、区分1(中枢神経系)とした。
誤えん有害性*データなし。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12.環境影響情報
生態毒性
水生環境有害性 短期(急性)藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の96時間EC50 = 65mg/L(環境省生態影響試験, 2000)から区分3とした。
水生環境有害性 長期(慢性)慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(BODによる分解度:88.1%(既存点検, 1976))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC=31mg/L(環境省生態影響試験, 2000)であることから区分に該当しないとなる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(メダカ)の96時間LC50=>100mg/Lであり(環境省生態影響試験, 2000)、急速分解性があり(BODによる分解度:88.1%(既存点検, 1976))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=2.26(PHYSPROP Database, 2012))ことから、区分に該当しないとなる。
以上の結果から、区分に該当しないとした。
残留性・分解性化審法分解度試験:良分解性(化学物質安全性点検結果等(分解性・蓄積性))
生態蓄積性情報なし
土壌中の移動性情報なし
オゾン層への有害性当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。

13.廃棄上の注意
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。
都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。
廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

14.輸送上の注意
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。
国際規制
国連番号-
品名(国連輸送名)-
国連分類-
副次危険-
容器等級-
海洋汚染物質該当しない
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質該当しない
国内規制
海上規制情報該当しない
航空規制情報該当しない
陸上規制情報該当しない
特別な安全上の対策該当しない
その他 (一般的) 注意輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。
重量物を上積みしない。
緊急時応急措置指針番号*該当しない
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。

15.適用法令
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。
労働安全衛生法該当しない
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)該当しない
毒物及び劇物取締法該当しない

16.その他の情報
参考文献
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。
・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)
・International Chemical Safety Cards (ICSC)
・Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
・GESTIS Substance database (GESTIS)
・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用
・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」