1.化学品及び会社情報 | |||
---|---|---|---|
化学品の名称 | ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) | ||
化学品の英語名称 | Dimethyl 2,2-dichlorovinyl phosphate | ||
製品コード | R03-C-052-MHLW | ||
供給者の会社名 | ○○○○株式会社 | ||
住所 | 東京都△△区△△町△丁目△△番地 | ||
電話番号 | 03-1234-5678 | ||
ファクシミリ番号 | 03-1234-5678 | ||
電子メールアドレス | 連絡先@検セ.or.jp | ||
緊急連絡電話番号 | 03-1234-5678 | ||
推奨用途及び使用上の制限 | 農薬(殺虫剤)/殺虫剤、殺虫殺菌剤、家庭用殺虫剤、防疫用殺虫剤 (NITE-CHRIPより引用) |
2.危険有害性の要約 | |||
---|---|---|---|
GHS分類 | |||
分類実施日 (物化危険性及び健康有害性) | R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) | ||
物理化学的危険性 | - | ||
健康に対する有害性 | 急性毒性(経口) | 区分3 | |
急性毒性(経皮) | 区分2 | ||
急性毒性(吸入:蒸気) | 区分1 | ||
急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分2 | ||
皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | ||
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B | ||
皮膚感作性 | 区分1 | ||
発がん性 | 区分1B | ||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | 区分1(神経系) | ||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | 区分1(神経系、肝臓) | ||
分類実施日 (環境有害性) | ガイダンス(H22.7版) (GHS 3版, JIS Z 7252:2009) | ||
環境に対する有害性 | 水生環境有害性 短期(急性) | 区分1 | |
水生環境有害性 長期(慢性) | 区分1 | ||
GHSラベル要素 | |||
絵表示 | |||
注意喚起語 | 危険 | ||
危険有害性情報 | 飲み込むと有毒 皮膚に接触した場合や吸入した場合は生命に危険 皮膚及び眼刺激 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ 発がんのおそれ 神経系の障害 長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、肝臓の障害 長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性 | ||
注意書き | |||
安全対策 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 眼、皮膚、衣類につけないこと。 取扱い後は手をよく洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 環境への放出を避けること。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。 | ||
応急措置 | 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 皮膚に付着した場合:多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 口をすすぐこと。 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 漏出物を回収すること。 | ||
保管 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 | ||
廃棄 | 内容物/容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄すること。 | ||
他の危険有害性 | 情報なし |
3.組成及び成分情報 | |||
---|---|---|---|
化学物質・混合物の区別 | 化学物質 | ||
化学名又は一般名 | ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP) | ||
慣用名又は別名 | ジクロルボス 2,2−ジクロロビニルジメチルホスファート | ||
英語名 | Dimethyl 2,2-dichlorovinyl phosphate Dichlorvos 2,2-Dichlorovinyl dimethyl phosphate | ||
濃度又は濃度範囲 | 情報なし | ||
分子式 (分子量) | C4H7Cl2O4P (220.98) | ||
化学特性 (示性式又は構造式) | |||
CAS番号 | 62-73-7 | ||
官報公示整理番号(化審法) | 2-3224 | ||
官報公示整理番号(安衛法) | 2-(7)-181 | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | 情報なし |
4.応急措置 | |||
---|---|---|---|
吸入した場合 | 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 直ちに医師に連絡すること。 気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。P320 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 | ||
皮膚に付着した場合 | 多量の水/石けん(鹸)で洗うこと。 直ちに医師に連絡すること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 | ||
眼に入った場合 | 水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。 | ||
飲み込んだ場合 | 直ちに医師に連絡すること。 特別な処置が必要である(このラベルの・・・を見よ)。 注) ”…”は、ラベルに解毒剤等中毒時の情報提供を受けるための連絡先などが記載されている場合のものです。ラベル作成時には、”…”を適切に置き換えてください。 口をすすぐこと。 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状 | 吸入:縮瞳、筋痙攣、唾液分泌過剰。筋攣縮。痙攣。めまい。発汗。喘鳴。息苦しさ。意識喪失。 皮膚:吸収される可能性あり。発赤。他の症状については、「吸入」参照。 眼:充血。痛み。縮瞳。かすみ眼。 経口摂取:唾液分泌過剰。吐き気。嘔吐。胃痙攣。下痢。他の症状については、「吸入」参照。 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 情報なし | ||
医師に対する特別な注意事項 | 曝露の程度によっては、定期検診を勧める。 この物質により中毒を起こした場合は、特別の処置が必要であるため、指示のもとに適切な手段をとれるようにしておく。 短期暴露による症状が消えた後、遅延性(数日から数週間後)の影響を引き起こすことがある。 |
5.火災時の措置 | |||
---|---|---|---|
適切な消火剤 | 小火災:粉末消火剤、二酸化炭素、散水 大火災:水の散布、水噴霧、一般の泡消火剤 | ||
使ってはならない消火剤 | 棒状注水 | ||
火災時の特有の危険有害性 | 可燃性。 火災の場合、有害物質(リン酸化物、塩化水素、一酸化炭素)が放出される可能性がある。 | ||
特有の消火方法 | 安全にできるのであれば、火災の場所から損傷していない容器を移動する。 消火水をせき止め、後で廃棄する。 消火活動は、有効に行える最も遠い距離から、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する。 容器内に水を入れてはいけない。 消火後も大量の水を用いて容器を冷却する。 安全弁から音が発生したり、タンクが変色したときは直ちに避難する。 火災に巻き込まれたタンクから常に離れる。 大火災の場合は、無人ホース保持具やモニター付きノズルを用いて消火する;これが不可能な場合にはその場所から避難し、燃えるままにしておく。 | ||
消火を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 消火作業の際は、適切な自給式の呼吸器用保護具を着用する。 密閉型防護服を着用する。 防火服は、熱に対する防護はするが、化学物質に対しては限定的である。 |
6.漏出時の措置 | |||
---|---|---|---|
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置 | 適切な呼吸器用保護具を着用する。 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 耐薬品用保護衣を着用する(火災の危険性がない時) すべての着火源をすぐ近くから取り除く(現場での喫煙、火花や火炎の禁止)。 適切な防護衣を着けていないときは、破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。 流出や漏れている場所から、全ての方向に適切な距離をとる。 必要により、風下に適切な隔離距離をとる。 | ||
環境に対する注意事項 | 環境汚染を引き起こすおそれがある。 この物質を環境中に放出してはならない。 漏出物を地面や河川や下水に直接流してはいけない。 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | 危険でなければ、漏れを止める。 排水溝、下水溝、地下室や狭い場所への流入を防ぐ。 プラスチックシートで覆いをし、散乱を防ぐ。 乾燥した土、砂や不燃性物質で吸収し、あるいは覆って容器に移す。 容器内に水をいれてはいけない。 専門家に相談する。 換気。 漏れた液を、密閉式の容器に集める。 地域規則に従って保管・処理する。 | ||
二次災害の防止策 | 情報なし |
7.取扱い及び保管上の注意 | |||
---|---|---|---|
取扱い | |||
技術的対策 | 「8. ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。 | ||
安全取扱注意事項 | 使用前に取扱説明書を入手すること。 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 眼、皮膚、衣類につけないこと。 屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 環境への放出を避けること。 裸火禁止。 火や高温面の近くで、または溶接作業中に使用してはならない。 | ||
接触回避 | 「10. 安全性及び反応性」を参照。 | ||
衛生対策 | 取扱い後は手をよく洗うこと。 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 | ||
保管 | |||
安全な保管条件 | 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 施錠して保管すること。 元の容器でのみ貯蔵。 | ||
安全な容器包装材料 | 不適切な材料:鉄、低合金鋼 消防法及び国連危険物輸送勧告モデル規則で規定されている容器を使用する。 |
8.ばく露防止及び保護措置 | ||||
---|---|---|---|---|
許容濃度等については日本産衛学会の「許容濃度の勧告」及びACGHIの「TLVs and BEIs」について記載しています。 | ||||
管理濃度 | 0.1 mg/m3 | |||
許容濃度等 | ||||
日本産衛学会(2021年版) | 未設定 | |||
ACGIH(2022年版) | TLV-TWA: 0.1 mg/m3(IFV ;Inhalable fraction and vapor)(Skin) | |||
設備対策 | 取り扱いの場所の近くに、洗眼及び身体洗浄のための設備を設ける。 作業場では全体換気を行う。 設備は可能であれば密閉系とし局所排気装置を用いる。 | |||
保護具 | ||||
呼吸用保護具 | 状況に応じた適切な呼吸用保護具を着用する。 防毒マスクの選択については、以下の点に留意する。 -防毒マスクは、日本工業規格(JIS T8152)に適合した、作業に適した性能及び構造のものを選ぶ。その際、取扱説明書等に記載されているデータを参考にする。 -濃度及び物質に対応した吸収缶を使用する -作業者が粉塵に暴露される環境で防毒マスクを使用する場合には、防じん機能付き吸収缶を使用する -酸素濃度が18%未満の場所では使用しない。 | |||
手の保護具 | 保護手袋を着用する。 不浸透性手袋の使用を検討すること。 | |||
眼の保護具 | 保護眼鏡を着用する。 | |||
皮膚及び身体の保護具 | 保護衣を着用する。 |
9.物理的及び化学的性質 | |||
---|---|---|---|
物理的状態 | |||
物理状態 | 液体 (20℃、1気圧) (GHS判定) | ||
色 | 無色〜琥珀色 | ||
臭い | 特異臭、芳香臭 | ||
融点/凝固点 | <-60 ℃(GESTIS(2022)) 183 °F (PubChem(2022)) | ||
沸点、初留点及び沸騰範囲 | 234 ℃(101.3 kPa)(ICSC(2014)) 140 ℃(27 hPa)(GESTIS(2022)) 234.1 ℃(750 mm Hg)(PubChem(2022)) | ||
可燃性 | 可燃性(ICSC(2014)) | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | データなし | ||
引火点 | 170 ℃(ICSC(2014)) 177 ℃(Open cup)(PubChem(2022)) 100 ℃(Closed cup)(PubChem(2022)) | ||
自然発火点 | データなし | ||
分解温度 | around315 ℃(PubChem(2022)) | ||
pH | データなし | ||
動粘性率 | データなし | ||
溶解度 | 水: 10 g/l(20℃)(溶けにくい)(ICSC(2014)) 水: 8 g/l(20℃)(GESTIS(2022)) 水: 8.00X10+3 mg/L(20℃)(PubChem(2022)) | ||
n-オクタノール/水分配係数 | Log Kow: 1.47 (ICSC(2014)) Log Kow: 1.43(GESTIS(2022)) | ||
蒸気圧 | 1.6 Pa(20℃)(ICSC(2014)、GESTIS(2022)) 2.1 Pa(GESTIS(2022)) 1.58X10-2 mm Hg(25℃)(PubChem(2022)) | ||
密度及び/又は相対密度 | 1.4 (水=1)(ICSC(2014)) 1.425 g/cm3(25℃)(GESTIS(2022)) 1.415 g/cu cm(25 ℃/D)(PubChem(2022)) | ||
相対ガス密度 | 7.6 (空気=1)(ICSC(2014)、PubChem(2022)) 7.63 (同じ温度と圧力での乾燥空気に対する密度の比率)(GESTIS(2022)) PubChem(2022)) | ||
粒子特性 | 該当しない |
10.安定性及び反応性 | |||
---|---|---|---|
反応性 | 「危険有害反応可能性」を参照。 | ||
化学的安定性 | 推奨される保管条件下で安定。 | ||
危険有害反応可能性 | 可燃性。低揮発性。火災時に、刺激性あるいは有毒なフュームやガスを放出する。有機溶剤を含む液体製剤は、引火性のことがある。製剤が引火性/爆発性溶剤を含む場合火災および爆発の危険性がある。燃焼すると、有毒で腐食性のフューム(リン酸化物、ホスゲンおよび塩素など)を生成する。 塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化水素、硝酸アンモニウム等との混触により発火することがある。鉄、スチール、プラスチック類およびゴムを侵す。 | ||
避けるべき条件 | 熱 | ||
混触危険物質 | 塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化水素、硝酸アンモニウム | ||
危険有害な分解生成物 | リン酸化物、ホスゲン、塩素など |
11.有害性情報 | ||||
---|---|---|---|---|
急性毒性 | ||||
経口 | ラットのLD50値として5件のデータ[17 mg/kg(環境省リスク評価書第4巻(2005))、30および65 mg/kg(EHC 79(1989))、58.8および97.5 mg/kg(ATSDR(1997))]のうち、2件が区分2、3件が区分3に該当することから、該当数の多い区分3とした。 | |||
経皮 | ウサギのLD50値[205 mg/kg(EHC 79(1989)]は区分3に該当し、ラットのLD50値113 mg/kg(EHC 79(1989))]は区分2に該当するため、危険性の高いラットの区分を採用し区分2とした。 | |||
吸入: ガス | GHSの定義における液体である。 | |||
吸入: 蒸気 | ラットの4時間ばく露による2件のLC50値[1.66 ppm(EHC 79(1989))および12.2 ppm(PATTY(5th, 2001))]はいずれも区分1に該当する。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(15.8 ppm)の90%より低いので、ミストがほとんど混在しない蒸気として気体の基準値を適用した。 | |||
吸入: 粉じん及びミスト | ラットの4時間ばく露によるLC50値として、4件のデータ[0.65 mg/L、0.523 mg/Lおよび0.447 mg/L(以上PATTY(5th, 2001))、0.34 mg/L(EHC 79(1989))]のうち、2件が区分2、2件が区分3に該当することから、危険性の高い方の区分を採り区分2とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(0.143 mg/L)より高いので、ミストの基準値を適用した。 | |||
皮膚腐食性及び皮膚刺激性 | ウサギの皮膚に5〜20%の本物質の水溶液を適用した試験で、強度の刺激性が見られた(NITE初期リスク評価書 86(2008))との報告に基づき、区分2とした。 | |||
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性 | ウサギを用いた眼一次刺激性試験で、軽度の刺激性(mild irritant)との結果(EPA RED(2006))により区分2Bとした。 | |||
呼吸器感作性 | データなし。 | |||
皮膚感作性 | モルモットに0.5%の本物質を適用したマキシマイゼーション試験において、動物の35%に紅斑がみられ、中等度の感作性との判定結果(NITE初期リスク評価書 86(2008))に基づき、区分1とした。 | |||
生殖細胞変異原性 | マウスに経口、吸入または腹腔内投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)でいずれも陰性(IARC 53(1991))、マウスに経口または吸入投与による精原細胞または精母細胞を用いた染色体異常試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)でいずれも陰性(NITE初期リスク評価書 86(2008))、さらにマウスに腹腔内投与による骨髄または末梢血を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)でいずれも陰性(IARC 53(1991)、NTP DB(Access on Aug., 2011))が報告されていることに基づき区分に該当しないとした。なお、in vivo遺伝毒性試験であるマウスを用いた姉妹染色分体交換試験、マウスまたはラットを用いたDNA損傷試験やDNA結合試験で陰性(IARC 53(1991)、NTP DB(Access on Aug., 2011))、in vitro試験としてエームス試験で陽性(IARC 53(1991)、NTP DB(Access on Aug., 2011))が報告されている。 | |||
発がん性 | 【分類根拠】 (1)、(2)より、動物種2種で悪性を含む腫瘍の発生増加が認められ(雄ラットの悪性線維性組織球腫、雌マウスの前胃腫瘍)、動物実験において発がん性の十分な証拠があると考えられることから、区分1Bとした。旧分類から健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質に追加されたため、発がん性項目のみ見直した(2021年)。 【根拠データ】 (1)ラット及びマウスを用いた80週間混餌投与(投与期間終了後ラットは30週間、マウスは12〜14週間観察後にと殺)による発がん性試験において、ラットの試験(0、150、1,000/300 ppm)では雄に悪性線維性組織球腫の発生率の用量依存的な増加が認められた。しかし、雌ラット及び雌雄マウスには腫瘍の有意な増加はみられなかった(厚労省初期リスク評価書 (2013)、IARC 53 (1991)、ACGIH (2014))。 (2)ラット及びマウスを用いた2年間強制経口投与(5日/週)による発がん性試験において、ラットの試験(雌雄:0、4、8 mg/kg/day)では雄の膵臓腺房細胞腫及び単核球性白血病、雌の乳腺の線維腫と線維腺腫を組合せた乳腺腫瘍に用量依存的な発生増加が認められた。NTPは雄ラットでは発がん性のある程度の証拠、雌ラットでは不確かな証拠が得られたと結論した。一方、マウスの試験(雄:0、10、20 mg/kg/day、雌:0、20、40 mg/kg/day)では、雌雄とも前胃の乳頭腫に用量依存的な増加がみられた。雌の40 mg/kg/dayでは前胃乳頭腫発生率は対照群と比べて有意な増加を示し、2/50例に扁平上皮がんもみられた。NTPは雄マウスでは発がん性のある程度の証拠、雌マウスでは明らかな証拠が得られたと結論した(TP TR342(1989)、厚労省初期リスク評価書 (2013)、IARC 53 (1991)、ACGIH (2014))。 (3)本物質は厚生労働省化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質である。なお、IARCでグループ2Bに追加されていることががん原性指針の対象物質の指定根拠である(令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第 27号)。 (4)国内外の評価機関による既存分類結果として、IARCでグループ2Bに(IARC 53 (1991))、日本産業衛生学会で第2群Bに(産衛学会許容濃度等の勧告 (2021):2001年提案)、EPAでSに(EPA OPP Annual Cancer Report (2020):2000年)、ACGIHでA4に(ACGIH (2014):2000年提案)それぞれ分類されている。 【参考データ】 (5)ACGIHは(1)、(2)を含めた試験結果を評価しているが、ラットとマウスでみられた腫瘍に一貫性がない、前胃の腫瘍などヒトへの外挿性は不明であるとしてA4に分類された(ACGIH (2014))。 | |||
生殖毒性 | ラットを用いた二世代または三世代生殖毒性試験において、0.488〜0.577 mg/kg/day以上で赤血球と血漿のコリンエステラーゼ阻害が認められ、生殖毒性については統計学的に有意な唯一の影響として、高用量(7.592 mg/kg/day)群で性周期の異常が示された(EPA RED(2006))ことを除き、交配、妊娠、受胎、分娩に関連する生殖の各指標および産仔数など仔の発生に対し悪影響はなかった(ACGIH(2002)、IARC 53(1991))と報告されている。また、ラット、マウスおよびウサギの妊娠期間または器官形成期に経口投与した発生毒性試験、さらにウサギに対しては吸入ばく露した発生毒性試験において、いずれも催奇形性を含む仔の発生に対する悪影響は認められなかった(IARC 53(1991)、ATSDR(1997)、EPA RED(2006))。以上より、多世代生殖毒性試験で性機能・生殖能に対する悪影響は見られず、発生毒性試験で子の発生に対する悪影響も認められなかったことから区分に該当しないとした。 | |||
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) | ラットに経口投与により35mg/kgで活動低下、不規則呼吸、間代性痙攣、攣縮、虚脱、正向反射の低下、流涎が認められ、5 mg/kg以上で脳及び赤血球のコリンエステラーゼ活性の有意な阻害が認められた(EPA RED(2006))。さらに、イヌに経口により11mg/kg以上で不穏状態、流涎、痙攣、不随意排尿などコリン作動性症状が発現しており(ACGIH(2002))、区分1(神経系)とした。なお、ヒトではジクロルボスを男性ボランティアにばく露した試験で、喉の刺激、鼻漏、胸骨下の不快感がみられたが、瞳孔径及び視力に影響はみられず、血漿中のコリンエステラーゼ活性の低下とジクロルボスのばく露量との間には相関関係がみられた(NITE初期リスク評価書 86(2008))と報告されている。 | |||
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) | ラットの90日間経口投与試験において、1.5 mg/kg/day以上で血漿および赤血球のコリンエステラーゼ活性の有意な低下、7.5 mg/kg/day以上で振戦、流涎、眼球突出のコリン作動性症状が観察され(ACGIH(2002))、イヌの90日間経口投与試験においても1mg/kg/day以上で血漿および赤血球コリンエステラーゼ゛活性の低下が報告されている(NITE初期リスク評価書 86(2008))。以上、用量はいずれも区分1のガイダンス値内であることから区分1(神経系)とした。また、ラットに2年間の混餌投与により、500ppm(12.5 mg/kg/day)群の生存ラットで肝細胞にび慢性の空胞変性、脂肪変性、肝細胞腫脹、胆汁うっ帯、100ppm(2.5 mg/kg/day)群の雌雄でび慢性の空胞変性が認められ(NITE初期リスク評価書 86(2008))、イヌの2年間混餌投与試験では0.8 mg/kg/day以上で肝細胞の肥大と空胞化が見られており(JMPR 859(1993))、用量は区分1のガイダンス値内であることから区分1(肝臓)とした。なお、ヒトのばく露では、ボランティアに1.5 mg/人/日の用量で60日間反復経口投与した試験で血漿コリンエステラーゼ゛活性が40%低下した(NITE初期リスク評価書 86(2008))との報告がある。 | |||
誤えん有害性* | データなし。 | |||
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。 |
12.環境影響情報 | |||
---|---|---|---|
生態毒性 | |||
水生環境有害性 短期(急性) | 甲殻類(ミジンコ)の48時間EC50 = 0.00007 mg/L(U.S. EPA: RED, 2006他)等から、区分1とした。 | ||
水生環境有害性 長期(慢性) | 急速分解性がなく(BIOWIN)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC=0.0000058 mg/L(U.S. EPA: RED, 2006)であることから、区分1とした。 | ||
残留性・分解性 | 情報なし | ||
生態蓄積性 | 情報なし | ||
土壌中の移動性 | 情報なし | ||
オゾン層への有害性 | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていない。 |
13.廃棄上の注意 | |||
---|---|---|---|
化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の上処理を委託する。 | ||
容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。 |
14.輸送上の注意 | ||||
---|---|---|---|---|
本物質のGHS分類結果に基づく国際規制の分類等は、以下の通りと推定されるが、該否は製品によって異なる場合がある。輸送危険物の分類は、容器等級を含め、荷送人が責任をもって判断することとされているため、輸送の際には、個々の貨物について、製品の状態、形状等も考慮し、輸送モード (航空、船舶) を規制する法規に沿って事業者が判断する必要がある。 | ||||
国際規制 | ||||
国連番号 | 3018 | |||
品名(国連輸送名) | 有機リン農薬(液体、毒性) | |||
国連分類 | 6.1 | |||
副次危険 | - | |||
容器等級 | T、U | |||
海洋汚染物質 | 該当する | |||
MARPOL73/78附属書U及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質 | 該当しない | |||
国内規制 | ||||
海上規制情報 | 船舶安全法の規定に従う。 | |||
航空規制情報 | 航空法の規定に従う。 | |||
陸上規制情報 | 道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。 | |||
特別な安全上の対策 | 道路法、消防法、毒物及び劇物取締法の規定によるイエローカード携行の対象物 | |||
その他 (一般的) 注意 | 輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。 重量物を上積みしない。 | |||
緊急時応急措置指針番号* | 152 | |||
* 北米緊急時応急措置指針に基づく。米国運輸省が中心となって発行した「2020 Emengency Response Guidebook (ERG 2020)」(一般社団法人日本化学工業協会によって和訳されている(発行元:日本規格協会)に掲載されている。 |
15.適用法令 | ||||
---|---|---|---|---|
法規制情報は作成年月日時点に基づいて記載されております。事業場において記載するに当たっては、最新情報を確認してください。 | ||||
労働安全衛生法 | 特定化学物質第2類物質、特定第2類物質(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2、3号 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項) 作業環境評価基準(法第65条の2第1項) | |||
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) | 第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1) | |||
毒物及び劇物取締法 | 劇物(法第2条別表第2) | |||
消防法 | 第4類 引火性液体 第三石油類 非水溶性(法第2条第7項危険物別表第1・第4類) | |||
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(中央環境審議会第9次答申) | |||
水質汚濁防止法 | 指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3) | |||
船舶安全法 | 毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1) | |||
航空法 | 毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1) |
16.その他の情報 | ||||
---|---|---|---|---|
参考文献 | ||||
9項、11項については各データ毎に記載。その他の各項については以下を参照。 ・NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP) ・International Chemical Safety Cards (ICSC) ・Hazardous Substances Data Bank (HSDB) ・GESTIS Substance database (GESTIS) ・ERG 2020版 緊急時応急措置指針−容器イエローカードへの適用 ・一般社団法人日本化学工業協会 編「GHS対応ガイドライン ラベル及び表示・安全デ−タシ−ト作成指針」 |